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輝く男性インタビュー

クリエイター集団「studioCOOCA(スタジオクーカ)」の施設長 関根幹司さんのインタビュー

studio COOCAで施設長を務める関根幹司さん

studioCOOCA施設長の関根幹司さん

平塚市にあるさまざまな障害、ハンディキャップをもつ人のための福祉施設「studioCOOCA」。その活動内容は、私たちが想像する福祉施設とは大きく異なり、さまざまなアート作品の創作活動のみを行っているそうです。

その人の好きなこと、得意なことで活動し、仕事とするアートクリエイター集団です。

そんなstudioCOOCAの施設長 関根幹司さんに、クリエイター集団として今の姿になるまでの苦悩や葛藤、そして、この先の未来のお話などをたくさんお聞きしてきました。

ぜひ、お楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■やりたいことをやってもらおう

 関根さんは、studio COOCAのクリエイターが描いたすてきな絵の前でお話をしてくれました

studioCOOCAについて語る関根さん 

-今日はよろしくお願いします!早速ですが、studioCOOCAの活動内容について教えてください。

関根さん:私たちのような福祉施設の主たる目的は、障害をおもちの方たちに対しての就職支援など、就職について考えることが目的になっているんです。

また、現在では、障害は知的障害、精神障害、身体障害の3つに分類されており、studioCOOCAにはこれらのうちのどれかに該当する障害をおもちの方がいらっしゃいます。

-しかし、studioCOOCAは就職支援としてイメージされる手作業を中心としてお仕事をされている方がいらっしゃらないと思うのですが、どのような作業が中心なんですか?

関根さん:私たちももともとは、いろいろな作業がある中に、絵を描いたり、作品を作るアート部門があったのですが、今はアート部門だけ独立し、創作活動を行っています。

-えっ、そうなんですか!勉強不足で恐縮ですが、創作活動のみの福祉施設はめずらしいことだと思うのですがいかがですか?

関根さん:神奈川県ではうちだけでしょうし、全国的に見ると各都道府県にひとつはあるかなというくらいに広まってきましたが、おそらく創作活動しか行わない福祉施設はうちが初めてだったのではないかと思います。

そもそも、身体障害者のリハビリ・機能訓練をすることが、こういった福祉施設のはじまりなんです。そのため、手を使うことが訓練になるため、手作業が中心となっていったのです。

本来であれば、それ以外にあってもいいはずなのに、私たちのような支援する側の職員もご家族の方も、さらにご本人だって障害者の就職=組立作業などの手作業だとみんな思い込んでいるんですよね。

-みんなが思い込んでいるものを変えるというのは大変なことだったと思うのですが、創作活動中心の福祉施設ができるまでのお話をお聞かせください。

関根さん:誰しもがそうですが、知らない職業は思いつかないし、想像もできないわけなので、彼らにもまずはいろいろなものを経験してもらおうということで、「何をやっても良いし、何もやらなくて良い、やりたいことがあったらそれを始めてください。」というところからスタートしてみたんです。

しかし、これがなかなかスタートしないんですね。ですから、家でいちばん好きなことを聞いてみたら、ゲームや絵を描くことが多かったので、それをやってみてくれとお願いしました。

しかし、日中活動でそれらをやるとなると、みんながそれは遊びだと思って抵抗があるんですね。結局、みなさん組立作業なんかをやりたがりました。

-なるほど。なんかすごくわかる気がしますね。

関根さん:そうなんですよね。しかし、これを続けていくうちに、組立作業をしている傍らでゲームをしたり、絵を描いたりする人が出てきたんです。しかし、表立ってやれない状況でした。

このことを、いちばん嫌がったのは親御さんでした。「何かを組み立てられるように訓練してください。」という要望が強くありました。

でも、彼らは手作業よりも、ゲームをしたり絵を描いたりしたいわけなので、それを続けてもらいました。

-この状況をどのように打開したのですか?

