たいせつじかん ?ほっと一息。少し休憩。幸せな時間?

コミュニティカフェ

手仕事でつなぐ 人・町、そして世代 ミシンの音がするカフェ「いのちの木」(横浜市都筑区仲町台)

いのちの木外観

コミュニティカフェの始まりには、オーナーの身近にいる「コミュニティカフェを必要とする人」が影響することが多いです。今回ご紹介する【いのちの木】というコミュニティカフェのオーナーは、教会を母体としたNPO法人で、教会を通して出会った精神障がいの青年と団体を設立し、その活動が始まりました。

彼らは、精神障がいなどの困難を抱える人の”地域に開かれた作業場” として、コミュニティカフェ 【マローンおばさんの部屋】を設立します。しかしこの社会には、高齢者、不登校などの引きこもり、DV被害、夫婦関係の破綻など、このコミュニティカフェでは支えられない多くの困難があることを見て、同じ町に【いのちの木】をオープンさせました。

このふたつのコミュニティカフェには、社会や生活に不安や困難を抱えている人の居場所というだけでなく、その人が社会との「共生する場をつくる」というミッションがあります。また、【いのちの木】は、「社会福祉予算に頼らない運営」もミッションとして掲げています。今回は、彼らの取り組みやこれまでの軌跡を追いながら、コミュニティカフェいのちの木をご紹介します。

■絵本の中から出てきたカフェ、いのちの木

いのちの木外観2

横浜市都筑区・仲町台駅から3分ほど。公園につながる並木道の遊歩道沿いに、いのちの木はあります。遊歩道から5段ほど階段を下り、カフェの入り口前に立つと、白熱灯やテラコッタの床の温かい色合いが目に溶け込んできます。ヨーロッパの静かな町の一角のようで、透明なガラス戸なのに、ギィっと重みのある木の扉の音がしそうです。お店の中はムクの木のテーブルやアンティークなインテリアがしつらえてあり、やさしい色合いの布が大きなロールに巻かれていくつも重ねて置かれています。ここはまるで、外国の絵本の挿絵のよう。絵本の中の服職人が、さっきまで仕事をしていた様子を思わせます。

いのちの木内覧

じつは、冒頭でお話ししたマローンおばさんの部屋といのちの木には、テーマとなった絵本があります。マローンおばさんの部屋はカフェと同名の絵本、そして、いのちの木は『ルリユールおじさん』という絵本です。ルリユールとは製本・装丁のこと。とくに、職人が手作業でつくる、工芸品としての装丁やその技術のことをいいます。

この本の舞台は、パリの路地裏の静かな通りにある製本職人のお店です。いのちの木もまさにそんな雰囲気をかもしだしていますが、この絵本から切り抜きたかったのは、絵本のデザインイメージやシチュエーションではなく、製本職人という手仕事への愛情、時代をこえてつながる職人の誇りだったといいます。じつは、いのちの木には「本物に触れ、つくり、引き継いでゆく」というコンセプトがあり、そのために手仕事を通した交流やその技術継承をする活動を大切にしてきました。だから、職人の仕事やそのきめ細やかさが尊ばれるべきものとして語られている『ルリユールおじさん』という絵本は、お店のテーマにぴったりだったとおっしゃいます。

■おばあちゃんの編み物会社

「ドルカス」の編み図

Beyond the reefとは別のブランド「ドルカス」の編み図。ドルカスとは、無償で身寄りのない人に服をぬってあげたという聖書に出てくるおばあちゃんの名前。新規ブランド立ち上げのために、クラウドファンディングにも挑戦した

いのちの木の活動から、素敵なコミュニティが生まれました。【編み物サークル】―ここでは、編み物好きが集まって、おしゃべりしながら編み物とカフェを楽しみます。また、編み物が得意なおばあちゃんが、初心者のママに教えたり、多世代交流にもなるステキな場所でもあります。ある時、このサークルに参加していたおばあちゃんたちに、思いがけないできごとが起こりました。なんと、おばあちゃんたちの編み物が商品となって販売され、おばあちゃんたちの編み物会社ができたのです。

それまで編み物サークルは、技術継承と交流を目的に営まれていました。おばあちゃんたちの編み物技術は高く、サークルに来たママたちが難儀している個所でも、ひょいひょいと教えてくれました。おばあちゃんたちにとって編み物サークルは、自分が昔から打ち込んできたことが人の役に立つというすばらしい居場所でした。

そこに、あるファッション誌の女性ライターとの出会いがあったのです。当時彼女は、伴侶を亡くし無気力になっていた義母が心配で、義母の大好きな編み物で何かできないだろうかと考えていました。ある日、彼女が手描きしたイメージ画と毛糸を義母に渡すと、驚くほど素敵なクラッチバックができ上がってきたのだそう。そして縁あって、このバックのブランドbeyond the reefの作品づくりを、編み物サークルで取り上げことになったのです。クラッチバックは予約注文をスタートすると、アッという間に売り切れてしまう人気商品となり、このことは、「おばあちゃんの編み物会社」としてたくさんのメディアにも取り上げられました。高齢者自身がもつ技術を生かし生活の糧にする場を生み出したことは、”福祉制度に頼らない事業”の行方としては、非常に良い形だったそうです。

