コミュニティカフェ
- 《食》を通したつながりを大切にする場所 多世代交流スペース 宮ノ前テラス(横浜市泉区中田東)
横浜市営地下鉄ブルーライン「中田駅」。1999年に地下鉄が開業後は、駅前の長後街道沿いに商店が立ち並びました。その大通りから目的地に向かう道に入ると、とたんに閑静な住宅街となり、畑や公園も見え始め、高い建て物が少ないので空が広く感じられました。
宅地開発による新旧住民が混在するこの地域で、住民同士の交流が生まれる場所となっているのが、本日ご紹介する「多世代交流スペース 宮ノ前テラス」(以降、宮ノ前テラス)です。ここでは、フードパントリーやこども食堂など生活に困窮している方への支援をはじめ、さまざまな「食」を通した地域とのつながりづくりや活動を行っています。今回は、宮ノ前テラスの運営母体 NPO法人宮ノマエストロ理事長の高橋裕子さんに、宮の前テラスの活動やその魅力についてお話をうかがいました。
■予約必須!!地元食材の本格ランチ
-本日はよろしくお願いいたします。
高橋さん:よろしくお願いします。
-この辺りは地下鉄の開業にともない新しい住民も増えたのではないでしょうか?
高橋さん:そうですね、この地域は昔から住み続けている高齢者世帯が多いのですが、新しく若い世帯が移り住むようになりました。にぎやかになるいっぽうで、若い世帯の方たちは町内会に加入しないことも多く、お互いの顔を合わせる機会がなかなかありませんでした。ですから、新旧住民の橋渡し的な存在になれるようにと、「多世代交流スペース 宮ノ前テラス」をオープンしました。
-宮の前テラスの活動の中心に「食」があるそうですね。まず、ランチのことをお聞きかせください。Facebookなどでたくさんの食材が使われた色あざやかなランチの写真を拝見しました。ランチメニューも豊富でとても興味深いです。
高橋さん:ありがとうございます。現在、日曜日から火曜日の3日間が「日替わりランチ」で、主婦メンバーのみなさんが作っています。水曜日は「(天ぷら付き)手打ちそばランチ」。そばを打つのは全員男性メンバーです。木曜日は、味も見た目も豪華な「美代子さんのスペシャルプレートランチ」となっています。金・土・祝日はおやすみです。日替わりランチは700円(税込)で、水曜日と木曜日はこだわりランチということで900円(税込)になっています。
手打ちそばとスペシャルプレートランチ
-「手打ちそばランチ」の水曜日は男性が活躍する日なのですね。
高橋さん:男性はなぜか退職後に「そば打ち」に目覚める方が多いみたいです。しかしうまく打てるようになっても、その腕を披露する場がないそうなのです。ですから、そば打ちが上達した男性メンバー4名が、週替わりでそばを打ってくれることになりました。ランチ名にはそば打ちしてくださる方のお名前がつくのですよ。はるつねさんが打ったときは「はるつね蕎麦」になります!天ぷらは主婦メンバーのみなさんに揚げてもらっていますが、そばつゆは、そばつゆ専任担当がいるのですよ。
-そばつゆ専任担当ですか!?もしかしてその方も男性ですか?
高橋さん:そうです。こだわりをもって、国産かつおぶし・利尻昆布・どんこなどの材料を吟味して仕込んでくださるのでとてもおいしいですよ。
-そばもつゆも専門店に負けない味なのでしょうね!木曜日のスペシャルプレートランチはいろどりがきれいで、まるでプロの料理人が作った料理みたいです。
高橋さん:木曜担当の美代子さんはイタリアンレストランを経営されていた方なので、本格的な味が楽しめます。イタリアンだけでなく和食やアジアン料理など、いろいろとアレンジをきかせて作ってくれて、どのランチもとてもおいしいのですよ。
-へぇーすごい!いろいろな味が楽しめる木曜日はまさにスペシャルですね!!いっぽうで、日替わりランチのメニューもバリエーション豊かですよね。メニューはどなたが考えているのですか?
高橋さん:日替わりランチは、わたしが決めています。可能なかぎりこの地域で採れる旬の野菜を取り入れ、1回の食事で10食品群をすべて摂れるようにバランスを考えながら作っています。
テイクアウトランチはどれもおいしそう!
