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輝く夫婦インタビュー

アイスケーキが教えてくれる人生のあり方、有機的な生き方と循環 LITTLE SNUFKIN(リトルスナフキン) パティシエ高橋彩さんインタビュー

「ロースイーツ」をご存じですか?ロー(Raw)には「生」という意味があり、簡単に言うと「非加熱で作られたスイーツ」のことです。今回は白砂糖、小麦、乳製品、添加物をいっさい使わず、有機的な素材で作られたVegan Raw Ice Cake(ヴィーガンローアイスケーキ)を提供しているLITTLE SNUFKIN(以降、リトルスナフキン)を取材させていただきました。

リトルスナフキンは実店舗をもたず、現在はオンラインショップを中心に販売するほか、コーヒーショップとコラボしたり、映画祭などのイベントで出店販売しています。アイスケーキを作るのは高橋彩さん、アイスケーキに添える思いを込めたメッセージをつづるのはご主人の翼さんです。リトルスナフキンがめざす「有機的な生き方」「有機的なくらし」「有機的なつながり」について高橋夫妻にうかがいました。

 

■その人の人柄や想い、大切にしていることを
目に見える形で表現するアイスケーキ

─本日はよろしくお願いいたします。

高橋夫妻:よろしくお願いいたします。

─まずはアイスケーキについてお話を聞かせてください。エディブルフラワーでデコレーションされたケーキは食べずに飾っておきたくなりますね。

彩さん:リトルスナフキンではフルオーダーで使う素材や色みなどのデザインをいちから作っています。こちらは奥さまから旦那さまへのサプライズ誕生日ケーキ。注文時にお話をうかがっておふたりをイメージして作らせていただきました。どのようなお客さまが私たちを見つけてくださって、どのような思いでオーダーをしてくださったのかをおうかがいするからこそ、その方らしさを表現でき、ご自身がもっているすばらしさを感じていただけるのだと思います。お客さまの気持ちに寄り添って私たちができることは、お客さまの思いをアイスケーキで表現してお届けすることだと思っています。

─お客さまのよろこぶ顔や贈る相手のことを想像しながら作られていることが伝わってきます。

パッケージのメッセージにも注目したい

─アイスケーキに添えられたメッセージもすてきですね。贈る人も贈られた人も、それぞれの心に響きますね。

彩さん:食べ物って気持ちが受け取りやすいじゃないですか。私たちがお届けしている10種類のメッセージから、いま必要な言葉だと感じてもらえたり、自分の内側を見つめるきっかけになったらうれしいです。

穏やかな表情のアイスケーキに心も癒される

─アイスケーキのモチーフとなっている「月と太陽」。この型に決めたのはどうしてでしょうか。

彩さん:この型を見つけたとき「陰と陽、ふたつがあってひとつだ」と思いました。世の中ってハッピーなことだけじゃなく、見たくないこともたくさんありますよね。「陰と陽」どちらも経験する必要性があるというか、相まってひとつという部分をこの月と太陽がすごく表現し、それをやさしく微笑んでくれているような気がしました。

─光と影・昼と夜のように、ものごとには両面あってどちらも必要ということですね。
ところでアイスケーキ専門店とはめずしいですよね。どのようなきっかけでアイスケーキを作るようになったのですか?

彩さん:以前はコールドプレスジュースやスムージーを作る仕事をしていたのですが、ヴィーガンのスイーツに触れる機会があって、そのときに「ヴィーガンスイーツをアイスで表現してみたいな」と思い、独学で作るようになりました。ただ独学ですので、なかなか思うような食感にならず、シャリシャリ感が出てしまったり、かたすぎて食べられなかったりしましたね。焼き菓子とは違うむずかしさがあるので、グラム単位で配合を変えて試作を重ねました。

─独学から商品化されたのですか?リトルスナフキンのオリジナリティをより濃く感じますね。
アイスケーキには有機素材のみを使用して、原材料にもこだわりをもたれているのですよね。

彩さん:フレーバーの素材を探しに野菜販売店や農園などいろいろな場所に行くのですが、素材の味だけではなく、作っている方のストーリーもアイスケーキに閉じ込めたいと思っています。じつは素材はそれありきで選んでいるので、ストーリーもいっしょに味わってもらいたいです。「どのようなストーリーがあるのか」ということが価値や喜びにつながるのだと思います。

―彩さんが作るアイスケーキには、注文してくださった人のストーリーだけでなく、素材がもつストーリーもいっしょに表現されているということなのでしょうね。
そんなことを知ってあらためてアイスケーキをながめてみると、かかわった人たちの幸せそうな様子が思い浮かんでくるようです。

 

■旅で見つけた「夫婦のありかた」と「自分を表現する」ことの大切さ。

─リトルスナフキンを始めようと思ったきっかけを教えてください。

翼さん:きっかけはふたつの旅です。ひとつは小さなきっかけで、一昨年のハワイ島への旅。そこで過ごした時間のなかで、これから自分たちが「どういう時間を過ごしていきたいか」、「どういう場所に住みたいのか」と考えるようになり、自然に近い場所や自分たちがここちよいと思える環境を探し始め、鎌倉へ行きつきました。

─旅をきっかけに、鎌倉への移住をされたということですか?

