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輝く男性インタビュー

【前編】ボクシングを21歳から始めて世界チャンピンまで登りつめた川嶋勝重さんインタビュー

元WBCスーパーフライ級世界チャンピオンの川嶋勝重さん

元WBC世界スーパーフライ級世界チャンピオン川嶋勝重さん

横浜にある大橋ボクシングジムで21歳からボクシングを始めた川嶋勝重さん。子どものころからボクシングを始める選手が多い中、とても異色な経歴の元世界チャンピオンです。安定した職業を捨て、ボクシングをするために横浜に引っ越してきた頃のお話から、世界チャンピオンになるまでのお話を振り返っていただきました。

ボクシングを引退されてからは、奥様といっしょにアクセサリー店「Ring」を経営されているお忙しい合間を縫って、こちらの失礼な質問も軽快な語り口で、苦しかったことも明るいお話にしていただきました。まさしく、笑いの絶えないインタビューでした!

ボクシング世界チャンピオンに対するイメージが変わってしまうかもしれません!何かに挑戦したい方には、背中を押してくれる言葉がたくさんあります。

ぜひお楽しみください。

聞き手:たいせつじかん編集部

■将来を考えるよりも今やりたいことをやる

笑顔を交えながら思い出を語る川嶋さん

ご自身でも世界チャンピオンになるなんて思わなかったと笑う川嶋さん

ー大橋ボクシング大橋会長のインタビュー時にお聞きした川嶋さんのエピソードにとても興味を持ちまして、インタビューをお願いしました。。突然のお願いにも関わらず受けていただきありがとうございます!

大橋会長はご自身も世界チャンピオンになり、また、たくさんのチャンピンを育てていらっしゃいますが、川嶋さんだけは世界チャンピオンになるとは、チャンピンになるまで思わなかったとお話されていました。

恐縮ですが、ご自身ではどうお考えだったんですか?

川嶋さん:そうでしたか。そもそも私自身も、ボクシングを始めたときは世界チャンピオンになるなんて思いませんでしたね(笑)

ーそうなんですね!ボクシングを始めるまでは超大手企業で安定した職業についていたとお聞きしました。まず、ボクシングを始めるまでのお話をお聞かせください。

川嶋さん:小さいころから、ボクシングの世界戦がテレビでやるときは必ず見ていたので、ボクシングは好きでした。でも、千葉の田舎で育ったので、ボクシングジムなんて近くにありませんでしたし、生で試合を見るチャンスもありませんでしたので、ボクシングは身近なものではありませんでした。

それでも、体を動かすことは好きだったので、ずっと野球をやっていて、社会人になっても続けていました。

ー野球少年だったんですね。

川嶋さん:そうなんです。就職先は、地元の千葉県の大手家電メーカーだったのですが、そこでも野球を続けていましたね。

ーでは、どのようにボクシングに転向されるんですか?

川嶋さん:ボクシングを始めるきっかけは、地元の友人から何年ぶりかに連絡があり、その内容が「横浜でプロボクサーになった。今度試合をするから見に来ないか?」というものでした。

そして、その試合を見たときに、生で見るボクシングに衝撃を受けたんです。スポットライトに照らされるリングと選手、パンチの当たる音などがテレビで見ていたボクシングとはまったく違ったんですね。

それで、僕もボクシングをやってみたいと思い、やろうと決めました。

ー会社を辞めて横浜に引っ越されるんですよね?ボクシングをするためなら会社を辞めなくても良かったんではないでしょうか…

川嶋さん:じつは、それと並行して会社から関西の職場に転勤をしてくれないかといわれていたんです。それも嫌だったということもありますよね(笑)

あと、千葉にボクシングジムがなかったので横浜に出ました。

ーでも、安定した生活を捨てての挑戦ですが迷いはなかったんですか?

川嶋さん:会社の上司や両親には反対されましたね。でも、仕事は30歳からでもできますが、ボクシングは若いうちしかできないですからね。僕は、明日死んでしまうかもしれない人生で何十年も先を考えてやりたいことをやらないということが嫌なんです。だから貯金とかもあまり好きではないです(爆笑)

ーおそらく、この考え方が世界チャンピオンになるために大きな役割を果たすような気がしますが、それはもう少しあとでお聞きしますね!

ジムに入ってからもなかなかプロテストを受けさせてもらえなかったんですよね?そもそも、プロテストは初めから受けようと思っていたんですか?

