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輝く男性インタビュー

活字を求める人がいるかぎり辞めることなんてできない!今年で創業101年目になる株式会社築地活字の5代目代表取締役 平工希一(ひらくきいち)さんインタビュー

株式会社築地活字の5代目代表取締役の平工希一さんインタビュー

株式会社築地活字 代表取締役の平工希一さん

日常に当たり前にある文字ですが、これが1文字1文字さまざまなフォント、大きさで人の手によって作られていたと考えることはあまりないのではないでしょうか。

今回は、国内でも数少ない活字(文字)を作られている会社、株式会社築地活字の5代目代表取締役の平工さんに活字の魅力や将来の活字についてお話をお聞きしてきました。

平工さんのような方々のおかげで活字(文字)が存在していると思うと、感謝しかありません。活字の魅力にどんどん引き込まれていくインタビューです。ぜひお楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■活字だからこそ表現できる個性

横浜博文館創業当時の写真

-まず、築地活字さんの歴史について教えてください。

平工さん:1919年に横浜博文館という社名で創業して、現在は築地活字と社名を変更し今年で101年目になります。

弊社のロゴマークに「HP」と記されていて、てっきり平工プリントの頭文字かなって思っていたんですけど、じつは博文館プリントの頭文字だったんです。

-私もそうだと思っていました。それにしても、今年創業101年はすごい歴史ですね。築地活字(横浜博文館)さんは、おもにどのようなことをされているのですか?

平工さん:簡単に説明すると、さまざまな書体の活字(文字)を一つひとつ作っています。

今ではなかなか考えられないかもしれないですけど、昔は手作業で一つひとつ活字を組んで印刷する活版印刷しかありませんでしたから、そのときに使用する活字を作っていました。

-いったん整理させてください!(笑)まず活版印刷って何ですか?

平工さん:活版は活字組版の略称で、活版印刷は活字を組み合わせて1枚の版を作りそこにインクを塗布して印刷する手法のことです。

ていねいに活字を組んで1枚の版を作る

-じゃあ昔は新聞も毎日一つひとつ活字を組んで印刷していたのですか?

平工さん:もちろんそうですよ!組版をする人、印刷して構成を考える人のように役割分担をして印刷していました。

-私たちはボタンをピッと押すだけで印刷できるものしか知りませんでしたし、昔の印刷方法なんて考えもしませんでしたが、デジタルがない時代を考えれば当然のことですよね。さらに、当たり前だけど活字も一つひとつ作られている。お話を聞かなかったらそんなこと絶対に考えなかったな〜。

平工さん:昔はとても大変だったんです。

ただ、時代が進むにつれて活字を使わないオフセット印刷が出てきて、今ではデジタルで印刷ができるようになったので、そもそもの印刷の概念が変わりましたよね。

-確かに活版印刷があるから活字が必要になるわけで、それがデジタルになってしまうと活字が不要になってしまうんですもんね。

平工さん:そうですね。私は40年ほど前に親父のあとを継いで5代目となったわけですが、20〜30年くらい前からオフセット印刷が主流になってきたので、私たちのような会社はいつ辞めようかと辞めどきを考え始める時代だったんです。

それにデジタルだときれいに印刷できるし、活版印刷ならではのインクの濃淡が悪い面で捉えられるようになったので活字業界にとってはかなり逆風でした。

-技術の進歩により便利になっていくいっぽうで、苦しむ方々もたくさんいらっしゃったんですね。

 

■違う視点から活字を見る

-現在、国内で活字を作っている会社はどのくらいあるのですか?

平工さん:今でも活字を作っている会社は、私が知っているかぎりでは10社もないんじゃないですか。神奈川県ではおそらく私たちしか作っていないと思います。

-えぇ〜そうなんですね。けれど、そんな厳しい状況でも100年以上この仕事を続けていられるわけですよね?

