輝く男性インタビュー
- 【前編】“もの”だけじゃない!“ひと”と“まち”もあたためる!株式会社スリーハイ 代表取締役男澤誠さんインタビュー
大手建設会社が発表した2019年度住みごこちのいいまちランキング第3位・横浜市都筑区北山田。そのまちのほど近くにある東山田というまちは、住みごこちで注目される北山田に対し、このまちの「準工業地域」からはじまった地域づくり・地域交流活動で熱い注目を集めています。今日はこのものづくり現場から始まった地域活動の仕掛け人である株式会社スリーハイ 代表取締役 男澤誠(おざわまこと)さんにお話をうかがってきました。穏やかな笑顔と、人を包み込む落ち着いた話し方の男澤さん。しかし、この活動が今の輝きを放つまでには、男澤さんのこのような様子からは想像もできない孤独と苦難の日々があったのです!!
聞き手:たいせつじかん編集部
■ワクワクが止まらない!東山田の「こどもまち探検」は、おとなだって行ってみたい!
株式会社スリーハイの得田さん(左)、男澤社長(中)、松本さん(右)。 「DEN」入口にて。
株式会社スリーハイのショールームとしても機能するカフェ「DEN」。
―本日は社員のみなさままで時間をいただき、ありがとうございます。よろしくお願いします。
男澤さん:こちらこそよろしくお願いします。
松本さん:よろしくお願いします。
得田さん:よろしくお願いします。
―最初に言わせてください!!いやあ、驚きました・・・。なんとおしゃれなカフェ!!
男澤さん:ありがとうございます(笑)
―男澤さんが代表取締役を務める株式会社スリーハイの本社でインタビューということだったので、てっきり応接室をイメージしてうかがったのですが、まったく工場色を感じさせないこの空間が現れて。どこを見てもおしゃれで、とても落ち着く場所ですね。
男澤さん:ここDENは、一般の方が飲食できるカフェであると同時に、わが社のショールームにもなっています。弊社の製品を見ていただいたり、今日のようにお客様と打ち合わせをするスペースにもなっています。東山田のこの地域で働く人たちが、ちょっとここに寄って、サードプレイス的に使ってもらえたらという思いもあって昨年オープンしました。
―地域をつなぐ場所でもあるということですね。
男澤さん:はい、その通りです。
男澤さん(左)と社員の得田さん。得田さんのような株式会社スリーハイの社員が、「こどもまち探検」の案内を行っています。
―男澤さんは「地域」をキーワードに、たくさんの顔をおもちですよね。一般社団法人横浜まち・もの・ひとづくり代表理事、関内イノベーションイニシアティブ株式会社取締役、横浜市プレイングアドバイザーなどなど。逆に製造業である株式会社スリーハイの代表取締役という顔が、異色に映りそうでしたが、やはりここでも、「地域」というキーワードが輝いているんですね。
男澤さん:はい、「こどもまち探検」プログラムですね。東山田地区の小学3年生の子どもたちが、東山田の工場見学をするツアーを2013年から続けています。年々参加してくれる工場や協力団体が増え、今ではこの時期を楽しみにしている工場の社長さんもいらっしゃいます。
得田さん:「こどもまち探検」で、わたしたちおとなが子どもから教わることがとても多いです。子どもたちってどん欲だし、純粋に物ごとを考えて臆することなく質問してきます。そういう姿を見ていると、普段の仕事で自分が陥ってしまっていた固い考えに気付けたり、うろこがはがされるというか、まっさらになる機会だとわたしは感じていて。その日は子どもたちとキャッキャと楽しんでいます。
男澤さん:小学3年生の「こどもまち探検」で地域にどんな仕事があるかを知る。その後小学5年生では工場生産について学び、中学2年生で職場体験をする。工場と子どもたち・地域のむすびつきは、継続した学びを通してさらに育まれていきます。
―地域が子どもたちを育んでいる実感がありますね。継続した学びは、地域にとっても子どもにとってもいいことだらけに見えます。ところで、なぜ「こどもまち探検」を始めようと思われたのでしょうか?
