パルシステムインタビュー
- パルシステムの安全安心を支える商品検査センターに潜入取材してきました!
商品検査センター「ぱるあんしん館」
パルシステムが運営する商品検査センターでは、パルシステムが提供する商品を「微生物検査」「理化学検査」「放射能検査」「アレルゲン検査」の4つの科学的視点から検査を行っています。その役割は、パルシステムのサービスを支え、生産者・製造者と組合員の信頼関係を構築するうえで、欠かせない存在だと分かりました!
インタビューは、センター長の玉田さんと各検査を担当されている方々にもお仕事の合間にお話を聞かせていただきました!
ぜひ、お楽しみください。
聞き手:たいせつじかん編集部
■パルシステムは約束を守りたい
商品検査センター長 玉田直子さん
-まず、パルシステム商品検査センターのお仕事について教えてください。
玉田さん:簡単に言えば、パルシステムが供給している食品が組合員との約束通りに作られているかを検査しています。
食品といっても幅が広いですから、それぞれに必要な検査項目に対応できるように現在では4つの科学的視点から検査ができる体制になっています。
-生鮮食品もあれば加工品もあるわけですから、それぞれに必要な検査をしているということですね。具体的にどのような検査をされるのかを簡単に教えてください。
玉田さん:加工食品は企画前に商品担当者が仕様書を作成し、その内容の通り製造していただく工場で作られていますが、生産過程で何かいつもと違うおかしいことがないかは微生物検査をすることでわかりますし、本来原料として使用していない、入っていてはいけないものが入っていないかを調べるのはアレルゲン検査です。
また、野菜であればパルシステムは農薬の少ないものをお届けしようとしておりますので、理化学検査で残留薬剤の検査を行っています。
放射能検査は、東日本を産地とする農産物と日本近海・淡水の水産物、それらを使った加工品の放射能測定をしています。
-検査基準については、パルシステム独自基準を設けているとお聞きしたのですがその基準について教えてください。
玉田さん:そうですね。イメージしていただきやすいものだと、青果の残留薬剤は国の基準の1/10以下にするという目標がありますね。
放射能検査は、一般食品であれば国は100ベクレルを上回らないようにするという基準ですがパルシステムでは25ベクレルとしています。
検査センターで確認された放射能測定値は毎週ホームページで公表し、月に1回放射能レポートでお知らせしています。
※放射能レポートはこちらから確認できます:
https://information.pal-system.co.jp/tag/radioactivity-inspection/
-残留薬剤での国の基準の1/10の目標はかなり厳しい数値での設定なんですね!
しかし、これらの検査で基準や目標外の数値が出た場合はどうされるんですか?
玉田さん:微生物検査を例にとりますと、異常な数値がでた場合は工場に生産過程の確認を行います。実際にあった例ですが、数値が異常なため商品部を通して工場に確認したところ、人気商品のセールのため通常時よりも多い注文が入ったことで、冷却時間が不十分だったため、検査数値が高くなっていたことがありました。
-菌の数を調べることでそんなこともわかるんですね!なんだか科学的に捜査をして事件を解決するテレビドラマのようですね!
玉田さん:そうかもしれないですね(笑)。
しかし、こういったことは年に何度もあるわけではなく、また、私たちは悪い菌を血まなこになって探して犯人を見つけようとかそんなことを考えているわけではありません。「いつもとなにか違うことをされていませんか?」という確認をするためにやっています。
何か違うことをしてましたということもあれば、何も変えていないのに数値が高くなりましたということもあります。しかし、これをすることで常に生産者や製造者と密な関係を築きお互いに約束を守るしくみになっているんですね。
-検査する商品はどのようにピックアップされているんですか?
玉田さん:カタログに掲載されているすべての食品を検査することはできませんので、それぞれの検査項目に合わせ、検査センターの基準で選んだ商品が届きます。
放射能検査以外は、サンプル品を事前に送ってもらって検査をしているわけではないんです。組合員からは、事前に検査してほしいという要望をいただくこともありますが、サンプル品ですと供給されている商品と同条件で作られた商品ではありませんので、それでは意味がないんですよね。
ですから、検査品の多くはみなさんと同じようにカタログで注文して毎週月曜日に検査センターまで届けてもらっています。
これにはもうひとつ狙いがあって、パルシステムの物流配送も込みで検査することができるということもあります。
食品検査センター内の様子。とても清潔にされています。
-供給品に何か大きな問題があった場合はどうされるんですか?
