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オリジナリティあふれる展覧会を開催することで美術をもっと身近なものに!開館30周年を迎える平塚市美術館 特別館長の草薙奈津子(くさなぎなつこ)さんインタビュー

2004年から平塚市美術館の特別館長を務める草薙奈津子さん

1991年3月にオープンした平塚市美術館は、今年の3月で30周年を迎えます。

現在特別館長を務める草薙奈津子さんに平塚市美術館の歴史や取り組み、また美術に対する考え方についてお話をお聞きしてきました。

時代とともに現代美術も変わってきているんですね!ぜひお楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■今年で30周年を迎える平塚市美術館

平塚市美術館の外観

-まずは簡に平塚市美術館の史についてえていただけますか?

草薙さん:平塚市美術館がオープンしたのは1991年3月で、私が館長としてこの美術館にきたのは2004年です。当時この美術館の来館者数は年間で約3万人でした。ここ数年平塚市の人口は26万人前後を推移しているので、平塚市の人口の1割の方に来ていただいていたことになります。

平塚市は都心に比べると大きい都市ではないですので、来館者数を人口の割合でみたときにそれほど悪い数字ではないのですが、建て物自体はほかの大きな県立美術館と比べても引けを取らない立派なものです。

私は当館をもっと活用できればまだまだ来館者数を増やすことができると思ったので、いろいろ施策を打って、現在では年間約10万人の方に来ていただけるようになりました。

-すごい!3倍以上になったんですね!館者やす施策として考えられたことはどんなことですか?

草薙さん:まずはここに美術館があることを知ってもらうことです。これだけ立派な建物なのに、美術館があることすら知らないという方が意外と多かったんです。

なので、まずは知ってもらうことから始めました。じつは平塚市美術館は、展示がある有料エリアに入らないかぎりすべて無料で施設を利用していただくことができます。

散歩や読書をしたり、夏場は館内で涼んでいただいたりと自由に利用していただいて構わないんです。

館内には無料で利用できる広々としたオープンスペースがある

-そうなんですね!庭もいですし、散やリラックスする空間としてもすごくいいですよね!

草薙さん:さらに展覧会もたくさん開催するようにしました。それも首都圏で開催されるような大規模なものから、誰もが親しみやすさを感じられる小規模なものまでさまざまなテーマで実施することによって、美術に対するハードルを下げました。

-確かに、美術と聞くだけでちょっとハドルが高そうに感じてしまいます。

草薙さん:そう感じる方も少なくないと思いますが、楽しみ方は人それぞれ自由なので、あまりむずかしく考える必要はないものなんですよね。

「美術」というものをもっと身近なものにすることが私たちの課題であり役目だと思っています。

 

■成功体が自信にがる

館者やす施策としてたくさん展覧会をされたとのことですが、昔はされていなかったんですか?

草薙さん:昔も開催していましたよ。ただ、内部の問題として「こんな展覧会は県立などの大きな美術館にしかできない」というようなマインドがあったので、そこを変える必要がありました。そのためには、チャレンジして成功体験を経験することが必要なんですよね。

そのきっかけとなったのが速水御舟展です。速水御舟の作品には失敗作がないと言われているくらい良い作品がそろっているんですが、コレクターがむずかしくてなかなか作品が借用できない。当時は御舟展なんか私たちにはできないと思っていたと思います。国立の美術館だってできないくらいだったんですから。

2008年に開催した速水御舟展

けれど、実際に開催できましたし、御舟の展覧会は好評でした。さらに、周囲からは平塚市美術館は速水御舟展ができる美術館だというふうに見られるので、美術館としての格も上がるんです。

-展覧会績になるんですね!

草薙さん:そうなんです。そして、その成功が私たちの自信に繋がりました。自分たちにはできないだろうと勝手に自信をなくし、そう思い込んでいましたが、今では速水御舟展ができたんだからと自信をもってさまざまな展覧会を開催できるようになりました。作品もお借りしやすくなりましたし。

そうすると内部から活気があふれて、次はこんな展覧会をやってみてはどうか?と今までになかったアイデアも出てきます。

-すごいな、草薙さんのおかげでみなさんに自信がついたんですね!

草薙さん:やってもいないのに勝手に自信をなくしてしまうのは本当にもったいないことですよね。チャレンジしてみないと次にも繋がらないし、もしそれが失敗したとしても、次成功させるためにはどうすればいいかと考えればいいだけなので、何もこわがることはないと思いますよ。

-なるほど。そこからたくさんの展覧会を開催して、それが周りに少しずつまっていったんですね。でもそうやって美術館側では美術を親しみやすくするために工夫をされていますが、見る側の私たちはどういう心構えで美術にれればいいのでしょうか?

