たいせつじかん ?ほっと一息。少し休憩。幸せな時間?

輝く男性インタビュー

認知症は怖くない!自分らしく人生を全うする方法。SHIGETAハウスプロジェクト代表の繁田雅弘(しげたまさひろ)さんインタビュー

SHIGETAハウスプロジェクト代表の繁田雅弘さん

認知症に関する著書を多数出版されている認知症専門医の繁田雅弘(しげたまさひろ)さん

平塚市で認知症にフォーカスしたプロジェクト「SHIGETAハウスプロジェクト」を主導する認知症専門医の繁田雅弘さんに認知症についてのお話をお聞きしました。

高齢化が進む今、多くの家族が直面することになる認知症の人との生活とは? そして、認知症とはどのような病気なのか? を詳しくお聞きすることで、認知症に関する認識が大きくまちがっていたことを実感しました。

いつか来た道、いつか行く道。

希望に満ちた繁田さんのインタビューをお楽しみください。

 

聞き手:たいせつじかん編集部

 

■認知症にフォーカスしたプロジェクト

平塚にある実家を活用し、認知症問題に取り組む場を作った繁田雅弘さん

実家を活用し、SHIGETAハウスを作った繁田さん

-まずは、SHIGETAハウスプロジェクトとはどのようなものなのか教えてください。

繁田さん:私たちのプロジェクトはこのSHIGETAハウスにおいて、私の専門分野である認知症について専門的な知見をもった方を講師として招くなど研修施設としての運営と、認知症の方とそのご家族の方が気楽に利用できるカフェの運営のふたつがあります。

-では、認知症についての勉強の場所、地域の認知症の方が集まれる場所を作りたいという思いから、SHIGETAハウスは生まれたということなんですね?

繁田さん:いやいや、じつはそういうわけではなかったんです。というのも、この場所は私の実家なんです。

父の死後は母がひとりで住んでおりましたが、詐欺まがいの被害にあってしまったり、からだの衰えとともに、家の中でのけがが増えたりしたこともあり、母が施設へ転居したことで空き家になったんです。

しかし、空き家は管理がすごく大変なんですね。誰もいないはずの家の電気がついていると連絡をもらって、駆けつけてみれば誰もいないというようなことがあったりするんです。

ですが、母の思い出のつまったこの実家を売るという選択はむずかしかったので活用法を考えているときに母の主治医である内門大丈先生(湘南いなほクリニック院長)のアドバイスもあり、私の専門分野である認知症に関する何かをここではじめよう考えました。

平塚カフェの内観

SHIGETAハウスの内観

-では、研修施設としてのSHIGETAハウスではどのような活動をされているのですか?

繁田さん:専門職の方をはじめ、認知症の方やご家族向けの認知症に関する研修会・勉強会を開催しているんです。じつは、自治体でもこういった研修会は実施されているのですが、多くても年に数回というのが現実なんです。これが良い悪いの話ではなく、これが限界だと思うのですよね。

でも、もっと勉強したいと思っている方が多いので、ここでやってみようということで始めました。

本当にたくさんの方が来てくれるので、こちらもやりがいがあるし、とてもうれしいですよね。

-勉強できる場が足りないことも知りませんでした。勉強したい方がたくさんいるということにとても希望を感じます。では、認知症カフェとはどういったものなのですか?

繁田さん:認知症の方が自由にご家族といらっしゃって、時間を気にせず気軽にくつろぎながらお話できるカフェです。

厚労省からも認知症の方の居場所作りとして推奨されていて、全国に何千カ所とあるんです。

-まったく知りませんでしたが、日本全国に広がっているんですね。

繁田さん:そうなんです。SHIGETAハウスのカフェは「平塚カフェ」というのですが、今ではいろいろな人が協力してくれて、ウクレレ教室をしたり、有機野菜の収穫を手伝ったり、中学生が授業の一環で来てくれたりと、とても活性化されています。

-地域のみなさんといっしょになって活動しているのはとてもいいですね。

繁田さん:あと、うちの数軒隣に学習塾があるんですが、そこに通っている子どもたちが帰りにここに寄って認知症の方とお話している光景を見たときは涙が出ましたね。子どもたちには本当に偏見がないですから、あれは本当にいい光景でしたね。

-今、超高齢社会と言われているなかで高齢者を取り巻くさまざまな課題があるかと思います。そのなかで認知症の人と家族の関係や老々介護の問題などは、ほんの一部なのだろうと思いますが、そういった課題に対して、認知症カフェが果たす役割はどのようなものですか?

