たいせつじかん ?ほっと一息。少し休憩。幸せな時間?

輝く男性インタビュー

ぼくが芸人でありつづける意味は。元住吉のお笑い芸人「梅ちゃん!」こと梅田和哉さんインタビュー

みなさんは「ライブ」に行ったことがありますか?多くの方が経験したのは“音楽ライブ”ではないでしょうか?しかし、今日の主役「梅ちゃん!」こと梅田和哉さん(以降、梅ちゃん!)が提供するのは「お笑い」のライブ。それも完全たる地域密着型のお笑いライブなのです。
ライブとは、ステージと客席の距離が近く、ホールやアリーナでは味わえない臨場感が醍醐味です。ライブハウスが町にあること自体めずらしいのに、そのライブハウスで「お笑いライブ」が毎月1回開催されているなんて―それはもう、お笑いが町の文化のひとつとなっていると言えるかもしれません。
今日は、元住吉のライブハウスPowers2で、地元密着型お笑いライブを主催するお笑い芸人梅ちゃん!に、梅ちゃん!が生きるお笑い芸人の世界についてお話をうかがいました。

 

■元住吉の夜が熱い!地域密着お笑いライブ

─川崎市中原区、元住吉駅から徒歩数分。駅前の有名な商店街通りをぬけた住宅も多いこの地域にライブハウスがあるなんて驚きました。

梅ちゃん!:Powers2元住吉(以降、パワーズ)は、第一線で活躍するプロミュージシャンだけでなく、元住吉のローカルミュージシャンのライブが数多く行われる、知る人ぞ知る元住吉の名店ですよ。

─そのライブハウスの名店で、梅ちゃん!はお笑いライブを毎月開催しているのですね。

梅ちゃん!:そう!「元住吉パワーズ2 お笑いライブ」ね。今年3月で11周年を超えたよ。

─新宿などにある専門劇場や、都市部の大きなホールでの興行へ行くとお笑いライブを観られるようですが、こんな住宅地も近い町なかでお笑いライブを観ることができるなんて、新鮮な驚きでした。

梅ちゃん!:そうねぇ。ここパワーズは、音楽イベント以外にも変わったイベントもしていてね。店内でプロのスケーターがスケートボードを滑って見せるようなイベントもやっていて。ぼくが初めてこの店に来たのも、そのイベントのときだったのだけど。オーナーにお笑い芸人やっていると言ったら「ここでライブしなよ」と言ってくれてライブがスタートしたんだ。

─コロナ禍で何度か開催を見送るということもあったそうですが、今日のライブはすごい熱気でしたよね。11年前のスタート当初も、お客さまはたくさん入ってくれたのですか?

梅ちゃん!: 最初はお客さんひとりやったなぁ!出演する芸人の方が多かった(笑)

─やっぱり最初から順風満帆ではなかったのですよね。それから梅ちゃん!はどうしたのですか?

梅ちゃん!:気持ちが落ちるようなことはなかったけど、お客さまにライブのこと知ってもらわなあかんな・・・と思って、とにかく元住吉の町に顔を出しまくったね。いろいろなお店に飲みに行って、仲良くなって、ビラを貼らしてもらって。ぼくは懐に入るのがうまいからね~、「舌っ足らずの人たらし」って言われているのよ(笑)

─地域のお店も応援しながら、いっしょに盛り上がっていくというわけですね。地域密着型芸人ですね。

梅ちゃん!:地域密着型お笑いライブって意外にないし、ぼく自身“地域愛”は強いから。そうだね、元住吉芸人とでも言うとくかな。

 

■ここがぼくのホームグラウンド。

─ライブが始まる前、お客さまがわいわいごはんを食べたりおしゃべりしたりしているのと同じ空間で、芸人のみなさんがちょっとしたスペースを使ってネタ合わせをしている姿が見えました。そんな空気感もおもしろかったのですが、そこで合わせていたネタがステージに出ると、爆発するようなパワーとなっていることに驚嘆しました。

