たいせつじかん ?ほっと一息。少し休憩。幸せな時間?

輝く男性インタビュー

音楽を共通言語として訪れた人がかがやけるステージとなる場を作りたい!小田原市のゲストハウスTipy records Inn コアゼユウスケさんのインタビューです。
Tipy records Inn コアゼユウスケさん

小田原駅近くにあるゲストハウス「Tipy records Inn(ティピーレコーズイン)」では、音楽のレコードもしくはCDを寄贈すると宿泊費から500円割引というユニークな料金体系をとられています。また、宿泊施設も小田原の古民家をリノベーションし、懐かしさを感じるものばかりです。

このような、いっぷう変わったTipy records Innを運営されているコアゼユウスケさんに開業時の思い、そして今後のビジョンをうかがってきました。

そこには、コアゼさんの音楽と地元小田原への愛情があふれていました。

ぜひ、お楽しみください。

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■音楽に触れる場所が減っていくなかで見つけたアイデア

開業当時のお話をされるコアゼさん

-まず、Tipy records Innではどのような活動をされているのかを教えてください。

コアゼさん:小田原駅から徒歩3分の場所にあるゲストハウスです。

通常のゲストハウスはひとつの部屋に複数の2段ベッドがあるようなドミトリー式が大半かと思いますが、私たちは一軒家の古民家をリノベーションし、それぞれの部屋にお客さまがお泊りいただくスタイルです。そのため、部屋ではプライベートがしっかりと保たれている形になります。

そのようなスタイルで現在は、「Tipy records Inn」「Tipy records house」「Tipy records room」という3つの宿泊施設と「Tipy records lounge」という事務所兼イベントスペースの4つの施設を運営しています。

「Tipy records Inn」の一室の様子。

-音楽のCDやレコードを寄贈されると宿泊料金が割引かれるとお聞きしたのですがこれはどういったことなのですか?

コアゼさん:そうです。思い出の音楽といっしょに「Tipy records Paper」にその音楽の思い出などをひとこと添えて寄贈いただくと500円の割引がされるようになっています。

「Tipy records Paper」とCD。このように音楽と思い出がディスプレイされています。

-非常にユニークなものだと思うのですがこれはどういった経緯で導入されたのですか?

コアゼさん:少し前に話がさかのぼるのですが、私自身が中学生のころから学校にあまりなじめませんでした。

そんな私にとって、学校の代わりによく通った小田原駅にあった大手のCDレコードショップで過ごす時間、そこで聞いた音楽が私の人格を形成してくれたと感じているんです。

そして、20歳のころに小田原のライブハウスにバンドで出演するようになり、自分が自分らしくいられる場所を見つけたように思いました。

-音楽に救われた経験があるということなのでしょうか?

コアゼさん:そうですね。しかし、より深く考えてみると音楽それそのものというよりも音楽を中心に集まっている人たちに魅力を感じているように思うのです。

CDレコードショップもライブハウスもそのような人たちの集まりだったように思います。

しかし、時代の流れとともにCDレコードショップの多くは姿を消し、実際に小田原のお店は今はありません。

そして、バンド活動自体も簡単なものではありません。バンド活動だけで生計を立てるということは非常にむずかしいです。

そうなったときに、世界中の人が自分の好きなCDやレコードを持ちよって、音楽を共通言語に人が集まれる場所として、私たちのゲストハウスを活用しようと考えてこのしくみを導入しました。

音楽をたくさん身近に感じる空間です。

-なるほど!たしかにたくさんのCDがありますし、すべてにメッセージが書かれているんですね。このメッセージをもらう理由にはどのような思いがあるのですか?

コアゼさん:今、中古品の販売店に行くとたくさんのCDが陳列されていて、1枚100円で売っていますよね。

でも、このCDそれぞれ1枚1枚にだれかの思い出が乗っているはずなんですよね。

私と同じようにこの1枚のCDで人生を救われた人がいるかもしれませんし、大切な誰かとの出会いのきっかけとなったかもしれません。そういった、思い出やストーリーを形にして残したいと思ったことがきっかけなんです。

それがたくさんアーカイブされていくこと自体にものすごい価値があるように思っています。

 

■世界中の人とのコミュニケーションは楽しい

-そもそもなんですがゲストハウスを始めたきっかけはどのようなことがあったのですか?

コアゼさん:Tipy records Innを始める前は、バンド活動をしながら路線バスの運転手をしていたんです。もっとバンド活動に専念できるようにより時間とお金が必要だと思っていました。

そんななかで、小田原の路線バスにはたくさんの外国人を含む観光客の方たちに乗車いただいていたので、もしかしたら自分たちで民泊サービスを運営してみたらうまくいくのではないかと思い始めたことがゲストハウスを作るきっかけと言えると思います。

でも、そのときはここまで広げるなんて思っていなくて完全に副業のひとつという感じでした。

-なるほど、バスの運転手をされながら小田原に観光客が増えていることを実感していたんですね。

コアゼさん:そうなんです。小田原経由でたくさんのお客さまが箱根を中心に押しよせていることを肌で感じていました。

そして、実際にお客さまをむかえる立場になったら思った以上にお客さまとのコミュニケーションがあって楽しかったんですよね。

「あそこにはどうやっていったらいいのか?」「どこがおすすめの場所か?」「おいしいごはんはどこで食べられるか?」など、たいてい同じような質問をされるのです。

でも、ディズニーランドのキャストになったみたいな気持ちで、楽しんでいる人のサポートをすることが本当におもしろかったんです。

そうこうしているうちに、副業で始めたはずの民泊サービスが広がっていきTipy records Innになりました。

「Tipy records house」の一室の様子。

-そうなんですね。お話をお聞きしているととてもうまく立ち上がっていったのかなと思うのですが、コロナ禍の影響はどうでしたか?

