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輝く女性インタビュー

期待以上のユーモラス・想像以上の世界観にシビレる!Cafe Denim/Denim bis~珈琲焙煎とおやつ~ オーナー 善 恭子さんインタビュー

Cafe Denim(カフェ デニム)は川崎市幸区にあるカフェ。オーナーの善恭子さんがオープンして20年目を迎えたカフェです。

善さんを知ったのは、たいせつじかんのコミュニティカフェ《幸盛ハウス》(川崎市幸区平間)取材のとき(https://www.taisetsujikan.com/place/?p=336)。出していただいたコーヒーがおいしくて感激していると、「とても素敵な女性オーナーの焙煎所からコーヒー豆を仕入れていて、ここのオープンに際しては、コーヒーの淹れ方などイチから教わったのですよ」とうかがったのです。こぞって善さんに《惚れ込んでいる》ようすの彼女たちを見て、善さんのことが気になってしまい、その後もCafe DenimのSNSでご活躍を拝見していました。すると、昨年(2021年)9月に新店をオープンしたという投稿が目に入り「ぜひともこの機会にお話をうかがいたい!」とこのたびのインタビューが実現しました。

「人として」「女性として」「経営者として」、男も女もファンになる《Cafe Denim》そして《Denim bis~珈琲焙煎とおやつ~》オーナー 善恭子さんインタビューです!

 

■吸い込まれるカフェ、刷り込まれる”きょこさん”

─本日はよろしくお願いします。開口いちばんでたいへんあつかましいお願いですが、本日は愛称の“きょこさん”と呼ばせていただいてよろしいですか?

きょこさん:OKですよ!よろしくお願いします!

─じつはずっと、SNSでご活躍を拝見していました。(もうファンだと言っても過言ではありません。)

きょこさん:ありがとうございます、うれしいです~!ふざけたこともたくさん載せているけど、ウッカリできませんね(笑)。でも、全部見てくれているなんてうれしいなあ。そんなふうに見てもらえるということは、私も成長したのかな。

─ブログもSNSもきょこさんの世界観があふれていて、「この人に会ってみたい」「このカフェを見つけに行きたい」という気持ちに駆られます。

Cafe DenimのSNSで頻出するきょこさんマーク
一度見たら記憶に刷り込まれてしまうセンスがすばらしい!

─昨年Cafe Denimは19周年を迎えられたそうですね。

きょこさん:はい。2002年に同じ川崎市幸区の遠藤町でCafe Denimはオープンして、2021年9月、19周年を迎えるタイミングで、都町のこの新店に移転してきました。たくさんの方とつながったり支えていただいたりの19年ですね。

─そもそもカフェをオープンしようと思ったきっかけは何だったのですか?

きょこさん:若いころからコーヒーが大好きだったのです。高校生のころは校則違反をしてまで喫茶店でアルバイトをしていました。サイフォン式のコーヒーを淹れる店でしたね。

─では経験を生かした“準備万端”“満を持して“のカフェオープンだったのですね?

きょこさん:いいえ!自信となるような経験なんてありませんでした。スイーツづくりもまったく得意ではなかったし。でも、なんでもやればできると思っているから、続けていたら今はカヌレも焼けるようになりました。娘が「小さいときに作ってくれたスポンジケーキはクッキーみたいに固かったけど、いまは上手になったよね」と言うくらい(笑)。

Cafe Denimで購入できる《カヌレ》さん。
もっちりとしあわせな味です

─自信も確信もないままでカフェをオープンするとは、きょこさんは肝がすわっているのですね!

きょこさん:私ね・・・“降りて”きちゃうの。「そう!カフェやろう!」みたいに。そして「やろう」と思ったらやっちゃう。当時私は女手ひとつで子どもふたり連れて無職だったけれど、カフェオープンを選んだのね。振り返るとあんなたいへんなことよくやったなぁと思うけれど(笑)

─ビックリです!その状況でよく踏み切りましたね。

きょこさん:カフェ経営を相談できる人や条件に適した空き物件などが、あれよあれよと見つかってオープンしましたね。すべてはご縁、そんなものかなと思います。

 

■自分の「ぴったり」に出会うカフェ

─「コーヒーが好き」という気持ちが最初のオープンをあと押ししたようですが、19年経った現在、Cafe DenimのコーヒーはSNSでも定評がありますね。Cafe Denimのコーヒーのこだわりを教えてください。