梅ちゃん!:ライブならではの臨場感のなせる技だよね。じつは芸人にとってライブはすごく大事な機会でね。テレビに出たりオーディションを受けたりする前のチェックの場なのだよね。テレビによく出るような芸人のみなさんであっても、ここのライブでネタを確認したりしているよ。

─そういう場が毎月開催されるというのは、芸人のみなさんにとってはとてもありがたいことなのですね。
でも、芸人である梅ちゃん!自身にとっては、とてつもなくたいへんな一日になりますね。ライブに出てネタを披露したかと思うと、MCで進行をしたり、そうかと思うと、お客さまの席を準備したり―と、ステージ支配人のように立ち動かれていました。ほかの芸人のみなさんにとっては、ライブはネタのチェックの場のようですが、このライブは梅ちゃん!にとって違う価値がありそうですね。

梅ちゃん!:ここはぼくのホーム、愛着がある。だからというわけでもないけど、単純に「このライブで稼ぎたい」という気持ちはあんまりなくて。でも、ここのライブにお客さまを呼べるようになることが元住吉の町のためにもなると思っているから、芸人のみんなのためにも、町のためにも、ちょっとだけぼくのためにも、「元住吉パワーズ2 お笑いライブ」が発展していくといいなとは思うね。

─じつは、芸人の世界は仲間意識が強くて、こういうライブは協力しながらいっしょに作っていくものかと勝手なイメージをもっていたので、ひとり立ち回る梅ちゃん!の姿がいじらしく感じてしまいました。

梅ちゃん!:このライブの主催はぼくだからね。出演する芸人のみんなはネタに集中したらいいし、ぼくの気遣いなどぜんぜん伝わらなくてもいい。
ライブとかで出会った人同士が、うまくつながっていくこともよくあるのだけど、そこの先の場所にぼくがいなくても、ま、いいやとぼくは思える。ぼくが一生懸命やった結果、自分に直接なリターンがなくても、周りの人が幸せになっていると思うからね。

 

■元住吉で生きる、生きる、生かされる。

─ん-!?梅ちゃん!は欲のない方なのでしょうか?!

梅ちゃん!:そうかなぁ?普通だと思うけど。

─お笑い芸人になるきっかけは何だったのですか?

梅ちゃん!:ぼくね、ボクシングをやるために三重県から上京したのだけど、プロで活躍中にけがでボクシングができない状態になってね。あのころはすごく荒れて、心もすさんでしまっていたのよ。だけどそのとき、テレビでお笑い番組を観ているとなごめたのだよね。それで、子どものころ、間寛平師匠にあこがれて「お笑い芸人になりたい」と文集に書いたことを思い出したのよ。だから、自分のなかでボクシングは「ここまでやろう」と区切りをつけて、プロボクサーは28歳で引退して、そのあとお笑いの養成学校へいったんだ。

─「元住吉芸人」以外に「ボクシング芸人」という異名をもつのは、プロボクサーとして活躍していたからなのですね。

梅ちゃん!:ボクシング経験を生かして、中原平和記念公園で「梅ちゃん!青空ボクシング教室」をやっているよ。前述のパワーズでもボクシング教室を開催している。リングもゴングもないけれど、年齢も性別もごちゃまぜで、ありがたいことに毎回たくさんの人に参加してもらっているのよ。

─写真が青空ボクシング教室の様子ですね?近ごろは、スパなど設備のそろったフィットネスクラブがたくさんあるなかで、公園にボクシングをしに来る人がたくさんいるのに驚きました。
年齢層もばらばらですが、みなさんお知り合いだったのですか?

梅ちゃん!:30代の人もいれば80代の人もいる。知り合いだった人もいるし、公園にたまたま来ていて参加してくれた人もいるね。

─あえて施設が充実したジムを選ばず、青空教室を選んだのはどうしてなのでしょう?

