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輝く女性インタビュー

ほんの少しの心がけで海がきれいになる!かながわ海岸美化財団の代表理事 松浦治美(まつうらはるみ)さんインタビュー

公益財団法人かながわ海岸美化財団の代表理事 松浦治美さん

かながわ海岸美化財団 松浦治美さん

神奈川県と相模湾に面する県下の13市町によって設立された日本で唯一の海岸美化専門の団体であるかながわ海岸美化財団の松浦治美代表理事に設立の経緯と活動内容についてお話をお聞きしてきました。

神奈川県には観光地としても有名な海岸がたくさんあり、サーフスポットや海水浴場としても多くの人で賑わっています。神奈川県の魅力のひとつでもある海岸をより魅力的にすべく日々活動していらっしゃいます。

ぜひ、お楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■「海は汚い」というイメージを変えたい

相模湾の悪いイメージを払拭するために活動を始めた松浦さん

設立経緯のお話をされる松浦さん 

-かながわ海岸美化財団の設立の経緯を教えてください。

松浦さん:設立は、1991年4月になります。当時、神奈川県が県民に実施したアンケート調査では、相模湾のイメージとして、第1位が「汚い」だったんです。

この結果を受けて、神奈川県にとって海は大切な観光資源でもあり、地元の方たちの憩いの場所でもある、非常に貴重な財産として大事にしなければいけないという考えをあらためて痛感して、県と相模湾沿岸の13市町が一致団結して設立に向けて動き出したんです。

そして、「もっと人が海に来たいと思うような場所にしよう。」ということで、海岸でイベントやコンサートを行う相模湾アーバンリゾートフェスティバル1990 (サーフ‘90)を開催しました。

そして、この活動を一過性のものではなく継続的な活動にしていこうということで、「かながわ海岸美化財団」が設立されました。

-「海をきれいにしよう」と意識を向けてもらうイベントをやり、そのイベントの取り組みの成果として設立されたんですね!実際に、活動内容はどのようなことをしていらっしゃるのですか?

松浦さん:活動内容は、4つあります。

①海岸清掃事業
この事業は、海岸を清掃する事業です。私たちが清掃する海岸は、横須賀市走水海岸から湯河原町湯河原海岸までの自然海岸で全長150kmにおよびますが、美化財団の職員は私を含めて10名なので、実際の清掃作業は職員だけでなく、清掃事業者さんに委託しています。

この150kmの海岸にいつ、どこに、どれだけのごみがあるかは分かりません。人出や天候によってごみの状況も変わります。ですから、タイムリーで効率的な清掃を実施するために、職員が毎日海岸をトラックでパトロールしています。

②美化啓発事業
より多くの方に海岸美化に関心をもってもらうためにイベントの開催や出展をしたり、学校にうかがって子どもたちに海岸ごみについての授業を行ったりしています。

③美化団体支援事業
海岸美化は多くのボランティアさんに支えられていますが、こうしたボランティアの活動を支援しています。

具体的には、ボランティアの皆さんがいちばん困るのは拾ったごみはどうしたらいいのか、という部分です。

この点を解決するために、各海岸でボランティアさんが集めたごみの置き場所を決めて、パトロールの際に回収し市町の処分場にもっていきます。

また、海岸清掃をされる際に美化財団にご連絡をいただくとごみ袋と軍手を提供し、ご希望があればトングを貸し出します。

全国的にビーチクリーン活動をしている団体の方にお話を聞くと、県や市によっては、ボランティア団体登録をして年間の清掃計画を出してくださいなど言われることもあるそうですが、神奈川県は美化財団に電話1本するだけでいいので気軽にビーチクリーンができるので良いと言っていただけます。

④調査研究事業
財団設立以来継続して海岸ごみについて調査しています。海岸にはどのようなごみがあるのかを調べていますが、最近ではプラスチックごみがとても多くなってきています。

-同じような活動をしている団体は、ほかの都道府県にもあるのですか?

松浦さん:県と市町による協調行政で設立された私たちのような組織は神奈川県だけですね。

 

■海岸ごみの7割は川からのごみ

ごみの多くは川から流入しているものだとされている

色あざやかなプラスチックごみ 

-では、海岸に捨てられているごみは実際にどういったものが多いのですか?

松浦さん:海岸ごみというと、海岸に遊びに来た人が残していったごみと考える方も多いですが、じつは7割が川から海に流れ出て海岸に漂着したものなんです。街中でぽい捨てされたごみやうっかり落としたものが風や雨によって川に落ち、それが海まで流れてくるのです。

-すごくお恥ずかしいですが、漠然と海外から流れてきているものも多いのかなと思っていました…

松浦さん:そうですよね。海岸ごみというと外国語が書かれた缶などのイメージがあると思いますが、相模湾は太平洋に面しているので、日本海や南の海に面している地域に比べると、外国から漂着するごみは少ないです。

-なんの疑いもなく、海岸ごみは遠くから来たごみだと思っていましたが、ほとんどが街で出たごみという事実は、大変驚きましたしまったく知りませんでした。

松浦さん:そうですね。でも、それだからこそ私たちの啓発活動が必要だと感じています。

-自分たちが何気なく捨てたごみが海岸を汚し、海の生きものに影響を与えているんだと知れば行動が変わりますね。

松浦さん:台風などのあとに海岸を見ていただくとそのことがより実感していただけるかもしれません。木くずに混じって、ペットボトル、アルミ缶、トレイなど街中で見かけるごみを多く見ることができると思います。

-神奈川県の海岸ごみの量はどのくらいあるんですか?

