輝く男性インタビュー
- サッカーをとおして人間育成をする。湘南ベルマーレアカデミーU‐12統括の西村真介さんのインタビュー
平塚市を中心に神奈川県内の9市11町をホームタウンとする湘南ベルマーレのベルマーレフットボールアカデミーU‐12統括を担当する西村真介さんのインタビュー。
ベルマーレアカデミーで大切にしている考えとは?Jリーグクラブがめざす地域貢献とは?など、ふだんはお聞きできないようなお話をあれこれうかがってきました!
Jリーグクラブが担う地域活性化の働きはとてもすばらしいものでした!ぜひお楽しみください!
聞き手:たいせつじかん編集部
■そこに落ちているごみを拾える人間になる
湘南ベルマーレについて説明する西村さん
ーJリーグクラブは、年齢別にピラミッド型のチーム構成になっているとお聞きましたが、詳しく教えていただけますか?
西村さん:プロ選手が所属しているトップチームを頂点に、高校生世代のU‐18チーム、中学生世代のU-15チーム、小学生から幼稚園児までU‐12チームというピラミッド構造になっているのが多くのクラブに共通している形です。ベルマーレでは、トップチーム以下をアカデミーと読んでいて、U-12に関してはチームをもたず、スクールという形で子どもたちがからだを動かす環境を提供しています。
ーベルマーレのアカデミーについて詳しく教えていただきたいのですが、Jリーグのアカデミーというとプロをめざす子どもが入るものかなというイメージがあります。実際はどうなんでしょうか?
西村さん:その点はよく勘違いされているところなんです。プロチームのサッカースクールなのでサッカーがうまい子しか入れないのではないかと思われている親御さんが多いようですが、まったくそんなことはありません。そもそも、誰でもはじめは初心者ですからね。
そのためベルマーレフットボールアカデミーのスクールは、どなたでも参加いただけるベーシッククラスと、育成を主軸にした選抜クラスに分かれています。
ベーシッククラスは、幼稚園の年少さんから参加ができ、小学校6年生までのスクールでホームタウン内の17会場で教室を運営しています。※2019年2月1日時点
ーアカデミーとして子どもたちと接するうえで大切にしていることはどのような点になりますか?
西村さん:わたしたちは、「心技体」の「心」の成長を大切にしたいと考えています。ベルマーレには「そこに落ちているごみを拾える人間になる」という言葉があるのですが、これはごみを拾いましょうという意味だけではなく、当たり前のことを当たり前にできるようになろうというメッセージが込めれています。
わたしたちはサッカーをとおしてこのことをまずスクール生にはしっかりと伝えていきたいと考えています。
当然ですが、スクール生全員がプロになれるわけではなく、トップに上がることはとても狭き門なんですね。しかし、サッカーをとおして人間性を磨き、あきらめず、一生懸命にチャレンジできるすばらしい人材をたくさん湘南から輩出していきたいと考えています。
■子どもたちが夢に見る世界がそこにある
ベルマーレのトップチームが練習するグラウンド
ーベルマーレのアカデミーに参加している子どもたちは、実際にプロの選手とも非常に近い環境で練習ができるんですよね?
西村さん:そうですね。スクールの馬入校はグラウンドが同じ敷地内にあるのでとても近い環境で練習ができますね。スクール生のなかには練習着がプロの選手のサインでいっぱいという子もいますね(笑)
ー夢見る世界がすぐそこにあるという環境は子どもたちにとって、とても刺激的な環境ですね。
西村さん:子どもたちが、プロのサッカー選手になりたいという夢をもったとしたら、時間軸で考えるととても遠いので具体的にイメージしづらいということがあると思います。
しかし、ここのスクール生はプロの選手を間近で感じることできて、さらにプロをめざす過程に挑戦をしている先輩たちも見ることができますから、自分の夢をリアルに感じながらサッカーを楽しめるということが、プロクラブのアカデミーのいいところかなと思います。
わたしの子どものころはこういったものはなかったのでうらやましいですね。
■サッカーの指導について
サッカーの指導者になるためのライセンス制度について語る西村さん
ー昨今スポーツ指導の場での体罰の問題などがクローズアップされることが多いですがその点についてはどうお考えですか?
西村さん:殴ったからわかるかというとそうでないですし、指導者が感情的になって起こる事象だと思いますので体罰に意味はないと思いますね。
また、サッカーについては、指導者になるためにはライセンス制になっており、さらに更新制なので常に最新の指導方法に指導者自身がアップデートしなければいけないシステムになっています。
当然、育成年代といわれる若い選手に対する指導方法のプログラムもそのなかに組み込まれているので、指導するための方法論もそこで学びます。具体的には、言葉で伝えるためのコミュニケーション論などがありますから、ライセンスを有している指導者は指導方法をしっかりと学んでいますね。
ーなるほど、サッカーの指導者には共通のライセンスがあり、さらにそのプログラムは常に更新されているので、指導者としての基本的な知識や教え方は一定水準以上で共有されるシステムになっているんですね。
西村さん;そうですね。しかし、間違ってはいけないのは、叱らないということではありません。サッカーはチームスポーツですから、チームの和を乱すような行為であったり、だれかを傷つけるような行為についてはしっかりと叱ります。しかし、指導者の感情だけで「怒る」ことはしません。
ーアカデミーは、幼稚園児から高校生まで幅広い年代の子どもたちの指導にあたるのだと思うのですが、年代別に指導者ライセンスが分かれているんですか?