玉田さん:おなかを壊すなどからだに影響がある場合は、組合員に対しては、供給自体のストップや商品回収・廃棄となりますね。生産者や製造者に対しては、問題を共有し、改善方法を指導したりします。それでも、改善がされない場合は商品担当者がその工場の製品を取り扱わないという判断をすることもあります。
-なるほど、組合員と生産者・製造者の両方に働きかけがなされるのですね。
玉田さん:そうですね。問題があった場合は、パルシステムとして両者に働きかけます。
実際の例ですが、Aというパンを作るうえで乳製品を使っていないにも関わらず、その製造ラインではバターが入っているパンを作っていて、Aから乳成分が検出されたという事案がありました。バターを使用した製造ラインを製造後に清掃をし、何度も試行錯誤を繰り返したのですが、どうしてもAから乳成分が微量検出されてしまいました。
アレルギーのない方には影響のない範囲の混入かもしれませんが、食物アレルギーは生死に関わる問題なんです。そのため、その工場で製造するパンについて「乳」をコンタミ表示(注意喚起)ではなく原材料表示へ切り替えました。
-コンタミ表示について教えてください。
玉田さん:その商品の原材料としては使っていなくてもその工場にアレルギー物質が持ち込まれている場合などには、お知らせとして表示をするということですね。
これによって、原材料ではないなら大丈夫、もしくは避けたほうがいいなと組合員が選ぶことができます。
こういった一つひとつの問題に対してしっかりと製造者へ対応し、組合員との約束を守るということがパルシステムの考えですね。
仮に、パルシステムの商品を手に取った人がひとりでも安全に食べることができない可能性があるのであれば、私たちはその人にも安心して手にとってもらえる商品をお届けするということが大切だと考えています。
-なるほど。検査センターは、パルシステムの安全安心を徹底するうえで要となる組織なんですね。安全安心な商品をお届けするためにはどうすればよいかを生産者やメーカーといっしょになって考えているんですね。
玉田さん:そうですね。検査をすることが目的ではありません。検査結果を具体的なアクションにつなげ、改善することが目的ですね。
-仮に何か異常が見つかったとしても、意図的に異常を発生させようとすることはないでしょうから、私ならそのことを生産者にお伝えしづらいような気がしますね…
玉田さん:そうですね(笑)。事前にこういう検査をすることを提示したうえでご了承いただいて生産や製造をしていただいているので、みなさんすばらしい生産者・メーカーですからね。でも、結果に対して必ずお伝えしなければいけないわけですね。それができるというのは、パルシステムが積み上げてきたコミュニケーションの結果でしょうね。生産者・メーカーとしっかりと関係性を作ってきたことによって、お互いに良い関係性ができていると思います。
-検査センターは、生産者から組合員の間にある安全安心という約束を守るためのしくみを支えているんですね。
玉田さん:そうですね。
■各検査室のお話を聞いてきました!
【生化学検査室】
生化学検査室の工藤 由起さん
-生化学検査室はどのような検査をおこなっているんですか?
工藤さん:ここでは、商品のアレルゲン検査を行っています。
-検査をするうえで気を付けていることはありますか?
生化学検査室の様子
工藤さん:検査結果に間違いがないように、作業導線が手順が明確に決まっています。検査室や白衣も作業内容によって分けられています。
また、食物アレルギーは患者さんによってアレルゲンとなるタンパク質はそれぞれ違います。パルシステムでは現在特定原材料である「卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに」の7項目を検査しています。
現在は、アレルゲン表示については法律でも厳格に定められていますし、販売するものの責任としてこれからもしっかりと検査したいですね。
【微生物検査室】
微生物検査室の髙橋 里穂さん
-微生物検査は、その名の通りで微生物の検査をしていらっしゃるんですよね?
高橋さん:そうですね。汚染指標菌や食中毒菌などの検査確認と、工場の衛生状態などの確認をする検査も行っています。
-検査する際に気を付けていることはありますか?
高橋さん:1日で何十件と検査をするなかで、検体の取り違えが起こらないようにすることです。当たり前のことですが、検査をする側の責任としてここには細心の注意を払っています。
簡単なことように思いますが、だからこそ忘れてはいけないと思っています。
-ここでの結果がメーカーにフィードバックされるわけですから、ミスは許されないですね。
微生物検査室の様子
高橋さん:そうなんです。そもそもこちらでの検査結果が疑われるようなことがあってはいけません。ですから、検査結果に対してふたりでダブルチェックをするというようなやり方をとり、複数の目で確認を行っています。
【理化学検査室】
理化学検査室の山口 菜央美さん
-理化学検査室ではどのような検査を行っているんですか?
山口さん:残留農薬の検査や、卵の鮮度検査や魚のヒスタミン検査を行っています。
-実際に、残留農薬の検査とはどのように行うのですか?
山口さん:青果や米であれば、国で決められた検査部位を採取し、有機溶媒などを使用して余分な色素成分や油を取り除きます。それを機器で測定・解析し農薬が正しく使用されているかの確認を行います。
色素や油を取り除いた検体
-検査するうえで気を付けていることはありますか?
山口さん:数kgの検体としては10g程度しか使用しないので、検体の均質化が大切です。農薬の散布状況により、検体への付着状況が変わりますので、採取方法は偏りがないように気を付けています。
【放射能検査室】
放射能検査室の宮本 憲枝さん
-放射能検査室について教えてください。
宮本さん:2011年3月の震災をきっかけに作られた検査室で、放射性物質の測定検査を行っています。設備としては高い精度で放射性物質のセシウムとヨウ素が測定できるゲルマニウム半導体検出器を2台保有し、厳密な検査ができる体制を整えています。
-検査の対象となる食品の選定ルールはありますか?
宮本さん:北海道を除く東日本の農産物や日本近海・淡水で取れた水産品およびその加工品を検査しています。検査の検出限界は乳幼児食品で1ベクレル/kg、それ以外は3ベクレル/kgとわずかな検出でも検知できるようにしています。
ゲルマニウム半導体検出器の様子
宮本さん:当然ですが、検査手順を間違えず一つひとつ確実に行い、正確な検査結果を出すことです。そのためには検体の取り違えがないか、測定機器の適切な管理、検査結果を2名で確認するなどダブルチェックを行っています。
編集部のひとこと

ライター
せいくん
取材前には、なぜパルシステムが独自で検査センターを運営しているのかという疑問をもっていました。食品の検査であれば委託をすることだってできるはずです。しかし、取材をしてみてわかりました。安全安心を届けるためには、生産者とともに組合員と交わした約束を守らなければいけない。そのためには、独自の検査センターをもち、検査結果に対する全責任を背負い問題に対処するという覚悟が必要であるからなのだと思いました。
安全安心を提供するためには、組合員、生産・製造者、パルシステムがお互いにフィードバックしあう関係の維持が大切で、そのために検査センターの果たす役割の重要性を知るインタビューとなりました。
- パルシステム神奈川ゆめコープ公式ホームページ:
- https://www.palsystem-kanagawa.coop/
編集部メンバー
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ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。 |
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