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輝く男性インタビュー

創業75年の納豆メーカー・株式会社カジノヤが 食卓の名バイプレイヤー『納豆』とつなげる“人”・“地域”そして“未来”

きれいに土がならされた川崎市麻生区の大豆圃場、種まきの日を、今か今かと待っています。この圃場は、創業75年の納豆メーカー株式会社カジノヤが、地域連携のための大豆を育てる場で、株式会社カジノヤ、神奈川大学経営学部国際経営学科 山岡特任准教授のゼミの学生、パルシステム神奈川が協力して「大豆ボランティア」という企画を行っています。

今回は、この「大豆ボランティア」の大豆の種まきイベントの事前打ち合わせの場におじゃまして、伝統とこだわりの詰まった納豆づくりだけでなく、産学連携で行う「大豆ボランティア」についてお話をうかがううちに、納豆づくりを通して日本の社会をよくするお話までうかがうインタビューとなりました。

日本の食卓の名バイプレイヤー納豆の底ヂカラが光ります!

■今日の納豆、“なんとなく”選んでませんか!?

-本日はお時間をいただきありがとうございます。よろしくおねがいします。

株式会社カジノヤ営業部営業支援室室長 森本さん(以降、森本さん):よろしくお願いします。

神奈川大学経営学部特任准教授 山岡義卓さん(以降、山岡先生):よろしくお願いします。

神奈川大学山岡ゼミのみなさん(以降、山岡ゼミ学生さん):よろしくお願いします。

-さて、テレビの健康番組などでたびたび取り上げられ、「健康に良い食品」としてのイメージが抜群な納豆ですが、ひとことでいうと、納豆の栄養のすごいところとは、どういったところなのですか?

森本さん:近年、健康に関心の高い方が非常に増えているので、納豆のさまざまな栄養効果についてご存知の方も多いと思うのですが。納豆の栄養のすごいところを“ひとこと”でいうとすると、「五大栄養素がすべて含まれている」というところではないでしょうか。

-五大栄養素というと、中学生のころ家庭科で学びましたね。人間が生きていくうえで必要な栄養のことで、「たんぱく質」「脂質」「糖質(炭水化物)」「ビタミン」「ミネラル」のことですね?

森本さん:そうです。五大栄養素がすべて含まれている食品は、ほかにはあまり見られないのではないかな?また、このほかにも納豆には、食物繊維、イソフラボン、ナットウキナーゼなどさまざまな栄養素が豊富に含まれています。

-イソフラボンは女性ホルモンに構造が似ていて骨粗しょう症の予防に効果があると言われていますし、ナットウキナーゼは血栓を溶かす働きが知られていますね。つまり納豆は、生活習慣病予防や医療の現場で活躍する栄養素まで含んでいるということですね。

森本さん:よくご存じですね(感心)

-はい(笑)。ただ、納豆を選ぶとき、種類がたくさんあるので迷うことがあります。同じ栄養価ならば価格が安い物でもいいのではないかと手に取ると、原材料に「大豆(アメリカ・カナダ 遺伝子組換えでない)」と記載されていることがあります。わたし個人の考えですが、肉・魚・野菜など生鮮食品はなるべく国産食品にこだわりたいと思っていますが、加工品の原料まではそれほど気にしていませんでした。ましてや「遺伝子組換えでない」と記載されていることで、かえって安心感を覚えていました。海外産大豆と国産大豆で作った納豆に大きな違いは現れるのでしょうか?

森本さん:アメリカやカナダは国土が大きいので耕地面積が広く、そのなかでいかに効率よくたくさん収穫するかを考えていくので、農薬などの空中散布を多く目にしますね。ところが、日本は空中散布まではいかない。もう少しいうと、パルシステム神奈川の納豆の原料となる大豆は、北海道の指定した3カ所の産地において生産されていて、当然ここは、「農薬は撒いてはならない」という指示を出しています。

-カジノヤさんの納豆は、原料は国産かつ農薬を撒かずに育てた大豆をつかった納豆だったということですね!スーパーで同じように“国産大豆使用”と記載されていても、原料となる大豆の育て方まではわかりませんね。

森本さん:はい。企業の考え方やスタンスによって、原材料にどこの大豆を使うかは変わってきますが、わたしたちは安全安心な納豆づくりにこだわり、その心を創業当初から守り続けています。大豆を収穫した際に農薬検査もしていますが、過去において検出されたことはありません。国内では遺伝子組換え大豆を作っているところはないですが、こちらも当然検出なし。2011年東日本大震災以降は、放射能検査も行っていますが、こちらも問題なし。証明書をいただき、保管しています。

-カジノヤさんの納豆は、正真正銘の安全安心な商品ということですね。

森本さん:小さなお子さまから高齢者まで安心して食べられるものを作りたいという理念がありますから、農薬や遺伝子組換えの豆を使わないことは当然ですが、納豆に添付するたれも化学調味料(アミノ酸)を使用していないものをメーカーに作ってもらっています。

また、からしは通常ビタミンCで辛みを出しているのですが、それをやめようということになってメーカーに「ビタミンCを使わないからし」を作ってもらいました。「たかがビタミンC」と思っていたのですが、これがかなりむずかしい作業だったそうで、メーカーには時間をかけて開発してもらったのですよ。

-添付のたれやからしまで、安全安心にこだわっていらっしゃるのですね!

