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お出かけスポットインタビュー

「芸術のまち 藤野」で自身が理想とするライフスタイルを見つけてほしい。藤野観光協会の事務局長 佐藤鉄郎(さとうてつお)さんに藤野がめざす町づくりについてインタビューしてきました!

藤野観光協会で事務局長を務める佐藤鉄郎さん

神奈川県津久井郡に属していた町 藤野は、東京都八王子市と山梨県上野原市のあいだに位置しており、2007年3月11日に相模原市と合併しました。

藤野は四方を山々に囲まれ、非常に自然が豊かな地域であり、また「芸術のまち」として市内外のみならず海外からも注目されています。

お話をうかがった藤野観光協会の佐藤さんは、コロナ禍でこれまでの働き方と大きく変わり地方への移住が増えてきているなかで、藤野へは若い世代の移住者が増えてきていると話します。

藤野がめざす町づくりや魅力についてインタビューしてきました。
ぜひ、ご覧ください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■疎開画家の意志が受け継がれている

藤野の歴史について語る佐藤さん

-まずは、藤野の歴史について教えていただきたいです。

佐藤さん:藤野は東京都と山梨県のあいだに突き出ているようにあり、都内へは約1時間で行くことができます。四方は山々に囲まれており、幾筋かの川も流れていますのでとても自然豊かな町ですね。

第2次世界大戦中に画家たちが疎開してきたというのも藤野の特徴です。明治時代には鉄道がとおっていたので都内へ行くのも便利、そして空襲の危険もなく安全だということで、戦争中に画家たちが疎開してきました。

-画家が疎開してきたんですね。なぜ画家が疎開してきたのでしょうか?

佐藤さん:この自然環境と創作活動がマッチしているからだと思います。

疎開してきた画家の中にはフランスでも活躍した藤田嗣治さんという著名な画家もいました。

天気にめぐまれたなか自然に囲まれるのはとても気持ちがいいです

-たしかに、自然のなかで画を描いているイメージが強いです。

佐藤さん:そして先ほど藤野には山と川があるとお話ししましたが、じつは相模湖の湖面の6割は藤野なんです。

-山と川だけではなく、湖もあるんですね!

佐藤さん:そうなんです。ただ、湖があるためにここ一帯は水源地域保護の意味で保安林となっており、山を崩して開発していくようなことができない地域となっています。

それから、神奈川県が藤野の町おこしをどのようにしていこうかと検討したときに、藤野には画家が疎開してきたという歴史があったこともあり、芸術やアートと関連づけて町おこしをしていくという方針に決まったんです。具体的には昭和の終わりから平成の初めにかけて「藤野ふるさと芸術村構想」が提唱され、それにもとづいていくつかの事業が実施されました。

-自然環境は申し分ないですもんね!どのように打ち出されていったのですか?

佐藤さん:初めは、藤野芸術の家というアート体験やコンサートができるような施設を作るなどしてハード面を整備していきました。しかし、ハード面だけではなく、ソフト面、いわゆる「人」ですよね。そのソフト面を整備していく必要があるとなったときに、町役場が中心になってアーティストの方々に実際に住んでもらおうと使っていない家を紹介していったと聞いています。

これが移住の第1世代です。彼らが藤野に移住してきた理由は疎開画家・藤田さんらと変わらず、彼らも藤野が創作活動にふさわしい町だと感じてくれたことだと思います。

-今も昔と変わらない感情が湧くのは、これだけの自然を大事に残してきたからなんでしょうね。

佐藤さん:これだけの環境はどこにでもあるわけではないですからね。

-では、アーティストの移住が藤野の町おこしに大きな影響を与えたのですね。

佐藤さん:それともうひとつ、そのアーティストがたくさんのイベントを開催してくれているということがとても大きいですね。藤野で開催される代表的なイベントのひとつに「藤野ぐるっと陶器市」があるのですが、2019年の開催で20周年を迎えることができました。

ただ、残念ながら昨年と今年はコロナの影響で中止になったので、来年こそは開催したいと思っています。

-中止は残念ですが、20年間継続して開催されてきたのはすごいですね!それに移住をしてきたアーティストの方たちがイベントを開催してくれるのがいいですよね!

佐藤さん:これは私が藤野のひとつの魅力だなと思っていることなのですが、私も都内から藤野に移ってきた組ですが、藤野はとても開放的で町全体があたたかく受け入れてくれます。

町全体がそういった雰囲気ですので、移住してきた彼らもイベントをしやすくなっているのだと思います。

-いい循環が生まれているんですね。

佐藤さん:そうしてたくさんのイベントを開催してきたことが、この藤野をおもしろい魅力ある町にしてくれている要因のひとつになっていることは間違いないです。

芸術のまち・藤野を象徴する野外環境アート作品「緑のラブレター」

疎開画家の藤田さんたちは戦争終了後、藤野を芸術にあふれる町にしていこうという構想をもっていたと伝え聞いています。しかし、それは叶わなかった。

けれど、世代を超えてその意志を受け継ぐ方たちが藤野に訪れて、藤田さんらが思い描いていた町づくりを実現してくれているんじゃないかと思っています。

 

■藤野が日本初の活動拠点に選ばれる

-アーティストの方たちが移住してきたとおっしゃっていましたが、全体の割合でいうとどのくらいの数になるのでしょうか?

佐藤さん:藤野地区の人口が約8,500人、これに対してアーティストは300数十人と推定されますので、人口の約4%になりますね。

-人口の4%ってものすごい数字ですよね!

佐藤さん:アーティストの厳密な定義がありませんので正確な数字とは言えませんが、かなり多いと思います。

-アートに関心があり、さらに里山である、今の世の中が求めている理想形のように思いますが、ほかに特徴はありますか?

