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輝く女性インタビュー

産後ママがいきいきと過ごせる居場所づくりをめざして NPO法人にじいろケアハウス代表 山田舞さんインタビュー

JR横浜線と横浜市営地下鉄グリーンラインが乗り入れる中山駅から徒歩8分、緑区役所そばの一軒家「にじいろケアハウス」は、みどり助産院のメンバーで立ち上げたNPO法人の活動拠点です。
扉を開けるとそこは3階建てのごく普通のおうち。1階の個室はサロンとして機能し、2階のリビングでは、教室や一時預かりが行われています。乳幼児がリラックスしておもちゃで遊んでいる様子はまるで自宅にいるかのよう。ケアハウスってどんなところ?一般の私たちも入っていいのかしら?
「こんにちは」と穏やかに迎え入れてくれたにじいろケアハウス代表の山田舞さんに話をうかがいました。

 

■楽しそうな母を見てきた少女時代

─今日はよろしくお願いします。
玄関先から、だれかのお家に遊びにきたような、そんな感覚です。
ちゃぶ台と座布団でお話しするのも何だか良いですね。

山田さん:どうぞ、足をくずしてくださいね。ここにじいろケアハウスの母体はみどり助産院でね。そっちは昔ながらの民家で、みなさん畳の部屋で過ごしてもらうから、こちらでも基本的に床に座るスタイルなのですよ。

─椅子ではなくてこうして床に座ると子どもの目線に近くなるのですね。
みどり助産院とは、山田さんのお母さまが院長を務める助産院ですよね。山田さんもみどり助産院で助産師さんとしてお仕事をされているとうかがいました。
幼いころからお母さまの仕事ぶりを近くで見続けてこられたのですか?

山田さん:私が4、5歳のころ、母はまだ病院に勤めていました。今では考えられないけれど、病院に母を迎えにいくと、私はいつもナースステーションに出入りして、助産師のみなさんにかわいがってもらっていました。

─幼いころから助産師や病院が身近な存在だったのですね。

山田さん:そうですね。私が15歳のころに母が独立し、自宅を増築して「みどり助産院」を立ち上げました。テスト勉強をしていると赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるのです。「あ、産まれたな~」って。ごく自然な日常でした。
私には兄がいるのですが、日本の法律では助産師は女性だけの職業なので、開業した時点で「私が継ぐしかない」という思いはありましたね。母からは直接言われたことはないのですけど。(笑)
でも母は助産師の仕事の辛いことは言わず、すばらしさや良さばかり口にしていました。
楽しそうに仕事をしている母も、開業してからは大変そうなときもありました。家族旅行の最中に緊急の電話が入って引き返したことも。でも赤ちゃんが産まれることはすばらしい奇跡のようなことだから、家族全員が理解していたように思います。
私はそんな母をそばで見ていたので、何の迷いもなく看護学校に進み助産師学校を経て、横浜市立市民病院で助産師として6年勤めました。自分でもびっくりするくらい、もうこの道ができていたのだと思います。

 

■助産院を後世に残すために

─その後、山田さんは「みどり助産院」に入職し、お母さまといっしょに助産師として働き今に至るのですね。助産院から新しくNPO法人にじいろケアハウスを立ち上げたきっかけを教えてください。

山田さん:少子化が目に見えるように進んでいることと、無痛分娩など特別なお産を希望される方が急増した影響を受けて、助産院での自然なお産は激減しました。分娩数が以前の半分ほどになり、5年前には「やばい、いよいよ経営が立ち行かない!」という状況に。
子どもは急には増えないから、とにかくほかの事業で経営をカバーして、助産院を後世に残さなくては!と、保育園を立ち上げました。だけど保育士の人件費や手作りの給食をまかないながら持続させるのは、小規模保育園にはとても厳しく大赤字となりました。心苦しかったですが2年半で保育園は閉め、事業を切り替えて、訪問看護を柱とする「にじいろケアハウス」を2020年に立ち上げました。

今春の移転の際に骨盤ケアの先生からプレゼントされた絵画

─背景には少子化などの影響を受けた切実な動機があったのですね。ところで、訪問看護とはどういったものなのでしょうか?

山田さん:訪問看護とは、看護師などの医療関係者がご自宅に訪問して、病院と連携しながら療養上に必要な世話や医療行為をするサービスのことをいいます。本来、赤ちゃんから高齢者まですべての年代の方が対象ですが、にじいろケアハウスの場合は、妊娠期から赤ちゃんが1歳になるまでの周産期に精神疾患のあるお母さんや、早産児や何らかの疾患がある赤ちゃんの患者さまが多く、みどり助産院の助産師・看護師が患者さまのご自宅にうかがい、授乳相談や手術の後遺症を防ぐことまで、母子ともに幅広くケアしていきます。
ですので情報共有として保健師や病院とカンファレンスすることもありますし、場合によっては児童相談所を交えることもありますね。

─健康上の不安と育児の不安を抱えるなかで、助産師や新生児の看護に慣れた看護師が自宅に来てくれるとなると心強いですね。

山田さん:そうですよね。また、訪問看護に付随して横浜市の「産前産後ヘルパー」委託事業も行っています。これは病気の方じゃなくても母子手帳をもらったらだれでも利用できるもので、お母さんの自費負担が1回1,500円で2時間サービスを受けることができます。「ごはん作ってください~」とか「お掃除お願いします~」とか。子育ての相談にも乗りながら産前産後の一時サポートをしています。