関根さん:結果的にゲームは打開できていないのですが、絵を中心としたアート作品は商品化することでどうにか変えられると考えていたんです。

しかし、商品化するには作品を売りにいかなければいけないわけですが、どこで売るかがとても重要だと考えていたんです。

これらの作品は価値のあるもので創作活動は仕事なのだというように考え方を変えてもらうには、施設内で実施する発表会での販売や、地域のバザーで販売するということではむずかしいと考えていました。

ですから思い切って、銀座のギャラリーを借りて作品発表をしました。

ここは、コレクターやアートクリエイター、美術関連の学生さんなどがお客さんの中心ですので、ここで評価されることで彼らの作品がアートとして評価をされることになると考えたんです。

結果として、数点の作品を買っていただくことができて、私を含めてまわりの見る目を変えることに成功したんです。

おそらく、もっとも衝撃を受けたのが親御さんであっただろうと思います。毎日、湯水のように描いている絵、捨てる以外考えられなかった絵に値段がついて、さらにアートに造形が深い方たちが購入されたんです。

言葉の評価ではなく、お金を払って購入してもらえたという衝撃は今でも忘れませんね。

-そうやって、少しずつ変わっていったんですね。

関根さん:今考えれば笑い話ですが、作品展を始めた当初は作家名を伏せて出していたこともあったんです。作品に価値を感じていなかった親御さんが恥ずかしいからという理由でした。それくらい当時と今では障害者のアートに関する見方が変わったんですね。

今から30年前は障害者のアートはいっさい認められていなかった。余暇活動でのお絵描き、遊びの時間としてやっている。もしくはアートセラピー、治療目的として絵を描かされるみたいな感じでしたが、30年続けてきてここまで変化があってよかったですね。

 

■思いついたときから創作活動は始まっている

studio COOCAのメンバーと写真撮影

クリエイーターたちとの集合写真 

-関根さんが障害者の方の作品の魅力に気づいたきっかけはなんだったのですか? 

関根さん:きっかけということではないですが、とにかく彼ら彼女らの作品は、おもしろいんです。

-クリエイターの印象的なエピソードはありますか?

関根さん:たくさんありますが、やはり創作のしかたがダイナミックなんですよね。

とにかく汚れるし、道具はもったいない使い方をするし(笑)。でも、仕上がりは最高なんですよ。

-具体的にどのようなことなんですか?

関根さん:たとえば、ボンドを使った作品ですが、まずは、紙を切るんです。そのあとはA4サイズにしたダンボールを用意して、木工ボンドをチューブ1本絞るんです。ダンボールをボンドの海にしてその上に切った紙を貼っていくんです。

その作業が終わった直後は、よくわからない紙の山だったので何とも思わなかったです。それがね、時間が経ってボンドが乾いてたものをみたら凄い造形が現れたんです。

それがめちゃくちゃかっこよかったんです。作業してるときは適当にやっているようにしか見えないんだけど最終的には空間構成の凄さ、「これ完璧だよな。」と偶然じゃないような計算された空間が構成されていていたんです。

問題はこの作る過程です。ボンドを1本絞るとすごい量になるわけですから、机や手、服や髪についてそのしまうわけです。それを考えると躊躇しますよね。

さらにほかの方では、それがボンドではなくて絵具の場合もあるんです。たとえば絵の具が24色あったらとりあえず全部出してから描き始めるわけです。

でも、実際はその色はたったひとつの点を描くためだけだったりするんですね。でも、仕上がりは完璧な空間構成であるわけです。

こうなるとこちらはいろいろ悩みますよね。ボンドも絵具も無限にあるわけではないですし、もったいないなぁと思う反面、創られる作品はすばらしいわけです。

このまま、職員と続けてもらうかどうかを議論したことがあったんです。

-それは悩みどころですね。

関根さん:そこで、作品づくりはどこから始まっているかを考えてみたんです。

これはみんな同じだと思いますが、頭の中でこれを作ろうと思った瞬間から始まっているんですよね。

そうなるとボンドや絵具をどう使うかも作品づくりの1部で、彼らは過程のすべてを本当に楽しんでいるのだと思ったんです。これを作ろうと考えた瞬間からすべてが表現なので我々は規制するのをやめようと決めました。

彼らは、ただ気持ちよく作品を創り表現をしているんですね。絵の具皿を満たすのも彼らの気持ち良い描き方のひとつだし、汚れることを気にしないということも気持ち良い描き方なんですね。

だからボンドも気持ち良く使って、納得するまで紙を切って、気持ち良く作品づくりを進めた結果としてできたものは、多くの人が見て気持ち良いものになっているということだと思います。

 

■人類は課題を解決しながら寄り添って歩んできた

たくさんの作品が販売されています。どれも色あざやかでおしゃれです!

-少し話を広げて、障害者支援活動における関根さんが考える課題は何だとお考えですか?