しかし、いのちの木はある時、一旦立ち止まって自分たちの居場所を見つめ直します。

ブランドは安定して成長し、おばあちゃんたちの生きがいや魅力になっている。何よりも、福祉制度に頼らない事業運営として、市民が市民を支えるしくみとなりそうなおばあちゃんたちの編み物会社・・・。

でも、もう一度考えたのです。いのちの木が大切にしたいことは、なんなのだろうかと。

■もう一度、あの場所へ

編み物サークルの様子

技術の継承やものづくりを通して作りたかったのは、「たいせつにされていると感じられる居場所」なんだ。いのちの木はこの原点に立ち返り、事業としての編み物サークルから、集い、語らい、教えあう編み物サークルへ戻ることになりました。

じつはこの編み物サークルの参加者は、電車を乗り継いで遠方から来る方が多いのだそう。店の前で待ち合わせ、ここで編み物をしながら時間を過ごし、それぞれの家へ帰っていく。この場所で完結するつながりだといいます。

近ごろは、自宅の最寄りの公民館や地区センターなどの公共施設で、いろいろなサークルやボランティア活動があるので、毎日のように施設へ足を運ぶ人もいらっしゃるようです。しかし、時には、近所の人には話したくないこともあるでしょう。だから、「ここは私だけの特別な場所」、そんな思いをもち、この場所を宝物のように大切にして、サークルに参加されているのかもしれません。スタッフの日向 夏江(ひゅうがなつえ)さんがおっしゃいます。

スタッフの日向さん

いのちの木のお話をしてくださるスタッフの日向さん

日向さん:「サークルを続けている方を見ていると、”大事にしてくれる”、”自分を待っていてくれている”そういう場所をもっていることが、誇り高く自信になっていらっしゃるなと強く感じます。」

遠方から通うため、高齢の方は健康的にも難しくなり、足が遠のいてしまうことがあるけれども、しばらくすると若い方や新しい方が入られて、メンバーを変えながら編み物サークルは続いています。

日向さん:「編み物サークルは、編み物が好きな方ならどなたでも参加できます。開催時間内でしたらお好きな時間に来て、お好きな時間にお帰りいただきます。どうぞ遊びに来てくださいね。」

編み物サークル

毎月第1第3木曜日 10:30~14:30

参加費500円(1ドリンクオーダー制)

■ミシンのワークショップは、1対1でじっくりと。

ワークショップの様子

ワークショップは1対1 だから子どもだって作りたいものを作れる!

”ミシンの音がするカフェ”というだけあって、いのちの木のミシンワークショップはとても個性的。何を作るかは自分で決めます!そして、なんと!1対1が原則。つまり参加者はひとりだけです。費用は2時間3000円です。

たとえば、幼稚園バックを作りたいのなら、好きな布とサイズやデザイン画などをもっていけばいっしょに作ってくれます。ミシンを使ったことがない人でも、ていねいに教えながら進めてくれます。

ワードローブの様子

ワードローブにあるシンプルで着心地のよさそうな洋服たち。こんなおしゃれな洋服を本当に自分で作れるのだろうか??

何を作ろうか迷っているなら、お店のワードローブから作る作品を探してもいいです。どの商品もゆったりしたデザインなので、たいていの方はカフェにある型紙で作ることができるそうです。作りたい洋服を選んだら、布もお店で選べます。少し上達したら、コートも作ることができるそうです。でも、初めてだと最後まで作れずあきらめてしまうかもしれませんよね・・・。

作品について語る日向さん

日向さんがはいているズボンのサンプルもここにあります。自分で作った服を自分で身につける、なんとも穏やかな時間の流れを感じます。

日向さん:「ご心配いりませんよ。”やっぱり残りの作業はやってもらっていいですか?”と頼まれる方は結構多いです。”やった感があるからもう充分です。”って(笑)。それでもミシンをいじるだけでも楽しいんですよね。」

ワードローブの洋服は、型紙の見本と同時に、販売もしています。パンツは6000円、コートも10000円切っています。手作りの洋服がこの値段は驚きです。

日向さん:「ワークショップができる日程や曜日は決まっていません。お電話いただいて、作業机が空いていたらお受けできますので、まずはお電話くださいね。」

1対1のワークショップなんて、とてもぜいたくだと思いますが、いのちの木では、この形式はとても大切なことだといいます。この時間に、じっくりとお話がきけるからです。服を作りながら、技術を伝えるだけでなく、何を思い、何を感じているかを、しっかりと受け止めながらワークショップは進むのです。

