たいせつじかん ?ほっと一息。少し休憩。幸せな時間?

コミュニティカフェ

《時間》ではなく、《時》がひとに寄り添う場所 「おはよう、かまくら。」 朝食屋COBAKABA(鎌倉市小町)

JR鎌倉駅から徒歩5分。鎌倉観光の中心地のひとつ若宮大路―その通りにある「朝食屋COBAKABA」(以降、コバカバ)。キャッチ―なネーミングと古さと新しさが混在した鎌倉らしいオシャレさで、観光客にも人気の高いお店です。しかし一方で、コバカバは鎌倉でもっともコミュニティが生まれ、もっともコミュニティが息づく場所のひとつだともいえます。「地元の人でにぎわっているから?」いいえ、それだけではありません。コバカバが発信するメッセージは奥深く、鎌倉で過ごす「人」誰もが、自分を取り戻し、自分のコミュニティに気付ける場所なのです。

今回は、オーナー内堀敬介さんにお話をうかがいながら、コミュニティカフェとしてのコバカバの魅力についてご紹介します。

 

■旬の鎌倉野菜が、朝を告げる。

─本日はよろしくおねがいします。

内堀さん:こちらこそよろしくおねがいします。

─取材前にお昼ごはんをいただきにおじゃましたら、閉店時間の14時にはまだずいぶんあったのに、「最後の2食です」と言われて焦りました。コバカバはウワサどおりの人気店ですね。

内堀さん:ありがとうございます。ごはんが終わってしまうと、どうしても時間前にオーダーストップするしかなくて。申し訳ございません。今日はなにを召し上がっていただいたのですか?

─平飼いたまごを使った【卵かけごはん定食】も捨てがたかったのですが、SNSで絶賛されていたメニューに心を決めていましたので【焼き鮭定食】と【鯖の文化干し定食】に【納豆】をプラスしていただきました。

内堀さん:ありがとうございます。

『すごい鯖を食べよう。』鯖の概念をくつがえす
コバカバの【サバの文化干し定食】+納豆

─日本のどこの家庭でも食べられるものをメニューにされていますね。観光地鎌倉で、このメニュー作りをするのはどうしてでしょうか?

内堀さん:鎌倉は観光地だから、フレンチやイタリアンなど観光用、つまり、外向きの飲食店の多様性はあるのですが、16年前の開店当時いわゆる地元の食堂というのはあまりなくて。野菜がたくさんとれてバランスが良くて、けれど飽きさせない―そんな“特別じゃない”家庭料理を出してみたいと考えたのがこの店の始まりです。

しかしその奥には、家庭料理には「人をつなげるチカラがある」という思いがあったからなのです。

─家庭料理がどのように人をつなげるのでしょうか?

内堀さん:鎌倉の町にはいろいろな人のレイヤーがあります。観光の人、地元の人、若い人、年配の人など、狭いところにコンパクトに集まってそれが断層的になっている。その断層的な人びとを横断的につなげていく役割を、家庭料理が担えるのではないかと考えたのです。野菜がたくさんとれてバランスが良くて、けれど飽きさせない家庭料理、旬の鎌倉野菜、ていねいに作られたしょうゆや味噌などの調味料、からだがよろこぶそんな料理は、どのレイヤーの人にとっても「共通な」ものがある。

─どこにでもあるメニューだけど、鎌倉野菜や特別な調味料など、「鎌倉」の「コバカバ」でなければ食べられない特別感もある。だから観光客もあえて鎌倉に来て鯖の文化干し定食をいただくのでしょうね。

内堀さん:いまはコロナ禍で積極的には行えていませんが、私自身が音楽活動をやっていたこともあり、ここが食堂兼ギャラリーのような役割を担いながら、毎月地元のアーティストの展示会やライブやワークショップを行っていました。

食事だけでなく音楽やアートをきっかけに、コバカバがさまざまなレイヤーの人が行き交う場所となっていました。

─コバカバがコミュニティカフェとして機能しているということですね。

 

■どうして朝食屋?

内堀さん:この店は実家の「小林カバン店」を改装して2006年にオープンしました。初めは母と姉とでやっていましたが、形を変えながらいまのコバカバにたどりつき、現在は私と数人のスタッフで運営しています。

─初めは「朝食屋」ではなかったのですか?

