輝く男性インタビュー
- 【後編】子どもたちよ、「旅」に出よ! 旅を通して子どもの未来に世界の扉をひらく!NPO法人Connection of the Children代表 加藤功甫(こうすけ)さんインタビュー
Connection of the Children(以降、CoC [ココ])は、「旅」をベースにした教育プログラムや国際交流プログラムを展開する団体で、「すべての子どもが広い視野をもち、だれもがやりたいことを実現できる社会」をめざしています。彼らの活動のひとつには「CASACO(カサコ)」(横浜市西区東ヶ丘)という地域の“居場所”があり、2016年4月のグランドオープン以来、子ども、地域、世界が、「旅」というキーワードでつながり続けています。
前編では、CoCの代表である加藤功甫(こうすけ)さんに、CoCの取り組みである教育事業のお話をうかがいました。後半は、その活動に至る原動力となった、加藤さんのパワフルでチャレンジングな経験についてお話をうかがいます!
聞き手:たいせつじかん編集部
■これはもう・・・「宇宙」だ!
糸つなぎ事業で世界の人々の糸がつながった糸玉。
―前編では、非常にユニークな教育事業についてお話をうかがいました。今回は、CoCの事業のひとつである「糸つなぎ事業」について教えてください。ずばり、糸つなぎ事業とは何でしょうか?
加藤さん:「事業」というほど大それたものではないのですが・・・糸つなぎ事業とは、“世界中の人を一本の糸でつなぐ”プロジェクトのことです。国内外を旅しているCoC公認の旅人(糸つなぎ隊員)と出会った世界中の人が、一本20㎝の糸を前の人の糸に結んでつながることで世界中のつながりが視覚化する、というものです。
―相当大きな玉になっているのですが、これはいつからスタートしたプロジェクトなのですか?
加藤さん:2010年に、大学の友人とともに、自転車でユーラシア大陸を横断することを決めた時にプロジェクトを発足させました。
―糸をつないでいくというアイデアはどういったきっかけで生まれたのでしょうか?
加藤さん:この旅を通して、子どもたちに、世界の人たちとのつながりのワクワクを伝えたいと思っていました。でも、どうやったら、そのワクワクを伝えられるのか・・・。
最初はミサンガを作って、現地の子に渡すという案もありましたが、渡した相手を把握できない。そこで、ミサンガを作っている糸に目がとまりました。この糸をただ単に結んだらよいのじゃない?運命の赤い糸というし、つながりが目に見えるし、シンプルだし。そんなわけで糸つなぎという形式になったのですが、それが今(2019年10月26日時点)92か国/12,658人(現在は12,698人)の糸がつながって、こんな形になりました。
―ワクワクを見える形にしたのですね。実際にこの糸玉を見た子どもたちの反応はいかがでしたか?
加藤さん:最初は何だこれ?となる(笑)それで、この糸玉はこういうものなのだよと説明して、旅の写真を見せて話をすると、「すごいね。」「この糸はどこの国の糸?」などどんどん質問が飛び出して、自分たちも糸をつなぎたい言ってくれましたね。よかったらこの糸玉、持ってみませんか?
―(ズシッ!!)わっ!重い!!想像した重さよりずっとずっと重いです!一本一本の糸は細くて短いから、もっと軽いと想像していました。この重さは、たくさんの人のつながりを実感しますね!!
加藤さん:そうですね。ちなみにこちらの小さい糸玉は、夏休みにマルタ島へ行ってきた隊員が結んでくれた糸。これでだいたい300人分くらいですね。こんな風に、今も糸つなぎ隊員が糸つなぎをしながら旅をしています。
―糸つなぎ隊員というのはどういう人たちなのですか?
加藤さん:この活動に共感した人が応募してくれています。糸つなぎ隊員が出発する前には、壮行会をします。壮行会に参加してくれた人に糸を結んでもらって、「はじまりの糸」を作ります。糸を結んだ人も旅ができるよという意味もあります。私たちがユーラシア大陸の旅に出た時も、横浜市内の5校の小学校にお願いしてはじまりの糸を結んでもらって、帰ってきてから報告会で糸玉を見せに行きました。
―それは子どもたち喜んだでしょうね。自分が結んだ糸が世界中を旅して、たくさんの人がつながって、大きな玉になって帰ってきたのですから!
加藤さん:そうですね。現地の人が直接糸をつないだ糸玉は、リアルなつながりを感じられたと思います。
―この糸玉に、とてつもないパワーを感じます!!人のつながり、人の思い、思い出などが、ギューッと詰まっている感じです。これはもう・・・「宇宙」みたいですね!!!
■ユーラシア大陸縦断 自転車2万キロの旅
―ユーラシア大陸横断をめざしたきっかけは何だったのですか?
加藤さん:おおもとを辿っていくとなんだったのかな・・・と思うけれど、大学1年から友人と日本全国を自転車で旅をしていて、大学4年になるまでに47都道府県まわりきっていました。日本は全部見たし(今考えるとまだまだ行っていないところは山ほどありますが・・・)、もっと世界が見たいよね。というのが始まりだったかもしれません。2009年くらいからユーラシア大陸を横断しようという話になっていましたが、資金のこともあったし、単に横断している人はほかにもいるので、自分たちは何のためにこの旅をするのかという意味を考えるのに2年越しの時間がかかりました。
―ちょうど東日本大震災の起こった2011年に出発されていますね。旅に出るとき、どんな思いがありましたか?