しかし、社会情勢も昔とは違いますし、価格競争も激しくなる時代のなかで、創業当時の思いを堅持するのは簡単なことではないですよね?

森本さん:社長には「自分で食うことを想定して作れ」と言われています。私にも孫がいますので、その子が安心して食べられるものをと考えます。時代は変わってきていますし、私みたいな昔の人間がどこまで若い人に伝えられるかわかりませんが、カジノヤの思いを伝統として伝えていきたいと思っています。

 

■「赤い大豆」が伝える思い

-いっぽうで、消費者に対しても、食品の安全安心を伝える地域連携の活動もされているそうですね。

森本さん:はい。そのひとつが、今日集まっていただいている神奈川大学山岡ゼミのみなさんと、パルシステム神奈川さんとで取り組む「大豆ボランティア」活動です。

-どのようなことをしているのですか?

森本さん:予め抽選に当たった組合員のみなさんが参加できるイベントなのですが、カジノヤ本社の近くにある圃場で、「赤い大豆」の種まきをしてもらいます。

-「赤い大豆」ですか?!

森本さん:はい。といっても、この赤色は私たちが色付けしたもので、大豆自体は普通のベージュ色。この辺りは野鳥が多いので、それらに種を食べられるリスクを少なくするため、敢えて赤く色付けしています。鳥は赤色のものは毒として捉えて食べないので、大豆の収穫量をできるだけ多く確保するための工夫なのです。こんなことをしているのは、カジノヤの大豆畑でも、ここ川崎の圃場だけなのですよ。

-めずらしい赤い大豆を植え付け、ふだんの生活では知ることのできないお話を聞き、参加者のみなさんにとって、印象深いイベントになりますね。

森本さん:大豆ボランティアは、6月種まき、7月草取り、11月収穫と、「農業体験」の側面もありますが、消毒をしない農地で、農薬を撒かない大豆の栽培を通して、安全安心な食品を知る、食育という側面ももっています。

この大豆ボランティアがスタートする以前から、食育という視点で、地域の岡上小学校の子どもたちに大豆の種まきをしてもらう地域交流を行っています。

子どもたちは、「農薬」と言ってもピンときません。安全安心な食品かどうかは、親が判断して食べさせています。つまり、子どもたちは知らず知らずに農薬を摂取してしまうリスクをもっていました。

-子どもたちが「安全安心な食品」があるいっぽうで、「危険な食品がある」ことも知っておく必要がありますね。

森本さん:はい。基本的理念として、農薬や遺伝子組換えをノーグッドと考えていますが、これは口で言ってもなかなか理解できない、結びつかない。じっさいに自分たちが畑に出て、消毒をしない畑で、農薬を撒かないで大豆を育ててみたら、枝豆を作るにしても、農薬を使っていないから洗わなくていいし、安心して食べられるという経験を通して、安全安心な食べ物や危険な食べ物への意識を高めていってほしいなと思っています。

-じつはこれまで、農業体験とは「非日常のイベント」=「レジャー」のように捉えていましたが、生産者や事業者の大切な思いが込められた「メッセージ」だったのですね。ぜひたくさんの方が楽しみながらも、生産者の大切な思いを受け止めてほしいですね。

森本さん:はい。そこでこの神奈川大学山岡ゼミのみなさんに活躍していただいています。

■産学連携という化学反応

-山岡ゼミのみなさんは、この大豆ボランティア活動にどのように関わっていらっしゃるのですか?

山岡先生:私たちは「大豆ボランティア」という企画をパルシステム神奈川さんとカジノヤさんといっしょに作っていく立場にいます。種まきや収穫などの活動は、これまでカジノヤさんとパルシステムさんで続けてきていたのですが、もう少し「理解を深める」とか、「関心をもってもらう」など、活動自体の価値を高めるためにわたしたちが関われないだろうかと、3年前からいっしょに活動させていただいています。

山岡ゼミ学生Aさん:今回は、6月の大豆の種まき会を盛り上げるため、ゲームやイベントなどを企画して運営します。

山岡ゼミ学生Bさん:学生側に企画などを任せていただくなど、貴重な経験をさせていただいています。そのいっぽうで、生産者と消費者の価値観の違いを感じ取る経験もしたので、企画を通して、二者の間をつなげる活動をして行けたらいいなと思っています。

-「生産者と消費者の価値観の違い」とは、どんなことでしたか?