男澤さん:準工業地域は、全国的にも騒音や悪臭、振動などのトラブルが、工場と住民との間で多発するといわれています。ここ東山田も、工場地域と住民の方々との接点は少なく、地域としてのむすびつきはほとんどありませんでした。そういう意味では、子どもを通して自分たちの地域としてわたしたちのことを知ってもらえる「こどもまち探検」というのは非常にいい方法だと思いましたね。
―なるほど。
男澤さん:最初は「こどもまち探検」として、うちの工場と数社だけを見学してもらっていたのですが、そうしてやっていくうちに、「スリーハイだけがめだってもしかたない」、「この状態だと地域が豊かにはならない」と途中で気づいたんですよ。当時は同じまちにいながら会社同士の接点もほとんどありませんでしたが、隣の会社やこっちの会社も声かけて、いっしょにこの東山田という地域を面で盛り上げたいなと思ったのです。子どもが100人数社だけ見に来て、そのまま帰るのはもったいないルートなんです。あっちの道を通ってきたり、通る道を工夫すると、子どもたちは80社くらい見ることができる。ぼくが子どもだったらそっちの方が楽しい。こうして面の活動へシフトチェンジしていったんです。
■ヒミツだらけの工場―近くて遠い地域への思い
―ほかの工場へ「こどもまち探検」を提案したときは、どういった反応でしたか?
男澤さん:即答。「無理!」と言われました。
―えーーーーーー!?どうしてですか!?
男澤さん:理由は、「その日は仕事がある」から。もちろん、「それを見せるわけにいかない」し、なおかつ、工場の中は「ヒミツだらけ」だから。
―うーん、すごくガードが固いんですね。
男澤さん:その年はあきらめました。でも、それからことあるごとにその工場の社長さんのところへ顔を出していろんな話をして、関係を作っていったうえで、次の年もう一度お願いにあがりました。「10分だけでいいので見せてもらえないですか?あとのアテンドはうちがやりますから。去年ここを通っていった子どもたちが、この工場をどうしても見たいといっているんです」そうしたら、しょうがないな・・・と、しぶしぶ「見せられるところは限られているが・・・」といってウンと言ってもらえました。
―1年かけてほかの工場の社長さんとの関係をつくったからこその結果ですよね。しぶしぶであろうが、「ヒミツだらけ」の工場に、よく足を踏み入れさせてくれましたよね!
男澤さん:それがね・・・・結果的には、子どもたちが100人その工場に入った時に、社長さんの顔が輝いちゃったんです!!それまでの顔とまったく違う、そう、まさにきらきら輝いた顔。100人×2個の子どもたちの目が社長さんに注がれて、自分の会社の中で、子どもたちがキャッキャと見て回る。難しい言葉は9歳には通じないからと、大汗を掻きながら、言葉を選び、不慣れな言葉で説明しようとしてくださって。いい景色だなと思いました。
―目に浮かびます!
男澤さん:「最後質問ありますか?」と社長が言うと、子どもが「壊れたらどうするのですか?」とか「なぜ社長になったんですか?」とか「この仕事の魅力は何ですか?」とか。次々にきらきらしたまっすぐな目で質問が飛んでくる。それに社長さんが感動してしまって。「なんだ?なんなんだ!?この「こどもまち探検」というものは!!」って。社長さんがさらに延長してくださって。言ってしまえばヒミツのところまで見せちゃって(笑)
―「ヒミツだらけ」を公開してしまったのですね(笑)
男澤さん:「こどもまち探検」を終えた社長が、「本当にいい体験をさせてもらった。最初はこのプログラムは子どもたちのためにやっていると思ったが、子どもたちから元気もらっちゃった。これは毎年やるべきだ!」とおっしゃって。こうして、この社長が「こどもまち探検」のなかまになってくれました。それから、ひとつ、もうひとつと、ほかの工場が同じ思いをもって仲間として集い始めて、「こどもまち探検」が東山田の恒例行事になっていきました。
■男澤社長、宇宙へ行く!
営業の松本さん。松本さんが名付けたスリーハイ製品のネーミングセンスは抜群!