きょこさん:Cafe Denimのブレンドコーヒー《デニムブレンド》はケニアとコロンビアを入れていて、もう20年つづく味です。最近はコーヒー豆も有機栽培がいいなと思って、見つけたら仕入れるようにしています。コーヒーを飲むと頭が痛くなる人も有機栽培なら大丈夫という人もいるくらい。

でも、コーヒーの好みは人それぞれ。あと味は甘い方がいいとか、酸味がある方が好みとか、フルーティーとか香ばしいとか。正解がない。

カフェを始めて10年くらいしたころ、コーヒーの知識も増えたなかで、よりおいしいコーヒーを求めていくと「自家焙煎かな」となって焙煎屋を始めました。

それが、《Denim bis~珈琲焙煎とおやつ~》です。

Denim bis~焙煎珈琲とおやつ~は、新店Cafe Denimから徒歩30秒

─わぁ、これがSNSでも話題の極狭店舗Denim bis~焙煎珈琲とおやつ~ですね!本当に細い!!

きょこさん:私がDenim bisに選んだ焙煎機は、高温の熱風で100g~600gの生豆を約10分で焙煎できます。直火焙煎ではないので中心からふっくら焼け、しかもコンピュータ制御だから、温度の上がり方や秒数など細かく設定してオリジナルのレシピを入れることができる、同じ焙煎機を備える焙煎屋があっても異なるレシピを作ることができます。

─つまりお客さまの好みに合わせて焙煎できるということですね。

きょこさん:人それぞれで“おいしいもの”は違っていて、酸味があって軽い方が好きな人もいれば酸味は絶対に嫌だという人もいます。だから、どちらの店もそこはこだわって、お客さまの好みに合った焙煎でコーヒーを提供できるようにしていますね。

同じメニューでも酸味のありなしが選べるこだわり
焙煎屋ならではのコーヒーラインナップ
(Cafe Denimメニューより)

─Denimには、自分にぴったりのコーヒーに出会える楽しみがあるということですね。

きょこさん:そうですね。お食事も、うちはイタリア料理とか専門料理を出すお店ではないけれど、手作りで、ほどよくおいしいなというものから、お客さまが好きなものを、お客さまに選んでもらいたいなと思っています。

モーニングは厚切りトーストとコーヒーのセット、それだけでも充分においしい。だけど、お客さまの好みやその日の気分で、目玉焼きをプラスしたり、サラダやベーコンをプラスしたり。選ぶ時間も楽しむ、これがカフェの醍醐味だとも思います。

ランチのおそうざいプレートで厚切りトーストをチョイス!

人気のタコライスはオープン当時からの不動の人気者
本格派でスパイシーな味!

 

■きょこさんのオヒトガラ

─新店オープンが昨年9月というと、コロナ禍真っ只中にオープンを決意して準備を進めたということになりますね。

きょこさん:コロナで営業自粛になったり、先の見えない状況に「もう飲食店をやってはいけないのかな」と本気で考えた時期もありました。でも、焙煎屋をやっていたことで、自宅でおいしいコーヒーを楽しむ機会を提供できていることにも気付きましたし、移転してみてお客さまの様子を見ていると、やっぱりイートインのカフェって必要なのだなと思いました。やっぱりホッとする場所がないとね・・・と。

それで今回の移転も、「あっ」という間に決めて急に始めてしまったので、スタッフもビックリしていました。でも、スムーズに進むことはやればいいし、ブレーキがかかることはやっぱりだめなのだなと思って、工程もなにも考えず感覚で進んでいきました。周囲の人はたいへんですよね(笑)。終盤は「こんなに忙しくなるって予定していたの??!!」とみんなに言われていました。

─1店舗目は女手ひとつの子連れでスタート、次なるカフェはコロナ禍でのスタートということですね。いずれにしてもハードな環境ですね。

きょこさん:そうですね。カフェをやってきたなかでつながったCafe Denimを応援してくれる仲間の支えがあってオープンできましたね。

とくに今回の新店オープンを決めたときは、Cafe Denimや私の公式SNSでは簡単な告知にとどめ、代わりに《Cafe Denim航海日誌2021》という承認制のFacebookグループを作って、ここに新店の店づくりのことを、とにかくしっかり書いていくことにしました。

たとえば「今日物件の契約をしました!」なんてことも、できるだけ毎日報告するようにしたのです。すでにあるSNSアカウントでは、たくさんの方とつながりがありましたが、なかには私やCafe Denimにそれほど関心がない方もいらっしゃるでしょうから。