山岡ゼミ学生Bさん:生産者は農薬を撒かないことなどにこだわりがあっても、消費者はあまりそういうことは気にしていないな・・・ということもあります。ですから、生産者のこだわりを消費者に伝えていける活動になればいいなと思います。

山岡ゼミ学生Cさん:以前のわたしは、食品に対して無農薬とかオーガニックなどのこだわりや関心がまったくありませんでしたが、大豆ボランティアの企画に携わって、安全安心な食品というものを知ると、自分が食べるときだけでなく、おじいちゃんやおばあちゃんなど「自分の家族に安心して渡せる」という価値があるのだなと気づけました。

-この大豆ボランティアは、企画側の学生さん自身の気づきにもなっているのですね。大学と連携することで、この企画はどのように変わりましたか?

森本さん: 神奈川大学が畑に入ってくれたことによって、大きく変わったと感じています。

以前は、組合員のみなさんだけが参加して、黙々と作業はこなすという感じだったけれども、それに新風が吹いたと思う。わたしたちにとっても新たな発見。こんなに変わるのだなーと思っています。

彼らは豊かな発想力で豊かなアイデアをくれます。われわれメーカーの人間は、眉間にしわを寄せてなかなかまとまらないが、学生は、こちらの思いを投げかけると、それに沿った答えをちゃんと作ってきます。そして笑顔でやってくれている。これが個人的にも励みになっていて、ありがたいなと思う。お互いに影響を受けているのだなと思います。

 

■地域連携、その先にあるもの

-今回のこの大豆ボランティアという地域連携では、消費者だけでなく、関わっているすべての人にさまざまな効果が表れていると思いました。パルシステムさんとカジノヤさんで行っていた活動の価値を高めていく目的でスタートした産学連携は、このさき、どのようなねらいがあるのでしょうか?

山岡先生:このゼミでは、「生産と消費の距離を近づけることを通じて食のありかたを問い直す」というテーマを掲げています。

ここにいる学生たちはカジノヤチームなのですが、ほかにも4つの農家さんとのチームがあって、それぞれのフィールドで「生産と消費の距離を近づける活動をしなさい」と伝えています。

生産と消費の距離が近づくことで世の中がよくなると言われていますが、これってそんなに簡単なことじゃない。

-そうですね。わたしも何をしたらいいのかまったく見当がつきません。

山岡先生:ですから学生には、まずはたいへんだ!ということを理解し、次に何が大変なのか、そして、どうすればできるかを考え、小さなことでいいのでそれを現場で実践して、どんなことが起きるのか知ってほしいと思っています。

今現在、彼らは「消費者」なので、まずは「生産」のことを知らなければならない。だから月に一度は畑に行って「生産の現場」に身を置くように伝えています。

自分たちは消費者だけど、生産者のことを知ることで、どうすれば両者の距離が近づくか考えることができます。

-ゼミの学生さんも、消費者であった時には気づかなかった、生産者の「こだわり」を理解し、消費者と生産者との価値観のギャップにも気づきましたよね。

山岡先生:彼らは数年後には必ず生産者の立場になります。食品は生産しないかもしれないけれど、何らかのサービスやモノを生産します。そういう時に、消費者と生産者が近づくことで双方にいいことがあるとわかっていれば、行動の仕方が変わるはずで、それは長期的に見れば、社会がよくなることにつながるでしょう。

また、農家さんやカジノヤさんには、学生たちが関わることで、消費者との距離を縮めることに多少は貢献できることもあるだろうと思っています。

 

■大豆が循環し、社会が良い方向へ進む

森本さん:大豆ボランティア活動で育てる大豆は、「津久井在来大豆」といって、業界では“幻の大豆”といわれるもの。消滅の危機にあった生産量のとても少ない希少な大豆です。

-大豆のうまみが強く、“究極の納豆”になるとか?!味が想像できません!

森本さん:活動の最後は、この大豆を原料に「つながるゆめ納豆」という商品を生産します。種を植え、農薬を使用しないことを作業を通して共有し、心をこめて栽培した大豆が循環して商品になり、組合員のみなさんが消費する。大豆ボランティアというこんないいシステムはほかではないのだろうなと思います。

-希少な大豆で作った納豆というだけでも興味津々です。たくさんの人とつながりながら、大豆ボランティアとして汗を流して育てた大豆で作った納豆であれば、絶対食べたいですよね。

森本さん:「つながるゆめ納豆」は、収穫の翌年、パルシステム神奈川の組合員限定商品チラシ「いいね!かながわ」に掲載されます。楽しみにしてください。

直売所 神奈川県川崎市麻生区岡上488-1(本社所在地)

編集部のひとこと

編集長

かなちゃん

納豆への愛が止まない森本さんですが、じつは入社前は納豆が大嫌いだったとか。
また、神奈川大学山岡ゼミの学生さんのひとりは、「じつは第3希望のゼミでした」と先生をちらりと見ながら教えてくれました。本人たちが想像もしていなかった納豆との縁を紡ぎながら、互いに刺激を受けて自らが変化しつつ、活動自体も社会に良い影響を与えている活動へと進化していることがすばらしいなと感じました。
未来を変えるには、若い世代と人生の先輩方の交じり合ったチカラが大切なのだろうなと感じるインタビューでした。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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