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輝く女性インタビュー

【 後編】「不登校は不幸じゃない!」不登校の子どもが生きていく力をつける教育の場 イデアエデュケーションを創業し、地域とのかかわりの場を生み出した矢野梢さんのインタビュー

前編では、不登校支援の専門家である矢野さんに、近年問題となっている不登校の現状や対策とともに、矢野さんが提唱する「不登校は不幸ではない」という不登校の正しい認識についてうかがいました。

後編では、矢野さんが代表を務めるイデアエディケーションが、どのように不登校の子どもやそのご家族を支援されているのか、また女性として、起業家・母・妻という役割をどのように受け止め、向きあっていらっしゃるかについてお話をうかがいしました。

聞き手:たいせつじかん編集部

【前編はこちらです】http://www.taisetsujikan.com/?p=212

不登校の間に何をするかが重要とおっしゃる矢野さん

―矢野さんは「不登校の間に何をするかが重要」ともおっしゃっています。
不登校になった子どもたちは、イデアエデュケーションでどんなことに取り組んでいるのでしょうか?

矢野さん:学校に行かないことは悪いことではないけど、学校に行かないから勉強をしなくていいということではありません。学校という場で勉強する時間がとれないのであれば、学校にこだわる必要はなく、その子にあった場所で勉強をすることで、学校に行くよりも学力が伸びることもあるというのもチャンスといえます。イデアエデュケーションでは、塾という形で勉強をサポートしていっています。

また、学校は、ある程度のところまで一斉に学力を伸ばすにはいいシステムですが、たまたまそのシステムに合わない子どもには、学校だけではできない教育の形をとって、勉強だけでなく、たくさんの社会経験をさせてあげたいと思っています。

そのひとつとして、生徒たちにはふぁみりーフェスという地域向けのイベントやイデアエデュケーションのセミナーのお手伝いに来てもらっています。このような現場は、学校という狭い世界よりも、これから出ていく実際の社会により近い構図といえます。同世代が集団で集まっている社会なんて学校くらいなものですよね。いろんな人とかかわり、いろいろな経験を積んで、これから出ていく社会にはこういう大人がいるのだな、こういう場面があるのだな、こういう時間を経ると人はこういう変化をするのか、というような発見をしていきます。

生徒のひとりに、学校では気負ってしまい、同世代の中ではなかなか適応できない子がいます。しかし、イベントで販売などをやってもらうとすごい才能を発揮して、周りの大人を驚かします。そんなことが自信として積み重なって、学校って小さいのだな・・・という印象になっていると思います。

■不登校の子どもたちがもつ課題

―普段どのような生活を送っているのでしょうか?

矢野さん:全体的に生活リズムを整えられないという課題をもっている子が多いです。

夜ゲームやパソコンなど好きなことをやって、5時くらいに寝て昼過ぎまで起きられずにいる。

それを打破するためには、行きたくなる楽しみがあったり、または楽しみまでなくても、週に2回来なきゃいけないというような、杭(くい)になるもの必要かと思っています。

塾という意味では、その子のタイミングとニーズに合わせて時間を決めていっています。

基本90分ひとコマですが、ある子は15時半から始めています。

その理由は、どうしても朝起きられないから。

ただ、その子は年度初めに学校に行くと自分で言い出したので、16時からの授業に変えたのですが、結局学校へは1~2回ほど行って、また欠席が続いてしまいました。しかし、本人が自分は行くとその後も言っているので、行けた時のために16時からとそれを続けていました。

しかし、生活リズムの崩れが目立つようになってきたので、ちょうどいいタイミングとばかりに、夏期講習だから朝やろうと切り替えて、朝の10時開始に変えたのですが、夏休みはどうにか午前中に来て勉強をやっています。

別の子の場合は、近所の子に会いたくないことと、自分が外出しているとおかしいと思われる時間帯は避けたいということで、15時半から来ていました。

いずれにしても、やはり生活リズムが課題となってきます。

―生活リズムがここまで崩れるまでに、家庭でやっておけることはあるのでしょうか?

