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お出かけスポットインタビュー

ヴェネチアン・グラスとともにゆらりと心を遊ばせて、優雅なひとときを満喫できる別世界! 箱根ガラスの森美術館 館長の岩田正崔(いわたまさたか)さんインタビュー

箱根ガラスの森美術館の岩田正崔館長

箱根ガラスの森美術館の岩田正崔館長

箱根ガラスの森美術館のオーナーよりオファーを受け、オープン当初からこれまで館長を務められている岩田正崔さん。

水の都ヴェネチアを表現する館内は、異国情緒あふれる空間で思わず日本にいることを忘れてしまうほどです。

今年で24年目になるヴェネチアン・グラス専門の美術館の館長を務め、イタリア共和国功労勲章のひとつ「コンメンダトーレ」という勲章も受章された岩田さんのお話です。

ヴェネチアン・グラスと大涌谷を望む箱根の大自然に囲まれ過ごす時間は最高です!
ぜひお楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■熱烈オファーを受けて館長に

-箱根ガラスの森美術館が作られた経緯を教えてください。

岩田さん:この美術館のオーナーがこれまでたくさんのレストランを経営されている方だったんです。彼が、次は「心のグルメ、心のごちそう」をお客さまに提供していく必要があるだろうということでヴェネチアン・グラス専門の美術館を作りたいと考えたことがきっかけですね。

-オーナーが心のごちそうにヴェネチアン・グラスを選んだ理由はあるのでしょうか?

岩田さん:オーナーがもともと経営していたレストランで、芸術的な良い雰囲気が作れるようにとガラス作家の作品を展示していたんですね。

その当時、日本ではガレやドームといった有名なガラス工芸家は紹介されていましたが、ヴェネチアン・グラス自体は紹介されていなかったので、個人のガラス工芸家ではなくヴェネチアン・グラスの流れに注目してそれを広めていける場を作りたいと考えたようです。

-美術館といえば、作品ではなく作家さんに注目して展示するイメージでしたが、箱根ガラスの森美術館では、ヴェネチアン・グラスの歴史が中心にあるんですね。
では、岩田さんはどのようなきっかけから館長になられたのでしょうか?

岩田さん:私は館長になる前は大手百貨店に務めていたんですが、オーナーからヴェネチアン・グラス専門の美術館を作るから来てほしいとお誘いを受けたことがきっかけです。

-即答だったわけですね?

岩田さん:いやいや、最初はずっと断っていたんですよ。私も企業に務めていたましたから。

それからもずっと誘いは受けていたんですが、じゃあまずはいっしょに旅行でヴェネチアに行こう!と誘われて私も行っちゃったもんだから、もうやるしかないかと思ってそこで決意したんですよ(笑)。

-オーナーの願いが叶ったんですね!では、この美術館がオープンしたころからずっと岩田さんが館長を続けられてきたんですね。

岩田さん:そうですね。1996年にオープンしてから24年間、私が館長を務めてきました。

ただ、オープン前からオーナーといっしょにヴェネチアに行って商品を仕入れましたし、美術館の建設計画からかかわってきたのでオーナーと同じくらい思い入れは深いですよ。

当時から変わりませんが、展示品や商品は今でも現地から仕入れています。このことには強いこだわりをもっています。

ヴェネチアン・グラス美術館・応接間のエレガントなシャンデリア

-岩田さんはイタリアから勲章を受章されたとお聞きしましたが、それはどのような章なのですか?

岩田さん:各分野で功労のあった個人に対して大統領から授与されるコンメンダトーレと呼ばれるイタリア共和国功労勲章のひとつを都内のイタリア大使館で在日大使からいただきました。

-それってすごいことですよね?イタリアの文化と芸術、そしてヴェネチアン・グラスを日本で広めたことが評価されたんですね。

岩田さん:オーナーが熱心に私に声をかけ続けてくれたからですよ(笑)。

-入り口から展示されているガラス作品はもちろん、この美術館に入ったときに正面に見えた大涌谷の景色が個人的にとても印象的だったのですが、大涌谷からかなり近い距離にありますよね?こんなに近い距離に作られたのにも何か理由があるのですか?

