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輝く男性インタビュー

殺処分ゼロを実現し、新しい施設に生まれ変わった!神奈川県動物愛護センター 愛護・指導前課長・上條光喜さんのインタビューです。

神奈川県動物愛護センター 愛護・指導前課長の上條光喜さん

保護した犬や猫を「処分するための施設」であったという神奈川県動物愛護センター。しかし、2013年には犬、2014年には猫の殺処分ゼロを実現し、それ以降は殺処分ゼロを継続しているとのことです。

さらに、多くの寄附により実現した施設の建て直しの際には処分施設をもたない「生かすための施設」として生まれ変わりました。

私たちの日常で、切っても切れない関係にある動物たちの現実を知るとても良いインタビューとなりました。ぜひ、お楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■殺処分ゼロの実現と継続

神奈川県動物愛護センターの外観 

-動物愛護センターの活動内容について教えてください。

上條さん:動物愛護センターの活動内容は、時代とともに大きく変わっていますが、大きくわけてふたつです。動物保護業務と動物取扱業者等への指導業務です。

まず、動物保護業務ですが1972年の開所は、法律に基づき神奈川県に放浪している野良犬などを収容し処分するということがメインの業務でした。

しかし、保護業務を続けるなか、動物愛護管理法ができ、避妊・去勢を実施した犬の譲渡を勧めたり、犬猫の避妊・去勢手術を広める啓もう活動という業務が始まりました。

そして、動物取扱業者等への指導業務ですが、じつはその範囲はすごく広くて、ペットショップからトリミング、動物を貸し出すスタジオ、猫カフェなど神奈川県内の当所管内だけでも1,900件以上あります。それらの施設の登録、指導業務を行っています。

-なるほど、動物に関するかなり広い範囲のお仕事をされているんですね。では、保護業務についてより深く教えていただきたいです。実際、どのくらいの数の保護動物を処分しなければいけない状況なのですか?

上條さん:1972年に開設されたのですが、多いときは、犬は年間20,000頭を収容し、猫は年間13,000頭を収容していました。そのほとんどを殺処分していたんです。

しかし、避妊・去勢手術の浸透やボランティアさんたちのご協力による保護動物の譲渡活動などさまざまな活動の積み重ねが奏功し、犬は2013年、猫は2014年に殺処分ゼロを達成することができました。

そして、それ以降は現在に至るまで犬猫ともに殺処分ゼロを続けることができています。

-すばらしいですね!でも、1972年から始まって約40年の長い時間をかけて達成された殺処分ゼロだと思いますので、この事実はもっとたくさんの方に知ってもらえるといいですね。

 

■処分するための施設から、生かすための施設へ

施設で新しい飼い主との出会いを待ちながら過ごしている猫

-こちらの施設自体が新しく建て替えられたということですが、まるでホテルのようなたたずまいですね!

上條さん:2019年に新しく建て替えることができました。もともとの施設は、処分を目的とした施設でありましたから、処分機や焼却炉があり、動物を長く収容、飼育することには向いていませんでした。

そのため、建て替えを計画するに至ったわけですが、建て替え費用のための基金を創設し、たくさんの方から寄附をいただきました。

そして、2019年6月1日に処分施設のない、動物たちを生かすための施設として生まれ変わりました。施設は明るくきれいになりましたが、動物たちにとってはここに長くいることより新しい飼い主に譲渡される方が幸せです。

 

施設を卒業し、新しい飼い主との生活を始めた動物たち 

―では、リニューアル後の「生かすための施設」としてのお仕事はどのようなことがありますか?

上條さん:施設のリニューアルと同時に、新しい4つの柱を私たちの仕事として考えました。ひとつ目の柱は、保護した動物たちは処分するのではなく譲渡に向けた準備をするということです。

-具体的にどのようなことをするのですか?