今、学校に行けなくなってしまった女の子が、一着、また一着と服を作っているのだそう。「次はコートに挑戦しよう。」という彼女。ミシンをかけながら、日向さんは彼女の言葉を受け止め、支えていらっしゃいます。手仕事は、こんな場面にも力を発揮するのですね。

ミシンワークショップの様子

ミシンワークショップ

2時間3000円(+作りたいものの布代)

お電話で予約

■その人のストーリーとともに

いのちの木について語る日向さん

お話を聞いていると、カフェに男性がひとり入って来られました。ズボンのお直しを依頼しに来たようです。

日向さん:「普通のお直しも受けていますが、ここにお直しを依頼しに来られる方は、とっても困ってここにたどり着く方が多いですね。」

たとえば、ある女性は、車いすになった息子さんがいて、自力でトイレに行けるよう、ズボンの片方を全部マジックテープにしてほしいという要望をもっていました。しかし、ほかのお店ではこの要望が伝わらず、思った通りにでき上がらなかったいいます。毎日の生活で困っているからなんとかしたいのに、どこにも頼めるところがなく、途方に暮れているところでいのちの木にたどり着いたというのです。

日向さん:「わたしは洋裁のプロでもないし、ミシンも学校で学んだわけではなくて、趣味で続けてきたくらいなんです。でも、ここでできるお直しでは、その人のストーリーを聞き、そういう人生があるんだと知ることを大切にしながら要望をうかがっています。その方も、もちろん直してもらいたいというのが最終的なゴールなのでしょうが、話を聞いてもらいたいということも相当大きいのだと感じます。このようなお話ができたとき、ああ、やっぱりここはこんな風に人とつながっていく場所なんだなとあらためて思います。」

日向さんは、お直しもひとつの交流なんですよねとおっしゃいました。このカフェは、手仕事を通して、人を支えているのだなとあらためて感じました。

アンティークのミシン

古いアンティークミシンがとても素敵。いのちの木にはたくさんのミシンがあり、ミシンのそばには、いろいろな手作り商品が、まるで宝探しのように並んでいる。

ギフトとして販売されている作品

小さなニットの編みカバンのストラップ。ちょっとしたギフトでも喜ばれそうです。手作りの温かさと、かわいらしいセンスの良さが光ります。どんなお店を探しても、なかなか見つかりそうもないところが、まさに宝を探し当てた気分。素敵な小物を探してみてください

■手仕事×コーヒー

いのちの木のコーヒー

いのちの木のコーヒーはハンドドリップで、たっぷりのマグカップに入れて提供してくれます。たっぷり飲んでも、まったく胃に残らない、すっきりとした味わい。普段ミルクや砂糖を入れて飲む人でも、まずはブラックで試してもらいたい味です。どうしてこんなにおいしいのか・・・?!ハンドドリップをした人が上手なのか??

日向さん:「確かに彼はここでいちばんドリップが上手です(笑)。でも、コーヒー豆の良さも大きな理由だと思います。」

コーヒーをいれましょう!

いのちの木では、こだわりをもって堀口珈琲のコーヒー豆を使っています。この珈琲豆店では、毎年いちばんいい豆をブレンドしてくれるのだそう。

コーヒー豆

いのちの木のメニュー

数種類のコーヒーを試せるのも楽しみのひとつ。おかわりは200円というサービスもうれしい。

編み物サークルやワークショップの終わりに、コーヒーを飲みながら、みんなの話に耳を傾ける楽しみがあるそう。

第1第3木曜日には焼き菓子も入荷します。マローンおばさんの部屋で提供されているものと同じ焼き菓子で、カフェに彩りを添えます。甘いお菓子を囲んで話に花が咲くおばあちゃんたちの笑顔が目に浮かびます。

 

ミシンの音のするカフェ いのちの木の店舗情報
店名 ミシンの音のするカフェ いのちの木
席数 テーブル 6名席 x 1 4名席×2 2名席×2
個室 なし
電話番号 045-945-2223
最寄り駅 横浜市営地下鉄ブルーライン「仲町台駅」
アクセス 横浜市営地下鉄ブルーライン「仲町台駅」徒歩2分
住所 横浜市都筑区仲町台1-32-21 アルス仲町台せせらぎ公園壱番館102号室
営業時間 [月~金]11:00-16:00
定休日 日曜日
ホームページ
食事の提供 ドリンク付きのトーストセットをご用意
レンタルスペース なし
レンタル棚ショップ なし(スタッフのハンドメイド製品は販売しています)
Wi-Fi あり
充電 なし
プロジェクタ投影
おむつ替え設備
ベビーカー入店
離乳食 なし (お湯の提供可)
ベビーシート なし
車いす着席 応相談 (玄関までに下り階段が5段ほどあります。お手伝いいたしますので、車いすのスタッフやお客さまもご利用いただいておりますが、まずはご相談ください。)"
車いす手洗い

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