草薙さん:現代美術は、これが本当に美術なの?と思えるようなものがいっぱいあるんです。当館では、ペコちゃん展や日産カーデザイン展などを開催したことがあります。

そういうふうに美術館の展覧会は一般的にファインアートとされる芸術的なものだけではなくなってきているんです。

時代の流れとともに展覧会の幅も広がってきましたし、当館では1歳未満の赤ちゃんからご年配の方までが対象となるワークショップも開催しました。

たとえば、赤ちゃんを対象としたワークショップだと、アトリエで赤ちゃんに自由にお絵描きをしてもらう。ご自宅ですと、狭くて何かと問題が生じますが、こちらまで来ていただければ、スペースも広いし、汚したって構わないから、お父さんお母さんも安心ですよね。さらにいっしょに楽しむこともできます。

-おもしろいですね!そもそも美術の念がわってきているんですね。

草薙さん:ほかには0歳からの鑑賞講座も実施しています。

-0からですか!?

草薙さん:そうですよ。それは専門の先生にきていただいて、その先生の指導のもとお子さんと親御さんがいっしょに展示場を見てまわります。

そうすると、赤ちゃんは指をさしたり、声を出したりそれぞれ興味を示すんです。そうやって関心をもった作品を親御さんにチェックしてもらい、その赤ちゃんたちが興味を示した作品で「気になる!大好き!これなぁに!赤ちゃんたちのセレクション」という展覧会を開催しました。

2015年に開催した赤ちゃんたちのセレクション展
「気になる!大好き!これなぁに!」

-なるほど、赤ちゃんが選んだ作品の展覧会というわけですね!とてもしそうですね!

草薙さん:私たちおとなは、何となく子どもにはわかりやすいものがいいと思いがちじゃないですか。けれど、全員がそうとはかぎらなくて、具体的な絵が好きな子もいれば、抽象的な絵が好きな子もいて、本当に人それぞれなんです。

-赤ちゃんは固定念もないまっさらな感で選んでいる、さらにそれは自分に興味のあるものであって、周りの目をにした選び方ではないということですよね。

草薙さん:おとなになるにつれてどうしても知識が入りこんでしまって固定的な考えをしてしまうけれど、赤ちゃんにはそういった考えはいっさいないですし、美術に関して言えば自分さえよければいいんだということを示してくれた気がします。結構いい作品が並びましたよ。

-美術にするハドルがかなり下がりますね!良い意味で「これでもいいんだ!」という安心感があります。

草薙さん:美術(館)と聞くと、少し距離を置いてしまう存在かもしれないですが、私たちはみなさんが興味をもちやすい展覧会やワークショップを考えて開催するのが役目だと思っているので、興味がある展覧会に気軽に来ていただいて周りの意見は気にしないで美術に触れられる環境に少しでも身を置いてもらえたらいいですね。むずかしく考える必要はないですよ!

 

■美術を日常に取り入れやすい存在へ

館内の新収蔵品展

-これまでさまざまな美術館に行かせていただいて、ありがたいことに美術にれる機をいただいています。美術にれる時間がえると、少しずつですが身近なものに感じるようになってきました。

草薙さん:そういうものだと思いますよ。私だって若いころは美術より音楽の方が好きでしたからね(笑)。けれど、美術に触れる機会が増えていくと自然と親しいものになってくるんです。

美術を親しいものにするにはその時間を増やすということがとても大事で、とくに子どもたちにはそういう機会をたくさん与えてあげてほしいです。

2〜3年に1度すごい展覧会に行くだけではなく、2〜3カ月に1度くらいの頻度で近くの美術館の常設展を見るだけですごく変わると思います。じつは常設展も2〜3カ月に1度くらいで変わっているんですよね。

-平塚市美術館の常設展の料金はおいくらなんですか?

草薙さん:常設展だとひとり200円ですね。大きな企画展でも800円前後が多いです。

-200円ってかなり安くないですか?

草薙さん:決して高くない金額だと思います。海外では無料に近いものも多くて、やっぱり身近なものにするためには金額設定はとても重要ですし、できるだけ負担にならないように心がけています。

-この金額だったら、ふらっと寄ることもしやすいですね!では、最後に平塚市美術館にたらぜひ見てもらいたいポイントをえてください!

館内の無料展示スペース

草薙さん:常設展ももちろんいいですが、とくに企画展はこだわりをもっているのでやっぱりそこを見てもらいたいですね!

今年の夏には子どもたちを対象としたCOOCA(クーカ)展を開催する予定です。そのほかにも展覧会やワークショップをしていく予定なので、ぜひお越しいただけるとうれしいです。

-わかりました。私ももっと美術にれる機やしていきたいと思います!本日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

美術を楽しむということは周りの目を気にする必要がなく、まさに赤ちゃんセレクション展がそれを象徴していました。人それぞれの感性で美術に触れることが重要だというお話は、とても納得のいくものでした。

お話のあと館内の紹介をしていただきましたが、草薙さんがおっしゃっていたとおり無料のフリースペースも充実しており、とても居心地が良かったです。

さらに館内はベビーカーの利用も可能なので、家事育児で孤立してしまっている子連れのママにとっても、気持ちのリフレッシュができたり、同じ境遇をもつママとのコミュニティができたりと解放的な時間をもつことができることも当館の良いところだとおっしゃっていました。

少しずつでも日常に美術を取り入れてみるといいかもしれませんね。
お近くに行かれた際は、ぜひ気軽な気持ちで立ち寄ってみてください!

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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