佐藤さん:海外ではすでに始められている活動で、日本でもその活動が始められるとき藤野に活動拠点を置いた団体が3つあります。それは、パーマカルチャーセンタージャパン、トランジション藤野、シュタイナー学園です。

-それらの活動を日本で始めるために置いた活動拠点が藤野にあるのですか?

佐藤さん:そうなんです。

-それぞれどういった活動なのですか?

佐藤さん:パーマカルチャーセンタージャパンは農業を中心とした持続可能な社会をデザインしていくというもの。

トランジション藤野は、たとえば化石エネルギーから再生可能なエネルギーへの移行を促進したり、何者かに依存する社会から自立して取り組める社会づくりをめざしていくというものです。

シュタイナー学園は、オーストリアやドイツで活躍したルドルフ・シュタイナーの教育哲学に基づいて、教科書を使わない、テストをしない、個人がもっている能力をそのまま伸ばしていける教育環境を提供していくなど独自の教育を実践する学校です。シュタイナー学校はヨーロッパなどでは普通の私立学校のひとつとして存在していますが、藤野のシュタイナー学園は日本、そしてアジアで初めて学校法人として認可された学校でもあります。

-それらの活動拠点がなぜ藤野だったのでしょうか?

佐藤さん:理由は定かではないですが、偶然ではないと思っています。パーマカルチャーセンタージャパンとトランジション藤野の共通点といえば自然や資源を大事にし持続可能な社会をめざすこと、藤野とシュタイナー学園とはアートがキーとなっていると思います。

シュタイナー教育は「芸術としての教育」をうたい、藤野はアートを中心に町おこしを図ってきました。

トランジション藤野ではお金に依存しない関係を築いていくために、藤野地域通貨「よろづ屋」というものを作りました。1円=1萬(よろづ)のイメージで、何かをしてもらったときは対価として萬を支払い、逆に何かをしてあげたときは報酬として萬を受け取ります。実際にお金のやり取りはしませんし、あくまでも通帳上のやり取りですが、この取り組みでお金に頼らない自立した繋がりのなかでやりたいこと、欲しいものを手に入れることができます。

藤野地域通貨 よろづ屋の手帳

佐藤さんもたくさん関係を築いています

-パクチー、ニラ 200萬プラスがありますね!

佐藤さん:これは私が自分で作っているパクチーとニラなんですよ(笑)。

「よろづ屋」手帳の裏にも書いてありますが、大切な資源を「お互い様」の思いやりで生かし、それが信頼や生きがいに繋がってくる。この取り組みが、人と人とのかかわり方を大事にするきっかけになればいいですね。

 

■どのように生きていくのかは人それぞれでいい

-これまで藤野のすばらしさをたくさんお話いただきましたが、藤野に来たときにぜひこれを見てもらいたい!や、これを体験してほしい!ということはありますか?

佐藤さん:里山体験ツアーはぜひ体験していただきたいですね。これは里山のごくふつうの家庭を訪れ、もの作り、野菜などの収穫体験や川遊び、山遊び、里山伝統の食事づくりなど多彩な体験をしていただく日帰りのツアーです。

コロナ前は外国の方の参加も多かったのですが、今は応募定員を制限するなどしてコロナ対策を充分に取りながら実施しています。

ほかには陣馬山をはじめ藤野の山々のハイキングもおすすめです。「藤野15名山」めぐりも人気です。

野外環境アート作品がある「芸術の道」

あとは、名倉地区には「芸術の道」がありますが、この道に点在する約30の野外環境アート作品を鑑賞しながら散策を楽しむというのもおすすめです。「芸術の道」は1周約6.3kmですので、2時間から3時間かけてゆっくり回っていただきたいです。

-コロナ禍で人が多く集まる場所に行きづらいなか、藤野では自然のなかでアートに触れることができるので、いいリフレッシュにもなりますね!
最近になって移住される方がまた増えたのではないですか?

佐藤さん:増えましたね。移住してきてくださる方はみなさん大歓迎なのですが、私たちとしては藤野に移住して自分も何かやってみたい、自分がしたい生活や働き方で楽しみたいという意識をもってもらえれば、なおいいなと思っています。

移住・定住促進事業に取り組んだ当初は、このような環境ですのでリタイア後、新たな生活を求める方の移住が多いと思っていたのですが、実際はまったく違いましたね。圧倒的に若いファミリー層の移住が多いですね。

-今までは会社に出社することが当然でしたが、今では月に1度しか出社していないという方も多いですよね。そう考えると藤野から都内までは1時間ほどで行けますし、自分の時間も増えましたから、その時間を使って本当にしたいことができるようになりましたよね。

佐藤さん:今までの当たり前がいい意味で覆されたことによって、考えることややれることに自由度が増したんだと思います。

そうやって本当に自分のやりたいことを見つけてくらしている方を見ていると、なんだかとても楽しそうなんです。そういう人たちがこれからの時代のくらし方を作っていく人たちなんじゃないかと思います、そういう人たちといっしょにこの藤野をもっと魅力ある町にしていきたいです。

-わかりました。本日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

私が藤野町へ向かう途中、真っ先に目に入ったのは野外環境アート「緑のラブレター」でした。佐藤さんのお話をお聞きするまで何なんだろうと不思議でしたが、藤野町とアートの関係性をお聞きし理解することができました。

町全体にアート作品が散りばめられているのはすごくめずらしいですよね!

そんなアートがあふれる「芸術のまち 藤野」に、ぜひ1度訪れてみてはいかがでしょうか?
心身ともに癒されるひとときを味わうことができます。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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