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輝く男性インタビュー

当たり前を超える経験から見えた希望に満ち溢れた世界へ。株式会社リンクライン神原薫社長のインタビューです!

株式会社リンクライン 神原薫社長

小田原市内に会社を構える株式会社リンクラインは、さまざまなデザインで付加価値の高い商品を生み出す石けんメーカーです。そんなリンクラインは障がい者を中心に構成されたチームです。なぜリンクラインが設立されたのか、そしてどのようにして現在のようなエキスパート集団になったのかなど、根掘り葉掘りお聞きしてきました。

神原さんご自身の経験をとおして変わっていく障がい者に対する思い、それとともに広がっていく実現していきたい世界のお話は心を大きく揺さぶられるものでした。

できるかできないかなんてやってみないと分からないよ、やってみて初めて見えたものがたくさんあったよ、という力強いメッセージが込められたインタビューとなりました。

ぜひ、お楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■会社の人事課題を解決するための創業だった

-リンクラインの創業に至った経緯からお聞きしたいです。

神原さん:弊社は、2010年創業なのですが実際は親会社であるコムテック株式会社の人事課題を解決するための創業でした。

-親会社の人事課題というのは具体的にどういうことなのですか?

神原さん:お恥ずかしい話ですが当時のコムテックは、障がい者雇用ができておらずそのことでお叱りを受けました。企業は、法定雇用率で定められた人数(2.2%)の障がい者を雇用する必要があるのですが、それが10年以上実現できていなかったのです。

当時、コムテックは上場していましたので非常に不名誉なことでした。そして、人事統括をしていた私が責任者となって特例子会社として障がい者を雇用する子会社「株式会社リンクライン」を創業したんです。

そこから、全国にある70カ所以上の障がい者を雇用している会社を見学してまわり、何を事業にするかを探しました。そこで石けんを作るということを思いつきました。

コムテックはIT関連の会社でしたので、ものすごいスピードで世の中が変化することを体感していました。

そのいっぽうで、どれだけ技術が進歩していても変わらないものはなんだろうかと考えた際に、お風呂に入りからだや頭を洗うことは変わらないのではないかと思ったんです。

さらに、世界中の人が石けんを使いますから拡張性もあると考えて石けんづくりをしようと決めました。

-なるほど。そういった理由から石けんを選ばれたんですね。

神原さん:そうなんですよね。そこから石けんづくりと障がい者をもっと知るために長野にある石けんメーカー「ねば塾」に住み込みで働かせてもらって、障がい者の方たちと寝食をともにしながら石けんづくりを体験する生活をしました。

行く前は、障がい者と言葉は通じるのかとか、何を話したらいいのか、そもそもこちらの話していることを理解してもらい意思の疎通ができるのかなど「できない」のではないかということばかりを考えていました。

しかし、実際にいっしょに生活をともにするなかで、私は大きな間違いに気がつきました。彼ら彼女らは、私と何も変わりませんでした。

たとえば、部屋に行けば好きなアイドルのポスターが貼ってあり、夜中までゲームをいっしょにやります。ごはんに行けば話題は欲しい車は何かとか、給与の使い方をどうするかなどで盛り上がります。普通の会社員と何も変わりません。

さらに、仕事となればなおさらです。石けんづくりにおいては、みんなが私の先生となりますから、私が教えてもらいながらどうにか戦力となるようにがんばるという構図でした。

「こうやったほうがうまくいくんだよ。」「カンちゃん上手だね。でもここが改善できるよ。」と真剣に教えてくれます。

私に懇切ていねいに教えてくれる姿やみんなが自分の仕事に誇りとやりがいを感じながら仕事にのぞんでいることが単純に格好良かったですね。

自分の会社を振り返ってみたときに、会社に誇りをもってやりがいを感じて仕事を行っている人が果たしてどれだけいるだろうかと考えさせられるほどでした。

心からみんなが仕事に誇りとやりがいを感じられる会社にしたい。彼ら彼女らのような障がいをもっていてもすばらしい仕事をする人がたくさん働ける会社にしたいと思いました。

そして、この会社を自分が責任者としてやりたいと心に決めて手を挙げました。それがすべての始まりですね。

 

■大量生産はしない。オリジナルで勝負する。

-では、創業後の事業展開についてお聞きしたいのですが、どのようにして始まったのですか?