コアゼさん:Tipy records Innのスタートが2018年だったのですがスタートから2年は本当に忙しくて、文字通り「忙殺」という感じでした。

そのいっぽうで、本来やりたかったことができずにいるという思いもあったように思います。

そこにコロナがやってきて、状況はいっぺんしました。今でも全然戻っていませんが、当初は本当にゼロになりましたね。

当然、経済的に見るとマイナスしかありませんが、見方を変えると本来やりたかったことに向き合う時間ができたということでもありました。ですから、今はやりたかったことを実現しながら経済的にもなりたつようにバランスがとれるようなチャレンジをいくつかしているところですね。

 

■ここなら大丈夫だと思える場所をつくりたい

路地で出会った猫。駅から近いのですがとても静かで落ち着いた時間が流れています。

-コアゼさんが考える今後のビジョンをお聞きしたいです。

コアゼさん:私がレコードショップやライブハウスで音楽を通して感じたことは、自分の個性を出し、やりたいことをやるということはとてもかっこいいし、すばらしいことなんだということです。

私は平均化された自分を評価される、人と違った個性が否定されるような環境がとても苦手です。

おおげさかもしれませんが、Tipy records Innはかかわるスタッフ、地元の人たち、訪れたお客さまが自分らしくいられる場所でありたいと思っています。

自然体で訪れて、「ここなら大丈夫だ」と安心してもらえる場所にしたいです。

-そういった意味では、小田原という場所も大切なのでしょうか?

コアゼさん:そうなんです。小田原はすべてがちょうど良いと思います。都心へ通える距離ではありますが微妙に距離があります。そして、山も海もあります。

だから、ダサくて大丈夫なんです(笑)。なにも気にせずに自然体で小田原に来てほしいです。

-ゲストハウス以外にも挑戦されたいことはありますか?

コアゼさん:そうですね。本当にたくさんのアイデアがありますが、そのなかで移住支援とローカルキャンパスはすでに動きだしています。

小田原市と協力して移住を検討されている方にお試し移住を提供しています。私どもの部屋にお泊りいただき、小田原の日常に触れていただいたり、その方のライフスタイルにそって町のご案内をしています。今では、毎月3~4組はご利用いただいています。

ローカルキャンパスは、小田原をひとつのキャンパスと見立てて、さまざまな事業者と学生をつなぎ、学校では学べないようなカリキュラムを提供するという試みです。

これはコロナ禍で大学がすべてリモートになってしまった学生さんからのお試し移住の問い合わせがあったことがきっかけで思いつきました。

コロナの影響で思うようなキャンパスライフを送ることができずにこのまま社会に出ることに不安があるから、何か違った経験をしたいということでした。

「だったら小田原に来なよ」と誘ったことがこの企画の発端なんです。

-先ほどのお話にありましたが、本来やりたかったことにトライできた結果こういった新しい企画が生まれたんですね!

では、最後の質問ですが小田原の魅力はどのようなところだとお考えですか?

コアゼさん:観光地を巡るという観点でいうと当然、京都や東京などのほうがいいわけです。でも、日常に入り込むということに関して言うと小田原はどこにも引けを取らない魅力があります。

事実、海外旅行者が小田原に泊まる理由は新幹線が停まる駅であり、さらに富士山や箱根に近く、宿泊料金が安いからということがきっかけであることが多いようですが、小田原の町に触れてみて、小田原がいいから連泊するという方がたくさんいらっしゃいました。

これは、まさしく小田原の日常に大きな魅力があるということの証明だと思っているです。今は民泊が世界的に広がりましたので、観光は観光地に行くだけではなくその地の日常のくらしと、かなりつながってきていると思います。

私はここにフォーカスをあて、もっと魅力的に見せていきたいと考えています。

-今日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

観光はその地の日常のくらしとつながってきているとコアゼさんはおっしゃいました。これまでは、観光地としては真逆と捉えられていた私たちの日常生活の場が、じつは観光資源として大いなる魅力を秘めているかもしれないということに大変驚きました。

さらに、このことは海外旅行者が先に気が付いて徐々に国内の旅行者にも広がっているということでした。

さまざまなことが大きく変わるなかで新しい価値観を見つけ、そこに挑戦を続けるコアゼさんの活動に今後も注目していきたいと思います。

次のお休みに小田原観光はいかがでしょうか?新しい発見がたくさんあるかもしれません!

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

あわせて読みたい