平工さん:それが、なぜか10数年くらい前から活字が再注目されるようになったんです。

というのも、今ではコンピューターを使えば何でもできるようになりましたが、それがかえって個性を出しづらいと感じるデザイナーさん達がいたそうで、そういうデザイナーさん達が活字の存在を知り、活字の世界をSNSで発信するようになったんです。

知人の招待で活字を作るワークショップイベントを見学に行ったんですが、若い人たちが嬉々として活字を拾っているんです。

「何だこの世界は!」って驚きましたね(笑)。

-本物の活字に触れていなかった世代の人たちが、活字の魅力を感じて広まっていったんですね。

平工さん:これまで対企業に向けてのサービスしか考えてきませんでしたが、デザイナーさんや一般の方々へ向けて情報を発信するようにしてみたらすごく反響をいただいて、海外の方からも見本誌を送ってほしいと連絡があったんです。

それは私たちが見ていた視点とはまったく違って、字のおもしろさだとか好きな字の味わい深さだとかを見られていて、それこそデジタルでは表現できない活字ならではの温かみがあると評価していただいたこともあります。

-テクノロジーの進歩とともにどうしても淘汰されてしまった仕事はほかにもあるんだろうと思うのですが、その進歩が昔の技術のすばらしさや魅力を再定義させるきっかけにもなりうるんですね。お話をお聞きして活字にもまだまだ希望があるなと感じました。

昭和中期から使用している活字鋳造機

 

■これだから活字作りは辞められない

-いっときは衰退傾向にあり、現在は世界からも注目を浴びるようになった活字ですが、どんなときにやりがいやこれだから辞められないということを感じますか?

平工さん:そうですね、若い人たちが中心となって活字を物づくりとして興味を持ってくれるようになり、活字を作ることや組版をすることに対して「こんなに細かい作業をする職人さんって、ほんとすごいですね」とか「文字を疎かに考えていた」とわかってくれる人が増えて、手間がかかっても物づくりをする人の思いが伝わったなと感じたときは続けていてよかったなと思いましたね。

けれど、いちばんやりがいを感じるというか辞められないと思うことは、活版印刷って活字が1本でも無くなると成立しなくなってしまうものなので、お客さまから1本無くなったから送ってほしいと言われることがあるんです。

昔は活字1本数百円もしなかったと思いますが、「送ってもらえて助かりました!」と何千円もするような菓子折りを持ってお礼を言いにきてくださるんです。

大袈裟な表現かもしれないですが、たかが数百円の活字1本でも、その人の生活を背負っていると考えると無責任に辞められないでしょ。

-活字を作っている方がいなくなったら、印刷できなくなっちゃうわけですもんね。

斜めに陳列することで活字が落ちない造りになっている

平工さん:求めてくれる人がいるかぎり、続けていきたいと思いますよね。

-ぜひ続けていってほしいです!では最後に、築地活字さんの今後のビジョンを教えてください!

平工さん:まだ言えない部分もあるんですが、物づくりとしての活字の世界を広めていければなと考えています。

今では名刺の注文も受けてやっていますが、最近「オンライン名刺はできるか?」という問い合わせが多くて。

これって物づくりの名刺とビジネスの名刺の差別化ができると思うので、チャンスだと思っているんですよね。

だからこれからもさまざまな視点で活字を捉えて、作り続けたいなと思います。

-わかりました!新たなチャレンジも楽しみに待っています。本日はありがとうございました!

 

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

テクノロジーの進歩によって便利になったことや効率的になったものは多いと思いますが、それに頼るあまりときには個性や考えることが少なくなってしまったと言えるのではないでしょうか。

活字鋳造機や活字を保管する棚も当時の方々の知恵が詰まっていて、そこから学ぶ部分も多いと感じました。

当然のように接している活字ですが、フォントや濃淡、さまざまな要素によって物ごとを表現できる活字の魅力に触れて感慨深いものがありました。活字って本当に奥が深い!と何度も考えさせられるインタビューでした。

築地活字さんの新しいチャレンジは公式ホームページで公表されるようなので、ぜひチェックしみてくださいね!

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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