-泉区には野菜や果物の直売所が数多くありますが、ランチにも新鮮な野菜が使われているのですね。
高橋さん:はい。この地域では、横浜市内産の「はま菜ちゃん」が採れますし、ほかにも梨や栗、柿などの果物も豊富です。あと「はまぽーく」という横浜ブランドのおいしい豚肉もあるのですよ!
-野菜・果物・肉、食材がとても豊富なのですね!身近な場所ですと生産者の顔も見えますし、安心感もありますよね。地産地消に取り組むことで地域の方との交流も生まれますし良いことだらけだと思います。
高橋さん:そうですね。こども食堂を運営していることを知った生産者から「子どもたちのためにどうぞ」と野菜などをサービスしていただくこともあるのですよ。
■ここは、支援者自身のたいせつな場所
こども食堂(お弁当)の準備をしている様子
-毎月第1・第3水曜のこども食堂で提供しているお弁当は、ごはんもおかずもたくさん入って栄養満点ですね!
高橋さん:現在こども食堂はテイクアウトのみで対応しており、1食300円(税込)のお弁当を80食用意しています。お弁当ですと家族の分も予約される方がいらっしゃるのであっという間になくなってしまうのですよ。予約開始から3分くらいで売り切れです。
-3分??まるで人気アーティストのチケットみたいですね!確かに「家族の分も」ということですとあっという間なのでしょうね。お弁当80食分ですとごはんもかなりの量を炊くのでは?
高橋さん:2升用の炊飯器を3台使用して6升分炊いています。1升が10合ですから60合のごはんということです。これでも足りないくらい4台目の炊飯器の購入を検討しているところなのですよ。
2升炊きの炊飯器が3台も!
-60合とはすごい量ですよね。この大量のごはんやおかずを容器に詰める作業もたくさんの人手が必要になりますね。テイクアウトだと容器などのコストもかかるのではないでしょうか。
高橋さん:じっさい300円では赤字なのですが、こども食堂は社会貢献だと思って続けています。調理や詰める作業は子育て世代のお母さんや学生メンバーががんばってくれていますが、ここが作っているなかま同士の情報交換の場にもなっています。また、子育て世代のお母さんは子どもを連れて来ることも多いので、親が誰かのためにごはんを作っているという姿も見せることができますし、その子ども同士がいっしょに勉強したり遊んで待っていたりしています。
-こども食堂としての機能だけでなく、ボランティアをしているおとなや子どもにとっても交流場としての役割もあるのですね!
高橋さん:そうなのですよ。いろいろな人と接することができる場に連れてくることで、子どもが社会性を得られるのではないかと思っています。
■《食》をまんなかに。
NPO法人宮ノマエストロ理事長の高橋裕子さん
-こども食堂と同じようにひとり親や生活困窮者への支援として、月に一度フードパントリーを開催されていますが、いつ、どのような形で開催されているのでしょう。
高橋さん:毎月第3週または第4週の日曜から木曜の計5日間に開催しています。対象はひとり親世帯と生活困窮者限定で、フードバンクからの支援物資を袋詰めして対象のみなさんに配布しています。フードパントリーを始めたころの配布先は10組くらいでしたが、現在は50組を超え、市外にお住まいの方もいらっしゃいます。(詳細はホームページをご覧ください。)
-市外からも支援を受けに来るということは、困窮している方がそれだけ多いということでしょうね。しかし50組を超えるセット数を準備するのはとてもたいへんな作業ですね。
高橋さん:はい、支援していただいた食料や物資はすべて仕分けして袋詰めにするので、4人で行っても3時間はかかってしまいます。フードパントリーは物資を置く場所と人の力がないと続けられませんね。
-このような活動はボランティアのみなさんのがんばりがあるから継続できるのですね。
高橋さん:フードバンク以外にも、わたしたちのようなフードパントリーやこども食堂を運営する団体を支援してくださる企業も数多くあり助けられています。賞味期限が近づいた商品を、食品ロスとしないためにも提供してくださるのです。たとえば、先日は某大手スーパーマーケットから大量のパンをいただきましたし、外食大手企業からお米を支援していただいたこともあります。
-飲食関係の企業が多いのですね。企業側にとっても社会貢献活動の一環になりますし、廃棄コストも削減できるというメリットがありますよね。
高橋さん:お米を支援していただくことが多いのですが、600キロ、300キロ、120キロと続いたことがありました。それを3キロずつ小分けするのがまたたいへんな作業で・・・。ほぼ1トンですからね!