松浦さん:美化財団が回収しているごみは、年間約2000tで毎年大きくは変わっていません。

まず、自然ごみか人口ごみかの比較でみると、自然ごみは全体の2/3、残りの1/3は人口ごみ、です。

ごみの総量は毎年変わりありませんが、近年はこの人口ごみの内訳が大きく変わっています。1992年から1994年にかけての調査ではプラスチックごみが全体の約4割であったのに対して、最近は6割近い数値になっています。要因としては、私たちの生活のなかでプラスチックの容器や包装が増えてきたことが考えられます。

-プラスチックごみが増えてきているのは、生活実感としてありますね。

松浦さん:ここで気をつけなければいけないことは、ごみの量は重量ベースで計測しているということです。

プラスチックごみが増えているいっぽうで、びんや缶は減ってきていますが、プラスチックごみの約半分を占めるペットボトルはびんや缶に比べると、1本あたりの重量が軽いです。そうなると、軽いはずのプラスチックごみの重量が増えているということは、本数や体積で考えると重さでの比較以上に、見た目でのプラスチックごみの量は非常に増えているということになるわけです。

もうひとつ注意していただきたいのは、ペットボトルは水よりも重いので、ふたをしたまま捨てると中に空気が入っているため水に浮いて、海岸に漂着しますが、ふたを取って捨てると川底や海底に沈みます。おそらく、相当の数のペットボトルが目には見えない場所に残っていると思います。

2018年8月に由比ヶ浜でシロナガスクジラの赤ちゃんが打ち上がって話題になったことがありました。そのクジラは生後3カ月くらいで母乳しか飲まないはずなのに、お腹の中から小さなプラスチック片が発見されました。このことからも海の中にはたくさんのプラスチックごみが散乱していることが想像されます。

-本当に、私たちの心がけを少しずつ変えていくことが大切なんですね。
ボランティア活動支援もされているというお話でしたが、ボランティアの数は増えているのですか?

松浦さん:ボランティアの数は年間でのべ16万人で、財団設立当初時と比べるとかなり増えており、皆さんの海岸美化に対する意識は着実に上がっていると思います。このことは、本当にうれしいですし、もっと広がっていくといいなと思っています。

 

■この活動をより多くの人に知ってもらいたい

かながわ海岸の美化は一人ひとりの意識がとても大事である

かながわ美化財団の活動をより多くの人に知ってもらいたいと語る松浦さん 

-では、最後に今後の課題としてお考えになっていることを教えてください。

松浦さん:私たちの活動は、県と13市町からの負担金と企業や個人からの会費と寄付に支えられていますが、昨今の地方自治体の財政難に加えて、新型コロナウィルスによる経済環境の悪化などの影響を受けて、今後、活動資金が減ることが予想されます。

そうなると、現在の水準の清掃活動がむずかしくなる可能性も出てきます。
ここを解決したいと思っています。

-私も今日の取材で活動を初めて知りましたが、賛同してくれる企業や個人の方はもっと増やせると思いますがいかがですか?

松浦さん:そうなんです。コロナ禍で遠くに行けない分、憩いを求めて海岸にいらっしゃる方が増えて、海岸をきれいにしようとする意識が高くなっているような気がします。そのため、新たに会員になってくださる企業や個人の方もいらっしゃるので、その点は非常にありがたく感じております。

しかし、おっしゃるとおりで活動内容をご存知ない方も多く、知名度が低いことが問題だと考えております。

今後は、より多くの方に美化財団の活動を知っていただき、海岸美化に興味をもっていただけるよう、これまで以上に普及啓発に取り組んでいきたいと思います。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

海岸ごみの7割が川からのごみだという事実に大変驚きました。さらに、海岸のごみを確認するために、毎日パトロールしているということもいっさい知りませんでした。さらに、この活動自体も資金的な問題で継続に懸念が生じているという事実も当然知りませんでした。

海はみんなのものです。それだけに、一人ひとりの心がけがとても大切だと知りました。ごみがあるから私も捨てていいではなく、ごみがあるのは誰かが捨てたからだ、私は絶対に捨てないようにしようという気づきに変わることがとても大切なのだと思います。

小さな心がけを今からでもいっしょに始めましょう。きれいな海をみんなで守っていきましょう。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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