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輝く男性インタビュー

世界に挑む若きロックダンサー・桑原多加良さんインタビュー

桑原多加良さん

みなさんは、ロックダンス(Lock Dance)をご存知でしょうか。1970年代に生まれたストリートダンスで、名前にLock(=鍵)があるように、スピーディで激しい動きの中に、突然ピタッと静止する動作があり、それが鍵をかけた様子であったことからロックダンスといわれるようになりました。今日は、国内の著名なダンスバトルはもちろん、世界の大会やさまざまなシーンで活躍するロックダンサー 桑原多加良(TAKARA)さんにお話をうかがいました。

聞き手:たいせつじかん編集部

■「笑撃!」あの恥ずかしさと悔しさから、ぼくのダンス人生がはじまった

Vovan and Funky J VS Revety [Finals] – Unlock the Funk 2018(カナダでの大会・決勝の様子)右側のベストスーツふたりがTAKARAさん所属チーム Revety

―今日はよろしくお願いします。ロックダンスの映像を拝見しました!これまで見たことのないダンスで、手足が見えないくらいの速さで踊っているところに、急にピタッと体が静止する。しかし次の瞬間には、またとんでもない速さで「動」のダンスが流れ始める。予測不能な展開のショーを観ているみたいで、目が離せませんでした。

TAKARAさん:初めて見ると独特の動きに驚くかもしれませんね(笑)

―近ごろではメジャーな大会で常に好成績をおさめ、ダンス界での注目度が非常に高いTAKARAさんですが、ダンスを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

TAKARAさん:ぼくがダンスを始めたのは高校のときですね。それまでは、小・中学校とサッカー少年でした。

―え!?そうなのですか?もともとダンスに興味があったのですか?

TAKARAさん:いえいえ。本当に偶然、たまたまです。高校の友人がダンスをやっていて、駅で練習するから「見に来たら?」と誘ってもらったのがきっかけ。高校に入って、サッカーもやめて、何しようかな~と思っていたところだったので、「それじゃあ」という感じで見に行きました。行くと、駅で本当に踊っているんですよ。しかも、バトル。衝撃でした。そしたら「やってみなよ」と声をかけられたので、やってみた。それが最初です。

―すごい!踊れたのですか!?

TAKARAさん:まあ・・・踊れないですよね(笑) すごく気持ち悪い動きになって、まわりは大笑いです。

―それでも、踊ったことがない人が、踊れる人にダンスで挑んでいくなんてすごいです!最初の一歩、よく踏み出せましたね!?

TAKARAさん:いざ自分が行くという時、「もう行くしかない!」と思っていましたね。メンタルは強い方なので行けたのかもしれないけれど、とにかく飛び込んだことが大事だったかな。でも、もちろん踊れない(笑)

笑われるし、なかには笑わないやつもいる!逆に気まずい雰囲気までして(笑) 悔しかった、とにかく、悔しかった。踊れないかんじ、悔しさ、恥ずかしさ、それが「うまくなりたい!」という感情にすぐに化けました。

―では、それから学校のダンス部などに所属されたのですか?

TAKARAさん:いえいえ。特にどこかに所属するということはなく、この仲間といっしょにストリートで練習です。勉強そっちのけで練習しました(笑) ダンスだけじゃなく、腕立てや筋トレをずっとやり続けた。うまくなりたいという気持ちがすごく強かったですから。これでメンタルもずいぶん鍛えられましたね。高校2年のころには、仲間うちではいちばんうまくなり、3年のころにはバトルの大会に出て勝てるようになっていて、このころには世界にも行けると思っていましたね。

ダンスをするTAKARAさん

■「世界一になれる!」強い思いの源泉は・・・

OLD SCHOOL NIGHT Vol.20出演時の様子

OLD SCHOOL NIGHT Vol.20出演時の演技

―ダンスを始めてたった2・3年で世界をめざす意識がめばえていたのですね。世界一になれると考えるようになったのはどうしてでしょうか?

