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輝く男性インタビュー

日本独自の文化でもあるこの技術を世界に広げていきたい!有限会社つかさサンプルの2代目 田中信司さんのインタビューです!

有限会社つかさサンプルの代表取締役 田中信司さんと海の幸

レストランなどの前に陳列されている食品サンプル。小さいころに、これ本物なのかな?と恐るおそるさわってみた経験はありませんか?

多くの方が1度は目にしたことがあるこの食品サンプルは、じつは日本発祥の文化・技術だということをご存知でしたか?

今年で創業48年を迎えた食品サンプル製作会社つかさサンプルの2代目代表取締役田中信司さんに、食品サンプルの世界や製作に対するこだわりなどをインタビューしてきました。

田中さんが作る食品サンプルの数々は、本物と区別がつかないほど精巧に作られています!すてきな写真とともに、ぜひお楽しみください!

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■食品サンプルの始まりは人体模型からだった!?

食品サンプルが誕生した歴史を話す田中さん

-まず、つかさサンプルを始めた経緯を教えていただきたいです。

田中さん:つかさサンプルは、1973年に私の父が創業しました。昔も今も変わらず家族経営での運営を続けてきて、私自身は20歳のころからつかさサンプルで働き始めました。

そして、2年前の2019年に2代目として代表に就任しました。

-田中さんにとって食品サンプルは身近にあったものなんですね!では、いつか家業を継ぎたい!という意識をもともともっていたのですか?

田中さん:父親ゆずりなのか小さいころから物作りに興味があり、絵を描いたりプラモデルを組み立てたりするのは好きでした。なので、将来は手に職をもちたいと漠然と考えていましたが、正直家業1本しか考えていない、ということではありませんでした。

-そうなんですか?では、何がきっかけでつかさサンプルで働くようになったのですか?

田中さん:どちらかというとサンプルより実際の料理を作る方に興味があったので、学生時代は調理師専門学校に通い、寿司職人の道を歩んでいました。けれど、家業の方が忙しくなってきたので、そこを辞めて家業の方で働き始めることになったんです。

-なるほど、そういう経緯があったんですね。
食品サンプルといえば私の中で、レストランの前に陳列されている本物かサンプルか見わけのつかないめずらしいもの、という印象がありますが、そもそも食品サンプル自体が作られた歴史を教えていただけますか?

田中さん:大正6年に西尾惣次郎さんという方が人体模型を製造することから始まります。

それから、昭和7年に岩崎瀧三さんが人体模型を食品模型にできないかということでパラフィン(=ろうそくの素材)で食品サンプルを作ったことから始まりました。

-食品サンプルの始まりは人体模型からだったんですね。では、食品サンプルの発祥は日本ということになるのでしょうか?

田中さん:そうです。諸説はあるようですが、岐阜県の郡上八幡が発祥の地だと、私たちは思ってやっています。

当時、大雪が降ると電柱が倒れて停電してしまうので、ろうそくに火をつけてあかりをつけていたようです。そこで溶けたろうが雪の上に落ちたときに、天ぷらのように見えたことからヒントを得て食品サンプルが作られるようになったようです。

今もいわさきサンプルという大手企業がありますが、岩崎瀧三さんはそこの創業者で、私の父は岩崎瀧三さんのもとで働いていました。そこから父が独立しつかさサンプルを創業、今に至るというわけです。

田中信司さんの父、田中司好さんの技術は今でも健在です

-なるほど〜、食品サンプルが日本発祥だったなんて考えたこともありませんでした。

 

■後継者のためのしくみ作り

-実際の料理を作っていた立場から、食品サンプルを作る立場に変わられましたが、そのときの心境はどうでしたか?

田中さん:立場は違えど、料理をおいしそうにみせるということには変わりませんので、調理師学校に行っていたことや寿司職人として料理を提供していたことが今に生きていると感じます。

たとえば、料理の盛りつけや色合いですよね。そういったノウハウを知っているか知っていないかでは大きな差があると感じます。

食品サンプルは、いかに現物に近づけながらおいしそうにみせるか、ということがとても大事で、お寿司のサンプルもただごはんの上にネタが乗っかっていればいいというわけではないんですよね。

寿司職人をしていたからこそわかる部分がある

-このクオリティだと本物と見わけがつかないですね。ぱっと出されたら食べてしまいそうです。小さいころからお父さまの姿を見られていた田中さんからすると、作れるようになるまでそう時間はかからなかったんですか?

田中さん:私の父は生粋の職人で、見て盗むというやり方でしたから最初は苦労しましたよ。

食品サンプルの業界に入って今で27年ほどになりますが、今でもむずかしいなと思うことはありますから。どんなこともそうですが、知れば知るほど奥が深いと感じてくるんです。

また、食品サンプルの特徴は作る過程に決まりはなくて、結果がすべてなんです。だから、父には父のやり方がありますし、私には私のやり方がありますので、教えるということがむずかしい業界でもあると思います。

-そうすると、田中さんの技術を次の代に継承していくのもむずかしいですね。

田中さん:そうですね。今の若い人たちに「見て盗んで自分なりのやり方を見つけてね」という環境が受け入れられやすいかと考えると、そうではないと思っています。

それに食品サンプル作りの過程において決まりはないので、もしかしたら「自分にしかできない」という仕事内容もあるのかもしれません。

そればかりだとあとが続きませんので、私でなくてもできるようなしくみづくりをしていく必要があると思っています。

-後継者を作るということは、ただ単純に人材を見つけて技術を教えればいいというものではなく、後継者が担っていくその先の道を整備しておく必要があるんですね。

田中さん:レールを完璧に作る必要はないですし、後継者がそのとおりに進まなければならないということもないと思っています。ただ、私がやりたかったことや続けてほしいと思うことも継承してもらえればうれしいですし、どうしたら継承しやすいか?ということを考えながらやっています。

そこに後継者の新しい考えを取り入れてもらえれば、なおうれしいですね。

自分がやりたいことをやりながら、後継者のことも考えないといけないので、そこの判断を間違えないようにと、今はより責任感をもってやっています。

-今を見つめながら、近い将来、そしてその先の遠い将来を考えていらっしゃるんですね。
少し話は変わりますが、食品サンプルは完成までどのくらいの期間がかかるのですか?

