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輝く女性インタビュー

「なぜ彼女たちはプロジェクトに参加するのか」【後編】―ラジオ制作プロジェクト【ママ夢ラジオ♡】というママたちの新しい価値がひろがっている!ママ夢ラジオ♡ 厚木・海老名エリアのみなさんのインタビュー

ママ夢ラジオ♡運営チーム担当 中野あゆみさん(左)、竹岡望さん(右)

ママ夢ラジオ♡運営チーム担当 中野あゆみさん(左)、竹岡望さん(右)。

ママ夢ラジオ♡は、元看護士の竹岡望さんが、専業主婦であった2018年にスタートさせたママたちによるラジオ制作プロジェクト。前編では、竹岡さんがラジオ番組を作るぞ!と決心してから、24時間以内に23人の仲間を集めた逸話や、2019年6月からオンエアを開始した厚木・海老名エリアメンバーのみなさんが、ママ夢ラジオ♡への参加を決めた理由のほか、プロジェクトがスタートしてからたった1年で、神奈川、静岡、鹿児島、大阪、福岡など全国へ広がりみせているママ夢ラジオ♡の現状など、興奮で胸が弾むお話をうかがいました。

ママたちの関心と共感を集め、全国各地に新たな拠点や仲間が増え続けているママ夢ラジオ♡。後編では、なぜママ夢ラジオ♡が、たった1年でここまでの成長を遂げ、今も止まらぬ勢いで躍進しつづけるのか、その秘密に迫ります!

聞き手:たいせつじかん編集部

前編はこちら:https://www.taisetsujikan.com/?p=982

■企業の常識は当てはまらない!ママ夢ラジオ♡の強さのヒミツ

ママ夢ラジオ♡ロゴ

―2018年に東京・渋谷のクロスFMで始まったママ夢ラジオ♡が、1年間で全国7カ所のラジオ局に広まりました。この勢いは、どこから聞いても「驚き」のスピードです。しかし、その前に、スタートしてたった1年で、外部へと拡張させることができる「プロジェクト体制」や「ノウハウ」を築き上げたという点がすごいと思いました。

中野さん: 昨年、渋谷クロスFMにて、ママ夢ラジオ♡の放送が始まる時点では、体制もノウハウも見切り発車でスタートしました。30パーセントくらいで始めて、今でも60~70パーセントくらいしか固まっていないかなと思います。でも、私たちはそれをOKだと思っているんです。「このルールは必要だよね・・・」ということがメンバーから声が挙がったら、初めてそのことについて考えることにしています。もちろん、最初はある程度の担当を決めましたが、これは必要だね、これはいらないねということを、みんなで走りながら決めるというスタンスでこの1年やってきました。だから、これからもいろいろ変化していくのだと思います。

―プロジェクトの中身が6~7割程度の完成度でありながら、非常に組織的な動きをされている印象を受けます。この理由は何だと思いますか?

中野さん:ひとつ挙げるとすれば、私たちの関係性は、ピラミッド型の組織ではないということだと思います。私もこれまでは、ピラミッド型の組織しか知らなかったので、最初はなんでこんなにうまくまわっているのか不思議だったのですが(笑) ピラミッドだと上下関係ができてしまい、「やってください」、「わかりました」、「できません」ということになってしまいますが、私たちにはこれがない。とにかく横につながり、気づいた人がやる、やりたい人がやるというスタンスを共有できています。ブログを更新したい人が更新し、台本は作れる人が作り、収録当日も来れる人が来る。

―さらりとおっしゃいますが、全員がモチベーションをもって行動するなんて、とても難しいことですよね。

中野さん:そうですね。ただ、私たちは「安心安全なコミュニティ」を作ることを常に意識して、メンバーがやりたいことを言える場を大切にしながら活動しています。だから、「それ、だめだよ」、「それ、やめてね」というルールを必要最低限にして、みんなのやりたい気持ちを尊重できるコミュニティであろうとしています。

だから、ママ夢ラジオ♡の元祖・渋谷で運用しているルールをほかの地域に対して押し付けたりもしません。統一ルールを作ってしまうと、「うちそういうんじゃないんだけどな」というのが出てくるものです。渋谷と厚木、東京と鹿児島、住んでいる場所も参加する人もまったく違うじゃないですか。各チームで必要と思ったことを、最低限度決めていく。ただ誰かを傷つけるようなことはしないでね、公序良俗に反することはしないでねということは規約に書いていて、どのチームも「安心安全なコミュニティ」が保てるように、運営担当が関わっているという感じです。こんな環境のもとだから、メンバーは気持ちよく活動できているのではないかと思います。

―うーん!すばらしい!PTA活動ではここまでうまくまわりませんよね!?