-1トンとはすごい!!でもこの活動が、生活困窮者支援とフードロスに貢献しているのですね。メンバーのみなさんはとてもたいへんですが、ぜひこの取り組みが続いていくといいですね。
高橋さん:わたしたちは月に一度、子どもからおとなまで楽しめる《みやマルシェ》というあおぞら市を開催しています。地域交流の意義もさることながら、みやマルシェの収益金はこども食堂やフードパントリーの資金となりますのでとても力を入れているイベントのひとつなのですよ。みやマルシェでは、この地域の新鮮野菜や高齢者のハンドメイド品、駄菓子やおもちゃ、子ども服のリサイクル品の販売や、300円カレーなどのお得なランチもありにぎやかな一日となります。
-多彩なランチ、こども食堂、フードパントリー、そしてみやマルシェ、宮ノ前テラスは《食べること》がいつも人をつなげているのですね
高橋さん:人は誰でも食事をしますからね。「食」があれば自然と交流が生まれる場となるのでしょう。
認知症予防プログラム「思い出カフェ」というサロンでも、参加をためらう方に「ごはんを食べに行こう」とお誘いすると来ていただけることがあります。コーヒーやケーキをいただきながらお話をさせていただいていると、「一日誰ともしゃべらなかったから、ここに来てよかった」と言ってくださる方もいらっしゃいますから。
-人と人の間にある見えない距離を、「食」が自然につないでくれるのですね。《食》をまんなかにすることで、人と人、人と地域がやわらぎ、つながりやすくなるのがわかりました。
棚ショップにはハンドメイド品が並んでいます
ベビーカーや車いすでも入れるバリアフリー対応トイレ
移りゆく季節を感じながら、おいしいランチやコーヒーを楽しめます
コーヒーまたは紅茶とケーキのセットは500円!
宮ノ前テラスのすぐ横には公園があり、天気の良い日はテラス席でランチをいただくのもおすすめです。今回は「食」を中心としたお話でしたが、宮ノ前テラスでは、横浜市介護予防・生活支援サービスである「エンジョイエイジング(麻雀・回想法・和み庵など)」や運動不足にならないための「ヨガ教室」、初心者高齢者対象の「スマホ教室」など、多世代が楽しめるプログラムを随時開催していますので、ご興味のある方はぜひホームページやFacebookをチェックしてみてください!
多世代交流スペース 宮ノ前テラスの店舗情報
店名 | 多世代交流スペース 宮ノ前テラス |
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席数 | 室内 4名席×5、2名席×1 テラス 4名席×2 |
電話番号 | 045-884-0246 |
最寄り駅 | 横浜市営地下鉄ブルーライン「中田」駅 徒歩8分 |
アクセス | 戸塚バスセンターより戸61系統上飯田車庫行乗車、中田小学校入り口下車徒歩7分/駐車場 5台 |
住所 | 横浜市泉区中田東4-59-41 |
営業時間 | カフェ 日曜~木曜日 9:00~14:00 ランチ 日・月・火・水・木曜日 11:00~13:00 こども食堂 第1・3水曜日 17:00~20:00まで(現在テイクアウトのみ) |
定休日 | 金・土・祝日 |
ホームページ | https://miyanomaesutoro.amebaownd.com/ |
食事の提供 | 日・月・火・水・木 (予約優先) |
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レンタルスペース | 利用可能時間、料金はお問合せください。 利用目的により料金が変わるので詳細はお問い合わせください |
レンタル棚ショップ | あり(1000円~2000円) |
Wi-Fi | あり |
充電 | あり |
プロジェクタ投影 | あり(1回500円。PCなどの機器はお持ちください) |
おむつ替え設備 | あり |
ベビーカー入店 | 可 |
離乳食 | なし (お湯の提供可) |
ベビーシート | あり |
車いす着席 | 可 |
車いす手洗い | 可 |
編集部メンバー
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ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。 |
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家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。 |
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好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。 |