女性参加者A:私は子どものママ友に誘われてきたのだけど、いろいろな人が来ていておもしろいです。梅ちゃん!の魅力なのだろうけれど、人が人を呼んでくるから、ふだん接点がないような人ともおしゃべりすることもおもしろい。

男性参加者B:ぼくは自分で店をやっていて月によって忙しさが違うから、梅ちゃん!のボクシング教室みたいに、行きたいときに行ったらできるみたいなキャッシュオンのシステムがすごく助かっている。そういうオーナーは結構いるから、この教室が界隈の事業者同士の交流になったりもしているし、地域のただの住人との交流にもなるからおもしろい場ではあるよね。でも、いいおとなが青空の下でグローブはめて本気でボクシングしている姿って、外から見たらすごい絵面なのだろうね(笑)。

日曜ののどかな公園の一角に、こんな姿が何組も。
確かにおもしろい絵面かも(笑)

梅ちゃん!:子どものころは足が速くて負けなしだった。中学では野球をやって、高校では応援団。そんなぼくがボクシングをやろうと思ったのは、けんかが弱かったから(笑)
中学までは小さくて、高校になって背が伸びたけど、大きくなっても人を殴れなかったし、小突かれたりして、強くなりたいと思っていた。そこでボクシングを選んだのは、シンプルだから。ぼくは不器用だからいっぱいのことはできなくて、パンチだけのボクシングを選んだ。でもそのボクシングが、今のぼくを作ってくれているのは間違いないよね。お嫁さんもボクシングジムで出会ったわけだし(照)。

─元住吉という町に、お笑いやボクシングを通して還元しているものは、梅ちゃん!でなくては築けないつながり方なのでしょうね。愛着をもつこの町で、梅ちゃん!らしく生きながら、町に生かされている、そんな印象を受けました。

 

■欲が出てきた

─今後の梅ちゃん!についてお話していただけますか?

梅ちゃん!:最近ちょっと・・・欲が出てきた。去年お笑いの大きなショーレースで優勝した芸人を見て、ぼくもショーレースを意識することが出るようになったかな。すでにいろいろ満たされていたからか現状満足してしまっていたので、ちゃんと売れたいというのがあまりなかったけど、がんばるのはタダだから、もうちょっとがんばろうかなって思っているの。

─元住吉の地域とのつながり方を見ていると、芸人だからふざけた掛け合いも多いけれど、基本的に梅ちゃん!は、細かいところに気配りしていてきちんとされていますよね。

梅ちゃん!:前述のパワーズのオーナーに言われたことがあるのだけれど、ぼくは楽観的にやっているように見えるけど、まじめで几帳面な人らしい。だから、芸人始めたころ、「芸人=どうしようもない人」にならなくてはいけないと思って、まじめにどうしようもない人になろうとしていたの。オーナーに出会ったのはちょうどそのころで、「どうしようもないデブだった」と今でも言われるよ(笑)

─そういう実直さが伝わって、梅ちゃん!の周りにはたくさんの応援や味方がいるのでしょうね。そんな梅ちゃん!の魅力が、映画出演につながったとか。

梅ちゃん!:そう!『Carモディファイズ』。まるで自分の子どものように愛情をもって車とともに生きる人たちを描く作品で、公開は来年の予定です。

Carモディファイズ公式twitter
https://twitter.com/Carmodify2022

Carモディファイズ公式Instagram
https://www.instagram.com/car_modify2022/

─欲が出てきた梅ちゃん!に、新しい風が吹き始めているのでしょうね。
でも、これまでどおり元住吉を愛し、人を大切にする梅ちゃん!には、芸人としての広がりというより、元住吉芸人としての深まりが増していくのかもしれませんね。

 

編集部のひとこと

編集長

かなさん

私を含めた一般の人は、芸人に会う機会などほとんどないでしょうから、芸人とはテレビの中の芸能人というイメージが強いのではないでしょうか?
ところが梅ちゃん!をインタビューしてみると、「芸人」という生き方の根底には、生活が根強くかかわっているのだなという印象を強くもったのです。
しかしそれは、あたりまえのことなのかもしれません。私たちが漫才やコントで大笑いするネタのほとんどは、生活に密着したもの。客席の私たちが根底にもつ生活感が共有できているからこそ、共通の笑いが生まれるのだろうということにあらためて気づいたのです。
だからこそ、地元の町を愛し、自分の生活を大切にしながら生きる芸人梅ちゃん!のこれからの笑いには、大きな期待を寄せたいと思うのでした。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

あわせて読みたい