神原さん:私たちは、福祉も石けんづくりもなにもかもが初めてでしたし、私は化粧品にもうといということで、何もわからないところからのスタートでした。でも、ひとつだけ絶対にゆずれない思いがありました。

それは、障がい者のための会社ですので、彼ら彼女らが主役でなければいけないということです。

実際に親会社のコムテックは、規模の大きな会社ですので先行投資として大規模な石けん製造機械を導入することも可能だったと思います。しかし、それをしてしまうと活躍の場が減ってしまいますからね。

ですから、「機械は入れない!」と決めちゃいました(笑)。

でも、それですと石けんは作れませんので、最初はねば塾に私たちが企画した石けんを作ってもらって、こちらのスタッフは納品された石けんをぴかぴかに磨く研磨という作業と出荷のためのラッピング・箱詰め作業を行うという共同開発からスタートしたんです。

それでできた石けんが、日本製で無添加にこだわった小春日和という商品です。これを250円で売り出しました。

-これが、第1号の商品なんですね。

神原さん:そうです。しかし、固形石けんは、機械での大量生産が行いやすいという背景から製造の多くが海外で行われています。また、日本人は忙しいですから、固形石けんよりもすぐに泡立つ液体のボディーソープにニーズが移っていったこともあり、日本製の固形石けんは非常に数が少なく、メーカー自体の数が減っています。

そのような市場構造ですので、海外で大量生産された3つで100円もしないような無添加石けんと縮小した消費者ニーズの市場で単純な無添加固形石けんだけで戦うのはなかなか厳しいことが予想されました。

しかし、この固形石けんづくりは、この事業を始めるきっかけになった商品なので撤退は考えていませんでしたので、これともうひとつ売上を上げられる商品はないだろうか考えました。

そこで、試行錯誤の結果として飾って楽しめるアートショーのようないっぷう変わった石けん「アートソープ」というジャンルを始めることにしました。

スタート時には、16名のスタッフがおりましたので彼ら彼女らが粘土をこねて何かを作る感覚で、思いおもいの石けんを作ればいけるのではないだろうかと考えたわけです。

-なるほど!大量生産の石けんとは対局にある完全オリジナルの商品を作るということにしたんですね。

神原さん:そうですね。たとえば、バラの形をした石けんを作ると決めたら16パターンのバラの石けんができるわけですよね。そして、ふたつとして同じものがないわけです。

これは、ほかにありませんので非常におもしろいなと思いました。

スタートは、星やハートから開始して徐々に複雑な形に挑戦をしていくなかで1年くらい続けているうちにユニークな石けん店があるぞと口コミで話題となり、ここから受託生産を受けることに繋がっていきました。

-これで石けんの受託生産事業が始まるんですね!

神原さん:そうなんです。もうこちらは必死なんで、たとえば消火器メーカーさんから消火器の形をした石けんを作れますか?と聞かれれば、できます!と即答していました。

私の営業活動に「できない」という言葉はありません(笑)。

そのように、さまざまなご要望にお応えしていくうちに徐々に受託生産の数が増えていったんです。

-効率的に大量生産することを否定し、オリジナル商品を作ることで勝負した結果、新しい道が見えたんですね。

神原さん:そうなんですよね。石けんメーカーとなってから私も知りましたが、石けんは生きもので生ものです。本当に日々変化しますし考え方によってはどんな形にも変えることができます。そして、どんなに時代が変化しても必要なものなんですよね。そう考えると何かすごく可能性を感じる商材だなと思っています。

 

■本当の意味での自立を実現したい

-受託生産の事業が中心であった御社がそのあとオリジナルブランドでの勝負も始められるのだと思うですが、何がきっかけでオリジナルブランドを始めることになったのかを教えてください。

神原さん:受託生産が増えたことで創業から6年目には、経常黒字となりました。でも、障がい者雇用の会社は国から助成金が出るため、経常黒字はこの助成金のおかけであることが大きいので、個人的にはまったく納得していませんでした。

助成金を差し引いたあとでも黒字になっている会社にしたいと強く思っていました。

スタッフたちには自立をめざしなさいと言っておきながら会社が自立できてないという事実をどうしても改善したかったんです。

そのためには受託生産だけでなく、自分たちで企画から製造・販売まで行う自社ブランドを作ろうと決めたことがきっかけです。

-神原さんの思いの強さが新しい挑戦に向かわせたんですね。では、自社ブランドはどのように作られていくのですか?

神原さん:そこから自社ブランドを作るためのアイデア探しを開始しました。まず、ブランド名から考えようということで、「li’ili’i(リィリィ)」に決定しました。

そのあとは、女性向けの化粧品・小物・雑貨類を買いあさって人気のある商品のモチーフとしてフルーツがあると気がつきました。

フルーツは、色も形も種類も豊富で、これを石けんにしたらおもしろいだろうなと思いまして、フルーツをモチーフにした「アイスキャンデイ」というシリーズを作りました。

-これはどうなっているんですか?

神原さん:これは、見えているフルーツも含めてすべてが石けんでできています。

-えっ、どういうことですか?フルーツを一つひとつ手づくりしているということですか?

