たいせつじかん ?ほっと一息。少し休憩。幸せな時間?

輝く女性インタビュー

「だいじょうぶ、たいへんな時期は終わるよ」産後がんばっているママたちへ―看護師・産後指導士 久保川琴美さんインタビュー

2021年9月より、パルシステム神奈川の子育て支援サービス「かながわMIRAIクラブ」の会員向けにLINE配信される「お家でできる!簡単で元気になれるエクササイズ KOTO style」の講師をつとめるKOTOさんこと、久保川琴美さん。ピンと伸びた姿勢、引き締まったうで、透明感のある白い肌、―44歳の年齢をまったく感じません。今回は、9歳、6歳、1歳1カ月の男児を育てるママであり、看護師、産後指導士である久保川さんに、産後の女性をとりまくさまざまな環境についてお話をうかがいました。久保川さんの語る女性の生き方、子育て、社会への関わり方など、元気あふれるインタビューです!

 

■「Koto style」で、パパもママも簡単に元気になろう

-かながわMIRAIクラブの「お家でできる!簡単で元気になるエクササイズ」動画を拝見しました。コロナの感染拡大も収まりが見えないこの時期、ママが赤ちゃんといっしょにお家でエクササイズができるツールはすばらしいですね。

久保川さん:ありがとうございます。動画では特別な道具を用意したり、わざわざ動ける服装に着替えたりすることなく、日常的にできるエクササイズを紹介しています。呼吸法や姿勢などにもフォーカスしていますので、ママだけでなく、パパにとっても効果的なエクササイズです。ぜひいっしょに取り組んでいただきたいですね。

-動画を観て、ヨガやピラティスのインストラクターなのかと思ったのですが、じつはそうではないと・・・?

久保川さん:はい。ふだんは一般社団法人体力メンテナンス協会認定指導士養成講師として、バランスボールを使用したエクササイズで産後指導などを行っています。かながわMIRAIクラブの動画では、「すぐできる」ことを大事にしていますので、バランスボールは使用しない方法をお伝えしています。バランスボールを使ったエクササイズを体験したい場合は、私のオンライン講座を受講していただくといいかもしれません。もちろん、かながわMIRAIクラブの動画のようなバランスボールを使用しないエクササイズもありますよ。

-久保川さんのプロフィールには、バランスボールインストラクター以外に、「ベビーマッサージ」、「夫と仲良くしたいママのためのコンサル」など、とても興味深い内容が目に飛び込んでくるのですが、これらに関連した内容も産後ケアの一環としてオンラインで受講できるのですか?

久保川さん:そうですね。からだを整えるエクササイズは重要ですが、健康を維持するためには「心の健康」がともないます。わたしの講座ではこの「心」の部分を大事にしながら、また、看護師としての知識も用いて、産後女性に必要な情報を発信しています。女性は妊娠すると、脳もからだも心も変わっていきます。その変化に翻弄されて、周囲との関係性にも影響を与え、やっと出会えた赤ちゃんとのしあわせなはずの時期に、つらい思いをため込んでいるママが少なくありません。かくいうわたしも、最初の出産のときは、たいへんつらい産後を過ごしたのですよ。

 

■しんどかった育児が、どうして終息できたのか!?

-つらい産後を過ごしたとのことですが、どんな状態だったのでしょうか?

久保川さん:妊娠中は子育てがきらきらして見えていたのに、出産したらこんなにつらくてしんどいものなのか・・・と。長男出産後の1年間は、楽しそうにしているお母さんを見たら「元気で楽しそうでうらやましいな・・・」と涙が出る状態でした。今考えると、軽い「産後鬱」だったのだろうなと思うのですが、そのときの自分には、そんな感情から抜け出す術がありませんでした。

-どうしてそのような状況になったと思われますか?

久保川さん:わたしは子どものころから自他とも認める活発少女。生徒会役員や学校代表の駅伝選手、中高の青春を捧げたバスケットボールでは選抜選手として全国大会に出たりしました。高校時代にはドルフィントレーナーやCAPP(コンパニオン・アニマル・パートナーシップ・プログラム)という医療現場での「人と動物のふれあい活動」に強い関心をもって動物看護師になる夢を叶えました。さらにCAPP活動に近づくべく、「人間側の医療にアプローチしてみよう!」と、27歳のとき10代の同級生に混ざって看護学校に通い、30歳で看護師デビューを果たしました。

-活発かつ、行動力の人ですね!

