輝く男性インタビュー
- 聴覚障がいがあってもサーフィンを楽しめる環境をもっと整えたい!日本デフサーフィン連盟理事長の中村健吾さんのインタビューです!
日本デフサーフィン連盟 中村健吾理事長
藤沢市に本部をかまえる一般社団法人日本デフサーフィン連盟(JDSA)。聴覚障がいをもつ人たちがサーフィンを楽しめる環境を整えようと1977年に設立された団体です。
デフ(deaf)は英語で聴覚障がいを指す単語であり、デフサーフィンは聴覚障がい者のサーフィンを指しているそうです。
そんな、デフサーフィン人口は年をおうごとに減少傾向にあるとのこと。しかし、そんな課題を打開して、もっとたくさんの人にサーフィンを楽しんでほしいとご自身も聴覚障がいをもつ中村さんはおっしゃいました。
中村さんのサーフィン愛にあふれるインタビューをお楽しみください。
■サーフィンは楽しい!聴覚障がいがあってももっと楽しめるように
日本デフサーフィン連盟設立の経緯をお話になる中村さん
─まず、日本デフサーフィン連盟の設立の経緯をおしえてください。
中村さん:1970年代初頭にアメリカ文化にあこがれた聴覚障がいをもつ人たちがあつまってサーフィンを始めたことがきっかけになっているそうです。
ひとつの波に乗るのはひとりときまっています。さきに乗ったサーファーが優先となり、あとから乗ったサーファーはドロップインというルール違反になります。それは危険をさける、けがをしないためのルールです。
しかし、私たちはさきに乗ったサーファーから「あぶない」と言われても聞こえないので、トラブルになることもしばしばです。よってサーフィン初心者が健常者にまじってひとりでサーフィンをすることは非常に不安が大きいと思っています。なので、おなじ聴覚障がい者どうしでチームを作り、仲間たちでサーフィンを楽しむようになったわけです。
そして、1977年にデフサーフィン大会を開催することがきまり、そのことがきっかけとなり、日本デフサーフィン連盟は設立されました。
─おもな活動内容をおしえてください。
中村さん:大会の開催・運営、聴覚障がい者むけのサーフィンスクール・体験会の開催、そして啓もう活動などがあります。
─すでに設立から45年とかんがえるとかなり歴史のある組織ですね。これまでの45年で組織はじょじょに大きくなっている状況なのでしょうか?
中村さん:いえ、全盛期にくらべると会員の数はへっています。これは、むかしにくらべて人とのつながりが希薄になってしまったことが要因であろうと思います。
休日はみんなであつまってサーフィンをしようと声をかけあったり、友だちの友だちを誘うように声をかけたりというようなシンプルなコミュニケーションがへってしまったように思っています。
なので、私たちが中心となってサーフィンをやってみたいとかんがえている聴覚障がい者が1歩踏み出すきっかけとなるような活動をたくさんおこなっていきたいですね。
■デフサーフィンを楽しむ人をふやしたい
手話をまじえてお話される中村さん
─では、具体的な日本デフサーフィン連盟の活動内容をおしえてください。
中村さん:全国13支部があり、各地の海岸を周りながら1年に3~4回の大会を開催しています。神奈川県では、辻堂や鵠沼海岸が会場になることがおおいですね。
連盟の設立当初は、大会をひらこうにも、どうすればいいかわからず、いろいろなショップ、地元の健聴者サーファーより協力やアドバイスをいただくことで、開催できたようです。
そんな手さぐりな状況からスタートしたようですが、今では我々が中心となって会場の確保やルールの規定を整備していって、より競技としてのデフサーフィンを追求しています。
─なるほど、そういった活動の根本となる場所の確保やルールの規定などもやっていらっしゃるのですね。ほかになにがありますか?
中村さん:あとは、デフサーフィンの体験会やイベントの開催ですね。さきほどもおつたえしたように聴覚障がい者がひとりでサーフィンをはじめることはかなりむずしいので、我々が中心となって体験会をひらくことでひとりでもおおくの方にサーフィンを楽しんでいただけるように活動しています。
このような体験会やイベントをとおして、聴覚障がい者どうしの交流の場を作り、友だちの輪がひろがって休日にサーフィンを楽しむことができればもっともっとサーフィンを楽しむひとがふえますから、たくさん開催していきたいですね。
─そういった交流会は大切ですね。サーフィンはコツをつかむまではむずしいスポーツのように思いますが、中村さんはサーフィンを始められたときはすぐうまくなったのですか?
中村さん:いやー、私は苦戦しましたね(笑)。しっかりと波にのれるようになるまでは半年くらいかかったと思います。でも、たまたま1本のれたときのなんともいえない快感がわすれられなくて無我夢中でやっていましたよ!