加藤さん:ちょうど出発の1カ月半前に東日本大震災が起こりました。旅をやめてボランティアに行った方がいいのかと悩みました。でも、準備もしてきたし、我々が被災地に行ってできることよりも、旅に出て得た経験をみなさんに伝えた方がいいと考えました。また、子どもたちをつなぐプロジェクトを最後までやり切ろうという気持ちがより強くなりましたね。それに、日本の状況は、福島や東北の津波などで知られるようになっていましたので、日本はもうおわったという風評被害があるなかで、そんなことないよ、今日本はがんばっているから応援していこうよ!というメッセージを発信する気持ちもありました。
―自転車で旅をしながら、糸つなぎをどのように進めていったのですか?
加藤さん:そうですね。ひとり旅もそうですが、自転車で旅をしていると、向こうから話しかけてくることが多くて。話をしているうちに「うちに泊まって話を聞かせて。」となるので、じつはこんなことをやっているのですと、糸つなぎの話をすることもありました。少ない人数で旅するからこその出会いというものがあると思います。
また、いろいろな小学校にも訪問しました。旅の途中でアポをとった学校もありますが、地図をみて「この辺に学校があるぞ。」と調べて突撃した学校もあります。
―えー!!アポなし突撃なんて、日本の小学校だと絶対門前払いですよね。許されないでしょう。
加藤さん:いえいえ、日本でもアポなしでも受け入れてくれる学校も案外ありましたよ。この旅の終わり、神戸港から横浜へ自転車で帰ってくる途中、アポなしでいくつかの学校に突撃しました。じつは、ユーラシア大陸を横断してきて、こういうことをやってきたのですと、糸つなぎプロジェクトの話をすると、半分くらいの学校は入れてくれて、旅の話を聞いてくれました。給食まで食べさせてくれる学校もありました(笑)受け入れは校長先生によるところが大きいですが、校長先生ともなると、目が肥えた人が多くて、「ひとめ見て君たちは大丈夫だと思いました。」「悪い奴というのはわかるのですよ。」とおっしゃる方もいましたし、実際自分も旅していたという人もいました(笑)
―へー!そうなのですか!!子どもたちの学びの場で、人の出会いやつながりが大切にされているのは、とてもうれしいですね。なんだかいい話が聞けました。
加藤さん:わたしたちの団体では、旅とは日常から一歩外に出ることだと話しています。つまり、外国や知らない土地に行くことだけが旅ではなく、いつもと違う公園で遊んだり、いつもと違う駅で降りてみたりすると、新しい発見や出会いの可能性がある―そうするとそれはもう旅することなんだと思っています。
旅を“出会いの旅”に変えるには、自分が外からその地域に入った時に、自分からバリアを外すということが大事じゃないかなと思います。バスや電車の中、飛行機の中で、隣に座った人と目が合う。その時に目をそらさずに、笑顔で「元気?」というだけで、向こうも話しかけていいのかと思ってくれるでしょう。国内でも、日常から一歩出ただけの旅でも、バリアを外すことで、“出会いの旅”に変えられんじゃないか?ということです。
■世界がつながる場所「CASACO(カサコ)」の可能性
―最後に、CoCが拠点としているCASACOについて教えてください。
加藤さん:はい。CASACOは横浜市西区東ヶ丘にある私たちCoCが運営する拠点で、今回ご紹介した知と挑戦の基地「ミライへのアソビバ」もここで開催しています。一方で、国際交流事業として、世界を旅した人、留学生、海外からの訪問者など、さまざまな人と交流する場となり、気軽に日本の中で国際交流する機会を創出しています。
※CASACOの紹介や、世界の朝ごはん、Fusion Kichenなど国際交流イベントについてはこちら: https://www.taisetsujikan.com/place/?p=149
―国際交流は、海外や特別な場所に行かないとできないと思いがちですが、CASACOにはそのチャンスがあるということですね。
加藤さん:そうですね。それこそ一歩外に出てCASACOに来ることが、「旅」となると思っています。ここにはいろいろな人が集まります。性別、年齢、国籍、宗教が違う人々です。その多様性を認め合うこともまた、旅の醍醐味でしょう。
―このCASACOに集う人はみんな、「旅人」ということになりますね。子ども、地域、世界を旅で結ぶCASACOの可能性は、人の数だけ広がりそうですね。
編集部のひとこと

編集長
かなさん
ユーラシア大陸横断の旅においても、帰国後の小学校への突撃訪問においても、世界中のいろいろな場所で加藤さんが受け入れられるのはどうしてだろうと、インタビュー中ずっと考えていました。しかし、最後に加藤さんが答えをくれたように思います。加藤さんには、人に対するバリアがないのでしょう。毎日が「出会いの旅」となるような、本当に素敵な方でした。
- CoCのホームページ:
- http://www.coc-i.org/
- CoCが運営するコミュニティスペース「CASACO」のホームページ:
- https://casaco.jp/
- CASACOのFacebookページ:
- https://www.facebook.com/casaco.azumagaoka/
- ユーラシア大陸横断の旅の報告:
- http://coccoccoc.web.fc2.com/index.html
編集部メンバー
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ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。 |
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家事全般、特に料理が得意な新人ライター。気も声も小さい。 |
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好奇心旺盛。食べ歩きや女子会が大好き。いつもTシャツ。 |