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パルシステムインタビュー

鶏ふんを使ったバイオマス発電とは!?十文字チキンカンパニーの壮大な挑戦の物語をお聞きしてきました!

発電のためのエネルギーといえば原子力、火力、水力などが思い浮かぶと思います。しかし岩手県に本社を置く株式会社十文字チキンカンパニーは、にわとりのふん‘‘鶏糞‘‘をエネルギーとしたバイオマス発電所を稼働させています。

なぜ、このような発電所を稼働させることになったのか?そもそも鶏糞でどうやって発電するのか?実際に発電所の稼働に携わるスタッフの方にお話をお聞きしてきました。

長年にわたり、地域資源循環型の「耕畜連携」(農業と畜産の連携)にこだわった十文字チキンカンパニーならではの視点と、東日本大震災が経緯となった壮大な挑戦のお話です。

ぜひ、お楽しみください。

聞き手:たいせつじかん編集部

十文字チキンカンパニーの皆さん

発電所の主任技術者の佐々木記代治さん(左)、期待のホープ 山岸滉さん(中央)、所長の古舘裕樹さん(右)

■大切に続けてきた耕畜連携の考え方

ー十文字チキンカンパニーは、パルシステムで大人気の「までっこ鶏」の産地ですね。養鶏がメインのお仕事かと思いますが、なぜバイオマス発電所を稼働させることになったのかという点を詳しくお聞かせいただきたいのです。

 まずは、十文字チキンカンパニーの養鶏について教えてください。

古舘さん:当社は、岩手県内で160か所の農場をもち、年間約5,000万羽を生産しています。国内シェアで7%、東日本ではいちばん大きな養鶏事業者です。

ーにわとりの育て方と、地域資源循環型の「耕畜連携」にこだわりがあるそうですね?

十文字チキンカンパニーの養鶏の様子

十文字チキンカンパニーの養鶏の様子

古舘さん:近年では、効率を重視したシステム鶏舎が増えていますが、当社の「までっこ鶏」ではシステム鶏舎を使わずに開放鶏舎で飼育をしています。また、全飼育期間において抗生物質を使用せず丈夫で健康な鶏を育てています。

システム鶏舎でないために、季節ごとの温度調整など非常にむずかしいことが多いので、生産現場には熟練された職人技が随所に見られるんです。

また、創業者が農家出身であったことから、耕畜連携を始めから重視していました。そのために、以前から鶏糞を肥料として販売をしていました。

しかし、1日400トン近くの鶏糞が出ますのですべてを肥料として販売することは難しく、一部は産業廃棄物として処理していました。

そのため、10年以上前から鶏糞の再利用の手法として、鶏糞をエネルギーとしたバイオマス発電は研究をしていましたが、経済合理性の観点から踏み切れない状況が続いていました。

■発電所に取り組むきっかけは東日本大震災とFIT法の成立

発電所所長の古舘さん

ーでは、実際にバイオマス発電所を運営する決断はどのタイミングだったのですか?

古舘さん:東日本大震災とFIT法の成立がきっかけです。

当社では、震災で津波など直接的な被害はありませんでしたが、営業を続けるうえでの被害は非常に大きく、エネルギーについて現状のままで良いのかという問題意識が会社全体に広がりました。

また、その後にFIT法(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の成立により、鶏糞をエネルギーとしたバイオマス発電所の運営が長期的な計画で赤字にならない程度の見立てがたったことで一気に話ができました。

ー当時は、みなさんは発電所については素人だったんですよね?

古館さん:そうです。私は、もともと鶏肉の営業をしていましたが、人事異動で発電所の所長をやってくれと言われました。人事異動ですので断る断らないの問題ではなくやるしかないなという気持ちでしたし、鶏糞のプロはたくさんいましたのでやればできるのではないかと思いました。

また、電力の技術的なことは佐々木がおりましたからね。本日も、技術的なお話は佐々木がお話します(笑)

ーそうなんですね!佐々木さんはどのような経緯でこちらに参画されたのですか?

主任技術者の佐々木さん

佐々木さん:私は、東北電力の火力発電所に勤めながら、月1度の十文字チキンカンパニーの発電所建設に向けたMTGに参加することから始まりました。

基本的なしくみは、火力発電所と同じですからある程度のことはわかりました。

ー建設開始から営業スタートまでどのくらいの期間がかかったのでしょうか?