久保川さん:そう!そのとおり(笑)。子どもを産むまではやりたいことをやってきたつもりでした。でも、子どもを産んだあと、「こうあるべき」という育児に対する考え方に縛られるようになりました。「たくさん食べさせないといけない」とか「自分の親にこうされたから自分もこうしなくちゃいけない」というのが苦しくて・・・。でも、そんな自分の状況を、自分では気づけなかったのです。いつも冬眠から起きて穴から出てきた子育て中の母熊みたいにピリピリしていました。

-熊ですか!噛みつかれそうで、近づきたくないですね。

久保川さん:今でこそ笑って話せますが、当時の自分は本当にピリピリしていて怖かったと思います。夫の転勤が多かったのですが、新しい町に行っても輪ができているところに入っていくことができず、「どうせすぐ転勤だし」「友だち作ったって無駄だし」と、人との交流を自分でシャットアウトしていました。また、健康には自信があったのに、産後3カ月で血液検査を受けたところ甲状腺機能低下症になっていて、病院で「こんな状態でよくがんばっていたね。周りの人から何も言われなかったの?」と言われたことも。からだも心もハードでつらいだけの育児―でも、産後だからからだや心がしんどいのは当たり前と思っていたら病気だったなんて・・・。全部周りのせいにして、この時期は夫婦関係も最悪でした。

-そんな状態がよくなったのはどんなきっかけですか?

久保川さん:きっかけというか、1年くらいたつと落ち着いてきたのです。産後1年ともなると、からだやホルモンの状態も出産直後とは変わってきますし、なによりも、赤ちゃんが大きくなってきて、周りの環境が変わってくるもの。同じ状態は続かない。今ならそう思えるのです。

ママたちの気持ちがいたいほどわかるし共感できるからこそ、「今私はこうなっているから大丈夫だよ!」と伝えるのが、私のいちばんの使命。「今はずっと続かない、あなたも変わる、赤ちゃんも変わる。あなたが変わることで周りも変わるよ。どうか、閉じこもらずに、私のところに連絡してきてくれた勇気を褒めてあげて」と伝えてあげたいと思っています。

-久保川さんのように産後クライシスで外部とシャットアウトしている状況で連絡をするのは、まさに「勇気」のいる行動ですよね。

久保川さん:そうですね。そんなママたちにどうやって情報をお届けできるか試行錯誤しているところです。

-では、ふたり目の産後はどのような経過をたどったのですか?

久保川さん:それが、夫も両親も私を案じて「やめておこう」とふたり目の妊娠を反対しました。両親には「またあんな風になったらかわいそう」と言われました。でも、私は「あんな風に」ならない自信があったので、夫を説得して無事ふたり目を妊娠。そのときの産院でバランスボールエクササイズの産後ケアに出会いました。看護師は、病気の人の看護は学ぶけど、普通の人が元気になる方法は学ばないのです。その点で、この産後ケアは学ぶところが多くありました。ですから産後3カ月のとき、自分のケアとインストラクターの資格取得を目的に、講座に通うことにしたのです。

-それが、一般社団法人体力メンテナンス協会認定指導士養成講師という資格ということなのですね。

久保川さん:そうです。38歳で出産しましたが、バランスボールの産後ケアの講座に通うと、ひとり目のときとはまったく違い、とても調子が良くて。からだが元気だから心も元気でしたね。

-産後のケアがいかに重要か・・・ということですね。

 

■「地球人」になれた、ベトナムでのくらし

久保川さん:じつは、バランスボール講座に通っているさなか、夫の海外赴任が決まり、次男が7カ月のとき、ベトナムに行くことになりました。それまでの私は、海外にまったく興味がなくて、学生時代は「英語が話せなくても、日本では生きていける!」と、まったく英語を勉強しませんでしたので、英語は単語程度の知識。夫はそんな私を知っていたので、転勤の話を切り出すのをものすごくためらっていたのを覚えています(笑)

-そんな久保川さんが、生後7カ月の子どもを連れてのベトナム行きをよく決心しましたね。

久保川さん:両親などの周囲はとても心配していましたね。でも、やっぱり家族はいっしょにいた方が私も子どももきっとハッピーだと思いましたし、行ってみて「本当に無理!」と思ったら帰ってきたらいいと思っていましたから。しかし、じっさいに行ってみると、本当にすばらしい時間を過ごすことができたのです。ここでのくらしが私を「地球人」へと進化させてくれました(笑)。

-どんなくらしだったのですか?

