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輝く男性インタビュー

ラグビーの教えを病院経営に!?そして女子ラグビーチームを設立!!横浜未来ヘルスケアシステム理事長兼女子ラグビーチームYOKOHAMATKM代表・横川秀男さんのインタビューです。

横浜未来ヘルスケアシステム理事長兼女子ラグビーチームYOKOHAMATKM代表の横川秀男さん

学生時代ラグビーに打ちこんだ経験から学んだ「One for all, All for one」の精神は、その後の医師として、そして理事長としての医療法人経営に大きな影響があったと語る横浜未来ヘルスケアシステム理事長の横川秀男さん。

そして、女子ラグビーとであい、女子ラグビーチーム「YOKOHAMATKM」を運営するにいたった経緯をお話いただきました。

医療法人の経営とはどのようなものであるのか、そしてそれがラグビーとどのような関連があるのかというお話はとても興味ぶかいものでした。

ぜひ、お楽しみください。

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■さまざまな役割をチームで分担する。それはラグビーも医療もおなじ。

─横川さんはさまざまな肩書をおもちかと思いますが、まずは簡単に今のメインのお仕事について教えてください。

横川さん:横浜未来ヘルスケアシステムという医療法人の理事長をし、そしてYOKOHAMATKMという女子ラグビーチームの代表としてチームの運営にたずさわっています。

横浜未来ヘルスケアシステムは、戸塚駅を中心に現在では医療・介護・保健・福祉・健康支援・人材育成の分野で24の病院・クリニック・健診センター・介護施設、看護専門学校などを運営しております。

YOKOHAMATKMは、2011年8月8日に発足した女子ラグビーチームで、設立から10年目がすぎ、今後もより発展するように、努力していこうと考えています。

─ありがとうございます。では、横川さんがなぜラグビーチームを運営しているのかということからお聞きしたいのですが、そもそも横川さんとラグビーの接点はどこからなのでしょうか?

横川さん:私自身が、高校から大学までの計9年間をラグビー選手としてプレイしていました。チーム自体は、強豪校ではありませんでしたが、とにかくにがむしゃらに真剣にラグビーに向きあっていましたので、単純にラグビーがだいすきであるということが根本にあります。

大学卒業後は心臓血管外科の医者として12年つとめ、そのあとに戸塚共立病院の経営再建にかかわることになりました。

そのときに、病院経営がラグビーと似ていると考えるようになったのです。病院には、本当にたくさんの職種の人がチームとなって働いています。今では、30種類以上の職種のあつまりだろうと思います。

経営が行きづまっている病院の多くは、この多様な職種のチームがうまく機能していないことが多いです。

ラグビーも15人がそれぞれのポジションでささえあってゴールに向かいます。医療の現場もこれとおなじです。

意思統一をはかり、チームいちがんとなり地域医療をささえるのだという目標に全員で向かっていくことができれば、患者さんからも地域社会からの信頼もあつくなり、経営は安定するようになります。

─ラグビーの経験が、病院再建に役にたったということなんですね。ひとつわからないことがあるのですが、病院の再建を請けおうということは、再建会社のような組織に所属されたということですか?

横川さん:いえいえ、私が理事長として再建するべき病院にはいりました。当時は、平成のはじめで、バブル崩壊や病院を取りまく法律などが変わり、経営が息づまる病院が散見される状況でした。

そのときに私は30代でしたからエネルギーがありあまっていたことと、診療自体も好きでしたし、何より病院がなくなるということはその地域の住民がこまるということです。これはなんとかしたいという思いもあり、戸塚共立病院と並行していくつかの病院の経営再建にかかわりました。

─経営に息づまる病院を再建するということは非常にむずかしい挑戦に思いますが、それを複数病院でかかわるというのはすごいバイタリティですね。

横川さん:本当に私自身が若かったことと、ラグビー時代の友人たちがたすけてくれたんです。私は医学系の大学出身ですから。ラグビー部の仲間の多くが医療にたずさわっています。さらに、試合をしたほかの大学のラグビー部OBなど、ラグビー仲間が私の挑戦に協力してくれたことが大きいです。

ラグビーは試合が終わればノーサイドで、勝っても負けても相手をたたえあい、絆がうまれますから、そのことに本当にたすけられました。

 

■ラグビーへの感謝から芽ばえた女子ラグビーへのつよい思い

─病院の再建がそのあとにどういう結果であったかということは、現在の戸塚共立病院の状況を拝見すればいちもく瞭然ですが、ラグビーで学んだことを結果的に生かすことができたのですか?