上條さん:保護犬、保護猫というとペットショップにいる動物たちと比べて、良いイメージをおもちでない方が多くいらっしゃいます。たとえば、変なくせや病気をもっているのではないかということを心配されるということです。

もし、そういったことがあれば、その子たちの問題行動を改善するためにしつけを行ったり、病気の治療のための獣医療を充実させました。

2018年4月から、譲渡推進のための「かながわペットのいのち基金」の募集を開始し、そこから資金を捻出しています。しつけについては、専門家や動物行動学の先生を招いて、職員に指導をしていただき、また個々の犬をみていただくこともあります。

また、獣医療については、(公社)神奈川県獣医師会の会員の獣医師の方に定期的にお越しいただき、診療や治療の助言をいただいたり、医療機器の充実をはかっています。

-新しい飼い主に譲渡するために、動物たちが必要としている支援が行われるようになっているんですね!

上條さん:そうですね。そして、ふたつ目の柱です。動物愛護の普及啓発のための施設ということです。これまでの施設は、保護動物を見に来てもらうということを想定しておりませんでした。

しかし、現在は譲渡を前提としていますから、動物たちを見に来てもらわなければいけません。そして、動物たちができるかぎり快適に過ごせるようなお部屋を用意しています。

また、職員がうちにいる動物たちを1頭ずつ紹介するポップがあります。そのポップを見てもらうと職員の愛もわかってもらえると思いますし、うちの犬や猫、ほかにもミドリガメやニワトリも来たりするんですが、その子たちがいかに魅力的か、それを手作りで精いっぱい表現していますので、ぜひお越し頂いて見てもらいたいですね。

-明るく開放的な雰囲気づくりをされているんですね。

上條さん:そして、3つ目の柱はボランティアさんの活動を支援する施設ということです。譲渡関係、動物の愛護普及の関係、動物のシャンプーなどの衛生関係などすべてにおいてボランティアさんにご協力いただいています。ボランティアさんがより活動しやすいように支援をしております。

-ボランティアさんの活動に助けられていることは大きいのですね!

上條さん:そうなんです。保護される動物を減らす、防ぐ活動も広くご協力いただいております。

たとえば、問題が大きくなっている多頭飼育崩壊が懸念される方への支援などがそれにあたります。

-なるほど、多頭飼育崩壊についてはよくニュースで目にしますが神奈川県でも増えているのですね。

上條さん:そうなんです。神奈川県では、多頭飼育をされる場合は届出制度を設け、把握しようと働きかけていますが、なかなかむずかしい問題です。この部分でも非常にボランティアさんの活動には助けられています。

そして、4つ目の柱は、災害時の動物救護を推進する施設であるということです。災害時を想定しておくことは非常に大切なことですので、これを4つ目の柱としております。

-ホームページを拝見しただけでは、把握しきれないほどたくさんの活動をされているんですね!驚きました。

 

■動物愛護センターが栄えていてはいけない

施設内観。とてもきれいで落ちついた雰囲気

-今後はどのような活動に力を入れていきたいとお考えですか?

上條さん:以前はたくさんのイベントに参加し広報活動を行ってきました。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響でイベントができなくなったので、再開できるようになれば再度広報活動を積極的に行っていきたいです。

また、コロナ禍でたくさんの新しい試みを行ってきましたのでここは継続していきたいですね。そのうちのひとつのオンライン譲渡会はたいへん好評でしたのでこれも継続して実施していきたいです。

-なるほど、コロナ禍でも譲渡会は工夫をして進めているのですね!最後の質問ですが、今後のビジョンを教えてください。

上條さん:わたしのいちばんの願いは、この施設に来る動物がいなくなることです。

飼われている動物が飼い主のお家で生涯を終えることが理想です。しかし、現実問題としては、どうしても飼えなくなってしまいうちにくる動物が多いわけです。こういった動物たちの受け皿としての機能をもつ動物愛護センターが栄えていてはいけないと思います。

1頭でも多く、新しい飼い主さんと出会える犬や猫たちを増やしていくため、今後も職員、そしてボランティアさんの協力を得ながらみんなでがんばっていくつもりです。

 

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

処分する施設から、生かすための施設へと生まれ変わった動物愛護センターのお話は、さまざまな活動の積み重ねによる結果としてのすばらしい変化であることを知り、行動を起こすことの大切さ、そして、諦めずに理想を追い求めることの大切さをあらためて知ることができました。

新しくなった動物愛護センターは、とても明るい施設です。いつかここに保護されてくる動物がゼロになる日を願って、私もできることから始めてみようと思います。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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