翼さん:はい、そうです。
もうひとつは大きなきっかけとなった、キャンピングカーでの西日本の旅。会いたい人に会いに行ったのですが、その人と話をするなかで、これまで自分たちだけでは言葉にできなかった思いや気づきをはっきりと言葉にしてもらえたのです。
旅をしたことであらためて夫婦で向き合う時間をもち、「何か夫婦ふたりでチャレンジできることがないか」、「どういう形なら自分たちの生き方を表現できるのか」と話し合いました。ふたりともヴィーガンや食に興味があったので「アイスケーキで表現することから始めてみよう」ということになったのです。

─おふたりの生き方を表現するツールとして「アイスケーキ」が誕生したのですね。

 

■「そのまま、ありのまま」を表現できるプラットフォームに。

つながりが縁で描いてもらったカーゴバイクのデザイン

翼さん:アイスケーキを通して私たちと出会い、生き方に共感してくれた方にとって、今度はリトルスナフキンが、その方たちの表現の場となればいいなと思うのです。
たとえば、いろいろな場所で異動販売をしているこのカーゴバイクも看板も、鎌倉で出会って、私たちの生き方やメッセージに共感してくれたある画家にデザインしてもらいました。

─すてきなデザインですね!まさに、リトルスナフキンを通してその方が表現をしているのですね。

翼さん:このようなつながりを広げていき、ゆくゆくはリトルスナフキンが「表現のプラットフォーム」になればいいなと思っています。
そこは、感じていることをそのまま表現できる場所で、必要としてくれる人が受け取れる場所でもある。多くの人の共感を求めているわけではなく、だれかひとりでも必要としている人がいればよくて、そこからまた、次のだれか「ひとり」につながり広がっていくのです。
その人にとって生きる居場所となる―リトルスナフキンがだれかにとってそんな場になればいいなと思うのです。

─なんだかリトルスナフキンは、ただアイスケーキを販売するのが目的ではないように思えてきました。

彩さん:リトルスナフキンの本当の目的は、ありのままの自分を表現し、つながっていくこと。私たちのように、自分を表現することで有機的なつながりが生れることを感じてもらえたらうれしいです。
そのためのツールは、アイスケーキでなくてもいいのかもしれません。だから今後、リトルスナフキンはアイスケーキを扱わなくなる可能性だって大いにあるわけです。
自分と向き合う時間を大事にして有機的な生き方をしたいと思って始めたのですけど、「今この瞬間」を大事にして、いろいろな方たちとのご縁も大切に生きていきたいなと思います。

─「有機的なつながり」や「有機的な生き方」とはどういうことでしょうか?

彩さん:みんな生まれた場所も時間も、育った環境も見える世界も感じるものも違うと思うのです。海や山や植物を通して「違うことが自然なこと」だと感じられるように、人とは違う自分を受け入れ、相手から受け入れられ、そこからリスペクトがうまれていく。もうそこで、有機的な関係ははじまっています。

─どこか特別な場所につどったり、だれかと特別な時間を経験したりしなくても、リトルスナフキンを通して、違っていることを当たり前のこととして受け止め合える「有機的な」生き方やつながり方に触れることができるのですね。

彩さん:自然から教えてもらったように表現することで、必要としている人が受け取りに来てくれることを、自分たちの人生で実験中です。
そこまでには、自分と向き合い、心の声を聴いて表現する覚悟、自分のもっているユニークさを受け入れて、心から安心できる場所を自分で作れるようになることが必要だと思いました。今、同じ思いを共有できる仲間を、リトルスナフキンを通してつながっていっているように感じます。
こういう生き方ができるのだよ、ということをちゃんと積み上げて表現していければと思っています。

─リトルスナフキンが「有機的な生き方」のスタートの場にもなり「生きていく居場所」にもなっていくのですね。

彩さん:そうですね。「みんなで楽しく生きていきたい」「自分の個性をつぶさずのびのびと」「安心してこの世界を楽しもうよ」という思いです。

オンラインショップとインスタグラムのDMでも注文可能

 

編集部のひとこと

編集長

かなさん

リトルスナフキンという名前の由来をたずねてみました。
おふたりで近所のお店でコーヒーを飲んでいたとき、ふと「スナフキンっていいよね」という話になったそうです。それからスナフキンのことを調べていたらいろいろと名言が出てきて「自分たちがしたいこと・思っていることに近い」ということで「スナフキン」が名前のベースになったと教えてくれました。「人生の旅をする旅人たちとの出会い、自分自身の内なる小さな声に耳を傾けながら、人生の旅をしよう」という意味が込められている「LITTLE SNUFKIN」の名は旅が好きなおふたりにぴったり!一つひとつていねいに作られたアイスケーキと気持ちのこもったメッセージ。「そのままで、ありのままでいい」、この思いが必要とされている方に届いてほしいと思います。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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