横川さん:結果的にみても、ラグビーの経験にもとづいた意思決定が多くなったことはまちがいありません。私たちの法人理念自体が「One for all、 All for one」としていますから(笑)。

実際に病院は、多職種の人たちのあつまりで仕事をすすめていくわけですから、みんながひとつの目標に向かって全力をだしていくことが本当に大切です。

そのことをみんなで意識していくうちに、目に見えて診察をうけにこられる患者さんや検査・手術などの件数がふえていきました。これは、たよりにされていることの証だと思います。

さらには、この地域のほかの医療機関からの紹介もふえました。地域医療は、医療機関同士の連携が非常に大切です。その一助をになえていることになりますので、このことが本当にうれしかったです。

今では、戸塚区、泉区の横浜西部医療圏は非常にこのような医療ネットワークが充実していると思います。

─では、そこからどうやって女子ラグビーチームを運営することになるのでしょうか?

横川さん:ラグビーにかかわったおかげで今の自分があるのだと年を追うごとにつよく感じてました。それと並行して、漠然とラグビーに恩がえしをしたいなと考えるようになっていました。

そんなころに、日本体育大学ラグビー部女子の新聞記事が目に飛びこんできました。これを見たときに、単純に女子ラグビーの発展はラグビー全体の発展に大きな影響をあたえるすばらしい活動だなと関心しました。

そして、我々も女子ラグビーの発展になにか貢献できないだろうかと考えはじめました。

さらに女子ラグビーに興味をもったもうひとつの理由が、私たちの法人のような、医療・介護の職場は職員の70%が女性であることです。昨今では、医学部の卒業生の女性割合も50%程度までふえてきている現状があり、医療と介護は女性によってささえられていると言っても過言ではないのです。

そんな女性が活躍する職場を我々は多く運営しておりますので、選手たちが希望すれば職場を提供し、よりラグビーに専念できるライフスタイルをいっしょにきずいていくことができるのではないかと考えました。

マイナースポーツではよくあることなのかもしれませんが、当時の女子ラグビーの活動の多くが選手の自費でまかなわれていたんです。日本代表の遠征費用が自費だったというような話も聞いたことがあるほどでした。

そのことを考えると、医療・介護にたずさわる我々が女子ラグビーチームを運営することに大きな意味があると思ったんです。

YOKOHAMATKMの選手のみなさん

─安心してラグビーを続けられる環境をつくることができそうだというお考えがあったのですね!では、そこからすぐに実現したのですか?

横川さん:いやいや、考えてはいましたがそう簡単にはいきませんから、構想だけはあるという状況が2年くらい続きました。

しかし、2009年にJリーグチームの横浜FCから支援の要請があり、その年の夏から横浜FCのオフィシャルメディカルパートナーとして活動をはじめました。そのことをきっかけに横浜FCの練習グラウンドを貸してもらえれば、女子ラグビーチームの活動の拠点ができると考え、チームに交渉し、OKをもらえました。

このように、練習グラウンドの確保ができたので、女子ラグビーチームを実際につくってみる決断をしました。

─最初のチームメンバーはどうやってあつめたのですか?

横川さん:日本体育大学からラグビー経験者がひとりはいってくれた以外は、すべて職員に声をかけてチームに参加してもらってつくりました。

─えっ、ラグビーをほとんどやったことがない人たちでつくったということですか?