岩田さん:この場所は、箱根の中でも大涌谷がいちばんよく見える場所だと思いますが、この場所ありきでこの美術館は作られたといっても言い過ぎではありません。

ガラスは素材を熱してさまざまな形を作る、いわば火の芸術でもあるんです。ガラスは火から生まれたとも言えるので、今でも火山活動を続けているこの大涌谷の近くを選び、大涌谷から立ち昇る噴煙がこの火の芸術を表現しているんです。

大涌谷の景色が一望できるこのテラスが岩田館長のお気に入りスポット

-この場所にも意味やメッセージが込められているんですね!そのこだわりに驚きました!
では、ヴェネチアン・グラスとはどういったものなのか、特徴を教えてください。

岩田さん:ほかのガラス作品と比べてとくに繊細で、そして優雅な印象を与えるものなので、女性好みの作品であるということが大きな特徴ですね。

-たしかに、すごくおしゃれな作品が多いですね。

岩田さん:ヴェネチアン・グラスとは、特定の地域で作られたガラスブランドであって特定の工法ということではありません。職人の技術力はとてもすぐれているので、極限まで薄くしたり、造形がむずかしい細長い形にしたりと熟練の技が光るデザインが多いです。

ひとつの作品ができあがるまでの製造工程が展示されている

これ(上の写真)は、作品を作るにあたってどれだけ繊細な作業がされているのかがわかる、レースガラスができあがるまでのプロセスが展示されています。

ガラスの貴婦人というイメージがあり、これも並の技術では作れないものです。

-レースガラスの作り方を考えた人もすごいですよね!レース模様のヴェネチアン・グラスを作るようになった理由はあったのですか?

岩田さん:15世紀ごろ、当時の王侯貴族の間でレース編みの装飾品がよく使われていたんですね。

それがその時代でずっと流行っていたので、レース編み模様をガラス作品で作れないか?ということで、職人が試行錯誤を繰り返してガラスでレース模様の器を作ることができるようになったのです。

ですから、作品には時代背景がものすごく表れているんですね。

レース模様がほどこされたヴェネチアン・グラス

-そういうことなんですね!岩田さんが「これはすごい技術だ!」と思う作品はありますか? 

岩田さん:これはなかなか真似できないなという作品がありますね。 

繊細な技術により絶妙なバランスで支えられている

-これはすごいですね!風が吹いたら倒れてしまいそうですよね!

岩田さん:開館当初に写真撮影するため一度だけ屋外に持ちだしたことがありますが、あのときはかなり緊張しました!今はケース内に展示していますが、現代のガラス職人が何名か同じものを作ろうとチャレンジされたことがありますが、誰も作れなかった作品です。

 

■ゆったりと流れる非日常の時間を過ごしてほしい

-中に入ると本当にヴェネチアにきているような感覚になって、ついついここが日本であることを忘れてしまいそうです。

岩田さん:そのように感じる方は多いと思いますよ。

というのも、私たちは「荒唐無稽なるが故に我はそれを信ずる」というラテン語の一文を入口の梁に掲げていますが、非日常の体験をここで味わって楽しんでもらえるように一貫したコンセプトをもとにこの美術館を作り上げているんです。

このラテン語の言葉は、自分たちがふだん味わえないような時間を楽しめる場所がここにあるという意味で、たとえばこの館内にあるショップはヴェネチアの街中で実際にショッピングをしている雰囲気が味わえるように作られています。

今はコロナの影響で一時的に休止していますが、ほかにはカフェ・レストランでイタリア人歌手による本場のカンツォーネを生演奏で披露して、音楽を聴きながら食事を楽しむことができます。

ヴェネチアの街を表現している

-ヴェネチアでも生演奏を聴きながら食事ができるレストランがあるんですか?

