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輝く男性インタビュー

周囲の声で生まれ変わった厚木グラススタジオ! そこで専属職人として活動する山口浩二さんと代表取締役社長を務める梶宏光さんにインタビューしてきました!

厚木グラススタジオの代表取締役社長の梶宏光さん(左)と専属職人の山口浩二さん(右)

厚木グラススタジオは、名古屋に本社を構えるノリタケカンパニー(以下「ノリタケ」という。)がガラス細工の事業を始め、昭和46年に神奈川県の厚木にガラス工場を構えたことから始まります。

ノリタケは全国からガラス職人を募集、その中のひとりが現在厚木グラススタジオで専属職人として活動する山口浩二さんです。

出会いに恵まれたと話す山口さんは、まさか自分がガラス職人になるとは思ってもいなかったそうですが、今では「一生通せる仕事に就けたことが誇り」だとおっしゃいます。

ガラスに魅了され、そして多くの方にガラスの魅力を届ける山口さんと現在代表取締役社長を務める梶さんのおふたりにお話をうかがってきました。ぜひお楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■「これからも続けてほしい」という声を受けて

厚木グラススタジオが生まれた経緯を振り返りながら話す山口さん

-厚木グラススタジオの歴史からお話をお聞きしたいと思います。

山口さん:厚木グラススタジオは、陶磁器や食器で有名なノリタケがガラス細工事業を始めたことから始まります。ノリタケの本社は名古屋なんですが、ガラス工場は東京から近い方がいいとのことで厚木に建てられました。

ノリタケはガラス細工事業を始めるにあたって全国からガラス職人を募集したわけですが、私は、高校の先生がノリタケに技術指導という立場で勤めていらっしゃっていて、その先生から声をかけていただき急遽鹿児島から厚木にくることになりました。

-山口さんにとってガラスは親しみがあるものだったのですか?

山口さん:私の実家の横がガラス工場だったので小さいころから親しみはありました。

-でも、先生から声をかけてもらえたということは山口さんに才能があったんでしょうね!

山口さん:どうでしょうね。ただ、天下のノリタケですから全国から腕に自信のある職人が集まってきましたし、私はその中でかなり揉まれて育ちましたね。

-結構厳しかったんですか?

山口さん:当時は上下関係が絶対の徒弟制度でしたし、技術を教えてもらうということも簡単ではない世界でした。この事業の職人だけでも100人くらいいましたし、みんな技術を教えることで自分の仕事がなくなる可能性があるという危機感のなか仕事をしていましたから、先輩も簡単には教えてくれませんでした。

だから休憩時間に練習したり、先輩の技術を盗み見したり、、、夏場なんかは暑くて毎日クタクタでした。今じゃ考えられないかもしれないけれど、そういう世界だったんです。

-でも、山口さんはそんな過酷な環境下でも続けてこられたわけですよね。続けられた要因は何だったんですか?

山口さん:自分でも言うのもなんだけど、出会いに恵まれたからですかね。

まずノリタケですが、企業としては仕事ができない職人がいると困るわけですが、練習にガラスの素材を使うのも当然コストがかかります。けれど、業務終了後や休憩時間でも練習をさせてくれましたし、いいのができれば出品もさせてもらいました。

もともとディナーセットの食器を作っている企業でしたし、ものに対する愛着を生み出す力がすごくて、そういう企業で働かせてもらったことを今でも感謝しています。

釜を見つめる山口さん

-人を育ててくれる企業なんですね!

山口さん:そうです!もうひとつは先輩との出会いです。

今ではしんちゃんと呼んでいる先輩なんですが、本当にやさしく接してくれましたし、そのしんちゃんが厚木グラススタジオをいっしょに立ち上げたひとりなんです。

-信頼できる先輩なんですね。なんか学生時代を思い出します。それからどのように進んでいくのですか?

山口さん:それからノリタケでガラス職人として働いていたんですが、オイルショックや大量生産の時代になってきて、海外から安価なガラス食器が入ってくるようになりましたから、ガラスだけでは採算がとれなくなってきました。

なので、工場を止めることになったんです。

-稼働していた期間はどのくらいだったのですか?

山口さん:30年くらいだったと思います。でも、ノリタケはその工場のある敷地内に趣味でガラスに触れたい人たちのためのアーティストクラブとその施設を作りました。そこに私としんちゃんが残り、クラブの会員さんにガラスのことを教えていました。

アーティストクラブを始めて5年くらいでそれも撤退することになったんですが、会員さんたちから「クラブがなくなるのはもったいないから続けてほしい」という声があがったので、新しく株式会社を作り、そこに会員さんたちも出資してくれて厚木グラススタジオを立ち上げました。

-会員の方々からそういう声があがるのはみんなに必要とされている証ですし、すばらしいことをされていたんですね!立ち上げたのは山口さんとしんちゃんのふたりだったのですか?

山口さん:もうひとり、おのざという人間を含めた3人で立ち上げて、事務方の女性と4人でスタートしました。

-厚木グラススタジオはたくさんの人たちによって支えられているんですね!

 

■この技術をなくさないために

“Atsugi Glass Studio”がプリントされたTシャツを着てインタビュー

-厚木グラススタジオでは、アーティストクラブと同じようにガラス教室などをされていたのですか?