矢野さん:あります。
パソコン、ゲーム、携帯の使用時間は家のルールとして夜9時以降は絶対ダメなどの制限をしっかりと設けることです。

前述の話になるのですが、決めたルールはどんなことがあっても守ることが大切です。例えば、夜9時以降にゲームをしていたら、そのあと1カ月はとりあげるなど、それはどんなことがあっても実行しなければなりません。

そうはいっても、取り上げると暴れたりして手が付けられなくなるといいます。でも、前述の通り、小さい頃にあのおやつの習慣ができていたら暴れません。この人に言ってもしかたがない、どうしようもないという自制心が働くからです。この習慣づけを小さいうちにやると3日とか4日で子どもは諦めますが、大きくなると、半年とか一年とか、相当長い間戦わなくてはならないのです。

―彼らはイデアエデュケーションでどんなゴール(目標)をもって過ごしているのでしょうか?

矢野さん:長期的なことで見れば、社会の中での好きなことや得意なことを生かして、仕事にしろ家庭にしろ、自分がやりたいと思ったことや好きなことで、なおかつ人の役に立つことで生きていくというところで設定をしています。

活動の中で、「その子にとってそれが何か」を見つける作業をいっしょにやりながら中期・短期的目標として高校に行きたいとか、大学に行きたいという目標を設定します。

ただそれには、こういう仕事に就きたい、とか、こういう勉強がしたいからそれにはこの学校に行かなくてはならないなというように、夢から逆算して中期・短期目標を導き出すことを大切にしています。

―ただ学校へ行くというのではなく、将来の自分の生き方に反映された目標ならば生きていくモチベーションになりますよね。一方で、いろいろ体験させてはみたけれど、どれも響かない、どれもぴんと来ないという子どももいます。体験が押し付けになっていると感じることもあるのですが、どうやったら体験を夢や目標に転化させていけるのでしょう?コツがあるのでしょうか?

矢野さん:コツは、わたしたちのモットーでもあるのですが、「数打ちゃ当たる」と「本人がやりたいことしかやらせない」ということです。

イデアエデュケーションのイデアは、哲学用語で理想という意味とアイデアという意味があるのですが、この子にはこれがいいんじゃないか?というものをどんどんどんどん出していて、その子が食いついたものだけ与えていくことにしています。

自分にとっても同じことが言えるのですが、どんなによいことと言われていることでも、やる気のないことは全然プラスの体験にならないということです

人生が変わるよ、絶対感動すると言われ、気が進まないままチャレンジした登山には、まったく感動はありませんでした。

そういうこともあって、本人がやりたいと思わないことは、どんなにこちらがいいと思ってもやらせない、そして相手が食いつくまで提供し続けるということを続けています。

―さまざまな体験をひとりの親が提供することには限界があるので、ぜひイデアエデュケーションさんのプログラムを使っていろいろ経験してみてほしいですね。
しかし、イデアエデュケーションで提供している体験プログラムは本当に多岐にわたっています。国際交流プログラムのほか、フットサルやボクシングなどのちょっと変わったスポーツまで発想が多岐にわたっていますよね。このようなプログラムのアイデアは誰から出てくるアイデアなのですか?

矢野さん:じつは全部ご縁なのですよね。わたしの性質上、いろんな方といろんな人とかかわるのが好きなので、そこでいろんな方と出会ってみると、こんなのやっているよと声をかけてくれて

そして、子どもたちにこんなのあるよーと言って、行きたいと言ったら行こうとなります。

子どもたちの状況では、行くと言っていても行けないということも発生したりするのですが、そういうことも許していただいて、本当にいろんなたくさんの方に温かく支えられていて、感謝しかありません。

―イデアエデュケーションを卒業したお子さんたちは、その後どんな道を歩んでいますか?

矢野さん:中学生で通っていて卒業した子は、4月から入った高校にまだいけていないでいます。そこをどう切り開いていこうかと模索しています。

本人はまた会うのが気まずくなってしまっているようで、まずはつらい立場にいるお母さんをサポートするための「ファミリープラン」を開始しました。

また、関わっていた大学生は、留年しながらも卒業できた子がいます。

その子はここでの活動が糧になった、自分の不登校経験を振り返って克服するきっかけとなったと言っていました。長かった髪も自分の意志で切って就職し、自分で動き出すことができたようです。

数年前にうつ状態を経験した主婦の方では、ふぁみりーフェスなどの運営に参加したことをきっかけに、人を信じることをもう一度してみようと思うという内容の体験談をつづってくれた方がいました。また人とかかわり始めているとおっしゃっていました。

―イデアエデュケーションの活動をうかがっていると、中高生だけでなく、主婦や社会人がミックスされてかかわっていると感じるのですが、これは意識されていることなのでしょうか?

