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輝く男性インタビュー

創業200年!神奈川県足柄上郡松田町の歴史ある酒蔵を受け継いだ、中沢酒造11代目 鍵和田 亮(かぎわだあきら)さん インタビュー!!

中沢酒造株式会社 11代目の鍵和田亮(かぎわだあきら)さん

文政8年(1825年)創業の中沢酒造はJR松田駅近くにある歴史の深い酒蔵です。200年近い歴史をもつ家業を継いだ11代目鍵和田 亮さんに中沢酒造と日本酒の歴史と現在、そして見据える未来についてお話をお聞きしました。

1分1秒を大切にする酒づくりの世界で奮闘する鍵和田さんの日本酒に対する情熱に私たちも胸が熱くなりました。

鍵和田さんの熱い思いの詰まったインタビューです。ぜひ、お楽しみください。

聞き手:たいせつじかん編集部

■麹づくりが日本酒の味を決める醸造の要

日本酒づくりにおいて麹づくりがもっとも重要と語る鍵和田さん

-創業が1825年ということで、もうすぐ創業から200年ですね。まず、中沢酒造株式会社の歴史を教えていただけますか?

鍵和田さん:創業は1825年にしていますが、母屋が火事で焼けてしまったことから、古い書物がないので、実はこの年も定かではありません。

では、なぜ1825年か?ということなのですが、厚木市の酒蔵に残っている書物に、「1825年に松田町で酒屋があった」と記されているので1825年を創業の年としています。

松田町にある中沢酒造

-であれば、1825年よりも前からこの地で酒づくりをされていた可能性もあるのですね。

鍵和田さん:そうなんです。おそらく、この時よりも前から酒づくりはやっていたのではないかと思いますね。 

-では、日本酒づくりについてお聞きしたいのですが、そもそも日本酒はつくるのにどのくらいの期間を必要とするのでしょうか?

鍵和田さん:実際の原料となる酒米をつくるところから考えると1年がかりです。

どのような味のお酒をつくろうか?と計画を立てることから始まり、原料となる酒米の品種選び、そして実際の製造工程に移っていきます。

-日本酒づくりの全体の製造工程を教えていただけますか?

鍵和田さん:全体の流れは、「酒米づくり(田植えと収穫)→精米→浸漬→麹づくり→酒母→発酵→上槽」となります。

まずは、日本酒の原料となる酒米づくりですね。だいたい5月のGW明けから田植えをして秋に収穫します。

そして、収穫した酒米を精米するのですが、その精米歩合の違いによって酒の味が変わり、吟醸や大吟醸などに分類されていきます。

養老松美酉の商標登録証明書

昔は精米機も精米の技術もなかったため、あまり酒米を磨かず(精米せず)に酒づくりをしていたようですね。

精米後は、余分なヌカを落とすために洗米し、米に水を吸わせる浸漬作業に入ります。

浸漬の時間は、水をたくさん吸わせれば良いというものではなく、つくりたい日本酒に合った時間があるので、米がどれだけ水を吸っているのかを目で見て秒単位で調整していきます。

-浸漬作業ってどのくらいの時間おこなうのですか?

鍵和田さん:何分、何秒の世界ですが、3分~5分程度ですね!

―てっきり、3~4日かかるものだと思っていましたがそんなに短い時間の勝負なんですね!

鍵和田さん:そうなんですよ。さらに、ここで難しいのは、農家からあがってきた米の状態が毎年違うということなんですね。

今年の米と昨年の米とでは物自体が全くの別物なので、昨年のデータは参考になりません。

同じ品種の米で、昨年は3分間浸漬させていたとしても、今年は5分間浸漬させないといけなかったりします。

―本当に繊細な作業ですね。

鍵和田さん:そして、浸漬が終わると翌朝お米を蒸して、麹づくりに入ります。
この麹づくりがよくテレビに映る部分だと思いますが、日本酒づくりで一番大事なのは、この麹づくりです。

なぜなら、この麹づくりで日本酒の味がスッキリしたり、しっかりと味のあるものになったりするのです。

麹室は温度・湿度の微調節が可能な麹づくり専用の部屋

香りは、この後の工程で出てくる酵母が出す香りなので酵母の選択で変わりますが、味に関しては全て麹で決まるので、最終的なゴールを見据えてどういう麹をつくるのかが要となります。

-なるほど、麹づくりが肝心だということは分かりました。でも、そもそも「麹をつくる」とはどういうことですか?

鍵和田さん:麹菌と呼ばれるカビを蒸米に繁殖させて出来上がるものが麹です。
麹菌自体は販売しているので、それを蒸米に振りかけてだいたい3日で麹は出来上がります。

だいたい3日間というのはそれ以上経ってしまうと胞子が生えて酒がカビ臭くなってしまうので、状態を見ながら3日以内に抑えてつくります。
麹はすぐ結果が出るものなので、特に失敗することが出来ません。

逆にこの後の酵母を発酵させる工程は、1ヶ月程度の時間をかけてゆっくりとおこないますので、例えば温度調整のミスがあったとしても多少はリカバリーをすることができます。

でも、麹づくりではそれができません。なので、日本酒の味が決まる、絶対にミスが許されない麹づくりは日本酒づくりにおいて要ですね。

-失敗が許されない要の麹づくりの後は、酵母の発酵ですね。

鍵和田さん:そうです。次は、酵母を育成していく酒母工程です。蒸米、麹、水に酵母の元を入れて、発酵前の状態を造ります。

酵母を培養するために使用する酵母の元

酵母の元は、小さいビン(上の写真)に入ったもので、これを1~2本を使い酵母を培養(育成)していきます。

約2週間かけて培養していくことで、弱いものが淘汰され優良な酵母だけが残るので、その優良な酵母を仕込みのタンクに持っていき、アルコール発酵、火入れ、アルコール度数の調整、瓶詰めを経て1本の日本酒が完成します。

アルコール発酵や火入れをする仕込みタンク

■お酒の安定供給が酒づくり技術の進歩に繋がった

ともに歴史を歩む酒蔵の中

-疑問なのですが、これだけたくさんの作業工程を昔の方々は知っていたのですか?