岩田さん:多くはないと思います。そもそもレストランが歌手を雇用することはほとんどなく、歌手の方に演奏してもらうにはそれなりに費用がかかりますからね。

でも、私たちは美術館もレストランもすべて一括して運営しているので、コンセプトをぶらすことなくできるんです。

-カンツォーネの生演奏で聴きがなら食事ができるなんてなかなか経験できないですよね。でもそれができるここはヴェネチアより優雅に過ごせるヴェネチアなんですね。

岩田さん:コロナ禍で海外にも行けなくなった今、この場所でそれぞれの楽しみ方や時間の使い方をして、心を豊にしてもらう。そして、その気持ちを糧に明日への活力にしてもらうことが私たちの最高の喜びです。

入り口の柱部分に刻まれているラテン語の銘文
“CREDO QUIA ABSURDUM”

 

■ヴェネチアン・グラスの1,000年の歴史を展示

1500年ころのヴェネチアの様子を記録したヤコボ・デ・バルバリの版画(複製)

-本場のヴェネチアよりも優雅な時間を過ごせるこの場所を提供するにあたって、みなさんが守っているこだわりやルールはありますか?

岩田さん:いちばん大切なこととして、展示品はすべて本物であるということです。現地ヴェネチアから本物の家具や調度品を仕入れ、美術作品も世界に誇れる名品ばかりを集めています。

また、ヴェネチアン・グラスには1,000年もの歴史がありますから、ヴェネチアという街の文化をヴェネチアン・グラスを通して鑑賞していただくために、それぞれの時代に創られた代表的な技法の芸術作品を展示しているのが特徴です。

-作家ではなくヴェネチアン・グラスという作品にフォーカスした美術館なので、作品の変化を通してその時代の伝統と文化の移り変わりが見えてくるんですね。

イタリアでは国宝級とされている作品

岩田さん:時代ごとというのがポイントですね。長い歴史を今から振り返るとその時々のトレンドがわかるのでそういう視点で見ていただいても楽しいかもしれませんね。

そして、展示品以外でのこだわりは、おもてなし精神の部分です。スタッフのサービスが徹底されているかどうか、その点は厳しく教育指導しています。

たとえば従業員教育のひとつとして、おもてなし精神の根幹となる「掃除力」を身に付けるよう徹底しています。

-「掃除力」ですか?

岩田さん:そう、掃除力!汚いところを失くすという単純なことなんですけど、単純なことがいちばんむずかしいんです。せっかく心休まる非日常を味わいにこられているお客さまを清潔で気持ちの良い空間でお迎えするよう、そこは大事にしていますね。

-箱根ガラスの森美術館でここだけは必ず見てね!という岩田館長のおすすめはありますか?

岩田さん:それは全部だね(笑)。
それぞれの場所にそれぞれの楽しみがあるからね。

-愚問でした(笑)。では、どのくらいの時間があれば館内全体をゆっくり楽しむことができますか?

岩田さん:2時間から3時間くらいは余裕をもって滞在してもらえたらいいかなと思います。

ここではゆっくりとした時間を楽しんでもらいたいので、「ゆらりと心を遊ばせて」心を豊かにしてもらいたいですね。

ここで俳句を作る人や絵を描いている人もいますし、この庭園には、早川という川のほとりまで降りられるようになっているのですが、そこでヨガをしている人だっています。楽しみ方は人それぞれ自由なんです。

写真撮影スポットも

-では、最後に岩田館長から読者のみなさんへメッセージをお願いします。

岩田さん:コロナ禍で世の中が大きく変わり、たくさんの制限の中に閉じ込められてしまっているけれど、ぜひ箱根ガラスの森美術館の大自然の中に身をゆだねて、美しいガラス作品や箱根のすばらしい自然に触れて心を解き放ち豊かな気持ちになってください!

-ヴェネチアン・グラスの作品と大自然の融合に触れ、私も心が豊かになりました!本日はありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

箱根ガラスの森美術館が本場ヴェネチアをこれほどまでに再現できているのは、細部へのこだわりと岩田館長やスタッフ全員のおもてなしの精神の心によるものなんだと感じました。

そしてインタビュー後、岩田館長には館内の隅々までご案内していただいて、時代の流れとともに変わりゆくヴェネチアン・グラスの魅力に気づかないうちに引き込まれていきました。

思わず、ここは日本だよね?と確かめてしまうこの館内の雰囲気は想像をはるかに超えるものでした。

非日常を味わいたい!と思ったときは、四季折々さまざまシーンで楽しめる箱根ガラスの森美術館にぜひ足を運んでみてください。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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