久保川さん:ベトナムでのくらしを話すうえで絶対に外せないのは、駐在員のバスケットボールチームに夫婦で参加したこと。みんな気のいい人ばかり。私たちが来たときに手厚く迎えてくれたことで、私たちはそのコミュニティに心地よく溶け込ませてもらいました。1年ほどたったときには、今度は私たち自身が迎える役目になっていました。駐在員って、任期が終わると帰ってしまうのでどんどん変わっていくのですが、現在日本全国ばらばらの場所にいても、このコミュニティの人たちとはつながり続けています。

-自分たちがかつて経験した異国の地での不安を、先に来ている人たちがサポートしてくれるのですね。

久保川さん:バスケットボール自体も、高校の部活のような本気の活動でした。出産後はほとんどバスケットボールをする機会のなかった私は、「なんで今ごろ高校生みたいなしんどい練習をしないといけないの~!!」とビックリしましたが、真剣にやるのが楽しくて、おもしろくて。駐在員のASEAN杯などで優勝もして。自分だけのことでこんなにうれしくて一生懸命になれるという、久しぶりの経験ができました。

-日本だと親よりも「子どもを優先させるのがよし」という空気がありますものね。

久保川さん:ベトナムの人って親にも子にも寛大なのですよね。だから、仲間たちとレストランへ行ったとしても「お母さんたちは食べてなよ。」と言って、子どもたちは店員さんに遊んでもらったりしていました。

それに、海外の人の子育てって結構ダイナミック。地べたの砂だらけの石をなめていても

「アハハハ!かわいい~!」って感じで、お母さんはまったく動じないのです。

-日本だと、「それ汚いよ!ダメ―!!」って大慌てになりそうですよね。

久保川さん:私はそういうのを見て、「石をなめていようが、子どもたちは楽しそうだし、みんな笑っている。“ダメなこと”と決めるのはこっち。“怒ること”はこっちが決めていることなのだな。本当は、お母さんが笑って過ごせていることがいちばん大事なことだよな。」と考えるようになりました。

当時、私は怒ってばかりでした。なんでもかんでも怒っていた。でも、ベトナムの気さくな交流を経験するうちに、「私って怒ることじゃないことでも怒っていたな」と気づけたのです。ベトナムでいろんな人と出会って、子育てに関する「べき」というのがすごい勢いで壊されていきました。子どもがいることが、こんなにしあわせで、社会から愛されることなのだなと感じられたのがベトナムでした。おおらかすぎて困ったこともありましたけど(笑)

-海外で、自分とは異なる価値観や文化と出会ったから得た気づきですね。

久保川さん:ベトナムでのくらしを通して、私には「地球人」という概念が生まれました。日本にいると、「どこの人?」「京都の人?」と、小さなコミュニティで生きていながら、さらに小さな区切りで人を区切りたがるのはなぜかな・・・と考えるようにもなりました。

近ごろ「多様性」という言葉をよく耳にしますが、それを求めていないママたちもいるようにも感じています。コロナという状況も影響しているのかもしれませんが。

-コロナも気になりますし、敢えて異質なものと交わる必要はないということでしょうか。

久保川さん;そうですね。でも、いろいろな価値観に立ち会うことは、子どもたちにとって宝になると思うのです。たとえば、日本の若者でも赤ちゃんが好きな子もいます。電車で三男坊を抱っこしていると、ちょっかいをだしてくる高校生もいたりしました。電車を降りるとき、「遊んでくれてありがとうございます。うれしかったです。」と、ひとこと伝えるといいのではないかと思うのです。

-小さな子どもを育てている時期は、ママにとっても子どもにとっても、高校生と接する機会なんてほとんどありませんものね。子どもにとってはものすごく新鮮な体験かもしれませんね。

久保川さん:日本では、何気ない日常生活のなかで「子連れに冷たいなぁ」と感じることもありますが、あたたかい人もたくさんいますし、声を掛けたら助けてくれるでしょう。それを「気づいてくれない」と文句を言うのはちょっと違うと思うのです。ママたちも勇気をもって、少し声を出して助けを求められるといいですよね。「少しベビーカーを持ってもらえませんか?」とか。「いやです。」という人はいないと思います。

-日本人の美徳と言われる「奥ゆかしさ」のために、「気づいてもらえない」状況が生まれてしまうのでしょうね。自分の思いや気持ちを「発信する」ということは大切だし、美徳を揺るがすものではないということを、たくさんのママに気付いてもらいたいですね。

 

■「ホルモンに翻弄されない私」を見つけて!