田中さん:製作日数は商品によって変わりますが、2日間くらいで作れるものから5〜6日間かかるものもあります。たとえば天丼を作るとすると具材だけで考えても、えび、なす、かぼちゃ、ししとう、など複数ありますし、季節や日によって組み合わせを変えられるようにパーツ(具材)ごとに作りますので、型取りから始めると少し時間がかかってしまいます。

-でも、それくらいでできてしまうんですね。思っていたより短かったです。現在も素材はろうなのですか?

田中さん:いえ、今はビニール樹脂ですね。ろうだと熱や衝撃に弱いので、そこから改良されてビニール樹脂になりました。これだと熱にも強く、叩いたり落としたりしても壊れにくくなっています。

-今まで作られてきたなかでいちばんむずかしかったものは何ですか?

田中さん:ぱっとは出てこないですが、最近でいうとスイーツ系や盛りつけがその人の感性によって左右されるものはむずかしいですね。

たとえば、ババロアの上にフルーツをトッピングして最後にソースをかけてあるようなものを作るとすると、イメージしている完成図や正解はパティシエさんの頭の中にしかないんです。

そびえ立つパンケーキから今にもソースが垂れてきそうです

イメージは細かく聞いて近づけられるよう努力しますし、自分がいいと思ったものを出しますが、パティシエさん本人のイメージどおりでなかったらだめなんです。

ほかには、時間や室温によって鮮度が落ちてしまうものも大変です。サンプルを作るとき実際の現物をもち帰るのですが、そのあいだに色や状態が変わってしまうようなものを再現するのはむずかしいです。

-直接見るのとカメラで撮った写真で見るのとでは、やっぱり見え方が変わってきますよね。いや〜大変な仕事です。
田中さんがいちばんの力作を挙げるとしたらどれですか?

田中さん:肉のサンプルですね。肉に詳しい方々に本当にいい肉のサシの入り方を聞いてまわって、サシの入れ方は3〜4年試行錯誤を繰り返してようやくいいものが作れるようになってきました。これはいいサシの入り方だねって褒めてもらえました(笑)。

力作は自身の名刺にも使われているほどです

 

■メイドインジャパンの技術と文化を世界の方々に知ってもらいたい

世界の人たちに日本の食品サンプルを知ってもらいたい

-余談になりますが、食品サンプル職人ならではの職業病のようなものがあれば教えてください。

田中さん:みなさんに言えることではないかもしれませんが、お店に行ったり外食したりするときは、まず商品や料理をじっくり見て、自分だったらこう盛りつけるなと考えたり、この食材はじつはこんな色をしているんだ、とかいう観点でじーっと眺めたりしています。

-周りから見ると、鮮度を見るにはかなり長く見ていらっしゃる方だな〜と思われそうですね!(笑)

田中さん:子どもたちからは、「お父さん、不審者みたいだよ」ってよく言われます(笑)。

-では最後に、今後考えていらっしゃることを教えてください!

田中さん:いろいろ考えていることはありますが、まずは国内向けのネット販売を海外にも目を向けて発信していきたいと思って、今準備をしています。

食品サンプルというのは日本独自の職業で、日本の文化でもあると思っています。今では中国、台湾、フィリピン、ドイツなどにも職人がいるようですが、メイドインジャパンが何よりもいいものだという自信があります。

そして、時間はかかると思いますが将来的には、海外でもレストランの前に食品サンプルが陳列されるような文化を広げていきたいです。

-田中さんはレストランの前に食品サンプルがあった方がいいと考えていらっしゃるだろうという前提で、その理由はどういうところでしょうか?

田中さん:とくにファミリー層向けのレストランですと、男性女性でも食べられる量が違いますし、子どもやおじいちゃんおばあちゃんがいればなおさらです。

メニュー表だけでは判断しづらいサイズ感、量というものが視覚的に判断できますし、何より安心感が得られると思います。

-たしかにその違いは大きいかもしれませんね。個人的な感想として、ひとつ難点をあげるとするならば、どれも本当においしそうで食欲をそそるので、なかなか決められないということでしょうか(笑)。
本日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

誰もが1度は見たことがある食品サンプルは、あるのが当たり前のような感覚ですが、どのようにして誕生したのか、またそれが日本発祥だったということを知っている人は少ないのではないでしょうか?

今回、つかさサンプルの田中さんにお話をお聞きし、また新しい世界を知ることができました。
迫力ある大きな商品から、より繊細な技術が必要となる小さな商品を間近で見させていただき、これは一種の芸術作品だと私は考えます。

これからも田中さんの挑戦を応援していきたいです!
食品サンプルのキーホルダーなども販売されていますので、ぜひホームページやSNSをチェックしてみてください!

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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