矢野さん:不登校支援というと不登校の子だけで固めて外から見えないようにする場所が多いのですが、わたしはできるだけ開いて外へ外へ向かって、しかもいろんな人とミックスで過ごすということを大切にしています。

共通項を不登校ということにはもたず、成長したい、学びたい、今は自信はないけれども、何かしたい、そういう人が集まる場にしたいと思っています。

そういう意味だと、ふぁみりーフェスなどはまさにそういう場所ですね。

一方で、バランスとしては広げる部分と反対に閉じた部分も大切にしています。

勉強する時間は閉じた部分で、1対1でわたしとその子と深めていきます。サポートしながら、外へ連れ出していく切り口というか扉を探してタイミングを見ています。扉はいっぱいあって、どこの扉からでも出られるけど、きちんと戻って来られる場所をつくっています。

イデアエデュケーションふぁみりーフェスタ

ふぁみりーフェススタッフ&出店者集合写真。生徒たちも役割をあたえられ、活躍しています!

―親の会で同じ状況にいる保護者がお互いの悩みなどを話すことで、とても救われると聞きました。イデアエデュケーションでの保護者が受けられる支援について教えてください。

矢野さん:おかあさんのおしゃべり会と言います。

この産前産後はお休みをいただいているのですが、月1回 基本的には土曜日開催していました。

子どもが通っている方だけでなく、一般の方にも開放しています。

どちらかというと子どもが不登校になると子どもは動けなくなるので、まずはお母さんと先に会うことになります。でもじつはそれがいちばん大切で、おかあさんがいちばん楽になってほしいのです。お母さんに対する支援は絶対必要ですからね。

また、「ファミリープラン」というお母さんのためのコースを始めました。お母さんがとにかく愚痴でも弱音でもなんでも吐き出せるような「心の整理タイムサポートタイム」や、親子コミュニケーションなどを学べるような講座を提供しています。お母さんの心が明るく前向きになることで、お子さんにも絶対によい影響を与えられると確信しています。

 ■起業から5年。今年は第3子も生まれ、ますます忙しくなった矢野さん。母として、主婦として、事業者としてどのようなON/OFFを切り替えているのでしょう?

―メディアを拝見すると、非常に忙しい日々を送っているように見えますが、起業された頃と今とでは主婦の時間はどう変わられましたか?

矢野さん:主婦としての時間はすごく変わりました。起業し始めた当時は焦りばかりで、母としても妻としてもダメな感じでしたが、だんだん事業が形になってくると取捨選択ができるようになってきて、家事ができることもありがたいと思ったり、主婦というポジションにも感謝することができるようになっていました。

以前は、ごはんをつくるのも義務。できるだけ手がかからないもので、どれだけ時短できたかがうれしいといったように、自分視点でしか考えていませんでした。

しかし、今は主婦の時間をていねいに過ごすことが、すでに子どもや主人と向き合っていて、コミュニケーションになっていると感じています。

想いのもち方がすごくかわりましたし、それで家族がうまくいくようになった

自分の中でいちばん大きなこととして、感謝する気持ちが湧くようになったことがあります。もちろん、それまでも感謝はしていたのだけれど、きちんと気持ちを落ち着けて家族、仲間、生徒やそのご家族に対して感謝の気持ちをもち始めると、あ、わたしはすでに恵まれているということ、その人たちにきちんと向き合っていれば、自分も含めてみんなにとってベストな形で物事が進んでいくということに気づきました。

―起業人としての時間、主婦としての時間、それぞれで大切にしている部分はどんなことがありますか?

矢野さん:こういう時、「人としてどうか」と問うようにしています。母としておかしい?事業者としてどう?専門家として正しい?というより、人としてどうかで行動するようにしています。
また一方で、その立場を責任もって全うしたいと思っています。仕事の時は子どものことは言い訳にしない。その逆も同じで、お休みと決めた時は母としてしっかり子どもたちと向き合うと決めています。
そうはいっても、うまくいかないときはもちろんありますが、そういったポリシーはもっています。

―不登校支援の面でも、ふぁみりーフェスというイベント運営の面でも、矢野さんのまわりにたくさんの人が集っています。新たに人のつながりを作るうえで心がけていることはありますか?

