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輝く男性インタビュー

日本野球のピンチを救いたい!神奈川学童野球指導者セミナー代表 上田誠さんのインタビュー

神奈川学童野球指導者セミナー上田誠代表

神奈川学童野球指導者セミナー代表 上田誠さん

日本を代表するスポーツのひとつ「野球」。その野球が今、これまでにないほどのピンチを迎えているとおっしゃる上田誠さんのインタビューです。

ご自身も慶応高校の監督として計4回の甲子園出場の実績をおもちの上田さんが、なぜ野球のピンチに立ち上がったのか?どのような事態が起こっているのか?その課題に対してどのような活動をしているのかなど、詳しくお聞きしてきました。

変化は気がつかないうちに積み上がり、あるときに突然目に見える形で現れるというお話は野球だけではなく、さまざまなところで起こりえるお話です。私も野球が大好きなので、とても考えさせらえるインタビューでした。

小さなお子さまがいらっしゃるパパママにはぜひご覧いただきたいインタビューです。

聞き手:たいせつじかん編集部

■野球を観る人は増えているが、プレイする人が減っている。

少年野球の現状について語る上田さん

上田さんが代表を務める神奈川学童野球指導者セミナーが行っていることを教えてください。

上田さん:簡単に言うと、野球人口が激減している現状を変えるための組織なんです。主に野球の指導者向けにさまざまなセミナーを開催するなどの活動をしています。

ー私はあまり実感がないのですが野球人口は減っているのですか?

上田さん:激減しているんです。かつては、神奈川県内の小学生を対象とした少年野球チームは2,000チームありましたが、今は800チームです。地方は、もっと悲惨な状況です。人数が足りずに5チームが集まって、1チームを作ったという嘘みたいな話が現実にあります。

さらに中学校では、野球部員が全盛期から約50%減ってしまっています。

野球の指導をする上田さん

野球の指導をする様子

ー少子化が要因なのかなと思いますが、いかがでしょうか?

上田さん:少子化が要因であるというお話をされる場合もあるのですが、サッカーは部員数が増えているんですね。そうなると、少子化が問題ということではなくなります。

※神奈川県内の部活動人数ランキング:

1位:サッカー

2位:バスケットボール

3位:バドミントン

4位:卓球

5位:野球

このように、少年野球でプレイする子どもが減ってしまうと、当然ですが年代的に上のカテゴリはどんどん減っていく構造になっています。実際に、高校球児は、2007年から減少が続いているんです。

この先も野球人口が減り続けていくことがわかっているので、このことに歯止めをかけようと働きかけているんです。

ーしかし、プロ野球も高校野球も観客が増えているというようなニュースを耳にすることがありますが、その点はいかがでしょうか?

上田さん:実際に観客動員数は増えています。観る人は増えているが、プレイする人は減っているということなんです。

ーそうなんですね。人気があるのに、実施にプレイする人は減っていくというのはとても不思議ですがどういう要因が考えられるのでしょうか?

上田さん:複数の要因が考えられますので、一概にこれとはいえませんが、いくつか考えらることはあります。

野球の指導は、地域の父兄の方が中心となって完全なボランティアで指導していただいてきました。この方たちのおかげで日本の野球は強くなったと思います。

しかし、そこに依存しすぎてしまい、指導方法がそれぞれ違ってしまっていたり、野球界全体で意思統一が難しくなっている現状があります。そのため、時代の変化に対応しきれずに旧態依然とした少年野球の現状が残っていて、他のスポーツと比べて野球が選ばれづらくなったということがあります。

たとえば、野球をやらせようと考えた親御さんが子どもと少年野球の練習見学に行ったとします。その時、指導者が子どもたちを強い口調で指導していたり、坊主にすることがチームの決まりであったり、土日は朝9:00から夕方18:00まで練習があるなどすると親御さんが敬遠するということがありますね。

今は、野球以外にたくさんのスポーツを選択することができますから、無理に野球をやる理由もありません。まずは、こういった旧態依然とした少年野球の現状を変えていく必要があるように思います。