─そんなサービスがあるなんて知りませんでした!ぜひ必要な人に届いてほしいです。

 

■めざすのは”子育て支援”の「子育て支援」

─訪問看護や産前産後ヘルパーのほかにも、にじいろケアハウスではサロンや教室を運営されているのですね。

山田さん:はい。アロマ教室、ベビーマッサージ教室、リトミック教室、バレエストレッチ教室、ヨガ教室、リフレクソロジー、アロマ・よもぎ蒸し、ホロソフィー(手技を使った施術)などを実施しています。妊婦さんや子育て期の心身を癒すことが目的ですが、どなたでも利用できます。

講師のみなさんは、みどり助産院で出産された方や母乳外来に来られた方、助産院が創立した20年前からつながりのあるベビーマッサージの先生など、みどり助産院にかかわりのある方ばかりです。

─すごいプログラムの数ですね!講師のみなさんは、みどり助産院に愛着をもっていらっしゃるかたばかりなのでしょうね。ところで、今同じ部屋で遊んでいるのは、どなたのお子さんですか?

山田さん:この子たちは一時預かり中の子どもたちです。にじいろケアハウスでは、お母さんたちにゆっくり時間をすごしていただくために、サロンを利用される方のお子さんを無料でお預かりしています。
さらに、うちで働くスタッフの子ども(未就園児)も、お仕事の時間に預かっているのです。
訪問看護の合間にここへ戻り、授乳をしてまた「行ってきます!」とお仕事に戻る。産後すぐに仕事復帰する看護師もいますから、一時は預かりの子どもたちが10人くらいいた時もありました。

─自分たちの活動の拠点で子どもを見守ってくれるから、安心して仕事に取り組めますね。職場にこのようなシステムがあるのは、仕事復帰のハードルが下がり、キャリアも継続できて画期的!

山田さん:私がここを立ち上げた時から目標としているのが”子育て支援”の「子育て支援」を実現すること。うちで働くスタッフは訪問看護だったり、サロンだったり、子育てをするママたちを支援していますが、そのスタッフの子育てをほかのみんなで支援するという意味です。支援された人が元気になって、支援する人も有意義に働ける。スタッフ同士で助け合っていくことで支援が循環していける職場を作りたいと思っています。

─スタッフ同士の子どもたちがまるで兄弟のようにすごすこともできて、このリビングは「家庭」のよう。子どもたちにとってもよい環境ですね。

山田さん:サロンの先生たちも、子どもたちの様子を見て、子どもたちを2階のリビングで遊ばせながら同じ空間で施術するなどうまくやりくりしてくれるのでありがたくて。無理やりママと離して泣かせるのも子どもの気持ちを考えたら忍びないですよね。未来ある子どもを大事にしたいですよね。

 

■ママがパワーチャージできる居場所に

─にじいろケアハウス今後の展望を教えてください。

山田さん:じつはにじいろケアハウスは、今年4月にこの場所に移転してきたのですが、それまで活動していた同じ町内の拠点では、サロンや教室のあとにランチ会をプラスするなど、食に関する催しも行っていました。設立の年にコロナが始まったこともあり、思ったように広げることができなかったのですが、フェイスシールド付きで開催したお料理教室はすごく人気で、すぐ予約が埋まってしまいました。
ですから世の中の状況次第ではありますが、様子を見ながら食に関する催しもリスタートしていけたらと思っています。

─同じ月齢の赤ちゃんがいるママや、ちょっと先行く先輩ママと知り合い、より関係性を深めるには、「食」をともにすることはとても有意義ですものね。

山田さん:去年と一昨年は実施できた味噌造りの講座は、今年も11月ごろ開催できたらと思っています。みどり助産院で提供している和食でも利用している、院長の母がその味に惚れ込んだ福島の目黒麹店さんのこうじを使った味噌造り講座です。
講座では目黒麹店さんが、こうじだけでなく福島のおいしいお水も持参して軽自動車で来てくださいます。子どもたちにもこねてもらって、去年は8キロ5樽つくりましたがすぐなくなっちゃうのです。

─お味噌造りや料理教室、楽しそう! 私も参加してみたいです。
では最後に、この場所はママたちにとってどんな居場所になってほしいですか?

山田さん:ママたちには、まずは自分自身を癒してほしい。だれかから癒され元気になれることで「よっしゃ!じゃあ味噌造ってみようかな!」と次の原動力が生まれるから。多くのママがいるのでいろいろな選択ができるように、いろいろな教室をやっていきたいなと思っています。お子さんが小さいときは大変だけど、赤ちゃんが1歳になるとママたちは自信に満ちて、顔つきが凛としてくるのですよね。親子関係って究極の修行ですよ。でも、いざとなったら助け合えるからね。

シャキシャキした雰囲気の山田さんのお母さんみどりさんとの掛け合いも絶妙です。

 

編集部のひとこと

編集長

かなさん

─「いざとなったら助け合えるからね」という山田さんの言葉は、ご自身と院長(山田さんのお母さん)のことを言っているみたいで印象的でした。ママが閉鎖的になりがちな乳幼児期こそだれかとつながって、心がオープンになれる居場所を見つけたいですね。にじいろケアハウスには、ママのための癒しプログラムが多様にあります。ここに集う方たちと子育てを共有したり共感したりすることで、育児期を楽しむヒントが見つかるかもしれません。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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