山口さん:そうですね。あとは注文を受けたりですね。一生懸命やってはいましたが、採算を取るのは簡単ではないと目に見えていましたし本当に大変だったんですが、事務の方のおかげでもっていたといっても過言ではないですね。

-そこでも人に恵まれていたんですね。

山口さん:それから10年くらい続けてきて、そろそろここも閉鎖しようかと思っていたんですが、彼(現代表取締役社長の梶宏光さん)が引き継いでくれて閉鎖しなくて済みました。彼がきてからは以前よりも活気づきましたよ。

じつは、事務方の女性の娘さんが事務を引き継いでくれたんですが、その娘さんの旦那さんが彼なんです。

-えっ、そうなんですか?梶さんはガラス職人ではないですよね?なぜ引き継ごうと思ったのですか?

梶さん:私はまったく別のことをしていて、ここのことは妻からいろいろ話は聞いていました。そこで閉鎖の話が出たときに、こんなにすばらしい技術をもった職人さんたちをなくしてしまうのは単純にもったいないと思ったんです。

だから、私が会社を引き継いで続けていけるようにしたいと思いました。

-会社を続けていくために必要だったことや課題はどういうところだったのですか?

梶さん:いちばんは営業活動ができていなかったことですね。ガラス業界に精通している方はここがガラス工房で昔ノリタケで働いていた職人がここにいるということを知っていたんですが、そうではない人たちにはあまり知られていませんでした。

だから、ほんとにそこだけですよね。技術は申し分ないですし、今までできていなかった宣伝活動や営業活動を私がしていけばもっとよくなると思いました。

太陽の光を浴びて輝くガラス作品はどれも美しいものばかりです

山口さん:わかってはいたんですけど当時はそこまで分担できていなくて、彼がきてくれて本当に助かっています。

彼のおかげで全国から注文が入るようになりましたし、ここでは1個からの注文も受けてはいるので、伝統工芸士さんがわざわざここに足を運んで頼みにくるということも増えました。

-そう思うと、厚木グラススタジオは何度も閉鎖の危機を乗り越えて今があるんですね!

 

■ガラス好きであふれる世の中にしたい

第60回東日本伝統工芸展で入選した作品
青捲白線楕円鉢「春を仰ぐ」 作:山口浩二

-店内にも美しいガラス作品の数々が並べられていますが、山口さんにとってガラスの魅力ってどんなところだと思いますか?

山口さん:手間をかければかけるほどきれいに輝くところかな〜。始まりはかまどにたまっている砂だったわけで、それに命を吹き込むのが私たちの仕事だと思っています。

-名言が出ましたね。ガラス作品はイメージしたものを作りにいくと思うのですが、作っている途中でちょっとイメージと違うなとなってきたときはどうするんですか?

山口さん:ガラスって案外そういうときにいい作品が作れたりするものなんだよね。これは私がみなさんに伝えていることなんですけど、壊すも良くするも自分なんですよ。

手間をかければいいってものでもなくて、休憩時間に作ったものがいいときもあるし、自分では納得いかない作品でも、ほかの人から見れば評価されることだってある。ガラスってそういうものだし、すばらしい素材だなって思います。

私は高校の先生がきっかけでガラス職人になりましたが、自分がまさかガラス職人になるとは思ってもいませんでしたし、でも今となっては一生通せる仕事に出会えたことが私の誇りです。

ガラスは世界でいちばんの素材ですよ。

-深いですね〜。それにひとつのことに夢中になれるってすてきです!
では、新体制になった厚木グラススタジオの今後のビジョンを梶さんにうかがいたいです。

梶さん:ガラスに対するイメージを変えていきたいと思っています。そのためにもガラス体験などで気軽にガラスに触れあえる機会を作っていきガラスの世界に興味をもってもらいたいです。

陶芸はやったことあるけど吹きガラスはしたことがないという方が多いので、間口を広げていきたいですね。

-厚木グラススタジオでもガラス体験教室をされているんですよね?

山口さん:はい、していますよ!ここでは3歳からガラス体験ができます。

-実際に3歳のお子さまが体験にこられたりするのですか?

山口さん:親御さんといっしょにこられますよ。一般的なガラス体験は小学校高学年くらいからとされているところが多いですが、ここではしゃぼん玉を口でふくらますことができれば吹きガラス体験もしてもらっていますし、感受性の高い幼少期のうちにこういう体験ができるのは貴重だと思っています。

ガラスにもしゃぼん玉にも息を吹き込むのは命を吹き込んでいるのと同じですから。

だから、私はここに小さいお子さんを連れてくる親御さんたちに感心しているんです、よく連れてきたって。

そうやって少しでも多くの方にガラスにふれていただきたいですし、私もガラスの魅力を伝えていきたいと思っています。

-ぜひ、私も体験してみたいと思います。今日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

これまでたいせつじかんでさまざまな方にインタビューをさせていただき、人の思いや物ごとの背景に価値があると感じるようになりました。

本日お話をうかがった厚木グラススタジオさんも、周りからの続けてほしいという声や現代表の梶さんの思い、またその思いにこたえる山口さんや職人さんたちの思いを背負って今があると思うと、お金だけでは測りきれない価値が存在していると実感します。

また、個人的にも私のなかで心に残る名言が多いインタビューとなりました。

ガラスから何を感じるかは人それぞれかもしれないですが、まずはガラスの世界に触れてみるのはいかがでしょうか?ショップと工房が併設されている厚木グラススタジオですてきな出会いが生まれるかもしれませんよ。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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