山田さん:まわりませんねぇ(笑)

中野さん:PTA活動との違いをいまだに考えることがあるのですが、いちばんの違いは、やらされてるのか、それともやりたくてやっているかという点ではないかと思うのです。

ママ夢ラジオ♡のメンバーは、自分で決めて、自らお金払って参加しています。つまり、「ラジオ番組をやりたい」という同じ方向のベクトルを、みんながもっているのだなと思うのです。

―「ラジオ番組を作りたい」という共通の目的に向かって、メンバーは自律的に動けるということですね。

中野さん:はい。でも、ベクトルの方向は同じにしたいのだけど、その大きさや長さは、人によって違っていいよというスタンスを大事にしています。たとえば、渋谷のチームは20数名いますが、みなさんの関わり方は多種多様。「私は出演する当日だけ行くわ」という人もいます。片や、「ブログも更新します」、「台本もやります!」というメンバーもいます。これは、やらされていたら不公平という話になりますが、みんなやりたくてやっているので、ずるいとかずるくないとかいう話になりません。関わり方、関わりの濃さは自分次第。ベクトルの方向が同じであれば、長さも太さも自分自身で決めて、その違いを、私たち全員がOKとしているのです。

―この共通意識が、安心安全なコミュニティによって支えられているということですね。安心安全なコミュニティを心がけることで、メンバーが思いを発言できる場ができ、メンバーの「やりたい」思いに応えられる組織に至っている。これはもう、運営メンバーの力量といえるのではないですか?

中野さん:運営メンバーは5人いますが、コミュニティの運営に興味がある人たちが「運営担当」にまわっただけ。当人たちは、楽しみながらやっているのだけれど、企業や大きなママ団体からは「どうやったらそんなにうまく安心安全なコミュニティが運営できるの?」と講演を依頼いただくこともあり、私たちの組織運営方法は、非常に興味深いこととして捉えていただいているようです。

おかげさまでこの1年、運営メンバー内で、もめたり、ケンカしたりということもありませんでしたし、運営メンバーと各地のメンバーが対立するようなことも起こっていません。そういう意味では、ママ夢ラジオ♡の組織運営の「やり方」は、新しい考え方なのかもしれませんね。

■“理念”は共有してません(笑)

ママ夢ラジオ♡取材の様子

パルシステム神奈川ゆめコープ担当者への取材の様子。この日録音された音源が、放送に使われました。

―少しいじわるな質問になるかもしれませんが。ベクトルの方向性が同じであれば、その長さや太さはその人次第でいいよという点は、役割分担(作業分担)という面では、メンバー間のギャップをうまく埋められているようですが、「価値観」という点でのメンバー間のギャップはありませんか?

田中さん:それぞれの生き方とか価値観は違うので、番組を作っていく上でも、多少意見がずれることはあります。でも、それをあきらめずに、みんなで話し合ってすりあわせていく、まとめていくというのは意識してやっていますね。

―では、ママ夢ラジオ♡に対して抱く「理念」という点ではいかがでしょうか?投資をしてまでも作りたいと願ったママ夢ラジオ♡を通して、みなさんが届けたいことや成し遂げたいことは、メンバーそれぞれで違っているのではないでしょうか?活動の根源となる「理念」がずれていることは、その後の活動に対する、メンバーの熱量にも影響してくると思いますが。

山田さん:理念について話し合ったことがない(笑)。私はママ夢ラジオ♡を始めるとき、ここに集まったみんなが仲間になればいいなと思いました。同じ志をもってがんばった仲間って、ずっと仲良くやっていけるんじゃないかなと思いましたし、育児談義とか真剣に話したり、正直に話したりできるような、そういうつながりがあったいいな・・・と思いました。でも、ほかのメンバーたちが、この思いに応えなければならないわけではないんです。

中野さん:つまり、理念を統一していないということです。もし、理念の統一をしてしまったら、その理念からずれた人は排除されてしまう。ママ夢ラジオ♡には、「ママの夢を形にする」「ママの発信を文化に」というコンセプトがあります。やってみたいことを、ママ夢ラジオ♡のメンバーがやってみて、それを見たお母さんたちのなかで、やってみたい方がいたら、その人たちを応援できるように循環させていくというコンセプトです。だから、ひとつの理念だけを追いかけるのではなく、多様な理念を受け入れる、多様な夢を受け入れる「インクルーシブな(包括的な)関係性」を大切にしています。