関根さん:やはり、生産性ですね。働かざる者食うべからずっていう考え方がすごく根強いですね。厚生労働省もいかに生産性を上げるかの課題を福祉施設に提示していますから、全国の施設が利用者に求めているものは生産性なんです。

-津久井で起きた障害者施設での悲しい事件をめぐり、「障害者と生産性」という言葉は大きく取り上げられましたね。

関根さん:そうですね。でも、障害をもって生まれてきた人の生産性に関して答えろと言われても答えられないです。答えられないと言うより、生きること以上の価値はないので生産性が高い低いはなにかの基準にならないということだと思っています。

障害者と言われる人、病気している人、今働くことができない人は人類への問題提起をしている人たちだと思っています。

コロナウィルスだって、目の前に苦しんでいる人がいるから、それが問題提起となって研究が進むわけですね。

問題提起があって、はじめて社会が動き始めるんです。すべての人が今よりももっといい社会になるように動き出すわけですね。

そう考えると、この問題提起はとても生産性が高いと考えられると思います。これのおかげで、人類の次の進歩ができるかもしれませんからね。

-確かにそう考えると、誰かが問題提起をして、対応できる人がその問題を解決することで社会全体が良くなる循環が生まれるんですね。

関根さん:NHKのドキュメンタリーで180万年前の人類の誕生に関する特集がされた際に、歯の抜けた高齢者や、障害をもっていたであろう当時の人類の骨の話題があり、当時から介護をしていたことをうかがわせる内容が放送されたんです。

180万年前というのはホモサピエンスが登場するころなんです。まだ、狩猟採集で定住生活ではなく物を拾って歩き回っている時代に介護が始まっていたんですね。猛獣にいつ襲われるかわからず、明日の食事だってどうなるかわからないようなころに、高齢者や障害者を介護しながら移動していたんです。

ほかの動物にはない介護や助け合いの考えがあったから、人類がここまで発展することできたのではないかと思うのです。

作業がまったくできない人をどうしたら助けられるか、どうしたら我々といっしょに生活できるかを長い時間をかけて考え、税金や保険などの制度を作っていったんだろうと思います。

今、我々はあまり意識してないと思いますが、今ある制度は根底的に動けない人をどうするかということで作られてきている気がするんです。

-本当にそうですね。人類は、はるか昔からみんなが助け合いながら生きていく方法を考えて進んできたんですね。いっぽうで、今は生産性で人の価値を図ろうとする動きがあるのは事実なんですね。ここに課題を見出されているわけですね。

関根さん:資本主義社会に生きる我々は、お金や生産性を重視してきましたが、2020年にコロナウィルスによりまったく違う日常を経験し、何かが違うのかもしれないと社会が感じ始めているのではないでしょうか。

お金では解決できないものをたくさん経験しましたよね。

-未来から2020年を振り返ったときに価値観の変わる年になっているかもしれないということですね。

関根さん:そうなるんではないかと思うし、そうなるきっかけを福祉に携わる我々が作っていけるのではないかと思います。

そう考えると、福祉職は人類の最先端の仕事なんだなと思いますよね。

-最後に、関根さんが今後実現したいことはなんですか?

関根さん:studioCOOCAを大企業や学校などの中に作りたいんです。隣の部署、隣のクラスの感覚でstudioCOOCAがあるという環境をたくさんつくりたいんです。要は、障害者がいるということを身近に知る場を作りたいです。そのときに大切なことは、無理に交流をしないということです。こちらもいっさい邪魔はしません。

自然と同じ空間にいるんです。その空間をともにしていると自然と話すようになります。

私たちが生活をしていくなかで障害をもった人を意識することはほとんどないです。ですが職場や学校にいることにより意識し始めます。意識するだけで良いんです。

それだけで、障害者に対する考え方が変わるはずです。

 

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

私が関根さんのインタビューから感じたメッセージは、「無理に仲良くしようとしなくていいよ。まずは近くに来てみているだけでいいよ」であったと思います。

まずお互いに近くにいるだけいいんだ。というメッセージに心が軽くなりました。

知らないということは、多くの行動を制限するのだと思います。その点で、studioCOOCAはアートを通じて多くの人に障害者との接点をもつ機会を作っています。

気になる方はぜひ、平塚のstudioCOOCAもしくはGALLERY COOCA & CAFEに行ってみてください。色あざやかで、自由な表現で溢れた作品に出会えます。
※『見学やカフェ利用についてはコロナの影響で見合わせていることもありますので、ホームページにてご確認ください』

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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