─あたらしいことへの挑戦はただでさえ不安があるものだと思います。さらに障がいがあることでさらにハードルは高くなるのではないかと想像するのですが、そういった障がいがある方々にあたらしいことへの挑戦にたいするアドバイスなどあればおしえてください。
中村さん:障がいといってもさまざま障がいがありますし、それぞれの障がいによっても困難のどあいは大きくちがいますのでえらそうなことはいえないのですが、無理だと最初からあきらめずにまず挑戦してみる。仮にその挑戦がむずかしいとわかってもあきらめずにほかの方法をかんがえてみるということが大切だと思います。
また、聴覚障がいのあるお子さんをおもちの親御さんたちには、親としては苦労することもおおいかと思いますが、挑戦をつづけていくとかならず道がひらけるので、子どもといっしょに強い気持ちをもって併走してあげてほしいと思います。
■おたがいに遠慮はやめよう
大切なことは積極的なコミュニケーションだと語る中村さん
─これは私の個人的なかんがえなのですが、障がい者の方にたいしてできることがあればやりたいが、なかなか踏みだせなかった経験が何度かあります。おそらく、どんどん話しかけてくれよといってもらえるのかなと思っているのですが、実際はどうですか?
中村さん:そのとおりですね。できるだけでいいので積極的にコミュニケーションをとってほしいですね。
でも、これはこちら側のコミュニケーション不足もあるとかんがえているんです。こちら側から「こうしてくれるとうれしい」とつたえることでよりよいコミュニケーションが生まれるようになると思いますので、おそらくおたがいに不要な遠慮があるのだと思います。
すこし話が飛びますが、私の息子は少年野球チームにはいっているので、家での会話のおおくは野球についてです。でも、野球の練習現場にいっても監督やコーチがミーティングで子どもに教えていること、つたえていることを私は聞くことができません。息子は聴覚障がいがありませんから、家での野球についての会話にどうしてもズレがでます。これではいけないとかんがえて、私からミーティングの内容をおしえてほしいと監督やコーチにおねがいし、ミーティングの内容を共有してもらうようにしています。
監督、コーチも私が聴覚障がい者であることにたいする遠慮があったと思いますが、このおねがいを私からすることでとてもよいコミュニケーションがとれていますし、ほんとうにおねがいをしてよかったと思っています。
─本日のお話をとおして、障がいのあるないにかかわらずコミュニケーションの大切さをあらためて実感しています。必要なのはひとこえかけることなんですよね。
中村さん:そうですよね。でも、コロナウィルスの影響でよりコミュニケーションがとりづらくなりましたので、アフターコロナでは再度みんなでコミュニケーションをとることをつよく意識していく必要があるように思います。
実際に、聴覚障がい者は表情をみて口のうごきをよみますが、みなさんがマスクをつけるとこれができません。これはかなり影響が大きいですね。
─ほんとうにそうですね。かんがえてもみませんでしたが、そういう意味でもコロナウィルスの影響があるんですね。
では、最後に中村さんが感じるサーフィンの魅力をおしえてください。
中村さん:海にはいるとすべてが浄化されるような感覚があります。たとえば、いやなことがあったり、ストレスを感じているときに海にはいりサーフィンをするとそういったネガティブな感情がなくなります。また、仕事で行きづまったときなどは、すべてがリセットされてあたらしいアイデアがうかんできます。サーフィンのおかげなのかはわかりませんが、あたらしいアイデアのおかげで会社では業績賞もいただいたりできたんです。
これは、私の妻もおなじく感じているようです。妻はもともとスポーツはあまりやっていなかったのですが、サーフィンをはじめてからは顔つきがいきいきしてきました。定期的にリセットすることはとても大切なのだろうと思います。
これが自然のなかに飛びこみ楽しむスポーツであるサーフィンの魅力だとかんがえています。
─本日はありがとうございました。
編集部のひとこと

ライター
せいくん
コミュニティがちいさくなっていく理由も、おたがいの善意の遠慮が生む障がい者と健常者との壁の理由も、コミュニケーションの欠如が大きな理由であるということをあらためて痛感したインタビューとなりました。ひとことをかけあえるかどうかが大切なんですね。
長びくコロナウィルスの影響で、声をかけあうことがむずかしい日々がつづきますが、それでもできるコミュニケーションのとりかたを探していくことできっとなにかが変わると信じて、まずは身近な家族、友人とのコミュニケーションを見なおしてみようと思いました。
- JDSA(一般社団法人 日本デフサーフィン連盟):
- https://jdsasurf.jp/
編集部メンバー
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