横川さん:そうですね。学生時代にソフトボールに打ちこんでいた職員たちに声をかけました。そこの8名と経験者1名の合計9名でチームがスタートしました。

そして、今では、選手の約8割が我々の職員で、およそ2割が学生やほかの職場で働きながらチームに所属してくれている選手で構成されるようになりました。

日本代表を経験するような選手もいますので、これからもっともっとよいチームにしていきたいですね。

─当初お考えになられたとおりに御社の医療機関で働きながら選手をされている方が多いのですね。

横川さん:そうなんです。本当にうれしいかぎりです。はじめにお話したとおりで、医療・介護の職場での仕事はラグビーの精神につうじています。それをそのまま体現するかのように選手たちは仕事にも真剣に取りくんでくれています。

また、セカンドキャリアとして、介護福祉士の資格をとったり、事務職として現役引退後も我々のところで働いてくれる方もいらっしゃるので、その点も非常にうれしく思っています。

 

■女子ラグビーは世界的に注目をあつめている

─横川さんからごらんになられて現在の女子ラグビーを取りまく環境をどのようにお考えになっていらっしゃいますか?

横川さん:2015年のリオデジャネイロオリンピックで女子ラグビーが正式種目として採用されたことが大きな経緯であったと思います。

それによって、他競技から転向する人もふえましたし、新たに挑戦する人がふえたと思います。

実際に、国際大会では女子日本代表チームは本当に良い試合をしていてラグビー国際連盟であるワールドラグビーから、もっと日本チームを国際大会に出場させてくれと要請があるそうです。

ラグビーは、フィジカルが重要だと思われがちですが、日本チームのもつ規律、俊敏性、サイズのちいささが強みになることもあります。そのことに、私たちよりも世界の人たちが気がついて、もっとたくさん見たいのだと言ってくれているそうです。

日本ラグビー協会も現在は、協会をあげて女子ラグビーを応援してくれています。

また、ラグビーが人気な国では、ラグビー人口のうち女性がしめる割合は3割をこえるそうですから、日本のラグビー人気の状況を考えればもっと女子ラグビー人口がふえるはずだと考えています。

─昨今、サッカーやバスケットボールの女子チームの躍進はすごいですからラグビーも注目ですね。

横川さん:そうですね。ひろいグラウンドを俊敏にかけまわったり、体格差のある世界の強豪チームにスクラムで勝つこともありますから、本当におもしろいですよ。ぜひ、たくさんの人に女子ラグビーを見てもらいたいですね。

─現在の国内ではめざすべき大会などはあるのでしょうか?

横川さん:7人制ラグビーですと、「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」というリーグ戦が、毎年4~6月に開催されています。現在は、全国の70以上のうちの上位12チームが優勝をめざすべく戦っており非常にレベルのたかい大会になっています。

また、15人制はチーム数がすくないですが関東女子ラグビー大会が12月~1月にかけて開催されており、関西女子ラグビー大会の優勝チームと名古屋で日本一をかけての試合があります。

─なるほど。では、その時期であれば試合観戦も可能なんですね。

横川さん:そうですね。我々はまだ優勝の経験はどちらの大会でもありませんが、優勝するべくがんばっておりますので、ぜひ応援をおねがいいたします。

─では、横川さんがお考えになっている今後のこのチームの未来についておしえてください。

横川さん:このチームがさまざまなかたちで横浜に貢献ができるようになりたいです。今の社会は女性の活躍がなくては成りたちませんから、このチームが女性活躍推進のシンボルとなれるようにがんばりたいと思います。

また、チームも設立から10年をこえましたので、ここから永続性をめざすべく第2段階にはいったと思いますので、ここがチーム運営のがんばりどころだと思います。

そのためにも選手・スタッフ・応援していただいている方々をはじめ、チームにかかわるすべての人たちとガッチリとスクラムを組んでつづけていきたいと思います。

─今日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

この取材で、あたらしいチームスポーツのありかたを見たように思いました。スポーツをあきらめずに続けるやりかたをさがし、それがゆえにスポーツを続けることができる人がふえ、そしてスポーツを続けてくる人がいるからこそまわりがたすけられることがあるというすばらしい循環が、地域社会に新しい活気をもたらすことができるのだということを知りました。

常識をうたがい、あるべき姿を実現することにおけるさまざまな障害にくっすることなく挑戦した結果としての、たくさんの今の「あたりまえ」があるのだとおしえてもらいました。

YOKOHAMATKMの活動をこれからもおいかけたいと思います。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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