久保川さん:「発信する」ことは、夫婦の間でも大切なこと。夫婦間のすれ違いの原因は、産後の子育てと言われることもあります。女性は「じつはこんなところが気になっている」と発信して、小さなモヤモヤをその場で解決していくのが長く仲良くくらしていく秘訣だと思うのです。自分の気持ちを発信していないと、女性は引きずるのですが、男性はその場で終わっているので「今ごろそんなこと言っているの?」となってしまうのです。

-すごくわかる気がします(笑)。

久保川さん:パパから気遣いの言葉を掛けられたり、「ゆっくりしておいでよ」と外出を勧められても、「いつも私ばかりしんどくて、自分はいつも自由に過ごしているくせに、何をえらそうに!」と、イラっとするママもいるようですね。でも、そこは引っかかるところではないのです。「ありがとう!」と言えない心に何か問題がある。でもね、それがホルモンのせいならそれはしかたないのです。「わたし今、イラっとしているけど、ホルモンのせいや」といって楽しんでほしいです。ホルモンに翻弄されない自分を見つけてほしいですね。

-でも、久保川さんがひとり目の産後そうであったように、自分自身が見えなくなってしまう状況では、ホルモンに翻弄されて自分を見失ってしまうでしょうね。

久保川さん:そうですね。じつは、子どもが0~2歳の間に離婚する夫婦がいちばん多いという調査結果があるのです。衝撃でしょ?子どもがこんなにかわいい時期に、それなりの衝突をする。子どもたちの心や記憶に残るかもしれない。だったら、仲良く楽しく育児した方が、みんながハッピーですよね。そういういい循環を生み出せるのは、やっぱりお母さんなのですね。女性が無理せずに、いい心の状態になるようケアをしてきたい。私の産後ケアはひとつの名目で、心を振り返ったり、未来の自分はこうありたいとか、コミュニケーションのこととか、相手にメッセージを伝えるとかがプログラムに入っています。

自分を変えたいと思っていても、それを続けるためには、応援して客観的に助言してくれる人、伴走してくれる人が近くにいた方が、早く結果が出るし、心も折れないと思うのです。

-ひとりでがんばらないでいいよということですよね。

久保川さん:うまくおむつが替えられなかったり、うんちのおむつ替えはママへスルーしてきたり、「この人に言っても無理!」とパパにイライラしているママもいるかもしれませんね。でも、パパは赤ちゃんが生まれて初めて親になるのです。妊娠中におなかの中に赤ちゃんを感じながら親になっていくママとは10カ月くらい差があるわけです。いきなり入部してきた人にスタメンのようなことをさせてもだめってことです。ママもしんどいけど、教えて褒めて育ててあげてください。きっとそのあと、楽になります。

-ホルモンのせいでイライラするけれども、新入部員に手とり足とり寛大に教えてあげる余裕が大事ということですね(笑)

久保川さん:いい循環がうまれるのは全部自分から。悪い循環も全部自分から。そこに、気づいてもらいたいですね。また、女性が笑顔で過ごせるようになれば、いい循環が生まれて、社会はよくなると思うのです。私と出会った人たちがそんな気持ちになってくれたらいいなと思います

 

編集部のひとこと

編集長

かなちゃん

久保川さんは産後指導のお仕事のかたわら、医療的ケア児や子ども病院でがんばっている子どもとそのご家族が、家族みんなでワクワクしたり楽しんだりできる場づくりの活動を企画したり応援したりしているそうです。
直近では南国パラオにある、障害の有無や年齢に関係なく誰もが楽しめるDolphins pacific(ドルフィンズ・パシフィック)というイルカとのふれあい施設のプロジェクトをクラウドファンディングで応援しているとのこと。
クラウドファンディングでは、パラオのDlphins Pasificとオンラインミーティングシステムzoomでつないで、彼らが発信する新しいDlphins Pasificの価値にふれる機会がリターンとなります。
久保川さんは、8月29日(日)[10:45~11:30]枠での30端末分の接続権を得て、入院中や在宅ケアの難病児やそのご家族などにこの機会をシェアする予定とのこと。
これまでつながっていたさまざまな団体へ情報提供を行っていますが、この記事をお読みの方のなかでも、いっしょにパラオを感じる体験をする団体やご家族がつながれば素敵ですね。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

あわせて読みたい