─“心底Cafe Denimの航海日誌を楽しみたい!”という目的ありきのグループを作ったということですね。

きょこさん:はい。すると、ここに参加してくださったメンバーは、このコロナでつまらない毎日のなかで、いっしょにワクワクしてくれたようで。引っ越しや新店舗のペンキ塗り・漆喰塗りがイベントとなってみんなが参加してくれたり、困ったことを書き込むと解決策をもって人が来てくれたり、こんな風にしてみたらと提案まで出してくれるようになりました。「次の店づくりもいっしょにやるよ!」といってくれる人もいてすでに盛り上がっています。まだ新店がオープンしたばかりだっていうのにね(笑)

─航海日誌を読むだけのつもりのメンバーが、いっしょに航海し始めたというわけですね。
きょこさんのお人柄にたくさんの人が集まっているのは間違いないのでしょうが、
Cafe Denimが一人ひとりにとって大切な場所だから、その場づくりが彼ら自身の楽しみになっていったのでしょうね。

 

■航海日誌はつづくよ。

─さて、これから新しいCafe Denimはどのようになっていくのでしょうか?

きょこさん:お店を作るとき、先述の航海日誌のなかで「おもちゃ箱のような」お店にしたいとみんなに伝えました。古いものやアンティークが好きなので、古くてあたたかみのあって昭和感のあるおもちゃ箱が私のイメージ。私の好きなものをこれから少しずつ詰め込んでいこうと思います。

「Denim」生地のように古くなればアジが増し、古いからこそよりよさが磨かれるカフェになっていけばいいなと思います。

─ではまだまだ完成ではないということですね。

きょこさん:はい、まだまだ不完全です。

また、私がいなくても続いていくDenimになるといいなと思っています。

それは単に、私がいなくても業務オペレーションがまわることだけを言っているのではありません。私を超えほかのスタッフも超えて、Cafe DenimやDenim bisそのもののファンであるお客さまが増えるといいなと思うのです。

─きょこさんがいるから来る、特定のスタッフがいるから楽しいということではなく、Cafe Denimにその人なりの存在意義があるということですね。

きょこさん:当たり前にある場所だけど、そこに来れば落ち着ちつける―お客さまにとって実家に帰るようなお店になりたいですね。そこに私が居ても、いなくても。

─話題となるカフェを育て、主事業と合理的な調和がとれる焙煎小売り事業を展開―しかもこの事業は、コロナ禍において大きなリスク削減効果を発揮しましたね。「感覚でものごとを進めている」とおっしゃいましたが、きょこさんには「感覚的」とは対照的なロジカルな面を感じます。

きょこさん:どうだろう?ちょっと自分ではわからないな。

でも、経営者としてちゃんと利益を出せているかというと、たいした経営にはなっていないのですよ。

でも、1回もやらなくてよかったなんて思わない。奥の仕事でも、お惣菜作る仕事でも、どっちの店の仕事も楽しいな!と思う。ポジティブなの!

─自分が楽しめる場所を手に入れるということがいちばんむずかしいと思いますよ。利益の面で大きな結果が出ていないとしても、それだけで大成功なのではないでしょうか?

きょこさん:「成功している」と人に言ってもらえることもあるけれど、そんなプライドはぜんぜんありません。ただ、これから10年経って借り入れが終わったとき、私いったいどうするのかな?「ハングリーでいなければ!」と思ういちめんもあるけれど、このままだと迷走してしまうのではないかと思ったり。

だから、そろそろ自分の最終地点を決めなくちゃいけないなと思っています。

どういうふうになることが私のなかの「成功」なのかなということが、これからのいちばんの目標になりそうです。

 

編集部のひとこと

編集長

かなさん

SNSで拝見していたきょこさんは「ユーモラス」で「いっぷう変わって」いて「チャーミング」な印象でした。しかしじっさいにお会いしてみると、「想像以上にユーモラス」しかし、じつは「けっこう繊細」で、でも次の瞬間「とても大胆」に変貌し、だけどすぐにやわらかい空気をまとわれ「ほんわり」してしまう―不思議で魅力的な女性でした。

「感覚的」に行動するお話をするそばで、コーヒーの話をするときはじつにロジカル。さまざまな面をたくさんもち合わせたきょこさんがとても素敵でまぶしくて、また近くCafe Denimに会い行きたいなと思いました。

Cafe Denimの常連のお客さまは、みんなこんな気持ちなのでしょうね。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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