内堀さん:はい。家族で作る家庭料理の食堂のあと、地域の女性たちによる家庭料理を日替わりで出すスタイルにシフトした時期もあります。鎌倉は移住者も多くて、いろいろな出身地の人がいるのですよ。出身地が違う人が、日々のごはんを出せる家庭料理のコミュニテマーケットのような形を模索していました。その日手に入る食材を使って「ライブ」でごはんを届ける取り組みをしていました。

─とてもおもしろいアイデアですね。

内堀さん:ただむずかしさもあって。みなさんがアルバイトで取り組むなかで、は、臨機応変に料理を作るということにハードルがあり、当然ムラも出てきてしまいました。でも、鎌倉野菜が多様なニーズにこたえることで生まれてきたように、ここでも「それもおもしろい」と受け止めて、2017年までこのスタイルでやってきました。

―そしてそのあと、2017年から「朝食屋」にシフトするわけですね。どのような背景があったのですか?

内堀さん:コミュニティやつながりを作ったり、町を発酵させていく活動は好きでしたし、地域の豊かさや幸せを作っていくなかに、自分や家族の幸せがあり、そこに事業やお店もあると考えていたので、町や地域で何かしようという人がいれば、積極的に相談も受けていました。しかし、自分自身の家族の形が変わったりするなかで、コミュニティづくりのかかわり方に重圧を感じるようになりました。そして私はやはり、事業とコミュニティ活動はある程度切り離そうという意識になったのです。

だから朝食屋にシフトしました。

朝と夜は地元の人が多くて、昼に観光の人が多い。朝に観光の人が来てくれるとうまく観光と地元の人が交じり合ってくれるかなという考えがありました。

朝食屋から「鎌倉の朝」を伝えよう―鎌倉の野菜市場や鎌倉の朝の魅力が伝わるメニューを構成し、観光の人に意識を向けました。14時くらいまで働き、午後はコミュニティ活動をする。これは、江戸時代の人の働き方を参考にしました。「朝飯前」というように、午後まで働く人は貧乏人だという考えもあったそう。私の午後は、人とのつながりに目を向けたいと思ったのです。

ここは時間ではなく、時が寄り添う。

─「鎌倉の朝」言葉の響きだけでも風情があります。鎌倉を訪れた人にとっては体験したい魅力ですね。そこを切り取って観光客へ伝えつつ、地域の魅力を発信する時間軸もしっかりと設ける。これが朝食屋へシフトした理由なのですね。

内堀さん:もう少し言うと、コバカバは「鎌倉の朝」の魅力を伝えながら、「時間」を伝えていきたいと思っているのです。以前は鎌倉という「場所」に目が向いていたけれど、だんだんと場所ではなくて「時間」に意識が向き始めました。鎌倉を訪れる人は、ここに大仏があるから、八幡宮があるから来るのではなくて、何かちょっと違った時間の流れ、いわゆる鎌倉時間と言われることもあるけれど、癒されるとか、元気が出るとか、落ち着くとか、そんな時間の魅力を求めて来られるのではないかと思うのです。だから朝食屋にシフトするタイミングで、ここの時間を伝えていこう、「朝だよ」と伝えるために朝食屋をやるのだと。

─入口にある「おはよう、かまくら」を通じて、鎌倉の時間を感じてほしいという思いがあるのですね。

内堀さん:はい。しかし伝えたいのは、約束をしたり人と合わせたりする「計る時間」ではなく、「感じる時間」のこと。たとえば「ふきのとうが出た」とか、季節を感じる時間のこと。

─「感じる時間」ですか?