繁田さん:認知症カフェは、認知症の本人とその家族の両方のためなのです。

長い間、認知症の人とその家族を取り巻く考え方は「家族は認知症の人の犠牲になっている」。それを少しでも救わなければいけないということだったんです。

本来であれば、本人だって犠牲になっているんですけど、その部分はすっぽりと抜けてしまっていたんです。

しかし、家族を救うという考えをもとにして介護保険ができ、ある意味で認知症の人の権利を奪うような禁治産制度が成年後見制度にかわったことなど大きな枠でのルールが変わり、徐々に認知症の人に対する考え方が変わっていきました。

-少し前までは、認知症の人に対する考え方はかなり違っていたのですね。

繁田さん:大きく違いましたね。それほど遠くない昔の話として、座敷牢に入れてしまって人間扱いしないような現実が本当にあったんです。

認知症の人にとってもいちばん大切なことは、本人が本人らしくいれる時間を過ごし、ストレスを軽減することなんですが、まったく逆のことをやっていたんですね。

 

■劇的に変わった認知症治療の現実とは

認知症の重症化は格段に軽減されていると語る繁田雅弘さん

重度の認知症の方は減っていると語る

-認知症についてもっと詳しく教えていただきたいのですが、まず認知症の人の数は増えているのですか?

繁田さん:数だけでいうと増えています。しかし、認知症のいちばんの要因は、加齢現象なのです。ですから、60代まではほとんど心配はなくて、70歳以上になってくると、10%~30%程度の確率で認知症と診断されるようになります。だから高齢であるほど多くはなるんです。

ただ、数だけを見て大変だ大変だって言っているんですけど、現場にいる我々としてはそんなに大変だと思っていないんです。

なぜかというと、みなさん認知症のことを心配して早めに病院にいらっしゃるようになったので、かなり早期の段階で認知症を発見できるようになっているんです。

なおかつ認知症って診断された人達の半数以上は軽症です。

軽症の方っていうのは以前に比べれば、確かにもの忘れをしたり、同じことを言ったりするんです。でも、身のまわりのことはそれなりにできるし、手伝ってって言われたらそれも普通にできるんです。今は、医療も進んでいますので、進行がかなり遅くなっています。

映画やドラマに出てくるような朦朧としている認知症の人には僕自身がもう何年も会っていませんよ。

-認知症とひと括りで語ると見えにくくなりますが、認知症と診断された多くの方が普通に生活できるんですね。

繁田さん:そうです。世間の見方が変わり、医療が進んだことで、本人にストレスや苦痛を与えたりすることもしなくなっているので、軽度の人が劇的に増えていて、高度の人はむしろ減っていると思います。

1980年代は軽症の段階なんか2~3年でしたけど、今は軽症の段階が5~8年も続きます。

重度な認知症にならずに人生をまっとうできるようになってきているんですね。

-なぜか認知症というのはとても恐ろしい病気だと思っていましたが、今ではそんなことないんですね。では、家族が認知症と診断されたら、どのようなことに注意すればいいですか?