―「こどもまち探検」が軌道に乗るまでのお話しをサラリとされていますが、この間、ほかの工場の社長や地域関係者に働きかけ、大奔走されたのだと思います。このような時、相手に理解・共感してもらえないと、とても苦しいと思うのですが、男澤さんはそれをものともせずに成し遂げられました。とてもメンタルが強いと感じるのですが、一方で、だれに対しても分け隔てなく同じ態度で接していらっしゃるのが印象的に映りました。
男澤さん:いやいや・・・挫折とモチベーションが下がるの繰り返しでしたよ(笑) また、人との接し方については、そういう風に言ってもらえるのはとてもうれしいですね。ひとりの人間として誰にでも平等に接するように心がけています。でも、その理想といつも闘っているんですよ(笑)
―闘っているのですか(笑) でも事実、男澤さんは、地域と企業を結び付ける大きな目標をクリアして、地域のコーディネーターや相談先としての厚い信頼を得ながら、一方では経営者としてしっかりと会社をひっぱっていらっしゃる。会社の、そして男澤さんの理想を、株式会社スリーハイの社員もまた理解されて行動されている様子に、男澤さんのカリスマ性や高いリーダー力を感じました。
得田さん:わたしはこの会社に入って3年目、スリーハイでの地域活動も浸透し、基盤ができた状態で入社しました。じつはわたしは転職組なのですが、入社当初からスリーハイで地域活動をやるつもりで入社しました。企業紹介ブースでこの会社を見た時、CSR活動とものづくりを両方大切にしている企業だということがとてもよく伝わってきました。
いろいろ経験した人でも入れるように受け入れてくれている点もまた、この会社の魅力だと思いました。社長はこういう方向性を打ち出して、引っ張っていってくれていると思っています。スリーハイに出会えて今幸せな仕事をしているなと思っています。
―絶大な信頼感ですね。やりたい仕事ができて幸せとは、経営者としては非常にうれしいですね。
男澤さん:ありがたいことです。今はこんな風に、わたしの思いや会社の考えに、社員がベクトルを合わせてついて来てくれて、和やかな雰囲気でやっていますが、ここに至るまでに、苦しい時期はありました。わたしは、父からこの会社を受け継ぎましたから、最初はもう、先代の息子とはいえ、よそ者ですからね。向こうから距離を置かれているのもわかりましたし、こっちも距離を置いてやらないと、うまく8時間過ごせないわけです(笑)
―なんだか重いですね・・・しんどそうですね・・・。
男澤さん:スリーハイに入るまでは、ネットワークエンジニアとして働いていたわたしには、職人の世界はまったくわからない世界。職人のオーラもすごくて、気軽に話しかけられない雰囲気もありました。それなのに「いつか自分たちがつくったものを説明しなくちゃいけないわけだから、おまえもやれ」と父から言われるのだけど、正直ものづくりは苦手で、うまくできませんでした。かといって、周りに教わる雰囲気でもないんです。職人の背中から「おれの背中から読み取れ~!!」と、オーラが出ている感じでしたから(笑)。そして、もちろん読み取れないし。その後大きな経営危機もあって、会社がもう倒産してしまうのではないかというところまで行きましたね。なんとか立て直したものの、たくさんの人が去りました。入社後すぐにいろんな苦労がありましたね。
・・・後編につづく
編集部のひとこと

編集長
かなさん
東山田の「こどもまち探検」のうわさを聞きつけ、ぜひともお話を聞きたい!!と、男澤さんにご依頼したインタビュー。インタビュー前後も、大学での講演や地域活動に参加されるほか、海外出張などで大変お忙しいスケジュールであったにもかかわらず、快くお引き受けいただき、長時間わたしたちの話に耳を傾けてくださいました。終始、穏やかな笑顔、そして社員のみなさまとの和やかな雰囲気。男澤さんへの信頼感が深く感じるインタビューでした。後編では、孤独に打ちひしがれる男澤さんを救ったある人の言葉。この言葉が男澤さんの快進撃をスタートさせます!ご期待ください!
- 株式会社スリーハイ公式ホームページ:
- http://www.threehigh.co.jp/
編集部メンバー
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ふたりの子どもがいるワーママ。お酒が好き。とにかく声が大きい。 |
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