スポーツの多様化によって、野球は他のスポーツと比べて、お金がかかる、時間が長い、試合に出られない補欠部員が出やすいなどの部分がクローズアップされていることもあるのかもしません。

ーなるほど。親御さんたちが敬遠してしまうということはありそうですね。私も子どもがいますが、わかる気がします。

上田さん:もうひとつは、野球を通じたスポーツ障害※を起こしている小学生が増えているために、野球を早いうちに辞めてしまうということです。

※スポーツ障害とは、同じスポーツ続けることで、起こる外傷や障害のこと

昨年、神奈川県内では、20名の小学生が野球によって、ひじの手術をしています。

ーひじの手術というとプロ野球選手という感じがしますが、小学生から起こる事態なんですね。

野球によるスポーツ障害について

上田さん:そうなんです。これは、野球人口が減っていることとリンクしています。最近は、企業のCSRの一環として少年野球の大会が組まれるなど試合数は増えているんです。一方、選手は減っているわけです。そうなればひとりの選手、とくに投手にかかる負担は大きくなりますから、スポーツ障害のリスクは高まりますね。子どもは楽しいから多少痛みを感じても投げますよね。そこは、おとながコントロールしてあげなくてはいけません。

-最近では、投手の球数制限の導入を検討するというようなニュースがありますが、なかなか進まないようですね。

上田さん:日本野球はとても歴史が古いですから、各年代や軟式、硬式の違いなどでさまざまなカテゴリで複雑な組織形態になっているために、球数制限や冬場の投げ込みの禁止などの通達を出しても、足並みをそろえることが難しく浸透しないという問題があります。

それに比べてサッカーはとてもシンプルな組織形態になっているので見習うべきこともたくさんあるように思います。

■野球は子どもの教育的な観点から見ても非常に良いスポーツなんです。

野球と教育の関係とは

上田さん:でも、野球は本当にすばらしいスポーツなんです。時間が試合終了を決めるようなサッカーやバスケットボールのように時間でやるスポーツではないので、9回裏ツーアウト10点差でも、最後まで何が起こるかわからないスポーツなんです。

最後まであきらめなければ勝つ可能性があり、実際に試合でこういった逆転の経験をさせてあげることであきらめない心を育むことができます。

子どもの教育的に見ても非常にすばらしいスポーツなんです。

ー最後の最後まで何が起こるかわからないという点は野球の魅力のひとつですよね。

上田さん:そうですね。しかし、これは日本野球の試合がすべてトーナメント方式で負けたら終わりの勝利至上主義の上に成り立っているということも忘れてはいけません。

日本以外の野球は基本的にリーグ戦です。総当たりで勝利数、もしくは勝率1位が優勝です。日本もそのように変えていく必要があるように思います。

ーでは、最後に読者のにメッセージをお願いします!

上田さん:野球界は今大きく変わろうとしています。ぜひ、お子さまと少年野球の現場に見学にいき、お子さんに野球を経験させていただきたいと思います。

ー上田さん、今日はありがとうございました。

編集部のひとこと

ライター

せいくん

東京オリンピックでは、3大会ぶりに野球が開催されます。高校野球から注目の選手がたくさんプロ野球に進んでいます。アメリカの大リーグでは大谷選手の二刀流が注目を集めています。野球に関する話題は身近にたくさんあり、野球人口が減っているとはまったく思っていませんでした。

上田さんは、多くの方がこの現状に気がついていないとおっしゃいます。

変化は少しずつ蓄積し、気がついたときには大きな変化になっているという現実は野球以外でもたくさんの面で起きていることだ思います。その変化に適応し、新たな環境に変える働きはとてもむずかしい道のりだと思います。

しかし、そこに立ち向かおうとする人がいなければ変化に適応できずに飲み込まれてしまいます。このことにあらがい、行動を起こす人を少しでも応援していければと思います。

私も子どもがスポーツをやる年齢になったら野球を見に行こうと思います!

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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