川嶋さん:僕の性格としてやるからには中途半端は嫌なので、ボクシングジムに入ったときからプロにはなろうと思って練習を続けていました。おそらく、ボクシング始めて半年から1年くらいの間に2回プロテストを受けたいと言って2回とも断られました。

そして、3回目のお願いの時に、アマチュアの試合に勝ったら受けていいよって言われて、その試合でKO勝ちしたんです。そうしたら会長もプロテストをOKするしかないじゃないですか。それで、プロテストを受けることができてプロになれましたね。

■目の前の目標を超え続ける

現役時代を語る川嶋勝重さん

将来を考えるよりも目の前の目標を超え続ける重要性を語る川嶋さん 

ープロテストに合格されてから世界チャンピオンになるまでどのくらいかかるんですか?

川嶋さん:プロテストまで1年と少しかかって、そこから世界チャンピオンになるまで9年近くかかっていると思います。

ーそうなんですね!ご自身ではその期間を長いと感じましたか?

川嶋さん:正直、自分が世界戦を戦って世界チャンピオンになるなんて考えていなかったので、当然目標でもありませんでしたから、長いと感じたり、やっときたという感慨深い思いもそれほどありませんでしたよね。

ーそうなんですね!では、プロになりたいという目標を叶えてしまってからはどのようなモチベーションで日々を過ごしていらしたんですか?

川嶋さん:簡単に言うと、先を見すぎずに目の前の目標に集中していたということです。たとえば、プロになりたてのころは、まずは試合をしたい。試合が決まれば、試合に勝ちたい。というようなことです。そうやって、一つひとつ進んでいくということですね。

ーなるほど。しかし、プロになり間もないころはボクシングだけでは生活はむずかしいかと思います。その間のお仕事はどうされていたんですか?

川嶋さん:当然、ボクシングだけでは食べていけないので酒屋さんで5年、米屋さんで3年間アルバイトしました。結局、ボクシングだけで食べていけるようになったのは、世界チャンピオンになってからでしたね(爆笑)

ー世界チャンピオンになるまで、ボクシングだけの生活はむずかしいんですね。。。

川嶋さん:僕みたいに、無名の選手はそうですね!エリートの選手は、スポンサーがついたりして食べていけることもあると思いますよ。

ー重なった質問になりますが、大企業の社員という肩書をすてて、プロボクサーになったことについてその時点でも後悔はなかったんですか?

川嶋さん:ありませんね。私にとっては、将来を深く考えて悩むよりも目の前の目標をかなえるほうがやりがいがありますし、明日生きていればそれでいいんです。積み重ねていく先に未来がありますから。

ーなるほど。大橋会長は川嶋さんがほかの世界チャンピオンと比べて、すばらしいポイントが、練習に対する集中力と、長い合宿でも最後まで続けられるからだの強さだって言っていらっしゃったんですが、これは川嶋さんのある種の楽観的な考え方がもとになっているんではないでしょうか?

川嶋さん:そうですね。たとえば合宿では、途中からみんなからだのどこかが痛くなったりするんですね。でも、僕は骨が折れてもいいやと思って合宿にのぞむので、最初はみんなに負けますが、最後には僕が勝っているんですね。これなら勝つのは当然ですよね(笑)

ー先を見すぎずに目の前の目標を一つひとクリアし続けることで世界チャンピオンに近いづいていくんですね。

■減量によって、試合に対する不安も恐怖も超えていく

川嶋さんの現役時代のポスター

川嶋さんの現役時代のポスター

ーでは、世界チャンピオンになれるかもしれないなと考え始めたのはいつ頃からなんですか?

川嶋さん:28歳で日本チャンピオンになったんですが、初めての防衛線をKOで勝ったあとにもしかしたら、世界チャンピオンになるれるのかなと思い始めました。

ーそこから、どのくらいで世界戦が決まったんですか?

川嶋さん:日本チャンピオンになってから2年後ですかね。

ー相手選手は、徳山選手※ですよね?当時から、強いチャンピオンとして有名な選手でしたが決まったときはどう感じましたか?

川嶋さん:何か奇跡的なことが起きないと勝てないだろうなと思いました。

※徳山 昌守(とくやま まさもり)選手。世界王座通算9回防衛を達成した元世界チャンピオン

ー楽観的に考える川嶋さんでもそう感じたんですね。実際に、世界戦に向かうボクサーの気持ちってどんな感じなんですか?

