お出かけスポットインタビュー
- 神奈川県の歴史の流れを体感!神奈川県立歴史博物館の前館長・薄井和男さんのインタビューです。
神奈川県立歴史博物館の薄井和男前館長
神奈川県の歴史を、古代・中世・近世・近代・現代と5つの時代に分けて知ることができる神奈川県立歴史博物館。各時代でいろいろな発見をしながら、歴史を学ぶことができるだけでなく、建て物自体が重要文化財に指定されている旧横浜正金銀行本店本館を使用しており、まるでタイムスリップをしたような気分が味わえる博物館です。
そんな神奈川県立歴史博物館の魅力を薄井さんにお聞きしてきました。薄井前館長の情熱が溢れるインタビューをぜひ、お楽しみください。
※取材日は2021年1月21日です。
※薄井さんは2021年3月31日で退職されました。
※神奈川県立歴史博物館は現在事前予約制で入館できます。
聞き手:たいせつじかん編集部
■日本に冠たる博物館であれ
神奈川県立歴史博物館のお話をする薄井前館長
-神奈川県立歴史博物館の開館はいつなのですか?
薄井さん:当館は、神奈川県立博物館として昭和42年に開館しました。今でこそ県立の博物館はめずらしくありませんが、全国的に見て神奈川県立博物館は草分け的な存在でした。
そして、平成7年に、自然系と人文系を分離することとなり、自然系が小田原市にある「生命の星・地球博物館」となり、人文系は当館で「神奈川県立歴史博物館」として新たにスタートしました。
神奈川県立歴史博物館の外観
-こちらは、建て物自体が歴史的にみても重要な建て物であるということですが、その点を詳しく教えてください。
薄井さん:そうなんです。旧横浜正金銀行本店の建て物を使っており、建て物自体も国の重要文化財に指定されています。
横浜には、キング(神奈川県庁)・クイーン(横浜税関)・ジャック(横浜市開港記念会館)の「横浜三塔」と呼ばれる歴史的な建て物がありますが、当館はエースのドームとも呼ばれており、横浜の歴史を語るうえで象徴的な建て物のひとつです。
ぜひ、ご覧いただきたいです。
-館長からご覧になられて、神奈川県立歴史博物館の魅力はどんなところだとお考えですか?
薄井さん:やっぱり、この建て物ですよね。伝統的な建て物ですので、博物館としてもクラシックなスタイルを引き継いでいます。
そして、当館は、国立博物館と比べても劣らないような、神奈川県独自のすぐれた博物館を作ろうというコンセプトのもとで作られました。開館当時の日本でも冠たる博物館にしようという気概をスタッフ一人ひとりがもつということが、連綿と伝統として引き継がれています。
私は、こちらで勤続42年目ですがこのことはずっと変わらないということを体感しています。
このことがあらわれているのは、通常展示とは別に年に3,4回行っている特別展ですね。一般的に、博物館の特別展では、特別展を担当する学芸員だけがかかわることが多いのです。しかし、我々は担当ではない学芸員も手伝い、みんなで特別展を作り上げます。
たとえば、美術品の梱包なども美術品を扱う専門業者といっしょに学芸員がかかわっています。さまざまな業務の経験を積むことで学芸員のスキルや知見を広げていくことができるのです。
そして、経験を積んだ学芸員が次の世代の学芸員に自分の経験を伝えていくという連鎖ができていますね。
-なるほど。ここには長い歴史の積み重ねで培われたものがあるんですね。
薄井さん:そうですね。スタッフ一人ひとりが、自信と責任をもって仕事をしているということは、ご来館いただく方にも伝わると思いますので、これからもここは大切にしていきたいですね。
■神奈川県の歴史は日本の縮図のようだ
近代史の著名人に関する資料がたくさんあります。
-鎌倉や横浜がありますから歴史的な観点から神奈川県をみるというのはとてもおもしろいですね。
薄井さん:そうですね。神奈川県は、全国的にみると面積が小さい県ですが、海や山もあり、コンパクトながら日本の縮図と言ってよいほどさまざまな要素で構成されていますね。
そして、この神奈川県で展開された歴史にも、さまざまな要素がうまく入っています。
神奈川県の至るところに文化財や遺跡など歴史を語るものがありますので、ぜひご自宅のまわりでも探していただきたいですね。
中世エリアの仏像
-そのなかでも、幕府が鎌倉にひらかれたことは大きなことですよね?
薄井さん:中世の鎌倉は、150年近く日本の中心でした。この歴史は、神奈川県の歴史を語るうえでとても大きな事実なんです。神奈川県には、鎌倉を中心として、当時の庶民の生活がうかがえる歴史的に重要なものがたくさん残されています。
そして、近代史の横浜開港です。これも大きいです。明治、大正、昭和時代は現代と続いている歴史ですから、肌で感じることができます。
今ある文化などの多くは、明治時代から作られているものなので繋がりなども現実的に感じられると思います。
神奈川県は、鎌倉時代の中世の歴史と横浜を中心とする近代の歴史、このふたつが紹介できるのは強みでもあり見どころです。
さまざまに描かれたペリー像
-館長がいちばん好きな展示をあげるとしたら何がありますか?
薄井さん:そうですね、どれもすばらしいですが円覚寺の舎利殿の様子を実物大で復元しており、これはおすすめですね。
実物はなかなか見ることができませんので、ここはご覧いただきたいですね。
■本物を見たときの感動はなにものにも変えられない
博物館への愛情で溢れている薄井前館長
-最後に、読者の方々へメッセージをお願いしたいです。
薄井さん:博物館は、人類史を後世に伝えていくという役割をもっていると思います。そのために、私たちはできるだけ本物をご覧いただけるようにしたいと思っています。本物を見たときの感動は言葉にできませんからね。
しかし、すべて本物を展示するということはむずかしいですから、なるべく本物に近いものをご覧いただけるように最新の技術もしっかりと導入していきたいです。
そして、当館は横浜にあるので横浜の歴史を扱っていると勘違いされることが多いのですが、神奈川県内全域の歴史を扱っています。県内にお住まいの方であればかならずご自宅のお近くの歴史を知ることができるはずです。
ぜひ、ご家族でお越しいただき、歴史を体感していただきたいです。
編集部のひとこと

ライター
ゆめちゃん
神奈川県立歴史博物館に取材でうかがった際に、まず建て物自体の存在感に圧倒されました。そして、展示も古代から現代までフロアごとに展示されており、順番に時代を追いながらゆっくりと展示を見ることができます。
さらに、神奈川県の歴史を扱っているために、展示のすべてが身近な地名と結びついており今の生活とそのころの時代が繋がっていることを実感できることは、ほかではなかなか味わえない経験です。
ぜひ、次のお休みにいかがですか?
- 神奈川県立歴史博物館:
- https://ch.kanagawa-museum.jp/
編集部メンバー
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ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。 |
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家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。 |
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好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。 |