鍵和田さん:さすがに分からないことも多く失敗だらけだったみたいです。
今は科学技術の発達により様々なことが分かるようになりましたが、それこそ昔は酵母を培養するという工程がなかったので、蔵に棲みついている菌が自然に落ちてきて酵母が添加(増殖)するのを待っていたみたいです。

酒が酒蔵でしかつくられない理由は、そもそも酵母が酒蔵にしかいなかったからなのですよね。

-ということは、いつまで待っても酵母が増えない、なんてことも起こっていたのですね。(笑)

鍵和田さん:酵母が増殖しないことで酒ができないのもありますが、腐らせて酒をダメにしてしまうことも多かったようです。

酒には酒税の安定徴収のために確実に日本酒が製造できるように「酵母添加」という技術ができたのです。

酒づくりが失敗ばかりだと国が困ってしまうということだったのだと思います!(笑)

■200年も続く家業を受け継ぐ11代目の使命とは

中沢酒造の代表的な日本酒「松美酉」

-現在、中沢酒造さんでは年間にどれくらいの量の日本酒を造っていているのですか?

鍵和田さん:だいたい300石なので、一升瓶だと3万本くらい(約54kl)です。

-日本酒づくりでおもしろいと感じるところがどんなところですか?

鍵和田さん:おもしろいと思うところは、やっぱりお客さんにおいしいと言ってもらえた時ですね。

日本酒は、米選びから始まって大変な麹づくりや様々な工程を経て出来上がるので、1年がかりでつくった日本酒が自分のイメージしていた味になり、それを飲んだお客さんにおいしいと言ってもらえたときの達成感やおもしろさというのは忘れられないですね。

-これまで酒づくりの大変さを聞いてきましたが、得られる達成感はものすごいだろうなと想像できます。この職業に就かれて9年ですが、鍵和田さんにとって一番の難しさは何ですか?

鍵和田さん:全く同じ味の酒をつくることですかね。

数値は合わせることはできますが、飲むのは人なので感じ方は違いますし、その時の米の状態、気候、天気によっても大きく左右されるので、同じ味の酒を造ることが一番難しいですね。

今年の冬は寒かったから温度調整がうまくいってこの味に、逆に暖冬で温度調節が難しかった苦戦してこの味なのだな、というのはお客様でも分かる方はいらっしゃいます。

でも、それが昨年との違いだということも伝えやすいですし、どう伝えるかが重要ですね。

-200年も続く家業を11代目として継ぐというのは、プレッシャーがかかりますよね?

鍵和田さん:正直かなりプレッシャーですよ。(笑)
自分の代では絶対に潰せないですので、このことが一番のプレッシャーですね。

また、刻々と変わる社会情勢にも合わせていけませんし、それに今は良いものや美味しいものをつくることは当たり前で、お酒のレベルも非常に高いです。

他の蔵のお酒も本当に美味しいので、どこで差をつけるのかを考えながら日本酒づくりをやっていかないといけないなと常々考えています。

試行錯誤を繰り返し、2年の時を経て完成した「S・TOKYO」

これまで先代が造り上げてきた歴史(代表的な中沢酒造の日本酒「松美酉」)を引き継ぎながらも、この時代に合った日本酒をつくることが求められると思っています。

今は私が2018年から試験的に酒づくりを始めてた「S・TOKYO」という日本酒に力を入れています。

今年に予定していた東京オリンピックに向けて今年本格的に力を入れていたのですが、この情勢で少し狙いと外れてしまいましたが、引き続きこのように新しい日本酒づくりを続けていきたいですね。

―この先の日本酒の未来を鍵和田さんはどのように見ていますか?

鍵和田さん:日本だけでもまだまだ日本酒市場は大きいと思いますが、人口減の影響もあり、お酒を飲む人自体が減ってきているので日本国内だけに依存せず世界に出ていかないといけないと思っています。

未来について熱く語る鍵和田さん

「世界でも飲んでいただける日本酒」となると、ワインの考えを取り入れないといけないですね。
アルコール度数は低く、余計なものがはいっていない純米酒で勝負していかなければならないと思います。

アメリカやシンガポールを筆頭に世界の一部のエリアではすでに、日本酒は飽和状態になりつつありますので、さらに今までの常識を覆すような違うタイプの日本酒をつくっていきたいと思っています。

編集部のひとこと

ライター

ゆめちゃん

今ではしっかりと工程が整理されている日本酒造りですが、先人たちがトライ&エラーを繰り返し得た、さまざまな知恵と経験を語り継いで今に至っているというお話が非常に興味深かったです。

鍵和田さんもそんな歴史のつながりをしっかりと受け継ぎ、次世代へ繋いでいくために挑戦する姿と言動にとても感動し、また勇気づけられました。

今回取材させていただきました中沢酒造さんは、酒蔵では珍しい最寄り駅から徒歩3分という場所にありますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

編集部メンバー

編集長
かなさん

ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。

ライター
せいくん

家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。

ライター
ゆめちゃん

好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。

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