バイオマス発電所外観

十文字チキンカンパニー バイオマス発電所の外観

佐々木さん:発電所の建設工事に2年間、さまざまな試運転や稼働テストの期間が半年ですので、合計で2年半くらいですね。

ー鶏糞を使って発電するしくみについて教えてください。

佐々木さん:簡単に言うと、ボイラーで鶏糞を燃やして蒸気を作り、タービンを回して発電します。火力発電はエネルギー源が石炭や液化天然ガスであるところを、当社はエネルギー源が鶏糞であるという違いです。

ーなるほど!でも、鶏糞は燃えるのですか?

鶏糞備蓄庫の様子

鶏糞備蓄庫の様子

古舘さん:木の熱量が約2,000kcalであるのに対して、鶏糞は約1,700kcalなのでみなさんが思っている以上に燃えるんですね。

佐々木さん:厳密には、鶏糞だけではなく鶏舎に敷いているおがくずなども含まれるのですが思いのほかよく燃えますね。また、当社は1日あたり約400トンもの量がありますから実現できているという点もあります。

ーとても、すばらしい理念のもとに実現されている発電事業ですね。震災後、エネルギー問題はさまざまな議論がなされていて、もっとこのような動きが広がればいいのかなと思いますが、実現はなかなかむずかしいでしょうか?

佐々木さん:経済合理性で考えるとなかなかむずかしいと思います。当社は、メイン事業の養鶏を中心として資源循環のサイクルの一部としてバイオマス発電所が位置しているので、経済的にはイーブンでも最低限産業廃棄処理費が回収できれば良いということがありますね。

ー今、どのくらいの量の電気を作り、どこに売電しているのですか?

古舘さん:24時間、365日発電所を稼働させて、約1万世帯分の電力を作っています。売電は、パルシステム電気さんに100%買ってもらっています。いつも、パルシステム電気さんにはもう少し作れないかと聞かれていますね(笑)

ー山岸さんは、初の新卒入社スタッフだとうかがいました。どうしてこちらを選ばれたのですか?

期待のホーム山岸さん

山岸さん:地元が岩手県で、さらに大学で電気を専攻していたので、電力関係の仕事につけたらいいなと探していて当社に出会いました。

鶏糞を使ったバイオマス発電所のしくみを聞いたときは私も画期的だなと思い、就職を決めました。

ー社会的な意義もありますし、とてもやりがいのある仕事ですよね。

山岸さん:友人に私の仕事について話をするとみんな興味をもってくれますね!

古舘さん:次世代を担う若手のホープですからみんな期待していますよ(笑) 

■バイオマス発電の電気を購入することが社会貢献につながる

ー本日お話をお聞きして御社の取り組みをもっとたくさんの方に知っていただきたいなと思います。ぜひ、最後にたいせつじかんの読者の方にメッセージをお願いいたします。

古舘さん:当社の電気を購入いただくということは、鶏糞処理にご協力いただいたこととなります。どこの電気を購入するかを選ぶことできますので、みなさまの選択肢のひとつになるとうれしいです。

佐々木さん:化石エネルギーと違い、再生可能エネルギーを使ったバイオマス発電は、事業を続けるかぎり燃料がなくなることはありません。養鶏を続けることで電気を作り続けることができます。私たちもできる限り続けていきたいですね。

■パルシステム電力からのお知らせ

パルシステム電力の志村さん

現在、パルシステム電力では、ご家庭の電気をパルシステムでんきに切り替えていただいた方にお得なキャンペーンを実施中です!十文字チキンカンパニーの発電所で作られた電気の購入はこちらです!

▼キャンペーンの詳細はこちらから

https://www.pal.or.jp/denki/inquiry.html

編集部のひとこと

ライター

せいくん

「発電所構内の清掃作業を体験させてもらってから、当たり前に使っていたコンセントの向こう側を考えるようになりました」これは、パルシステム電力の志村さんのエピソードです。

震災以降、エネルギー問題についてはさまざまな議論が重ねられていますので、自分なりに問題意識はもっていました。しかし、このインタビュー中に実際に行動を起こしている人や企業の情報を知らなかったことに気がつきました。

なぜ、こんなにすばらしい活動を知らなかったのだろうという思いと、ぜひ多くの方々に知っていただきたいという思いを強くもちました。

このインタビューをきっかけに、このような活動を多くの方に知っていただけるようになるとうれしいです。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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