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輝く男性インタビュー

こだわり抜いたごま油はまだまだ大きな可能性を秘めている。岩井の胡麻油株式会社の岩井徹太郎社長インタビューです。

明治時代から横浜で「岩井のごま油」を作り続けている岩井の胡麻油株式会社。岩井徹太郎社長に、製造に対する強いこだわりとこの先に見据える未来をお聞きしてきました。

香り、色、味のすべてに「岩井の胡麻油」ならではの個性がある理由には、確かな技術力とそれに裏打ちされた強いこだわりがありました。

伝統を守り、そして新たな挑戦を続ける岩井社長のインタビューをお楽しみください。

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■時代の風が横浜に吹いていた

-まず、御社の歴史から教えてください。

岩井さん:1857年に千葉県佐倉市で創業しました。当初は、ごま油以外にも菜種油や落花生油などさまざまな油の生産を行っていました。

千葉は、もともと菜種油の生産が盛んであり大きな市場である江戸へも近いことが創業の理由であろうと思います。

-しかし、現在は横浜に本社を置いていらっしゃるわけですが移転をされたのでしょうか?

岩井さん:そうですね。明治時代に入りごま油に生産を集中させていくようになるわけなのですが、ごまは当時から輸入品が多くを占めていました。

そのために、輸入品の窓口となっている横浜港を見に行こうということで当時の経営者たちが横浜を訪れたそうです。

その当時の横浜が開港景気に沸き立ち、それはそれは大変な活況だったようです。その様子を目の当たりにして、即断で横浜に移転を決めたようです。

それが1893年のことですから、その後126年に渡り横浜でごま油を作っています。

-横浜には時代の風が吹いていたんですね!ごまは当時から輸入品がほとんどであるとは知りませんでした。

岩井さん:ごまは日本産であると思っている方が多いようですね。でも実際は99.9%は、輸入に頼っています。その話をするとたいていの方が「えっ、そうなんですか」と驚かれます。

-でも、なぜ日本のものであるというイメージが強いのでしょうか?

岩井さん:それはごまの歴史と関連していると思っています。7世紀ごろに仏教が盛んになり殺傷が禁止されていましたから、ごまからたんぱく質を取っていようなんです。そのころからごまは日本人には欠かせない食材であったことは大きいでしょう。

-なるほど。予想以上に昔の話ですがそのくらい長いあいだ、日本人に親しまれている食材なんですね。ごま油の歴史はどうなのですか?

岩井さん:日本では仏教伝来以降からごまを絞って油をとるということをやっていたようですが、世界ではその前からごま油は作られているようです。たとえば、エジプトのクレオパトラが美容のためのパックに使ったとか、インドの伝統的漢方アーユルヴェーダではごま油を使用したマッサージが行われたり紀元前からの歴史があります。

日本では、江戸時代に日本橋界隈の屋台の天ぷら店を中心に流行り始めたようです。

 

■創業以来の製法にこだわる

-私は御社のごま油にごまの香りをすごく感じたのですが、製法にこだわりなどはあるでしょうか?

岩井さん:当社は、創業以来ずっと圧搾法という絞り方とごまの焙煎にこだわって作業をしています。

-それぞれ詳しく教えてください。

岩井さん:まず、ごま油の絞り方は抽出法、圧抽法、圧搾法の3つがあります。そのなかでも当社は、圧力だけでごま油を絞る圧搾法にこだわってきました。この方法は効率を考えるとほかに劣りますが、風味や香りという点では圧搾法がいちばんですので、創業以来こだわりをもってこの製法でやっています。

そして、粗ごし後は2週間以上にわたりタンクで静置します。不純物が沈みきれいになった上澄み油をさらにろ過して製品としています。

ここまでで膨大な労力と時間をかけていますから、効率化とは真逆の作業内容となっています。

あとは、ごまの焙煎ですね。ほかの油には無くごま油を作るときにだけ焙煎という工程がありますが、ごま油がもつ「良い香り」「香ばしさ」「色」はこの焙煎によって大きく変わってきます。

そのため当社では、ベテラン社員が焙煎を担当し、音を聞き色を見て、そして味を確認しながら作業をしています。

-なるほど、効率を重視し生産量を増やすのではなく手間と時間をかけて作ったからこその香りなんですね。

岩井さん:このこだわりが我々のような決して大きくはないメーカーの強みであると思います。創業以来守ってきた製法で世界から愛される商品として、これからも自信をもってお客さまに手にとっていただけるよう、社員一丸となってこだわっていきたいですね。

 

■ごま油の可能性はこんなものではない

-岩井社長が見据える御社の未来を教えていただきたいです。

岩井さん:ごま油は成熟したマーケットです。しかし、まだまだ可能性は広い商品だと思っています。事実、コロナ禍で内食が進みごま油の売上は伸びています。

たとえば、オリーブオイルはサラダにかけたりと生で使うことが多いですよね。これはごま油も同じようにお使いいただくことができるんです。

最近は、健康的でおいしいということで徐々に浸透してきましたがまだまだオリーブオイルほどの知名度ではありません。

-たしかにオリーブオイルと同じようにごま油を使うということがありますね。でも、伝統や歴史を守ることと変化に対応することは相反しているように思いますが、そのあたりはどのようにお考えですか?

岩井さん:当社は経営理念に「守・破・離」をかかげています。良き伝統をマスターして新しい挑戦を続けるということです。

しかし、「新しいものをどんどんやっていけば良い」というわけではなく、ごま油のビジネスの基本をきちんと理解したうえで、新しいアイデアを広げていかなければいけないと考えています。

また、伝統を守るというのはなかなか大変でして、創業の根っこをきちんと学ばないと次に行けません。
こういうデジタル化の時代ですけど、アナログの部分を残しながらデジタル化を進めていくというのが重要なのかと思います。

-今日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

インタビュー後に、「今の時代は、安くていいものとこだわりのつまったものに価値のある二極化が進む社会であるという認識のもとで『こだわりのつまったおいしい』を提供していきたい」と岩井社長はお話されました。

さまざまな価値観で物ごとが判断されるなかで誰に何を提供するのかをしっかりと見極めて、守破離を理念に新しいドアを開けていく岩井の胡麻油社の商品をぜひみなさまも1度お試しください。

こだわりの香りが届くと思います。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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