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輝く男性インタビュー

大切な伝統技法を後世につたえていくことを使命に。横浜芝山漆器研究会の赤堀郁彦さんのインタビューです。

横浜開港から世界各地のたくさんの人におみやげ品として親しまれた横浜芝山漆器をご存じですか?かながわの名産100選にも選ばれている横浜で製作されている漆器です。

日本各地で作られている漆器とはひとあじ違う横浜芝山漆器の美しさ、緻密さにはただただおどろくばかりです。そんな世界にほこれる伝統技術は、時代の流れとともに継承がむずかしくなっています。

そんな状況を変えるべく活動されている横浜芝山漆器研究会の赤堀郁彦さんに横浜芝山漆器のすばらしさ、そして、活動の理由、未来への展望をうかがってまいりました。

ぜひ、お楽しみください。

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■日本のおみやげとして世界にひろまっていった横浜芝山漆器

漆器に貝殻でできた装飾品をはめこみ作る横浜芝山漆器

─横浜芝山漆器とはどのような歴史をもつ工芸品であるのかを教えてください。

赤堀さん:そもそも今の成田空港があるあたりを発祥とし、江戸で作られていた芝山漆器が横浜で作られるようになり横浜芝山漆器となったのです。

まずは、芝山漆器とはどのようなものであるのかということですが、白蝶貝・夜光貝など色みの美しい貝殻を切りだし、彫刻をして模様を作り漆器にはめこみをした、ほかにはない装飾をほどこした漆器のことを言います。

江戸時代には、この芝山漆器で作られた印籠(武士が身につけた生活用の小物)などが、大変な人気であったようです。

そして、横浜開港とともに海外に販売する商品として横浜で作られるようになり横浜芝山漆器となりました。

─もともとは、江戸で作っていたものを横浜で作って直接販売しようということであったわけですね。

赤堀さん:そうなんです。バイヤーがいる場所で作ったほうが効率的ですからね。ですから、全国から職人さんたちに横浜に来てもらって分業でつくったそうです。

多いときですと、300人くらいの職人さんがいたということですからそれはそれはにぎわったのだと思います。

─横浜芝山漆器は、器や小物だけではなくかなり大きなものまであるのは、海外の方たちに販売するために大きくわかりやすいものに形をかえていったということなんですね。

赤堀さん:そうなんです。武士たちむけに販売していたものは小物ですが、海外にむけて販売するにはもっと派手で見ばえのよいものを作る必要があったということだと思います。

─でも、それだけさかんになったということは、海外の方から見ても芝山漆器はすばらしいものに感じていただけたということなんですね。

赤堀さん:漆器に貝殻の装飾がうめこまれているものはめずらしいですし、開港直後ですから日本もの自体もめずらしかったでしょうから、時代の潮目をしっかりと見きわめて、商売としてしっかりと成立させていったのだと思います。

今では、ヨーロッパやアメリカでは博物館に飾られていることもあります。時がたってもおおくの海外の人たちにすばらしい作品だということで見てもらえていることはほんとうにうれしいですよね。

 

■芝山漆器にはほかにも技術がつまっている

─芝山漆器の作り方についてお聞きしたいのですが、そのまえに漆器とはどのように作られたものをいうのかを教えてください。

赤堀さん:まずは、もとになる木地に、精製するまえの漆である「生漆」と「砥の粉」という茶色い土の粉を半々くらいに練って作った下地を3〜4回程度塗ります。この作業をおこなうとさわりごこちがなめらかな木地になりますので、ここに下塗り漆を塗ります。この下塗り漆は、乾いたらとぎ、また塗るをくりかえします。漆器は、塗るものだと思われていますがじつはとぐほうが大変です。「塗る」のは5分や10分でできますが、漆の種類を変えながらその都度何回もくりかえします。こまかい工程までふくめると漆器づくりは全部で36工程あります。

─非常に手間と時間のかかる工程なんですね。

赤堀さん:そうなんです。漆器は、非常に時間も手間もかかる工芸品です。しかし、横浜芝山漆器はさらに貝象嵌をほどこしますので、ひとつの作品を作るためには大変な時間と労力がかかります。

さらに、漆器のふしぎな点ですが、湿気がないと乾きが非常にわるいのです。ですから、冬場よりも夏場のほうが乾きます。逆に冬場は、湿気をつくりだして乾かすということもやるくらいです。このように、非常にむずかしい素材であると言えるんですね。

そのぶん、完成品は当時も今もたくさんの人を感動させるものになるのですね。

─当時から、分業制であったことはこの複雑な工程をより効率的に行うための知恵だったわけですね。実際に横浜芝山漆器のような工芸品はほかにあるのですか?

赤堀さん:漆器自体は、中国、東南アジアを中心に作られていますが、このような技術は芝山漆器だけですね。

やはりここまで手のこんだ作品を作るというのは日本人独特の国民性であると言えるのではないでしょうか。

 

■伝統を引きつぐことのむずかしさ

─赤堀さんが横浜芝山漆器研究会を開催されている理由について教えてください。

赤堀さん:横浜にこんなにもすばらしい工芸品があるのだということを後世に残していきたいのです。

時代の流れのなかで、ここまで手をかけて作る工芸品はどうしても経済合理性の観点から専門の職人の育成がむずかしいです。お箸を1本作るために、何カ月もかかるわけです。

─現在は、専門の職人さんは何名いらっしゃるのですか?

赤堀さん:いまは2名です。できれば、あたらしい職人さんを増やしていきたいですが、商売として成立するかというとなかなかきびしいですから、せめて一般の方に技術を継承していくことができればといいなと考えています。

─研究会に所属されている方は何名くらいいらっしゃるのですか?

赤堀さん:登録いただいている方で30名程度で、月に3回ほど活動をしております。
熱心な方は、埼玉県秩父市から毎回足をはこんでくれる方もいます。

─仮に、あらたに参加を希望される方がいらっしゃった場合は新規入会も可能なのですか?

赤堀さん:もちろん可能です。ぜひ、たくさんの方に横浜芝山漆器にふれていただきたいと思います。

─今日は、横浜芝山漆器の魅力を知ることができました!ありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

横浜開港から続く横浜芝山漆器は、時代の流れのなかで存続の危機に直面している世界にほこれる伝統技術をもとにした工芸品です。実物を拝見しその美しさと精巧さにただただおどろきました。

これほどまでに、美しく、世界にほこれる技術であったとしても、商売として成立することのむずかしさがあり、それゆえに技術継承が途だえてしまうという悪循環をどうにか断ちきろうと活動していらっしゃる横浜芝山漆器研究会のみなさんの活動に今後も注目していきたいと思います。

もし、横浜芝山漆器にご興味がある方はぜひ事務局へ連絡してみてください!

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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