TAKARAさん:普通そうはならないですよね。最初に味わった悔しさが原動力になって、がむしゃらにダンスの練習をしたら、やればやるほどうまくなった。このことが自信にはなりましたが、その一方で、サッカーをしていた時の、中学時代までの自分への悔しさも影響していると思います。サッカーは中途半端で、常に逃げていましたね。「長くやっている人、うまい人にはかなわない」「プロにはなれない」、サッカーをやっている時はこう思っていました。なんでそう思っちゃったのかな、そんなことないのに。変に思春期が重なったのかな。でも、どこかでずっと悔しさがありました。チャラついて、意識すらできなかった「一番になりたい」という気持ち。その悔しさが常にぼくを支えていた気もします。

―そんな悔しい気持ちを抱えているなかで、ダンスと爆弾的な出会い方をしてしまったわけですね。

TAKARAさん:そう、衝撃的な出会い(笑) でも、衝撃的な出会いはもうひとつありました。それは、ロックダンスユニットHilty & Boschとの出会い。じつは、ぼくが最初に始めたのはブレイクダンスだったのですが、始めてから2カ月くらいたった時、彼らの映像を見る機会があって、「なんだー?これ!?かっこよすぎる!!」と衝撃を受けたのです。それがロックダンスとの初めての出会い。もう、そこからはロックですよね。高校2年のときは、もっとうまくなりたくて、いまもぼくのダンスの師匠であるDA PUMPのKENZOさんのレッスンを受けるようになりました。彼らのようになりたくて、必死に練習しました。世界をこんなに早く意識できるようになったのは、KENZOさんたちのような、世界で活躍する人の存在を身近に感じていられたからだとも思います。

―そしてTAKARAさんは、その強い思いのとおり、さまざまなダンスバトルの国内大会を勝ち続け、世界の舞台に上がるようになりました。特に2018年にカナダで行われたunlock The Funk 2018の優勝は、大きな反響があったのではないですか?

UNLOCK THE FUNK2018優勝時の様子

UNLOCK THE FUNK2018優勝時のタイトルトロフィー (カナダ)

TAKARAさん:これは世界大会ではないのですが、ゲストバトラーとして出演した世界王者に勝って優勝した大会です。このほかにも、いろいろな海外の大会に出ましたが、Juste Debout (ジュストゥ ドゥブ=通称ジャスデブ)という世界最大級の2on2ストリートダンスバトル世界大会決勝にはまだ出場できていません。ジャスデブは、世界各地で予選が行われ、優勝したチームだけが、フランス・パリで開催されるFinalに出場できる非常に大きな大会です。残念ながら2018年の日本予選は準優勝、2019年はベスト4で、悔しい思いをしました。日本予選は非常にレベルが高い、でもこの世界大会でのタイトルをぼくらは狙っています。

ena & KARIN vs Revety【JUSTE DEBOUT TOKYO 2019】LOCKING SEMIFINAL 右側の赤シャツと黒のベストスーツがTAKARAさん所属チーム Revety

■違う個性が共鳴する― Revetyの強さ

Revetyのパートナー・YUIさんとTAKARAさん

Revetyのパートナー・YUIさんと

―大会の受賞の多くは、ダンスユニットRevetyでの活動のようですね。Revetyのことを教えていただけますか?

TAKARAさん:Revetyはぼくが所属しているダンスチームのひとつで、ダンサーYUIとの男女ペアユニットです。ぼくは、ほかにもCRANE CREWやLonersなどのチームにも所属していますが、Revetyでの活動がメインで、参戦したほとんどの世界大会はこのユニットでエントリーしています。

―男女のペアというと珍しいのではないですか?

TAKARAさん:そうですね。でも、性別だけでなく、YUIとぼくは本当にいろいろなところが違っています。ぼくはお話ししたとおり、高校から衝撃デビューを果たして、「がむしゃら」「なにくそ!」でやってきましたが、YUIはキッズのころからダンススクールに通って、メディアや世界大会にも出ていて、いろんな経験を積んできている、いわばエリート。まったく畑の違うところから来たふたりがユニットを組んでいるのです。

UNLOCK THE FUNK2018の演技の様子

UNLOCK THE FUNK2018 演技中の様子 (カナダ)

―ふたりの違いが、Revetyの強みになる部分はありますか?