矢野さん:はじめて会う方には思いを語るようにしています。

そこに共感してくださる方がいて、それを聞いた方が紹介してくれることがあり、それで紹介してもらった人は素敵な方ばかりでという感じですね。

―ふぁみりーフェスなどに参加している人が、次の回はスタッフで、その次の回はもっと重要なポストで参加しているようですが、外巻きにみている人を、もう一層上の主体者になるアクションを起こさせるために何かやっていることがあるのですか?

矢野さん:Facebookの公開系の告知であっても、LINEなどを使って個別にお誘いするようにしています。しかし、ご自身の意思でステップアップすること原則にしています。そのうえで、本人のギアを上げられるように、参加する場には楽しいことと学べることがあるように、いろいろ仕掛けておくことを大切にしています。

また、ステップアップしてもらうために、「はしごを外していく」というイメージを大切にしています。外すタイミングというのが大事で、手助けしてあげていたけど、はしごをかけてあげていたけど、あるところで外してあげたから進めるということがあります

生徒にもそうで、子どもにもそうで、教育的な感覚かもしれません。

過保護になりすぎない、やってあげることが善ではないという思いをもっています。

―FMよこはま ファンケルヨコハマなでしこというラジオ番組は、人生を変えてくれた・・・とおっしゃられていたその意味を教えてください

矢野さん:第1子を妊娠する前、中学の不登校支援員を行っていたのですが、車通勤の中で聴く15分くらいの番組がこのヨコハマなでしこでした。

横浜の輝いている女性を紹介する番組で、女性起業家だけでなく、高校生の吹奏楽部の人とか、ランドマークタワーの案内係さんとか。

結婚をして担任もつのをやめたり、不自由になることもあったり、これから私はどうしようか・・・と、もどかしさが溢れていた時期でした。

しかしこの番組でいろんな女性がいて、いろんな人生があると思って聞いていたら、女性だからこそ自由になる部分があると気がついたのです。

それで、どうしても私もでてみたい、パーソナリティの方にお会いしてみたいという気持ちが止まらなくて、起業後、番組宛に自分で手紙を出し、出演させていただきました。

イデアエデュケーションの矢野さんの告知

■子どもの不登校で悩まれている保護者へ

―子どもが不登校になった時、近くにイデアエデュケーションのような通える施設がない場合はどこへ相談しに行ったらいいでしょうか?

矢野さん:基本的に不登校になった場合学校へ相談することになりますが、そこで紹介できるのは、学校系列の施設だけになると思います。

イデアエデュケーションなどのような施設は、フリースクールや居場所の情報誌などが刊行されているので参考になるかもしれません。

また、それでも近くに適当な施設が見つからなくても、その子にとって合ったものであれば、不登校支援の専門施設でなくても、まずは地域の習い事やボランティア団体でもいいと思います。

イデアエデュケーションに通うことはできなくても、ふぁみりーフェスなどのスタッフとしてかかわりをもちながら、いろいろな体験をしていただくことは大歓迎です。また近々ふぁみりーフェスを開催できたらいいなと思っていますが、ふぁみりーフェスなどにかかわっていきたいな・・・という連絡をいただければじゃぶじゃぶ祭りなどの小さいお祭りや無料セミナーなどにもご案内をしていきます。

―最後に、今深く悩んでいるご本人、ご家族に、明るい未来を信じるためにメッセージをいただけますか?


矢野さん:絶対に未来は明るいと信じれば明るくなります。

けれど、信じることが難しいと思うので、いっしょに信じられる人と信じるという過程を大事にしてほしい。

そういう意味では背負い込まないでほしいし、お母さん自身も支援されてもいい。だれでも同じ、お互いに助け合ってやっていくものだと思います。とくに子育てはそんなもの。その一環で頼れる人には頼って、なおかつその人がいっしょに信じてくれる人ならなおいいと思います。

▼イデアエデュケーションのHPはこちら: http://idea-edu.net/

編集部のひと言

2回にわたりお送りしてきた矢野梢さんのインタビュー、いかがでしたか?不登校についてのイメージが大きく変わられたのではないでしょうか?

ご自分の信じる道を、自信に満ちて着々と進んでいらっしゃる印象の矢野さんでしたが、起業前は、女性としての生き方にもどかしさを感じておられたということにとても驚きました。そして、矢野さんがラジオ番組を通して感じた「女性だからこそ自由になる部分がある」という可能性を、わたしも矢野さんを通して強く感じることができました。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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