川嶋さん:実際は、負けちゃうのかなと思ったり、絶対勝てると思ったりと気持ちの上下が続きますね。

でも、減量が始まると試合のことをあまり考えなくなるんです。

当然、練習中は相手選手、試合のことを考え続けますが練習後はすぐ体重計に乗るんですが、その瞬間に減量モードに戻るので9:1くらいで食べることや飲むことに思考を持っていかれる感覚ですね。

ーじゃあ、減量があることで試合に対する不安、恐怖からは逃れられるという考え方もできますね!

川嶋さん:そうですね、食欲ってすごいですよね。試合に対する恐怖や不安なんて考える暇がなくなってしまうんですからね。

ー減量というと過酷というイメージですが実際はどんな感じなんですか?

川嶋さん:人によると思いますが、過酷だと思います。わかりやすくいうと、試合前の1週間は、チョコレート50gを2日に1回。さらに計量3日前からは、本当の飲まず食わずという感じです。減量はダイエットとは違って、グラムレベルでの話なのでそうなってきますね。

ーそうなんですね。食事は、チョコレート50gを2日1回は過酷ですね。

川嶋さん:その代わり、軽量が終わったあとは食欲が満たされて、一気に試合が現実のものになります。そうすると、急に緊張が襲ってきて、葛藤が始まりますね。

ーなるほど。ボクシングは、試合が始まるまでは常に自分戦い続け無ければいけないんですね。

■練習に向かう姿勢と、気持ちを強く持つことで常識を超える

川嶋勝重さんの右手

世界をつかんだ右手

ー川嶋さんがご本人で振り返って、なぜ世界チャンピオンになれたと思いますか?

川嶋さん:極論ですが、運命だったのかなと思っていますね。でないと、常識的に考えて21歳からはじめて世界チャンピオンにはなれないだろうと思います。

ー実際にその常識を超えたわけですよね。では、質問を変えてほかの選手と違ったところはどこだと思いますか?

川嶋さん:僕はセンスがないというか、ボクシングがうまくなかったので、常に考えながら練習に取り組むということと、気持ちで負けないことです。いうなれば、気合と根性ですね(一同爆笑)

ーそうなっちゃいますか!実際に、ご自身でボクシングが下手だなと思っていたんですか?

川嶋さん:下手だと思っていました。歴代の世界チャンピオンの中でも一二を争うくらいだと思いますよ。

ーそうなると、下手だとわかっていてリングに上がるのって怖くないんですか?

川嶋さん:いえいえ、練習の時に負けただけで、試合に負けるわけではないですからね。試合に勝てばいいです。ボクシングは結果がすべてですから。

ーその前向きな考え方はすごいですね。

川嶋さん:そうですかね。奥さんにはいつも落ち込みなさいって言われますけどね(笑)

ーでは、最後にボクシングの魅力はどんなところですか?

川嶋さん:リングの中で、1対1での真剣勝負に勝ってスポットライトを浴びたあの感覚を味わえることです。僕も野球をずっとやってきているのでわかるのですが、チームスポーツでは味わうことできないと思っているんです。なんとも言えない気持ちになるんです。

ーリングに上がるまでも、ずっと自分自身との葛藤に打ち勝って、いろいろなことを犠牲にしたうえでの勝利ですからなおさらなんでしょうね。

今日はありがとうございました。

★本編は、2部構成です。後編は、川嶋さんに直球勝負で一問一答と奥様のお話をお聞きしたアナザーストーリーをお届け致します。

編集部のひとこと

ライター

せいくん

世界チャンピオンになろうと思ってなったのではなく、目の前の目標を一つひとつあきらめずに超えていく先に世界チャンピオンがあったという川嶋さんのお話でした。

正直、インタビュー前は壮絶なボクシング人生のお話が聞けるのかと思い、インタビューにのぞみました。実際は、すべてがあっけらかんとして笑って話せるエピソードばかりでした。

しかし、ボクシングの世界チャンピオンは簡単なものではありませんから、笑顔の裏に隠された苦悩や葛藤は必ずあったはずです。後編ではそのあたりを奥様のお話も交えてお届けしたいと思います。

インタビューもとても前向きになれたインタビューでした。もっと今を楽しもうと思います!

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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