TAKARAさん:YUIはとにかく知識が豊富。ふつうの20歳の子ができない経験もたくさん積んできているし、人とのつながりも広いです。また、ダンスを教える立場になった時など、YUIはキッズダンサーの気持ちがわかるのですよね。ぼくは「とにかくうまくなりたい!」でダンスをやってきたから、ダンスが嫌いになるという感覚がなかったので、彼らの気持ちが深い部分でわかりきれないところがあるかもしれません。そういう部分は、YUIが強みを発揮します。それでもぼくにはストリートで育んだ強さがあります。黙々と己と闘い、夢を実現する強さです。

―違う個性のふたりがそれぞれの強さを発揮するRevetyだからこそ、バトルなどの大会だけでなく、幅広い活動に意欲的に飛び出していけるのでしょうね。

TAKARAさん:そうですね。自分たちは、ほかのダンサーとは違う立ち位置にいたいねとふたりでいつも話しています。そうなるための宣伝のしかた、マネージメント、どんなキャリアを積んでいくのかなど、ぼくたち自ら考えて行動しています。それにはやはり、目標とするバトルの大会を制覇していくことは重要。しかし一方では、新しい世界を広げる活動も大切にしています。たとえば先日は、シンガーソングライター川口レイジさんの楽曲 『R.O.C.K.M.E. ft. Marty James』(Dave Audé Remix)のMV(ミュージックビデオ)に出演させていただきました。このMVは、著名なアーティストの振付やさまざまなCMに出演をしているノルウェーのダンスクルー”Quick Style”がディレクションを担当したことで注目を集めていますが、このようにぼくらは、世界の舞台で活躍するさまざまなジャンルの人とつながる機会を大切にしています。

https://www.instagram.com/p/Bswvo03jnAL/

川口レイジ 『R.O.C.K.M.E. ft. Marty James』(Dave Audé Remix)  MVでのRevety出演シーン(takara_cranecrewインスタグラムより)

■活躍の場は自分で切り開く―新たな道で進化し続けるふたり

 

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Revetyワークショップの様子(takara_cranecrewインスタグラムより)

―世界的なアーティストとのコラボ、ダンスバトルでの受賞など、Revety自身の華々しい活躍と同時に、レッスン講師やワークショップの企画・開催、コレオグラファー(振付師)など、自ら踊ることとは一線引いた形での活動も意欲的に取り組まれていますよね。

TAKARAさん: 学校教育にもダンスが取り入れられ、キッズのダンスレッスンに関心が高い親御さんが増えていますね。ぼく自身、子どもの吸収力とか自分にないものをもっているところとかを目の当たりにして、キッズレッスンは学べることがとても多いと感じています。

―テレビでも大人顔負けのキレのあるダンスをする小学生をよくみますものね。やはりレッスンに通っている子はダンスが上手なのですね。

TAKARAさん:でも、やはりストリートダンスで育ったぼくにとっては、レッスンに通ってダンスを学ぶ子どもとは感覚が違うなという気はしています。どんなにいいレッスンをしても、本人に「絶対にうまくなりたい!」という気もちがないのでは、それ以上はうまくはならない。自分の経験からも、ぼくのレッスンでは、その感情にスイッチが入るきっかけを与えてあげたいなと思っています。発表会やイベントなど、舞台に立つとちょっと楽しくなる。バトルで一歩前に出られたら、それだけで興奮してしまう。自分で覚悟して飛び込む環境を作ってあげることが大事。スイッチにはそういう経験が必要だなと思います。勇気をもって踏み出すことが、どれだけきついことかわかるので、次に会った時の成長を見ると、とてもうれしくなりますね。

ダンス教室の様子1

ダンス教室の様子2

東神奈川のダンス教室 Studio DUALでのロックダンスレッスンの様子。子どもたちも大人顔負けのロックダンスを踊ります!

