たいせつじかん ?ほっと一息。少し休憩。幸せな時間?

輝く男性インタビュー

個人参加型スポーツ「個サル」に拠りどころ的価値を ―サッカーを通じた居場所づくりCLUB TORUS代表 高橋陽介さんインタビュー

近年、私設・公設の運動施設が主催して、集まった人で即席チームを作りゲームを行う「個人参加型スポーツ」が盛んになりました。バスケ、バレー、フットサルなどある程度の人数が必要なスポーツにおいて、知らない者同士がゲームを楽しむ機会を提供してくれます。しかし、共通の楽しみを介しても、必ずしもその場が「居心地のよいコミュニティ」となるとはかぎらないといいます。
そんななか、横浜市港北区北新横浜にあるAOBA SKY FIELDで開催される「CLUB TRUS金曜昼個サル」は、居心地のよいコミュニティの創生を重要なミッションとして掲げて開催されている個人参加型フットサルだといいます。
本日は、CLUB TRUS金曜昼個サルを運営するCRUB TRUS代表の高橋陽介さん(以降ジャンさん)に、フットサル場におけるサッカーを通じた居場所づくりについてお話をうかがいました。

 

■ここは答え合わせの場所

─本日はよろしくお願いします。前回はCLUB TORUS高橋翼さんのインタビューを行いました。高橋陽介さんも“高橋“ですが、ご親戚とかなのでしょうか?

ジャンさん:まったく関係ありません(笑)。ややこしいので、私のことは「ジャン」と呼んでください。ここではみんな私のことをそう呼びますから。

─そうなのですね?ではジャンさん、どうして「ジャン」さんなのですか?

ジャンさん:見てのとおりジャンボの「ジャン」です!

─納得しました!
それにしてもAOBA SKY FIELDは、本当に立派な施設ですね。全6面の人工芝コート、クラブハウス、大型駐車場、そして、フードコート。北新横浜から徒歩3分の立地に、こんなすばらしいスポーツ施設があるとは知りませんでした。大型施設の屋上にあるから、眺望もすばらしい。富士山や新横浜のランドマークを視界に感じながら開放的にスポーツを楽しめそうですね。

ジャンさん:ありがとうございます。CLUB TORUS高橋翼のインタビューでもお話していますが、私たちCLUB TORUS(以降、トーラス)は、AOBA SKY FIELDの運営事業に携わりながら、まったく別の組織としてAOBA SKY FIELDを拠点にトーラスの活動を行っています。

─活動のひとつが高橋翼さんの回でお話をうかがった子ども向けサッカースクールですね。そしてもうひとつが本日お話をうかがう個人参加型スポーツ事業「CLUB TRUS金曜昼個サル(以降、TRUS昼個サル)」ですね。

ジャンさん:そうです。近年、個人参加できるスポーツイベント情報を掲載する専門サイトがたくさんでき、個人参加型スポーツはより盛んになりました。

─個人参加型スポーツとは、「初めまして」の人同士が同じスポーツをするのですよね?“出会いの場”という感じでワクワクしますね。

ジャンさん:そのスポーツをしていなければ出会わなかった人が出会うのですから、出会いの場に違いありませんが、そこで創生されるのはかなり一時的で限定的なつながりとなることが多いです。地元の公営運動施設主催のイベントであれば、参加者の地域性が高まるので、地域コミュニティの活性化にひと役かうのでは・・・?と期待したくなりますが・・・こちらもじっさいはそんな簡単なことではありません。
かくいうこのTRUS昼個サルも実験の段階。どうすれば、個人参加型スポーツ(以降、個サル)が居心地のよいコミュニティとして成立するのか、チャレンジの途中なのです。

─個サルの参加者にとっては、スポーツする場所や機会を得ることが最大の目的であって、コミュニティに参加することに期待をしているのでしょうか?

ジャンさん:私としては、TRUS昼個サルがその答え合わせの場だと思っています。
AOBA SKY FIELDに来る以前に、私はふたつのフットサル場の運営に携わりました。とくにふたつ目のフットサル場では、個サル運営がこれ以上ないすばらしいコミュニティを達成している姿を見てきました。達成の背景には、スタッフの高い意識と実行力がありましたが、なによりも、そのスタッフを導くボス(社長)の存在が大きかったと思います。
その組織のマインドと経験を叩き込んだ私が、あの方がいない場で個サルをやるとどうなるのだろうか―あのフットサル場で生まれたような居心地のよいコミュニティが誕生できるのだろうか。今まさに、挑戦と実験の途中なのです。

 

■最高の場所、最高のスタッフ―最高の経験。

─ジャンさんに大きな影響を与えたフットサル場は、具体的にどのような場所だったのですか?

ジャンさん:埼玉県にあるフットサル場で、最高の場所でした。スタッフ全員のプロ意識が高くて、それを束ねている社長の思いや手腕に触れたとき、私の目はキラッキラしました。その方の「すべてにプロになれ」という考えに、スタッフ全員が共鳴し、接客のプロ、けがのプロ、栄養管理のプロを高い意識でめざしている場所でした。