田中さん あっち行ったり、こっち行ったりしたっていい(笑)

山田さん:全員が一致できる大きな理念で、ゆるやかに束ねている感じですが、ママ夢ラジオ♡に対する熱量は、みんな同じように思います。

小林さん:今はみんな必死に走っている感じ(笑)なので、私もみんなの熱量は同じように感じてますね。

■ママ夢ラジオ♡で得る「ママ以外の”何者か”である実感」

ママ夢ラジオ♡渋谷クロスFMの放送ブースの様子

ママ夢ラジオ♡渋谷クロスFMの放送ブースの様子。こんなたくさんのママたち、みんなすてきな笑顔ですね。

―前編でもおうかがいしましたが、ママ夢ラジオ♡は半年間のプロジェクトなんですね?        

中野さん:そうです。半年後は継続もできますし、そこで終わる人もいます。いずれにしても、新しい期になれば、新メンバーを募集して、新しいチームでスタートしますので、現在も各地のチームでメンバーを募集しています。

―本当に、いろいろな地域でママ夢ラジオ♡プロジェクトが立ち上がっていますが、ここでも渋谷や厚木・海老名エリアと同様に、いろいろなママたちが参加しているのですか?

中野さん:地域によって特色はありますが、さまざまなママたちが参加しています。鹿児島はすでにラジオ番組をもっているパーソナリティの女性が、ママ夢ラジオ♡を知って「やりたい」といってくださいました。だから、こちらはもう、おまかせ(笑)。福岡の天神地区では、バリバリの起業家ママさんたちがプロジェクトを興しています。

―プロジェクトの運営がうまく進んでいるのは、前掲のインクルーシブな関係性に寄与するところが大きいようですが、距離が離れているメンバーと意思疎通を図ることは、なかなか難しいのではないですか?

中野さん:基本はオンラインでのやりとりをするのでフォローもオンラインでやります。

メッセンジャーだったりLINEだったり、場合によってはZOOMという遠隔地との会議システムを使ったり。全部のチームのミーティングに入れてもらっています。

―全国のすべてのチームをフォローするとなると、かなり時間をとられますね。運営メンバーさんにとって、ママ夢ラジオ♡は、すでに利益の得られる事業として成り立っているのではないですか?

中野さん:仕事になるといいのですが、いまはまだチラシも自腹。ここに来る交通費も自腹です(笑)。まだまだお仕事にはなっていないのが正直なところです。でも、ママ夢ラジオ♡が生み出した「ママたちの夢をママたちが叶える新しいつながり方」を、いろいろな企業や地域団体の方に評価していただき、講演に呼んでいただいたり、スポンサーについていただいたりすることが増えてきました。静岡では、パルシステム静岡さんがスポンサーについてくださり、チラシを入れさせていただいたり、パルシステムさんのCMを作らせていただいたりしています。福岡では、ソース会社さんがスポンサーについてくださっています。このように、ママ夢ラジオ♡という組織にスポンサーがつき、企業や地域団体さんとさまざまなことを企画・開催して、みんなの負担も軽減したらいいなと思います。これから1年2年かけてやっていくつもりです。

―ママ夢ラジオ♡をはじめて知った読者のみなさんに向けて、メッセージをいただけますか?

中野さん:「私にもできるかな」というママへワクワクを。「私もやってみたい!」というママへ挑戦と発信の機会を提供するプロジェクトです。ママ夢ラジオ♡を通して得られる仲間や社会とのつながりのなかで、ママ以外の何者かであることを実感してもらえたらと思います。また、近々横浜近郊のコミュニティFMにて、ママ夢ラジオ♡が立ち上がる予定です。ご興味のある方はぜひ、お問い合わせいただけたらと思います。

編集部のひとこと

編集長

かなさん

まったくの素人ママたちが、どうやってラジオを作っているのだろうと、非常に興味深く臨んだ今回の取材。じつは、どれだけパワフルなママたちが現れるのだろうとドキドキしていました。しかし、彼女たちに会って、じっさいに感心させられたのは、彼女たちのパワーではなく、「しなやかでゆるやかなつながり方」でした。肩の力が抜け、自分だけでなく、「ママの夢」を純粋に応援できる互いの関係性に、まぶしいほどの新鮮さを感じました。全国のママたちに、知ってもらいたい経験のお話でした。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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