繁田さん:本人が自信をなくしてしまうことがなによりもまずいので、忘れたり失敗したりしたとしても、気にすんなよ! 誰でもあるよ! と笑い飛ばしてあげてほしいと家族には言います。

実際には、認知症の本人は知らん顔してるように見えても、深く傷ついているのです。先日診察した人は、「先生、みじめですよ」って言ったんです。

-なるほど、できたことができなくなったりするわけですから本人がいちばんつらいはずなので、家族からもそこを指摘されたら自信をなくしますよね。

繁田さん:そうなんですよね。でもなかなかね、家族ってそうはいかないよね。とても、むずかしいところなんです。

家族の中には、たとえば子どもを育て、家族を支えた元気で気丈な姿があるので「しっかりしてよ!」「もうちょっとできるはずなのに!」と、頭ではわかっているんですけどつい言ってしまうんです。でも、言っちゃって後悔している家族をもうちょっとがんばってって支えるのが我々の仕事であり、それも僕にとって大事な仕事だと思います。

-子育て中の家族向けにも言われることだと思いますが、「いつか来た道、いつか行く道」と考えて接する必要があるんですね。

繁田さん:そうですね、そう思えればいいと思いますね。

 

■健康で自分らしく生活できる準備をしよう

健康な身体を保つことが重要と語る繁田雅弘さん

健康寿命を伸ばすことが重要

-認知症の予防のために日頃から気をつけておくべきことなどありますか?

繁田さん:がんが予防できないことと同じように認知症を予防することはすごくむずかしいんですよね。でも、がん治療はここ何十年かで劇的によくなってきています。たとえば胃がんなんかになると、「胃がんになってよかったね」って。なんで?っていうと、必ず治るからです。そして、すぐ仕事に復帰できます。

だから認知症になったとしてもからだが健康で自分らしい毎日の生活ができればいいわけだから、それができるように健康のことを考えればいいのだと思います。

認知症を予防するためには、頭の体操や運動をしましょうとか、食事に気をつけて生活習慣病にならないようにしましょうと言いますよね。でも、それで認知症にならないわけではないのです。

でも、それが習慣化されていることで、認知症になったとしても運動も続けられるし、ごはんを食べてもおいしいと思えるんです。

健康寿命を伸ばしておくことで認知症になっても全然大丈夫です。

-からだが健康であればできることもたくさんあるし、その前からやっている趣味があれば自分らしい生き方ができるからということですね。

繁田さん:まさしくそうです。認知症になっても続けられることを考えておくことがおそらく最大の認知症の予防になると思います。認知症で不幸になることの予防になります。

-今日のお話で認知症に対する認識が変わり、そして感じていた怖さも和らいだような気がします。

 

■著書のご紹介

繁田雅弘さんの著書「認知症の精神療法-アルツハイマー型認知症の人との対話-」

繁田さんの著書

認知症専門医である繁田雅弘氏が診療、研究を積み重ねてきた約30年の月日のなかで、アルツハイマー型認知症の人に精神療法的アプローチを用いた記録です。

・著者が用いる精神療法の基本的な考え方が記されています。
・治療者としてどのような対話を行っているのか、具体的な対話例が記載されています。
・治療についての説明や、本人と家族に対する情報提供(どのように情報提供するべきか)については付録ページに記されています。
・医師はもちろん、医師以外の医療職や福祉分野の方、認知症をもつ本人と家族にも読んでいただきたい1冊です。

著者:繁田雅弘
発行:HOUSE出版株式会社
発売日: 2020/8/1
出版社:HOUSE出版株式会社
サイズ:四六判 320ページ
ISBN: 978-4-9911543-0-0

-気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度読んでみてくださいね。ありがとうございました。

 

編集部のひとこと

ライター

せいくん

認知症とは、自分を見失い、大切な家族に迷惑をかけてしまうとても恐ろしい病気だと思っていました。
しかし、繁田さんのお話をお聞きして、大きく認識が変わりました。
そして、このインタビュー後にすぐに考えたことは、このインタビューで知ったことを両親に話そうということでした。

近い将来に訪れるかもしれない認知症という問題に今から話し合いをしてどのように接していくのかを話すきっかけになりました。

この記事でそういう方がひとりでもいらっしゃればうれしいなと思います。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

あわせて読みたい