神原さん:そうです。ブルーベリーを作る人、レモンを作る人と分けてみんなでパーツを分担しています。

-まさか、フルーツまで石けんだと思いませんでした!

神原さん:そうやって言っていただけるのがいちばんうれしいですね。すべてが手づくりですので一つひとつが微妙に違います。

それが、本物と見間違う人が多い理由でもあり、私たちの商品の強みでもあります。

これは、機械では絶対にできません。同じものを大量生産するのではなく、完全なオリジナル商品を作ることができる私たちの強みを最大限に発揮できる商品なのだろうと思います。

-しかし、これを作ってどうやって販路を拡大したのですか?

神原さん:これまでの活動のなかでかかわってくださった方が、新しく協力者や小売店さん、卸売り業者さんなどを紹介してくださりました。ご縁にも恵まれましたね。

そして、2016年に銀座に本店を構える大手雑貨ショップの1階に「li’ili’i(リィリィ)」の売り場を作っていただくことができました。これをきっかけにいっきに知名度が上がって1カ月後には生産能力の10倍を超える注文をいただいたんです。

-それはすごいですね!

神原さん:うれしいかぎりなんですが、生産能力を上回る注文をいただいておりますので納品に時間がかかることを謝罪してまわる日々が続きましたね(笑)。

そのようななかで、私の心に強く残っているエピソードがあります。

生産能力を上げるために大手企業の新卒社員の方々がお手伝いに来てくれるということになったんです。

本来であれば、健常者の仕事を障がい者が手伝うという構図が想像されますが、その逆でした。私たちのスタッフが石けんづくりをやるので、そのことでできなくなったほかの業務をこなしてもらっていたんです。主役は私たちのスタッフでした。

-なんか企業ドラマを見ているような気分ですね。

神原さん:でも、これは勝った負けたの話ではありません。私たちでもできるのだという事実がうれしかったんです。

-なるほど、冒頭におっしゃっていたいっしょに仕事をしてみたら何も変わらないと感じられたことが目の前で再度実感できたという喜びですね!

神原さん:そうですね。そうやってみんなでどうにかこうにか作っていくうちに、広告をいっさい使わずにSNSを中心とした口コミで次々と商品が売れていき、在庫がない状態が続きました。

-すばらしい結果ですし、すべてのお話がしっかりとひとつのストーリーとして繋がっていますね。
では、最後の質問ですが今後の未来の展望を教えてください。

神原さん:2021年は創業11年目となり、創業からの目標であった「助成金を除いての黒字化」と「年商1億円」と「スタッフ全員でディズニーランドに行く」の3つは叶いました。しかし、「障がい者を100名雇用する」という目標だけがまだ叶っていません。

現在は28名ですが、会社ですからやみくもに増やすことはできません。しかし、入社をご希望されている方からの連絡はたくさんあります。

そのために、数年前に障がい者のための職業訓練学校のような福祉施設「こころね」を作りました。こころねは、弊社ではなく別の会社でも働けるように実践をとおして学んでいただく施設です。

-なるほど。それもすばらしい活動ですね。御社だからこそ実践に則した訓練ができるわけですね。

神原さん:そうですね。そして、これは弊社の目標からは離れますが、障がい者の法定雇用率そのものがなくなる社会をめざしたいですね。

障がい者を雇いなさいと義務化している時点で、ある意味区別しているようなものです。そんな制度がなくても、当たり前のようにともに”働く”というところまでにもっていきたい。そうするために、私たちがどんどん発信していきたいと思っています。

世界に目を向けると、法定雇用率がない国もあります。これは、障がい者を特別扱いしないということでもあります。障がい者もしっかりと納税者になりましょうということです。

私がこの10年間見て感じたことは、彼ら彼女らはたいていのことはできるということです。そして、みんな生きることに真剣です。

今後は、高齢化社会が加速します。そうなれば、障がい者や高齢者、外国人など多種多様な人材を余すことなく活用する強い会社が必要になるはずです。

そのような会社の先がけになれるように今後もスタッフ一同がんばっていこうと思います。

-今日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

障がい者といっしょに生活をしてみたら、俺たちとぜんぜん変わらないから驚いたよと笑ってお話しされた神原さんの笑顔がずっと印象に残るインタビューでした。そのあと工場を見学させていただいて、その言葉の意味が少しわかったような気がしました。

当たり前のように挨拶をして、自分の任された仕事をしっかりとこなす。これってどうなっているのですか?質問すればこうですよと答えてくれる。

当然、違うところはあるけれどその違いって本当にいっしょに活動するなかで決定的に問題になる違いなのかを真剣に考えたことがありませんでした。これからの社会において、実現していかなければならない課題のひとつに対して新しい答えを出そうとしてくれているリンクラインのお仕事にこれからも注目していきたいと思いました。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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