西村さん:そうですね。年代別に分かれています。そのため、ライセンス取得時に学ぶことは指導方法だけでなく子どもの発育発達にかかわるもの、医学など広範囲におよびますね。
ーそうなんですね。勉強することも幅広く、ライセンスが更新性ですから指導者自身が常に勉強が必要なんですね。
西村さん:そうですね。毎日勉強ですね。でも、大好きなサッカーに携わることができているのでとても楽しいですね。
■サッカーを通じて地域の活性化に貢献する
スクール生について笑顔で語る西村さん
ー仮にわたしの子どもがベルマーレのスクール生だとしたら親であるわたしもベルマーレに対して親近感がわくように思いますが、この輪が広がるとベルマーレを中心に子どもからおとなまでわが町のチームを愛するようになりそうですね!有名クラブの多いドイツやスペインなどで見られるような未来が見えますね!
西村さん:それをめざしていますね。わたしたちはベルマーレファミリーをつくるということを合言葉にしています。現在、幼稚園の年少さんから小学校6年生までのスクール生は約2,000名います。そして、彼らのご家族まで含めると本当にたくさんの方がスクール生を中心にベルマーレに関心をもっていただいている状況になります。
スクールがあった日は、どんな練習をしたのかという話をすれば、会話の中にベルマーレが出てきますし、週末に試合があればご家族が応援に来る、さらにトップチームの試合にも足を運んでくれるようになるという循環が生まれると考えています。
さらに、その輪がおじいさんやおばあさん、近所の方に広がるようになると思いますね。
ー地域のみんなが共通の話題で盛り上げることができる社会ってとてもすてきですね。
西村さん:一足飛びには実現しないと思いますが、積み重ねが重要だと思います。ベルマーレを中心として地域が盛り上がるようになるといいですね。
昨年は、ルヴァンカップでトップチームが優勝しましたが、全スクール生で埼玉スタジアムへ応援に行きました。
彼らは、自分のクラブのトップチームの優勝を目に焼き付けたと思いますし、みんなで喜び合った光景はとても感動的でしたね。
ーそう考えるとJリーグクラブの中でアカデミーの働きはとても大切なんですね。
西村さん:そうですね。やはり、アカデミーからトップチームに上がれる選手を育てるということは地域のみなさんに愛されるクラブになるためにもとても重要な要素ですので、その点でもわたしたちの働きは大切です。
また、わたしたちの課外活動として、ホームタウン内の小学校体育巡回授業というのをやっているんです。これは、タームタウン内の小学校の体育の授業をお借りして、ベルマーレのコーチがサッカーを教えに行くんですね。こういった活動も地域のためにとても大切だと思っているので、これからも続けていきたいですね。
ー地域を元気にするサッカークラブですね!今日はありがとうございました。
編集部のひとこと

ライター
ゆめちゃん
Jリーグクラブは、プロ選手が属するトップチームにフォーカスが当たりやすいと思います。しかし、西村さんとのお話の中でクラブが担っている働きの幅広さに驚きました。
地域の活性化、地域の人材育成、さらに地域の希望をつくる大きな役割を知り、夢中になっていろいろ聞いてしまいました。
西村さんの物腰の柔らかさと、サッカーが大好きなんだという思いがあふれていて、子どもたちに人気のあるコーチなんだろうなと思いました。
印象的なお話をひとつご紹介したいと思います。
インタビュー後に、アカデミーは年代が進むにつれてセレクションが行われて選考から漏れる選手が出てくることについてお聞きした際のことです。
「選考から漏れてしまった選手はやはり悔しいですよね」とお聞きした際に、「それはしかたありません。挫折をする経験は人生では必ずありますからそこからどうするかが大切ですよね」
確かにそうですね。スポーツをとおして喜怒哀楽を仲間と共有することで良いことも悪いこともあります。それもすべて受け入れ、前に進んで子どもは成長するということなんだと思いました。
Jリーグクラブが身近にあることは、とてもすてきなことですね。神奈川県内にはたくさんのJリーグクラブがあります。そこに携わる人たちのイキイキとした姿をたくさん見てみたいと心から思いました。
- 湘南ベルマーレ公式ホームページ:
- http://www.bellmare.co.jp/
編集部メンバー
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ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。 |
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家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。 |
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好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。 |