内堀さん:私もそうですが、現代人はつねに時間に追われています。だから、昼は活動して夜は休み、秋は秋らしく冬は冬らしく、自然に過ごすということがむずかしい方が大勢います。町は常に明るい状態にあり、それが当たり前になっている。でも本当は、自然のリズムのなかで進化成長していくことが居心地よくてしっくりくるのではないでしょうか。

鎌倉は文学とか絵画とか芸術的なものがいろいろあるけれど、自然の巡りのなかに自分を感じことができる場所でもある。コバカバで「時間」を感じて、世界が美しいとか、見過ごしてしまうようなことが見えるといいなと思います。

─コバカバの食材からも「感じる時間」は伝わってきますね。

内堀さん:はい。おみそ汁や浅漬けの野菜は、コバカバのそばにあるレンバイ(鎌倉市農協連即売所)で毎日旬の野菜を仕入れます。旬の鎌倉野菜を通して時を伝えるのだ!という勝手な使命感です。

─コバカバのFacebookやInstagramには、店のメニューやお店の様子の写真があまり載っておらず、レンバイの彩り豊かな鎌倉野菜や季節の移り変わりを示す「二十四節気」に関する投稿がほとんど。これもまた、コバカバの「感じる時間」の発信なのですね。

内堀さん:お。よく見ていただいていますね。うれしいなぁ。

鎌倉の朝や季節を感じるレンバイの野菜たちの写真を通して、「時」を伝えたいと発信しています。またコバカバでは「地球暦的生活」という暦のワークショップも開いています。地球暦とは、季節を円型にめぐる捉え方です。季節の感じ方も変わってくるかもしれませんよ。

「おはよう、かまくら」そして、いってらっしゃい。

─鎌倉に来て、「時」の概念を意識するとは思ってもいませんでした。でもじつは、お話をうかがう前―お食事をいただく段階で、時間の流れがゆっくりと過ぎるのを感じていました。ふだんの生活で目にすることの多いメニューなのに、一つひとつの食材に豊かな自然を感じました。旬の野菜だから?やさしい味のお味噌だから?鎌倉という場所だから?食事をいただくこの空間は、時間がゆっくりながれている感覚でした。とても不思議です。

内堀さん:鎌倉にはぜひ時間を感じに来てほしい。ここへ来て、時間を感じたり、時間の流れを俯瞰してみたりしてほしい。そして鎌倉から自分の場所へ戻るとき、コバカバが「いってらっしゃい」と送り出せる場所になれたらと思います。地球は動き続けているから、「時」は、みなさんの場所でも感じられるはず。ちょっと立ち止まって月を見るとか、「感じる時間」を持ち帰っていただきたいですね。

─コバカバはさまざまなレイヤーの人々を横断的につなげる「ハブ」のような場所だと思っていましたが、じっさいは大きな港のような存在なのかもしれませんね。コバカバに来て、「時」を感じ、アップデートされて自分のコミュニティに帰っていく。

内堀さん:観光に来て自分の町に戻る人を送り出すだけでなく、ほかの土地から鎌倉へ移り住んで来る人たちにとっては、鎌倉の入口のような存在になりたいと思っています。じっさい、ここを利活用したトライアルを経てから鎌倉に店舗を出すなど、コバカバは町に溶け込む前のきっかけの場所になっていたりもします。

─観光客も、これから鎌倉に入る人も、コバカバという港で”整え”られ、「いってらっしゃい」と彼ら自身のコミュニティへ送り出してもらえるのですね。

内堀さん:コバカバは「ここで何かしてみたい」という人が集まってくる場所でありたいとも思っています。いまは惜しまれつつ閉店したお店が、お店は続けられないけど料理だけ作ってテイクアウトで出すということもしています。

コバカバという場所を活用しながら、彼らのコミュニティがいまも鎌倉で息づいているのです。

 

朝食屋COBAKABAの店舗情報
店名 朝食屋COBAKABA
席数 2名席×4 カウンター席4名
個室 なし
電話番号 0467-22-6131
最寄り駅 JR鎌倉駅
アクセス JR鎌倉駅 東口より徒歩5分/駐車場なし
住所 神奈川県鎌倉市小町1-13-15
営業時間 7:00〜14:00
定休日 水曜日
ホームページ http://cobakaba.com/
食事の提供 あり
レンタルスペース 応相談
レンタル棚ショップ なし
Wi-Fi なし
充電 お問い合わせください
プロジェクタ投影 なし
おむつ替え設備 なし
ベビーカー入店
離乳食 なし(お湯の提供はあり)
ベビーシート なし
車いす着席
車いす手洗い なし

パルシステム神奈川からのお知らせ

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

カテゴリー

あわせて読みたい