─いまのジャンさんは、その社長に大きな影響を受けたということですね。

ジャンさん:いいえ、私が影響を受けたのは、社長ではなく、その方が導いているスタッフたちでしたね。

─つまり、社長はもっと大きな存在ということなのでしょうね。

ジャンさん:そうかもしれませんね。
私にとってフットサル場はひとつの夢でした。中学生当時、私の町にはフットサル場などなくて、土の上でしかサッカーをしたことがない私たち年代にとって、人工芝や天然芝にすごいあこがれがあって、「自分の町に自分がオーナーとして1号店を作るぞ!!」と心に決めていたのです。
ところが20歳のとき、自分の町に最初のフットサル場を別の人間に作られてしまい、悔しさいっぱいのなか、そのときやっていたバイトを辞めて、経営を学ぼうとその施設にスタッフとして入職しました。そのころのフットサル場の経営基盤は独自のサッカースクールをもつことだったので、私もアシスタントコーチからスタートし、指導者人生も同時に始まりました。しかし、このフットサル場で力を込めてやっていたサッカー指導は、残念ながらだいぶ失敗作だったなと数年後に思いしりました。
でも、ふたつ目の施設へ移り、この社長が導くスタッフとともに仕事に向き合った3年間で、指導者としても施設運営者としても、最初の失敗を修正することができたと感じました。
ここで得た指導者としての、施設運営者としての私なりの答えが、本当に通用するのか?その答え合わせをしている最中なのです。

 

■答えは、誰もが立ち寄れる「公園」。

─ジャンさんは、具体的にどんな答え合わせをしているのですか?

ジャンさん:指導者としては、ひとつめの施設で指導にあたった教え子に対して、彼らが大学1年生になるタイミングで、私なりに修正したサッカー指導を再提供するチャンスをもらうためのプレゼンをしました。そのプレゼンに参加した教え子たち全員が、私とともにもう一度サッカーをする選択をしてくれました。

─答え合わせの結果はどうだったのですか?

ジャンさん:彼らとともに、埼玉県戸田市の社会人リーグを戦うB・F・P(ビーエフピー)というチームを結成し、今年6年目を迎えています。チーム名のイニシャルには

B: Bonds(絆) & bliss(至福) & brain(知能)
F: Family(一門) & Foundation(土台) & food(糧)
P: Players(競技者) & Power(力) & Possibility(可能性)

という意味があり「チームを通じて飯を食えるものや人生の土台を得る」というビジョンがあります。このビジョンをチーム全員が“家族”として共有できていることは、指導者としてひとつの正解を得られたのではないかと思います。
いっぽうで、個サル運営はまだ実験の真っ最中。TORUS金曜昼個サルで、あの社長のもとで達成されたようなコミュニティが育つのか、まったく異なるコミュニティが育つのか。
ただ言えるのは、コミュニティの種はいつもあって、芽吹いているのです。私はその芽が育つ空気づくりをし、その空気感を保っておけば、おのずとコミュニティは育って行くと思うのです。

─ジャンさんは、どのような空気感を作ろうとしているのですか?

ジャンさん:しいて言えば「公園」ですね。だれもが好きなときに立ち寄れる場所。話しに来るのでもいいし、ダイエットしに来るのでもいい、恋しに来ちゃってもいいし、お酒を飲みに行くのでもいい。TORUS金曜昼個サルが、そんな空間の発端であればいい。そしてTORUSへ来れば、その空気がいつもある、その空気感を求めてここへ来たいと思う人がいる、これがめざす姿。
20歳のころ、私はただのタイムキーパーでした。そこから、参加してくれる人の名前を覚えたりしてみたけれど、あくまでその人を「フットサルをしに来たお客さん」という意識でやっていたらうまくはいかなかった。私が社長のもとで学んだ答えのひとつ、「空気を作り保つこと」、その答え合わせは、これからです。

─ジャンさんが作り出す空気感にここちよい拠り所的価値を感じ始めたとき、個サルへ参加する目的は、フットサルをする場所と機会を得ることから、このコミュニティで過ごすことに変わっていくのかもしれませんね。

TORUS金曜昼個サル終了後に撮影される恒例の集合写真
インスタグラムに掲載されるこの写真を見て「女の人も来ている」「この雰囲気なら大丈夫そう」「楽しそうと」と、初めて訪れる参加者がたくさんいるそうです

 

■サッカー人になれる場所

ジャンさん:私たちTORUSは、「サッカー人」という言葉を定義しています。サッカーを通じて人生において大切な何かをつかんだ人のことをいいます。お金でも、恋人でも、仕事でもいいし、思考やマインドでもいい。TORUS金曜昼個サルのコミュニティが、その何かをつかむきっかけになるはずです。

─4月から毎月第4金曜日に、子どもたちを対象とした個サル「金曜日エンジョイゲームデイ」がスタートしたそうですね。この子ども個サルも、同じ理念があるのでしょうか?

ジャンさん:はい。おとな同様、TORUSの個サルは、人や価値に出会える場所。子どもたちもまたサッカー人となるチャンスに触れてほしいと思います。

 

編集部のひとこと

編集長

かなさん

TORUS金曜昼個サルにおじゃましました。
ジャンさんが、どのように「だれもが立ち寄れる公園」の空気感を作り出しているのか、とても気になったのです。
参加者は小学生がいたり、前期高齢者がいたり、性別も年齢層もばらばらです。フットサル技量も相当なデコボコで、サッカー指導者がいたり、まったくの初心者もいたり、まるで町内会の運動会に来たようです。

3分程自己紹介をしたら、もうゲームスタート。
陽気なラテンミュージックをBGMにゲームは進みます。
途中、ジャンさんからみなさんに恒例の水の差し入れが。

終始、ジャンさんが積極的にだれかの間に入って仲をとりもったり、大きな声で場を盛り上げたりすることはありませんでした。雰囲気作りに奔走すると思っていた私は、ジャンさんの慎ましいふるまいに驚いてしまうほど。しかし、参加者のみなさんの笑顔は終始絶えないのです。
そしてふと、気づいたのです。
静かでゆるやかでなごやかな空気が、そこにあることに。

ああ、そうか。
ジャンさんの頭のなかには、理想の公園がはっきりと描かれていて、この空気を再現するための手続きが、すべて見えているのだな。
ジャンさんが尊敬して止まない社長のもとで学んだことを、疑いなく答え合わせをしている最中なのだなと、そう感じられました。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

あわせて読みたい