―コレオグラファーとしても賞を獲られましたよね。

TAKARAさん:全日本大学ストリートダンス選手権ゲストコレオグラフコンテストのことですね。昨年は準優勝でしたが、今年は念願の優勝をいただくことができました。コレオグラフとは振付、舞台演出のことで、このコンテストでも、ダンサーを集め、振付け、ぼくたち自身もダンサーとして出演し、舞台をつくっていきました。将来的には世界中のアーティストのコレオグラファーとして活躍するのがRevetyの目標のひとつでもあります。

https://www.instagram.com/p/Bu52kgaABAn/

2019年全日本大学ストリートダンス選手権ゲストコレオグラフコンテスト優勝作品 (Revety Crew) (takara_cranecrewインスタグラムより)

■人生の師との出会い―確信と尊敬へ

 

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人生の師・MANUさん演技(takara_cranecrewインスタグラムより)

―現在23歳、高校時代から走り続けている印象ですが、そのモチベーションを支えている存在があるとうかがいました。

TAKARAさん:MANU(マヌ)のことですね。彼はコンゴ出身で、ジャスデブで4度の優勝経験のあるすごいダンサーです。ぼくのダンサーとしての師匠というだけでなく、人としての師匠でもあります。

―すごい惚れ込みようですね。

TAKARAさん:はい。彼のことは、もともとは動画を見て知っていて、「かっこいいなぁ」と思っていました。しかし、実際にWDC(World Dance Colloseum)という世界大会で彼と対戦し、彼のダンス、彼のダンスに対する姿勢・生きざまを目の当たりにして、ぼくのダンスへの思いや考えがよりはっきりと、強くなりました。

―MANUさんのどんなことがTAKARAさんのなかで響いたのでしょう?

TAKARAさん: ぼくは高校のとき、ほとんど遊ばず、とにかくがむしゃらに練習してきました。それで上手になっていきましたし、そのプロセスが大事だと思っていました。しかし一方で、いろいろな人から「もっと遊びなよ」「遊んだ方がダンスもうまくなる」と言われてもいました。ダンスに真摯に向き合う一方で、小さな違和感もあったという感じでしょうか。そこでMANUと出会って、彼のダンスに魅了された。同時に、彼のダンスには、強さを裏付けるストイックなトレーニングがあることを知りました。試行錯誤、食事制限、ありとあらゆる「バトルに勝つための努力」の積み重ねです。「世界を獲る人はこれだけのことをやるんだ!ぼく自身がやってきたことに間違いはなかった」と確信し、共感、あこがれ、そんな感情があふれ出たように思います。

―世界の頂点をめざす道程で、すばらしい師にめぐりあえたことは本当にしあわせですね。

TAKARAさん:そうですね。今はいろんな仕事をすすめるなかで、自分自身の練習時間は少なくはなっていますが、ひとつひとつのトレーニングの質をあげる努力をしています。どうやったら自分たちのめざすところへいけるのか、24時間ダンスのことを考えていますね。日本国内のレベルは高く、そこを勝ち抜くのは容易ではありません。みんな緻密で努力を惜しまない。それは隣の韓国もそう。でもぼくとRevetyは世界を獲る、そこへまっすぐ進んでいます。

MANUさんとの写真

MANUさんとRevety MANUさんのやさしそうな表情が印象的。3人の間の、互いへの信頼が表情に表れていますね。

■STUDIO DUAL(スタジオデュアル)

TAKARAさんが所属するSTUDIO DUAL(スタジオデュアル)では、毎週金曜日17時からTAKARAさんのロックダンスのクラスがあります。また、不定期でフリースタイルバトルのワークショップも開催されるなど、世界レベルのバトルテクニックを体験する希少な機会を提供しています。

http://www.dual-d.com

横浜市神奈川区二ッ谷町7-5

045-548-9779

 

編集部のひとこと

編集長

かなさん

ダンサーとしてさまざまな顔を持ち、そのすべてに全力投球する姿がとても印象的なTAKARAさん。見学させていただいたキッズクラスのレッスンでの、TAKARA先生と子どもたちの真剣勝負も白熱していました。先生の背中を見て、この子どもたちのなかからも、世界をめざす子が生まれるのではないかと感じました。
一生懸命になれなかった中学時代を振り返り、その時があるから今があるというTAKARAさん。「今もし真剣に向き合うことがなくても、出会えると思いますよ」とおっしゃった言葉に勇気づけられたインタビューでした。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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